ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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育成ストーリーで「そんな重いこと考えずに気楽に行ったら?」って言ったヘリオスは怒られたけどこれなら納得してくれると思って。


第58話

ーーー47ーーー

 

「私はティアラ路線で走っていたことをご存じでしょうか。我が一族の玉条を果たすため、そこで結果を残すことが、己に課せられた使命だと邁進して参りました」

 

「で、納得いく結果じゃなかったんだ」

 

軽くため息をついて、ダイイチルビーは不服そうに小さく頷いた。

 

「この秋より、路線をティアラからスプリントへ転換することを考えております。しかし、それは――」

 

「スプリントかー!じゃあトップスピード目指すってことじゃん!アタシはいいと思う!」

 

話を切られた。

 

ダイイチルビーはこの後、「己が責務を果たしているといえるのでしょうか。それが最たる輝きとなるのでしょうか?」まで続けるつもりだったが。

 

せっかちなインシルカスラムに長々した話をすると、しばしば食い気味に返事を返されることをダイイチルビーはここで初めて思い知った。

 

「……短絡的な結論で決まる話ではありま」

 

「別に考えなくていいでしょ!スプリントで走ることの何が悪いのさ!適性あるんでしょ?」

 

ダイイチルビーの話を振り切ってインシルカスラムは肯定的にまくし立てる。

 

「アタシは芝に適性なかったけど、もしあったらアタシはスプリントだってやるよ!それでスプリンターズステークスとか高松宮記念勝てたら最高じゃん!」

 

真正面からそう言われて、ダイイチルビーは面食らってしまう。

 

インシルカスラムの意見は一言で言えば乱暴だが。

 

――華麗であれ、至上であれ。常に最たる輝きを。

 

というダイイチルビーの一族の玉条をインシルカスラム流の乱暴な言い方に言い換えれば。

 

"全て思い描いた通りの結果を上げるべき"と言うのも……まあ間違いではない。

 

華麗なる一族の玉条は確かにティアラ路線を想定しているのだろうが。

 

だからといって路線変更やスプリントが罪、などという文言は存在しない。

 

自らの輝ける場所を探し求め、たどり着いたスプリンターの世界で結果を残すことができたなら、それは華麗であり、至上であると言えるのではないだろうか。

 

それを目指すことは、果たすべき責務と言える。

 

「--短慮性急な言葉です。ですが……参考にはなります」

 

ダイイチルビーは首を横に振ったが、その口調には、少しだけ感謝が含まれていた。

 

「そう、よかった!で、1つ聞き忘れたんだけど」

 

インシルカスラムは自分でもちょっと突っ走りすぎたなと苦笑いしつつ、ダイイチルビーを指さした。

 

「誰?」

 

ダイイチルビーは心の中で派手にずっこけた。

 

こいつは、名前も知らない相手の今後のレース人生を強引に決めつけようとしていたのか……

 

「……大変申し訳ございません。紹介が遅れました。ダイイチルビーと申します。あなたは存じ上げておりますので自己紹介は結構です」

 

「う、そうだな、アタシを名前で呼んだもんな」

 

そろそろ扱いのわかってきたダイイチルビーは先回りでインシルカスラムの行動を封じた。

 

 

「お嬢ー!!」

 

会話が終了したあたりで、廊下の曲がり角あたりから誰かが叫んだ。

 

ダイイチルビーは明らかに、もう1人面倒な奴が来た。という表情をしてインシルカスラムの後ろに隠れる。

 

「え、どしたの?お嬢ってまさかルビー?」

 

インシルカスラムがそう気づいた瞬間に。

 

「お嬢いたー!!ぐえっ」

 

「あだっ!」

 

青いメッシュの陽気なウマ娘ことダイタクヘリオスが曲がり角をダッシュで曲がってきてダイイチルビーに飛びつこうとした。

 

ちょうどダイイチルビーはインシルカスラムを障害物にした位置に移動済みであり、ダイタクヘリオスは射線上にいたインシルカスラムにダイブする。

 

ダイタクヘリオスとインシルカスラムは抱き着くように廊下に倒れこんだ。

 

「あれ?あ゛ー!ごめん平気―!?」

 

「ひよこがみえる……」

 

「お2人共、少し落ち着かれてはいかがですか」

 

ダイイチルビーにため息をつかれながら、ダイタクヘリオスは起き上がる。

 

「んでさ!お嬢、うちと茶しようよ!」

 

「本日は長話もあって予定が押していますのでお断りさせていただきます」

 

ダイタクヘリオスは立ち上がるや否やダイイチルビーにティータイムの同席を申し込んだが、いつも通りあっさり断られた。

 

だが、その場でスタスタ立ち去っていくいつもとは違い、ダイイチルビーは遅れてようやく立ち上がったインシルカスラムを指した。

 

「代役と言っては何ですが、2人分用意されたのならこちらのインシーさんとはいかがでしょう」

 

「いてて……へ?アタシ?」

 

インシルカスラムは急に自分を指されて困惑している隙に、ダイイチルビーはスタスタ立ち去ってしまった。

 

「あー!やっぱ塩いー!でもちゅきー!」

 

ダイタクヘリオスは立ち去っていくダイイチルビーを見送った後、急遽代役にされたインシルカスラムをじっと見る。

 

「……来る?」

 

「行く!」




「(騒がしい友人が2人に増えた私……)」

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