ついにここでブラス・トレーサーのオールスター登場です。
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チャンピオンズカップから東京大賞典までは2週間くらいしか空いていない。
東京大賞典は、あっという間にやってきた。
大井レース場のパドックを歩くウマ娘は全員で11人。
その中で、主に4つの色がよく目立っている。
実況と解説は有力な4色のウマ娘を順番に紹介していく。
「1枠2番、ガルディアコダン、3番人気。これまでの戦績はなんと35戦19勝、今年の帝王賞覇者でもあります」
「中距離を得意としているコダンにとって、20勝目の大台に乗る上で、東京大賞典以上に相応しい舞台はないでしょう。」
緑のガルディアコダン。
「3枠5番テンカバスター、20戦14勝、2番人気です。今年のフェブラリーステークス、そしてJBCクラシックも制したまさにダートの天下人」
「私が思うに、経験も含めた総合実力ではテンカバスターが最も有利なのではないでしょうか」
白のテンカバスター。
「続いて3枠6番、フルセイルサルート。4番人気です。7戦5勝の2着が2回、最近ではJBCレディスクラシックを獲得したダート期待の新星」
「この戦績、まさに笠松時代のオグリキャップを彷彿とさせます。期待せずにはいられません」
青のフルセイルサルート。
そして。
「さあ1番人気、5枠9番のインシルカスラム、ここまで7戦6勝!クラシックダートG1を総ナメし、チャンピオンズカップではアメリカのウマ娘にも迫りました!」
「シニア級のウマ娘を差し置いて1番人気になるのも納得の強さです」
赤のインシルカスラム。
パドック紹介が終了した後、特に約束したわけでもないのに。
4人は自然と集まってひし形に並び、残り3人に向けて火花を散らしていた。
「このオレに倒されに来てくれて嬉しいぜ、テンカ、サルート、それにインシー!」
ガルディアコダンは自分を指さし、相変わらず挑発的な態度を残り3人に向ける。
「やっぱこいつムカつく……!ほら、約束通り来てやったぞコダン!もう1回アタシの後ろで泣いてろよ!」
同じ逃げ同士のインシルカスラムが見事な反射神経で噛みつきにかかる。
先行ウマ娘のフルセイルサルートはルーティンのパイレーツハットを直すしぐさをしながら冷静に3人を見つめる。
「相変わらずケンカの安売りが得意ねインシー、コダン。けど、私も噛ませ犬になりに来たわけじゃないの」
「2人で勝手に共倒れしててちょうだい。その間に東京大賞典のタイトル、もらっていくわ」
フルセイルサルートの話し方には冷静さがあったが、トラッシュトークの切れ味はインシルカスラムやガルディアコダンに負けず劣らず。
それを聞いたガルディアコダンの額からはブチッ、と言う擬音が聞こえてきそうだ。
「レディスクラシック取って調子に乗ってるようだなサルート!ちょうどいいや、そのプライドへし折ってやるぜ!」
「ご自由にどうぞ、コダン」
ガルディアコダンがフルセイルサルートに反応した一方で、インシルカスラムはテンカバスターに振り向く。
お互いを貶しあってキレさせあう口喧嘩に一切入ってこないテンカバスターを逆に心配したのだ。
「なあテンカ、アンタも何か言ってよ!入ってこないと逆に不安じゃん!」
テンカバスターは両手の手のひらを見せて「いや私に言われても…」という風に後ずさる。
「私、そういうのあんまり得意じゃなくて……」
……と、自信なさそうに言ってはいるが。
自信がないにしては、テンカバスターの目はしっかりと3人に向いている。
「……ごめんなさいテンカ。構うの最後になったわ」
フルセイルサルートにとっては本当に話すのが最後になってごめんなさい、というつもりで言ったのだが。
今までの雰囲気から、その言葉の意味は「あなたなんか眼中にないの。構う価値すらないわ」としか聞こえないだろう。
「……いいよ。レースの後に、最初に構ってもらえたら」
その言葉の意味は「実力であなたたちをねじ伏せ、振り向かせてやる」だった。
ダートもといブラス・トレーサーの世界では挨拶として「かかってこいやこの野郎!」とタンカを飛ばすのがマナーとなっています。
野郎はいないけど。