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「ここ本当に中京……?」
インシルカスラムは控室で、道中にあった光景を振り返って苦笑いをしていた。
場所は中京なのに、外国みたいな雰囲気なのだから無理もない。
「海外からのウマ娘が多数出走するジャパンカップならこうなることはあるが……」
チャンピオンズカップでこうなることは初めての出来事だ。
たった2人のウマ娘がここまでの影響力を誇るとは、アメリカトップクラスのダートウマ娘の実力と人気は伊達ではないらしい。
「アンベールは差し。ハイエストフェローは逃げ・先行のどちらも適性がある。どちらを取ってくるかは気分次第だろう」
「わかった。それだけでいい?」
何か対策を取らなければという衝動に駆られそうになるが。
「……それだけでいい。ここにきて奇策に頼る必要はない」
「そのほうが楽でいいや!待ってろよ!」
森内トレーナーはインシルカスラムの実力を信じることにした。
インシルカスラムは赤土色の手袋をはめた手を叩き、地下バ道を歩いていく。
地上に出ると、2人の見慣れないウマ娘と目線が合った。
1人は鹿毛のセミロング。水色のパーカー付きセーラー服に黄色のセーラータイ。
キャンディ型のシンプルな髪飾りが右耳についている。
左肩には星条旗のワッペンが縫われており、まるで軍人の部隊章のようだ。
クールそうな第一印象で、インシルカスラムを見つめる黄色の目には静かな殺気があり、まるでヒットマンかスナイパーを彷彿とさせる。
もう1人は鹿毛のショートカーリーヘア。
赤色のコートシャツに黄色いルーズネクタイ。そして赤いテンガロンハットを着たカジュアルな西部劇風のウマ娘だった。
こちらは珍しく髪飾りをつけていない。
こちらをみてニヤリと笑っている。
「……ゲストは名札付けろよな!どっちがアンベールでどっちがハイエストフェロー?」
伝わったのか伝わってないのか、まずはウエスタンなウマ娘がズカズカとインシルカスラムに大股で近づいてくる。
「Wait, Fellow.(待って、フェロー)」
しかし、話しかける寸前にクールそうなウマ娘が止める。
どうやら、ウエスタンな雰囲気のウマ娘がハイエストフェローで、クールそうな雰囲気のウマ娘がアンベールらしい。
「I am Unveil. And she is Highest Fellow.(私がアンベール。で、こっちがハイエストフェロー。)」
アンベールはそれぞれゆっくりとわかりやすい英語で自己紹介をする。
そして、インシルカスラムを指さすと。
「アナタ、Incy?」
たどたどしい日本語で聞いてきた。
インシルカスラムは大きくうなずいて肯定する。
すると、ハイエストフェローも右手を差し出して握手を求めた。
「Call me "Fellow"!(フェローって呼んでくれよな!)」
インシルカスラムはハイエストフェローの手をしっかりと握って握手した。
すると。
ハイエストフェローはインシルカスラムの手をグイっと引っ張って、顔を至近距離まで近づける。
「--Is this a Champions Cup? Don't kidding.(チャンピオンズカップだと?笑わせんな。)」
そして、英語がわからなくても見下していることがわかる嘲笑を付け加えた。
「You can't beat us you side dishes.(お前じゃ私たちには勝てねえよ、サイドメニューごときが。)」
インシルカスラムをウマ娘化したときにやってみたかったことその2。
「海外勢にナメられる」はインシルカスラムをウマ娘化したときからずっと何かしらの形で表現したかったです。
今実現しました。