ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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ブラス・トレーサーの物語は無双もチートもありはしない。


第74話

ーーー62ーーー

 

ついに、インシルカスラムの無敗伝説は崩れた。

 

最後の力も使い切ったインシルカスラムを容易く抜き去り。

 

1着でゴールしたのはハイエストフェローだった。

 

「Incredible! What a perfect upset! Fellow has done it!!(信じられねえ!完璧な逆転だ!フェローがやりやがったぞ!)」

 

ハイテンションを抑えきれない英語実況にアメリカ人ファンが多くいる観客席から大歓声が沸き上がる。

 

それに紛れて、日本のファンと、おそらく実況もは悔しそうに拳を握ったのだろう。

 

「2着アンベール!インシルカスラム、惜しくも3着に敗れました!」

 

ハイエストフェローは走り切った勢いのまま両膝で中京レース場のダートをスライディングし、観客席に向かって拳を突き上げる。

 

「Yes!! I got it!!(っしゃあ!獲ってやったぜ!!) 」

 

そして、観客席に向けた拳から人差し指だけを伸ばす。

 

「Everyone! Who became the champion!?(お前ら!チャンピオンってのは誰のことだ!?)」

 

それにアメリカのファンは立ち上がり、呼応する。

 

「「Fellow! Our Highest Fellow!!(フェロー! 俺たちのハイエストフェロー!!)」」

 

 

「くっそ……調子乗ってるアイツ……」

 

もし自分が1位を獲っていたら大体同じアピールを考えていたのは棚に上げ、インシルカスラムは悔しそうにハイエストフェローを睨みつける。

 

「She said it was an easy game before she came here.....(アイツ、ここに来る前は楽勝とか言ってたのに……)」

 

アンベールもまた呆れた表情でハイエストフェローを見つめる。

 

もしハイエストフェローが今もこんなチャチな日本のG1なんて楽勝だ、なんて思っていたら。

 

「Too weak!(弱すぎるぜ!)」のような捨て台詞を吐いてさっさと中京レース場を後にしていただろう。

 

日本のチャンピオンズカップ、ひいてはインシルカスラムを強敵として認識を改めていなければ、ハイエストフェローは叫び声を上げて勝利を喜んだりしない。

 

アンベールは頬を軽く叩いて、今回の結果を受け入れると、インシルカスラムに向けて掌を向ける。

 

「Good game Incy(GG、インシー)」

 

インシルカスラムはその手を、ダンクシュートを決めるように荒っぽく叩き、乱暴なハイタッチをする。

 

「Good game Unveil!(GG、アンベール!)うぐぇ!?」

 

ハイタッチを終えるや否やいきなり、インシルカスラムは背中を豪快にぶっ叩かれる。

 

「Sorry for underestimating, Incy! The title is mine, but you're pretty good! (甘く見て悪かったな、インシー!勝ったのは私だが、お前もなかなかやるな!)」

 

後ろではハイエストフェローが笑いながらアンベールと同じように掌をインシルカスラムに向けていた。

 

2,3歩よろけたインシーは、アンベールにしたように、ハイエストフェローにも乱暴にハイタッチを返した。

 

「ったく……Good game Fellow!(GG、フェロー!)」




2人にとってインシーはザコではなかった。十分強敵だった。
実際のレースを見て今でもそう信じています。
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