ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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実は当時プレイしていた時、インシルカスラムの健康は??のまま判明していませんでした。
引退時に全てのステータスが公開されるのですが、まさかG+だったとは。

比較対象としてケイエスミラクル、メジロアルダンがEです。
インシルカスラムはそれ以下の健康度だったわけです。


第85話

ーーー73ーーー

 

手術中のランプが消えた。

 

外科医が扉を開けて出てくる。

 

手術中、ずっと涙を流して泣き疲れ、涙も枯れ果て、座り込んだまま動かなかった森内トレーナーだったが。

 

この瞬間だけはばっと立ち上がり、外科医に詰め寄った。

 

「先生!インシーは……!」

 

外科医は。

 

首を縦に振った。

 

「処置はできました。義足や一生車椅子、なんて事態にはならないはずです」

 

その言葉に森内トレーナーは安堵で膝から崩れ落ちた。

 

「よかった……レースには」

 

「復帰はできるでしょう。もちろん、入院はしてもらいますが」

 

さすがにすぐには復帰できないが、ウマ娘にとっての死は回避できた。

 

「今は麻酔が効いています。起きたら詳しい説明をしましょう」

 

 

数時間後。

 

病院のベッドに移されたインシルカスラムは目を覚ました。

 

「インシー!俺がわかるか?」

 

「ん……?」

 

付き添っていた森内トレーナーはインシルカスラムを覗き込んで自分を指さす。

 

「あれ、ここは!?東京大賞典は!?」

 

「あだっ」

 

インシルカスラムは急に跳ねるように起き上がり、のぞき込んでいた森内トレーナーに頭突きをかます。

 

「あ、ごめん。ここ、病院だよね……?」

 

「……ああ」

 

森内トレーナーはそれを聞いて力なく頷いた。

 

インシルカスラムもそれを見て何が起きたかを理解した。

 

あんな痛み、忘れられるはずもない。

 

「そっか……悪夢とかだったら、よかったのに」

 

インシルカスラムは軽くため息をついた。

 

すると、突然。

 

森内トレーナーはインシルカスラムに向けて土下座をした。

 

らしくない姿にインシルカスラムはぎょっとする。

 

「ちょっと、何してんのトレーナー!?やめなよこんなとこで!」

 

「すまなかったインシー!こんな土下座で許されるわけがないのは分かってる!」

 

だが、担当に影響されて頑固になったのか、森内トレーナーは土下座をやめない。

 

「俺を契約解除しようと殴られようと覚悟はできている!俺は、それ以上のことを――」

 

「だからやめなってば!!」

 

インシルカスラムは、ベッドのフレームに拳を叩きつけて声を荒げた。

 

ウマ娘に声を荒げることは多々あれど、自分のトレーナーに声を荒げたのはこれが初めてかもしれない。

 

「あのさあ!いつアタシが『これ以上一緒にいられない』とか『殴ってやりたい』とか言ったの?」

 

「し、しかし俺は……」

 

「アタシがいいったらいいの!ほら、まず顔上げて!」

 

当事者本人にそう言われては、森内トレーナーに拒否権はない。

 

ゆっくりと森内トレーナーは顔を上げてインシルカスラムを見る。

 

その顔は多少膨れっ面ではあったが、憎悪や恨みと言った感情は読み取れなかった。

 

インシルカスラムは大きくため息をついた後、言葉を続ける。

 

「アンタがトレーナーじゃなくなったらアタシどうすればいいのさ、嫌だからな、今更他のトレーナーとか!」

 

改めて口でもインシルカスラムは、森内トレーナーに憎悪や恨みもなければ、契約解除する気も八つ当たりする気もないことを明言した。

 

しかし、じゃあいいか、で終わるほど事態は軽くない。

 

この怪我は、未然に防げたこと。

 

自らの失態で担当ウマ娘を負傷させ、最低でも数カ月を棒に振らせてしまったことは明らかだ。

 

「しかし、俺は取り返しのつかないことをしてしまった。本当に済まない……」

 

森内トレーナーは何度も何度もインシルカスラムに謝罪を繰り返す。

 

しかし、インシルカスラムにとっては、別に怒っていないのに繰り返し何度も何度も謝られたところでしつこいだけだ。

 

「ああもう!今から謝るの禁止!分かった!?」

 

指さされて言われてしまったことで森内トレーナーは何も言えなくなる。

 

 

「外まで聞こえてますよ、病院ではお静かに願います。目が覚めたようですね」

 

その時、コツコツと靴音を鳴らして、インシルカスラムの手術を担当した医者が入ってきた。

 

その手にはレントゲン写真や診断結果を挟んだであろうバインダーがあった。

 

「トレーナーの方もご一緒ならちょうどいい。インシーさんの症状について、ご説明いたします」




命は助かった。
…で?これからどうすればいい?
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