"時代に残らない"ような場所にいたウマ娘が発現したら?
答えはお分かりですね。
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森内トレーナーには見える。
インシルカスラムの目から、強風にあおられながらも激しく燃え盛る、赤色の炎のようなオーラが出ているのを。
「領域!?まさか、インシーさんは……この場で……!?」
打出トレーナーは信じられない、という表情で眼鏡を直し、インシルカスラムを見る。
そう言われなければ、インシルカスラムはガルディアコダンの大逃げに惑わされ、早すぎるスパートで勝ち目がなくなったように見える。
しかし、領域によっていつも以上の実力を発揮できる状態で、スパートタイミングが適切なのだとしたら。
勝ち目がなくなるのはガルディアコダンのほうだ。
「それ以外になんと説明すればいい?つくづく驚かせてくれるなインシーは!すごすぎる!」
森内トレーナーは思わずガッツポーズ。
挑発に乗せられることがなくなった今、インシルカスラムとガルディアコダンは領域でスパートする逃げと完全に失速した大逃げの構図になる。
「5バ身じゃ足りない……コダン!気合の入れどころです……!」
打出トレーナーの手と、触れていた眼鏡は、小刻みに震えていた。
「最終コーナーにインシルカスラムが到達する、差は縮まっていくぞ、ガルディアコダン間に合うか!」
領域に到達したインシルカスラムのオーラは、ガルディアコダンも感じ取っていた。
1度目の上り坂を終えて下りで加速するインシルカスラムの気配がガルディアコダンに伝わってくる。
この殺気じみた恐ろしさ、首にナイフを当てられる方がよっぽどマシなくらいだ。
「これくらいで……やられて、たまるかよッ!」
ガルディアコダンは残りの力をかき集めてなおもゴールに走り続けるが。
残りの力が残ってたら中盤でとっくに使っている。
あるわけがない。
無慈悲にもインシルカスラムとの差がなくなっていくのを止められない……。
「残り200m、インシルカスラムゴールを見据えている、追い越せるか!残り2バ身!」
実況の言葉通り、インシルカスラムはガルディアコダンの先のゴールだけを見ている。
当たり前だ。ゴールしか見えていないのだから。
それに……ガルディアコダンは。
キレた。
「--ふざけんじゃねえ!!!勝負してんのはオレとだろ!!」
「"オレを見ろインシー!!!"」
目が合ったとたんに喧嘩する関係だからこそ。
インシルカスラムとは似た者同士、その気持ちが誰よりもわかるガルディアコダン。
仮にガルディアコダンが「インシルカスラムなんて眼中にない」と吐き捨てたら、インシルカスラムはブチギレるだろう。
それと同じだ。
存在しないかのように扱っておいて、何がライバルだ!!
その言葉で、インシルカスラムが見えていた景色が元に戻った。
領域が、切れたのだ。
いつも通りのレース。残りは100mだ。
ガルディアコダンは、まだ目の前にいる。
「ああ、見てる!見えてるよコダン!」
インシルカスラムはそう返事をすると歯を食いしばる。
「だからそこをどけー!!」
インシルカスラムは最後の力を振り絞ってガルディアコダンに迫る。
残り50m。
もう手が届くまで来た。
しかし、追い抜かなければ勝ちにならない。
「ガルディアコダン逃げ切るか、インシルカスラム追い抜くか!」
最後まで分からない逃げ勝負。
2人がゴール板を突っ切った。
「これは!追い抜い――」
「世界が自分1人になったような感覚」だと?
バカバカしい。見えていない奴をライバルなどと呼ぶんじゃねえよ。
たかぽんが考えた領域のデメリットの1つです。