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「1着はソニックスティングちゃんです!ってえ!?あなた方は本職のトレーナーの方ですか!?」
引率の先生と思われる女性はG1クラスのウマ娘も担当するトレーナーたちがぞろぞろと駆け寄ってきたことに腰を抜かす。
「あの子はソニックスティングというのか?、すごいな!」
「鍛えればG1、いや世界でも十分通用する走りです!」
「ポテンシャルを感じる走りだ、ぜひスカウトさせてほほしい!」
困惑する引率の先生に、我を忘れて迫るトレーナーたちを尻目に、森内トレーナーはソニックスティング本人にしゃがんで目線を合わせる。
「Hey、おれのスピードが半端ねぇって?悪くない気分だな!」
おそらく、どこかの漫画かアニメに影響されたであろう話し方でソニックスティングは返事をした。
「ああ。いずれはレースに出るのが夢か?」
「ああ!最高速でブッちぎるのが、最高ってやつだろ?」
「違いない。中等部に上がっても気が変わってなかったら俺たちを探して……」
「待つのはキライなんだ!すぐにおれを探しに来なよ?」
誰かさんにそっくりな、食い気味の返事でソニックスティングは自らをアピールした。
「フッ、そうだな。俺たちから探しに行く」と独り言のように付け加えて森内トレーナーは立ち上がる。
待つのは嫌いと言われたばかりだが、模擬レースに初等部のウマ娘は出走できない。
今森内トレーナーができることは、スプリント戦線のトレーナーたちにソニックスティングを紹介することくらいだ。
おそらく、スプリントのトレーナーたちは目を輝かせるだろう。あるいはありえない話だと一蹴されるかだ。
森内トレーナーはそう心の中で結論付けると、いまだ興奮冷めやらぬトレーナーたちの肩を、ため息をつきながらつかんだ。
「お前たち、スカウトは中等部からなの忘れたのか?帰るぞ」
「しまった、そうだったな……」
「すげえスピードだったからつい……すまん」
「お騒がせしました……」
トレーナーたちは現実に帰されたことで、肩を落としながら本来の仕事に戻っていく。
ソニックスティング目当てに急に興奮状態で駆け寄ってきて、そして急に落ち込みながらトボトボ帰って行った男たちを、他の初等部のウマ娘と引率の先生はポカンとした表情で見送るしかなかった。
ほぼ同時刻。
今日のインシルカスラムの練習メニューは合宿所近くにある登山ルートの駆け上がりだった。
もちろん、トレーニングの一種なので苦しくてもスピードを緩めてはならないし、時間制限もある。
苦しい状態で上り坂を登り続けるソレの負荷はレジャーとは比にならない。
「ハッ……ハッ……もう、すこし!」
インシルカスラムは左手首のスマートウォッチの心拍を見ながら山を駆け上がっていく。
心拍のメーターの色は危険域である赤と注意域である黄色を交互に行ったり来たりしている。
超が何個も付くほどキツいトレーニングだ。
しかも、ただがむしゃらに走ればいいというものでもない。
黄色を下回ればトレーニングとしては弱く、常に赤になるような走りをすれば心臓が壊れてしまう。
マラソンの終盤で全力疾走をするが如き苦しさに耐えながら、インシルカスラムはトレーニングとしてちょうどいい負荷を冷静に取り続けていくと。
やがて、頂上の看板が見えてくる。
「や……っと着いたー!」
富士山級とまではいかないが、この山の頂上から合宿所を見下ろす景色は格別だろう。
インシルカスラムは、息を整えながら展望台を探すと。
そこには先客が1人いた。
インシルカスラムが手を伸ばしても頭に届かないほど背の高い芦毛のポニーテールのウマ娘。
右の髪飾りは牡丹だろうか。
彼女こそが、フロールレイエスだった。
「お前も、これを上がってきたのか」
今回はフロールレイエスというウマ娘からの応募でした。
ありがとうございました!