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まず初めに最も高いレーティングをつけられたウマ娘の名前が目に入った。
Rating:138 Surface:Turf/Dirt Name:Oguri Cap(JPN)
「オグリだ!138!?」
「うむ、有馬記念はもちろんのこと、ジャパンカップでオグリキャップの名は世界にも知れ渡っている」
秋川理事長は扇子を開く。書かれた文字は"妥当"だった。
森内トレーナーは次にインシルカスラムの名を探す。
自分の担当びいきなのかもしれないが、これまで6戦6勝、無敗のウマ娘。
載っててほしいと願いながらなぞっていくと。
「……あったぞインシー!」
Rating:126 Surface:Dirt Name:Insilca Slam(JPN)
確かにそこにはインシルカスラムの名前があった。
「126かー!」
インシルカスラムはもう少しあってほしかったな、という口調ながらもまんざらではなさそうだ。
G1クラスと呼ばれる115から11も上の数値だ。
G1の勝利数は3勝ながら、安定した無敗ぶりが評価されていると取れる。
さらに下になぞっていくと。
Rating:115 Surface:Dirt Name:Tenka Buster(JPN)
今年の2月にフェブラリーステークスを勝利したテンカバスター。
Rating:114 Surface:Dirt Name:Galdia Kodan(JPN)
マイルチャンピオンシップでインシルカスラムと激闘を繰り広げたガルディアコダン。
Rating:112 Surface:Dirt Name:Fullsail Salute(JPN)
同期でG1を2戦戦い、今月はJBCレディスクラシックを手にしたフルセイルサルートの名前もあった。
が、3人のライバルより頭1つ飛びぬけたレーティングをつけられたインシルカスラムは破格の待遇と言っていいだろう。
実際、これを超える日本のダートウマ娘はいない。
「じゃあアタシがダート日本一か!」
5分くらい前まで気に入らない雑誌だと怒っていた感情はどこへやら、鼻を高くして慢心するインシルカスラム。
森内トレーナーは続けて指をなぞり、気になった2人の名前で指を止める。
Rating:135 Surface:Dirt Name:Unveil(USA)
Rating:131 Surface:Dirt Name:Highest Fellow(USA)
「これは……アンベール(Unveil)と、ハイエストフェロー(Highest Fellow)、か?」
(USA)、つまりアメリカ出身のウマ娘して登録されている2人は全戦全勝しているインシルカスラムよりもレーティングが高い。
ダート専門なのにもかかわらずレーティングはシンボリルドルフと同等だ。
つまり、この2人はアメリカのウマ娘史に残る伝説級のウマ娘ということになる。
秋川理事長はアンベール、ハイエストフェローという名を聞いて、また扇子を広げる。
文字は"本題"だった。
「その2人が……12月の"チャンピオンズカップ"に出走を表明したのだ!」
チャンピオンズカップは東京大賞典の前の12月初めに行われる中京1800mのダートG1だ。
チャンピオンズカップは海外からのウマ娘の挑戦が認められている。
「しかも……インシー、君と勝負したいとのご指名付きだ!」
「アタシと!?」
知らないアメリカウマ娘2人から急に名指しされ、インシルカスラムは驚きながら自分を指さす。
インシルカスラムは少し考えて、森内トレーナーに目配せする。
森内トレーナーは向けられた視線に頷いて切り出した。
「アメリカからの強豪と戦える機会を頂けたのはありがたい……しかし理事長、インシーは連戦に耐えられる身体ではない」
もちろん、森内トレーナーはチャンピオンズカップ、東京大賞典の両方に出走する案も考えていた。
だが、インシルカスラムは夏に通常のトレーニングをしただけで熱中症を起こすほど病弱なことを忘れたわけではない。
名指しされたからと言って、ケガのリスクを背負ってまで引き受ける道理はない。
そう言われた秋川理事長はすっと立ち上がった。
諦めたわけではない。
「……だが、どうしても、インシー。君には出てほしい理由があるんだ」
ついにブラス・トレーサーもアメリカからライバルが参戦です!