別にGでも構わんのだが一応1400mを走ってるんだよな…
最終コーナーを回って、最後の直線に入る。
未だセーフティリード以上でもなく以下でもなく、適切な差を維持したまま、インシルカスラムは一番手で最終直線にかかった。
「--余裕だね。けど手は抜かない」
インシルカスラムはわずかに背後からくるスパートの気配を感じ取るが、すぐに意識を目の前に戻した。
逃げウマ娘は後ろを気にする必要などない。ただ全力で前に進むだけだ。
「最後の直線に入ったインシルカスラム、さらに加速して突き放す!後方との差は広がるばかり!」
「まだ伸ばせるというのですか……!」
本来、逃げウマ娘に最終直線での加速はあまり期待されない。
最終までにできる限りのリードを取り、最終直線が来たらひたすら迫りくる後方に抜かれないよう祈るだけなのが普通だ。
最終直線に入って逃げウマ娘がまだリードを伸ばせるというのは、圧倒的な実力差がついているときのみ。
その恐ろしさを最も実感できる逃げウマ娘担当の打出トレーナーが眼鏡に触れる動作はわずかに震えていた。
「スピード、パワー、賢さの全てに優れたとんでもねえウマ娘だと思っていたが……。あそこまで伸ばせるのは"根性"も優れてる証拠だ」
小原トレーナーもウマ娘にとって最も基礎的な能力となる4つ目の根性に太鼓判を押した。
森内トレーナーはここでは言葉を発さず、インシルカスラムのラストスパートを真剣に目で追う。
どうやら、森内トレーナーはインシルカスラムのラストスパートから何かを感じ取ろうとしているようだ。
「インシルカスラム、ゴールインしました!これは今後数年、ダート界が楽しみになってきましたよ!」
実況役のスタッフは興奮を抑えきれない様子で1着を宣言する。
「半端ないですね。あの子。基礎能力5つの内4つが高水準なんてウマ娘はG1級でもなかなかいません」
藤正トレーナーがおどけつつも森内トレーナーに目を向ける。
「1つくらいは欠点であってほしいモンですが。森内さん、どう見ます?インシルカスラムの"スタミナ"は」
藤正トレーナーは森内トレーナーに5つの基礎能力のうち、最後の項目について聞く。
「そうだな。詳細はもっと見てからでないと結論は出せんが……行けても中距離まで、ってところか」
この森内トレーナーの答えをウマ娘全体から見た見解で言うならスタミナに特筆すべき点はない、ということになる。
やはりインシルカスラムも、ありとあらゆる能力が高水準な完璧ウマ娘ではなかったということだろう。
しかし、それを聞いた小原トレーナーの表情が険しくなる。
スタミナはそうでもない、という評価が気に入らないのだろうか?いや……
「おい。ダートの最長距離のレースを言ってみろ」
「2400mのダイオライト記念。G1に限るなら2100mの川崎記念」※
「つまり、スタミナに関しては"十分通用する"ってことだ。何か間違っていたか?」
「……いいや。お前がここでステイヤーステイヤーと喚くマヌケ野郎じゃねえかどうか試しただけだ」
小原トレーナーは不機嫌そうに視線を戻す。
「俺がクラシック戦線から来たならマヌケだったかもしれないが、あいにく俺は中距離主体のティアラ戦線からの流れ者なんでね」
"ウマ娘全体から見た見解で言うなら"、中距離までしか通用しないウマ娘はスタミナに優れているとは言えない。
菊花賞、天皇賞(春)、有馬記念など、名だたるG1は長距離も多い。
特にクラシック戦線を走る場合は長距離走者、ステイヤーとしての適性があるかどうかはとても重要になる。
しかし、ダートに限った場合は話は別だ。
"ダートの長距離は存在しない"。
重賞はもちろん、オープンやメイクデビューに下げても。
つまり、行けても中距離まで、なインシルカスラムのスタミナはダートレース界において全く問題がない。
インシルカスラムは、ダート世界では基礎能力が全てにおいて高水準な完璧ウマ娘ということになる。
「藤正、お前の話を疑ったことを謝ろう。インシルカスラムは逸材だ。さあ、スカウトと行くか」
※モデルとなった1989年~1991年の東京大賞典は2800mでしたが、今回は2000mのレースとして扱っています。
また地方Jpn2の名古屋グランプリは2500mでウマ娘の適性的には長距離に分類されますが、今回はアプリ版ウマ娘(現実の2022年時点)で実装されているレースのみが出走可能とします。
ウイニングポストでは適性距離がメートルで表されるのですがちょうどインシルカスラムの適正距離は2400mまででした。
インシルカスラムの長距離適性は紛うことなきGです!
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