「「I absolutely cannot lose!」」
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ハイエストフェローからは、黄色と赤の混ざった強大なオーラが出ている。
そして、インシルカスラムが取っていた3バ身のリードをたやすく破壊。
あっという間にだんだんと差を詰めていく。
「Highest Fellow is coming up!(ハイエストフェロー上がってきた!)」
英語実況のテンションが上がる。
同じく領域を発動していたインシルカスラムは既に自分だけの景色に入り込んだ。
ハイエストフェローが予想以上に差を詰めてきたことには気づけない。
領域は120%の力を出すものではない、あくまで100%の力を継続的に出すもの。
このままでは脚質の差でも、そしておそらく純粋な実力の差でも、インシルカスラムはハイエストフェローに追い抜かれるだろう。
そしてそれはインシルカスラム対ハイエストフェローだけの話でもなかった。
「No, I must keep aiming for Incy......(ダメ、インシーを狙い続けないと……!)」
アンベールは経験的に領域を出すことはできるのだろう。
しかし、先頭を狙い続けてタイミングを計るのが彼女の走り方だ。
自分だけの世界に入り込み、先頭の位置が分からなくなる領域との相性は悪い。
アンベールは領域を捨てるが、着実にインシルカスラムとの距離を詰めていく。
「400 meters left! Insilca Slam still keep in the top, but Highest Fellow and Unveil are right behind!
(残り400m!インシルカスラム未だ先頭、しかしすぐ後ろにハイエストフェローとアンベール!)」
チャンピオンズカップはラストスパートの距離に入り、喧騒がより大きくなる。
現在の順位は1位インシルカスラム、2位ハイエストフェロー。
アンベールは残りのウマ娘を千切り捨てて3位に上がったところだ。
「Keep it up! JUST KEEP IT UUUUUUP!!(そのまま行け!行けえええええ!!)」
「More! More push forward!!(もっとだ!もっと前に出ろ!!)」
観客席からは怒号にしか聞こえない応援がアンベールとハイエストフェローに飛ぶ。
「くそっ……!インシー!諦めるな逃げ切れ!」
「日本の意地見せろー!」
日本人のファンもまた、アメリカファンの怒号にかき消されるまいと声を張り上げてインシルカスラムを応援する。
そして、森内トレーナーも、日本人のファンの中の1人となってインシルカスラムに声をかけ続けていた。
「そのまま逃げろインシー!君なら勝てる!やれるんだ!」
自分を応援する声が聞こえる。
インシルカスラムの景色が、だんだんと元に戻ってきた。
どうやら、集中力が切れてきたらしい。
まず目に飛び込んできたのは、2の数字が書かれたハロン棒。
もうすぐ残り200m。
そしてもう1つ。
ハイエストフェローの横顔。
「並ばれた……っ!!」
領域そのものが、通常の走りに比べてスタミナをより消耗する。
スタミナも、集中力も切らしたインシルカスラムに残っているものはもうない。
残り200mあれば、ハイエストフェローにとって抜き去るには十分すぎる。
万事休すか。
何か秘策はないのか。
でも奥の手なんて、逃げウマ娘ならもう使ってる……