ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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もう何一つ使えるものは残っていない。
だからってこのまま逆転されるのを眺めてろと?


第73話

ーーー61ーーー

 

インシルカスラムにとって、気に入らないこと、ムカつくこと、許せないことはたくさんある。

 

その中でもかなり上位に位置するのが。

 

最終直線で他の奴が自らの視界に入ってくることだ。

 

インシルカスラムは青筋を立てながらも、頭の中で使えそうな何かを必死で探し出す。

 

その間にもハイエストフェローがどんどん前に出てきて視界を支配してくる。

 

ハイエストフェローもまた、領域を終了させ、自分とインシルカスラムの位置を確認。

 

「It's over Incy!(これで終わりだ、インシー!)」

 

ハイエストフェローは、勝利を確信した。

 

 

その瞬間。

 

「Back off!!(引っ込んでろ!!)」

 

インシルカスラムは攻めの姿勢を取る。

 

使える何かを見つけたようだ。

 

まだ終わってない。

 

「Wh, what the!?(なんだと!?)」

 

逃げウマ娘のどこにまだ自分たちを引き離す力があるのか、とハイエストフェローは驚愕の表情だ。

 

そして、ハイエストフェロー以上の勢いで迫るアンベールも、インシルカスラムの気迫を感じ取った。

 

アンベールにとっては初めて見る光景にも関わらず、不思議とピンとくる。

 

「Is this......"Incy Lead the Way"!?(これが……"インシーが道を開く"ってこと!?)」

 

インシルカスラムは自身の奥の手を切って、最後の力を振り絞って前に出る。

 

先陣を切るのは、インシルカスラムじゃなければならない。

 

 

で。

 

そのIncy Lead the Wayで、どれだけ前に出られた?

 

1m?50cm?10cm?

 

いや……0だった。

 

実は、インシルカスラムが前に出たと思っていたそれは、ただ姿勢がちょっと前に傾いただけ。

 

脚は、身体は、全く進んでいなかった。

 

「なんで……なんでなんでなんで!?」

 

奥の手を使ったのにも関わらず、全く前に出られなかったインシルカスラムは、心の中で激しく取り乱す。

 

「動けよ……!あと5秒、いやあと1秒走れたら!アタシは勝てるのに!!」

 

「動けよアタシの脚!!動けって言ったら動くんだよ!!!」

 

叫んでも、インシルカスラムの身体は、もう思うようには動いてくれなかった。

 

もともと、領域を使っていたことでいつも以上に消耗していたスタミナ。

 

Incy Lead the Way、とは一気に前に出て突き放す代わりに、残っているスタミナを割に合わないコストパフォーマンスで急激に削る。

 

それをスタミナがないのに使ったところで、思うように前には出ない。

 

今度こそ、本当の本当に、あらゆる手を使いつくしてしまった。

 

時間は走馬灯のようにゆっくりと流れているのに、身体が動かない。

 

インシルカスラムは、右から来たハイエストフェローに追い抜かれ。

 

左から来たアンベールにも、成す術なく、差し切られる様を眺めることしかできない。

 

「インシルカスラム粘り切れない、ここまでか!変わって先頭――」

 

「The top has changed! Highest Fellow! Highest Fellow!!(先頭変わった!ハイエストフェロー、ハイエストフェローだ!!)」

 

その瞬間、英語の実況者の絶叫が日本語の実況をかき消した。

 

「A length away from Unveil! Highest Fellow ruled the raaaaaaaace!!(アンベールから1バ身離して!ハイエストフェローが制したーっ!!)」




実際のウイニングポストであったインシルカスラムも最終直線まで1位だったのに最後まで耐えられませんでした。
何回セーブデータ繰り返しても一緒でした。
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