「え?こんなウマ娘とかかわりがあるの?」と自分でも思いましたが、ウイニングポストでは同じ時代に生き、鞍上まで同じのあのウマ娘です。
また、Sprinters’Storyなんかとも少しつながってきます。
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岩手県での実地訓練を終えて、南部杯が近づくころ。
森内トレーナーは自分のトレーナー室で今月号の月間トゥインクルを読んでいた。
小さく組まれたダート特集にはインシルカスラムのことが載っている。
メディアとしてもダートの主力メンバーとしてインシルカスラムが加わったと認識されているだろう。
「ページは少ないが、嬉しい限りだ」
森内トレーナーは独り言をつぶやくと、ふと目次に目を落とす。
視線の先にはティアラ路線の特集のページがあった。
今では古巣となった場所だが、気になった森内トレーナーはページをめくる。
そこには、記者も驚きで書いたであろう見出しがつづられていた。
"ダイイチルビー、ローズステークス後の秋華賞を回避。今後のローテーションに予想着かず"
トレセン学園の廊下を、少し早足で歩くウマ娘がいた。
優雅、華麗…だから近寄りがたくもある。
トレセン学園の廊下をきれいな姿勢で、早足で歩く赤いリボンのウマ娘は誰もがそんな印象を抱くだろう。
彼女、ダイイチルビーのスケジュールは常に秒を刻むくらいのスケジュールで忙しく、ここ最近は人生に起きる大きな決断を迫られ、さらに隙間のない日々を送っていた。
するとダイイチルビーは向こう側から、慌ただしく走ってくるウマ娘を見かけた。
「ちょっとごめん!先通るよー!」
慌ただしいインシルカスラムは早足で歩くダイイチルビーに比べても明らかに小走りのスピードで、他のウマ娘たちを次々アクロバティックに避けながら追い越しを繰り返している。
「……何か急いでいらっしゃるのですか、インシーさん」
ダイイチルビーはインシルカスラムの名を知っていた。
というより、ダイイチルビーにとって好成績を残すウマ娘の名前は芝ダート関係なく覚えるのが礼儀だ。
「別にー!?どしたのー!?」
インシルカスラムは急ブレーキで止まってダイイチルビーに振り向いた。
どうやら別に急いでいるわけではなく、これが通常なのだとダイイチルビーは察して頭を下げる。
「……呼び止めてしまい大変失礼いたしました。なんでも――」
「あ、分かった、なんか悩み事でしょ!」
ありません。と言おうとしたところをインシルカスラムに遮られた。
見かけて10秒の動作を見ただけでもインシルカスラムはダイタクヘリオスと同じ部類のウマ娘だと分かる。
「……結構です」
ダイイチルビーはダイタクヘリオスにするように素っ気なく断る。
相談したところでロクな答えなど返ってこないだろうし、他人に相談するようなことでもない。
表面上は気丈にふるまおうと、ダイイチルビーは横を通り過ぎようとする。
しかし、インシルカスラムは突然ダイイチルビーの顎をひっつかんで無理やり自分のほうに向けさせた。
「!」
「--目をそらしといて、"結構です"、なわけあるかよ?」
インシルカスラムはダイイチルビーの顔を覗き込んだ。
そこでダイイチルビーは気づく。
華麗であれ、至上とあれ……と課していた自分自身の目線は。
今、下を向いていた。
「せめてアタシ睨んでなんでもない、って言わないと隠してるのバレバレだぞ?で、何隠してんの教えてよ」
「……強引な方ですね」とダイイチルビーはため息をつきながら、自分の顔を鷲掴みしているインシルカスラムの手を放す。
強引だが、言い換えればそれくらい真剣に向き合ってくれるつもりの、実力あるウマ娘。
もしかすると。
お嬢の顎ひっつかんで「目を見て話せや」って凄めるのはうちのインシーだけでしょう。
Q.アイツは出ないんですか?
A.次出ます(おもらし