ーーーEX10ーーー
自分のせいで、多くの人を不幸にしてしまった。
これ以上、自分が走る意味などないと思っていた。
だから、もうこの世界から去るつもりでいた。
しかし、森内トレーナーに優しくされ続けたドントビーレイジーは、今度は逆の感情で泣きそうになる。
「どうして……私みたいなウマ娘のために……」
もちろん、悩んでいるウマ娘のことなど放っておくわけにはいかないからだ。
森内トレーナーがそういうのは簡単だったが。
「--怠けるな(Don't be lazy)と言いたくてな」
少々遊び心が芽生えたのか、キザにかっこつけた森内トレーナー。
「……ふふ、なんですか、それ」
どうやら、ドントビーレイジーにも少々ウケたらしい。
しかし、落ち込んでばかり、泣いてばかりの表情だったドントビーレイジーが初めて見せた小さな笑顔だった。
「さあ、自分のペースでいい。合宿所に戻ろう。そろそろ迷子扱いされているかもしれん」
森内トレーナーは立ち上がり、他のトレーナーたちのところへ向かおうとしたが。
「あの、待ってください」
歩き出す前にドントビーレイジーに止められた。
「まだ何か?」
「その……あなたの担当ウマ娘さんは、そんなに無茶されてるんですか?」
ドントビーレイジーは自分の包帯が巻かれた脚に目を落とした。
どうやらドントビーレイジーは、無茶のしすぎでインシルカスラムが自分のような目にあってしまうことを心配しているらしい。
「……ああ、無茶してばっかりだ。キミもその気なら目指してみるといい」
森内トレーナーは、自分の担当ウマ娘が走る理由を思い出す。
病弱なアタシでもやれるんだ、って証明したい。
ドントビーレイジーのような、怪我で絶望しているウマ娘に勇気を与えてくれる、そんなウマ娘のはずだ。
「インシルカスラムってウマ娘をな」
森内トレーナーが合宿所付近に戻ると、見回りしていたトレーナーたちからは呆れたため息をつかれた。
「おい森内、お前どこまで見回りに行ってた?」
「そろそろ警察に捜索願出そうかと思ってた頃だぞ」
「はは、すまんな。ちょっと悩んでる子の相談に乗ってやってた」
「悩んでる子?」
「ああ、ドントビーレイジーって名前の。お前らのほうが詳しいんじゃないか?」
その名前を聞いた途端。
何人かのトレーナーが顔をしかめたり、眉間を押さえた。
確か、嫌な顔をしたトレーナーたちはちょうどクラシック級のウマ娘を担当していたはずだ。
「そうか、お前ダートにいるから詳細知らんのか。5月に辞めたトレーナーいただろ?」
「あのトレーナーそれなりに慕われててさ。チーム組んで他の子も何人も持ってたんだ」
そこまで言うと1人のトレーナーは呆れて両手をパッと広げた。
「それがレイジーのせいで奴は辞めちまってチームは空中分解。今でもレイジーを恨んでるウマ娘は少なくない」
トレーナーたちは口にこそ出さなかったが。
面倒事を起こし、今後も厄介の種になりそうなドントビーレイジーのことは引き受けたくなさそうだった。
だから、ビーチで放置されていたというわけらしい。
その様子に森内トレーナーも呆れて首を振ると。
トレーナーたちをまとめて指さした。
周囲のトレーナーたちはドントビーレイジーに呆れていたが、森内トレーナーが呆れたのは目の前のトレーナーどもだ。
「事情は分かったが……お前ら、悩んでるウマ娘を放置するんじゃない」
「分かってるが、俺では引き取れん……俺の担当ウマ娘、レイジーのことを相当恨んでる」
「それでも個人的に話くらい聞いてやれ。悩んでるウマ娘は導くのが俺たちトレーナーの役目だろ」
森内トレーナーは周りのトレーナーを 責すると。
スマホから退職した元、ドントビーレイジーのトレーナーの番号を探し出す。
「森内だ。事情を聞いた。レイジーを捨てて途中で逃げた大馬鹿野郎、さっさと戻ってこい」
「--俺からも掛け合ってやる。逃げるな。壊してしまったと思ってるなら、なおさら面倒見るんだ。最後までな」
こちらもまだまだたくさん書きたかったほどです!
魅力的なキャラクターをありがとうございました!
次回から別キャラになります。