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秋川理事長はちょうどトレーナー室に張り出されてあったレース一覧表を指さしながら説明を始めた。
「まず、ウマ娘のレースのグレ―ドは世界中同じものが使われている」
日本、イギリス、アメリカ、フランス……どこでもG1というグレードの名前とその重みは通じる。
「しかし、同じG1であってもその差には否定できないほど大きな格の差がある……それは君たちのほうが身に染みているかもしれんな」
秋川理事長は少し申し訳なさそうに続けた。
ここでも、芝とダートの差が出てくる話だ。
この時期、菊花賞をメジロマックイーン、天皇賞(秋)をヤエノムテキが勝利したことが輝かしく新聞のトップ記事として掲載された中で。
インシルカスラムのマイルチャンピオンシップ南部杯制覇のニュースはかなり後ろの方にちょこんと載っている。
たしかに、メディアやファンに多少は認知されるようになってきたとはいえど。
「今年の菊はマックだ!」「あのオグリを下してヤエノが天皇賞の秋を獲ったぞ!」と騒がれる中。
「インシー?ああ、そういえばダートで勝ったやつそんな名前だったね」くらいの認識でしかないのだ。
同じG1勝者なのにも関わらず。
「別にアタシたちは気にしてないよ!」
「それを承知で俺たちはやってるからな」
「君たちには苦労を掛けるな……」
秋川理事長は気を使われたことで余計申し訳ない気持ちになるが。
「それは芝とダートだけの話ではない。同じ芝同士や、海外でもその差はある」
例えば、ホープフルステークスと有馬記念は同じ中山レース場で開催されるが、その観客数は2倍以上違う。
また、フランスの凱旋門賞にシリウスシンボリが挑戦したことはまだ記憶に新しく、日本で活躍することを捨てて海外に挑戦するウマ娘は少なくない。
「だから、この雑誌はウマ娘をもっと細かく数字を付けてランキング付けしている。同じG1の覇者でも世界一は誰か、ってのを1人出すためにな」
森内トレーナーはワールドベストウマ娘ランキングの雑誌を机に投げ捨てた。
インシルカスラムはそこで森内トレーナーがワールドベストウマ娘ランキングについて否定的な態度をとっていた理由に気づく。
「あ、分かった。アタシの勝ったG1レースを、一番下にしてるんだろ、こいつは」
「察しがいいな。だから気に入らん」
「へへ、やっぱトレーナーってば、アタシのことわかってる~」
と嬉しそうに言いつつも、インシルカスラムの耳はだんだん後ろに絞られていった。
自分の勝ったG1を格下扱いされて、気分がいいはずはない。
「……開いてよ、トレーナー。気に入らないけど、アタシが世界からどう思われてるかってのは知りたい」
担当ウマ娘に促され、ようやく森内トレーナーはページを開く。
どうやらアメリカで発行された雑誌らしく、全部英語だが、森内トレーナーに英語の読み書きなど朝飯前だ。
雑誌には最新のランキングの前に歴代のランキングが載っていた。
そこには見たことのある名前が。
Rating:134 Surface:Turf Name:Symboli Rudolf(JPN)。
"レーティング:134 バ場:芝 名前:シンボリルドルフ(日本)。"
紛れもなく今の会長だ。7冠を達成したときの時期のランキングだろう。
「レーティング134?」
インシルカスラムは見慣れない数字を指さす。
恐らく、高ければ高いほど強いということだろう。
「何をすればどれくらい上下するかは俺にも予想がつかんが……」
「G3で戦えるなら100以上、G2なら110。そしてG1を勝てるほどのウマ娘なら115くらいを付けられると思っていい」
森内トレーナーは、もちろん日本の芝の、という言葉はあえて口をつぐんだ。
つまり、134というレーティングは、G1の1勝、2勝くらいではつけてもらえない。
時代を作り、その偉業が歴史に残るほどの大活躍をしたウマ娘でようやくつけられる数字だ。
森内トレーナーは今年、今月に発表されたレーティングのページまでめくっていくと。
※たかぽんがやっていたウイニングポスト9 2022(投稿時点で最新だった10 2025ではありません!)ではカイチョーは134でした。
十分バケモンです。