パーティーはスタッカート家の別荘で開かれた。本国でも影響力の強いスレイター家と姻戚関係にあるスタッカート家のパーティーともなれば、規模を問わずつながりを持ちたい貴族がやってくる。ただし……
「ご息女のご栄達、おめでとうございます。」
「……積年の非礼、この場を借りてお詫び申し上げる。」
パーティーの主役が今まで取るに足らない相手だと見ていたイレヴンのハーフというのが酷いマイナスになっていた。ただでさえ、貴族達の評判が低迷しているスタッカート家…片や本国とエリア11で影響力を持つ財閥ながら後継者がイレヴンのハーフというスレイター家。
前者は関わり合いになるのを避けたい貴族が出席せず、後者の場合は流石に今までが今までだったために、今更ハーフごときにへりくだれないという貴族のプライド、或いは態度を180度変えたことへの外聞を気にして出られない貴族、または母親はともかく娘が自分達を信用しないだろうと考えて距離を取る貴族達ばかりだった。
そのため、相手との距離を測りかねていた。
「まさか、イレヴンの娘がここまで出世するとは。」
「色目を使ったに違いありませんわ…」
「いや、エリア11でも地味ながら着実に実績を示し、先日の事件でも殿下の危機を救った。」
「……それら全てを認めるにしても、今までが今までだ。殿下のお耳にも入っていることだろう。」
結局、スレイター家の母娘への謝意を示そうにもプライドが邪魔をする、或いは出席はしたものの今更遅いと切って捨てられる打算があった。まして、娘の方に至ってはイレヴンからも迫害されたという噂もある。『イレヴンとグルになって迫害した』、等と幼稚ながらハーフ特有の邪推をされかねないし、されるようなことをした自覚も場数を踏んだ貴族にはあった。
まして、ライルはナンバーズに寛容なことで有名。先日の事件でも各方面を根強く説得して残留した名誉ブリタニア人達への寛大な処置を求めた。おまけに、皇帝の実力主義や不平等の実践がある意味で最も忠実で、皇族の騎士になった途端に手の平を返す貴族など誰が信用するのだ?
そもそも、純血のブリタニア貴族、或いは同じく純血のナンバーズと言っても和平派の軍、政府の重鎮や協力企業の重役の相手に慣れていた彼らにとって若いハーフの相手は初の試みに等しかった。本国でブリタニア人として普通に暮らし、エリア11成立後もブリタニア人として受け入れられたのならば結果は自ずと変わっていた。
彼らは、自分達で今後のために有益な貴族の関心を得る機会を捨ててしまい、これ以上の不興を買わないように最低限の謝罪をするのが精いっぱいだった。
その主役のレイも礼装で出席しており、軍の名うての騎士とも会っていた。
「運よく皇族に気に入られたようだが、どのような手を使ったのかな?」
「…さあ、ハーフという些細な関心では?」
まさか、本当にそんな些細な関心とは普通誰も思わない。
「ふん、ナンバーズ系にしてはかなりのものだからな。色目でも使ったのかな?父親のように…」
父を侮辱され、レイは今この場でこの騎士の首をはねたかった。しかし、それを必死にこらえる。
「子供としての意見を述べれば、父と母はそのような関係ではなかったと思いますよ?家の財産や血統で勝った気になる高貴なお方には到底理解できないことでしょう。」
口で可能な限りの侮蔑で反撃した。
「ふん、ならばせいぜい実戦で足をすくわれないことだな。」
が、この男がその実戦経験が少ない家柄だけのお飾りだけなのをレイは知っていた。似たような揶揄が付きまとう航空戦闘対応のKMF開発を担う軍需産業シュタイナー・コンツェルンの御曹司には会ったことはないが、彼は現在の『ナイトオブスリー』搭乗機として開発されている最新鋭機トリスタン…そのプロトタイプに当たるブラッドフォードのテストパイロットだったという。
少なくとも、軍需産業のテストパイロットという役職に就いて主君筋の貴族の覚えも良く、エリア11の純血はナンバー2の妹と婚約している彼の方が貴族としてはこの男より格上だろう。
そういえば、『ナイトオブスリー』ジノ・ヴァインベルグはここにいないのだろうか?あるいは同郷出身の枢木スザク……
「流石に虫が良すぎる、か。」
そこへ、機械の音がした。携帯のカメラ音だ。『ラウンズ』の制服を着用した小柄な少女……
「『ナイトオブシックス』アーニャ・アールストレイム卿で。非礼をお詫び申し上げます。」
グラスを持ち換えて敬礼するが…
「別に…記録しただけ。」
「は、はあ…」
「ああ、いたいた。あんたが噂の騎士だね。」
またもや『ラウンズ』。年齢はコーネリアと同じくらい、か?
「『ナイトオブナイン』ノネット・エニアグラム……あんたの主君とは、あの子が5歳ぐらいの頃からの付き合いなんだ。」
『ラウンズ』の一人と…
「そ、そうですか。エニアグラム卿は殿下と、どのような経緯で?」
「私はコーネリアと同じ士官学校に通った先輩後輩の間柄でね。丁度、コーネリアの離宮にあの子が遊びに来た時に知り合ったんだ。」
皇女を呼び捨てにするというのはどうかと思うが……考えてみればセヴィーナはライルと同じ軍学校でしかも同期生、更には叙任前に殺されたジュリア・ボネットの事件でライルを憎んでいたという。こちらはそうではないようだ。
「その時に、泣いていたあの子を軽く叩いてあやして以来…あの子は私にべったり。私とコーネリアの後を追うように士官学校に入ったのさ。」
「意外なエピソードですね……」
ライルの幼少時代…少し、興味をそそられた。が、先刻までの気さくな表情から一気に引き締まった。
「あの子が後任を選んだということは、少しばかり踏ん切りがついたって証拠。あまり早く死ぬんじゃないよ?これは命令ではなく、先輩としてコーネリアの弟を案じる私の頼みだ。」
「難儀なお願いですね……安請け合いはできませんが……善処はします。」
が、ノネットはため息をついた。
「あんた、自分の価値を低く見過ぎだよ?今じゃあんたは皇族の騎士っていう軍の花形。しかも、侯爵家の跡取りでそれだけいい女だから、ハーフのマイナスを我慢して結婚したがる男も出てくる。下手に危害を加えれば、皇族と親戚を敵に回すし、……今この状況下で内戦なんてやっても特はないから、火種を増やしたくない奴も多いんだ。」
言われてみれば、確かにそうだ。名誉ブリタニア人達の処刑をしなかったのも、各エリアの完全な暴走を防ぐため……
「まして、あんたはハーフという特殊なケース。主君共々、消したところで余計な火事が自分に降りかかるのを避けたいってこと。」
「……そういう判断ができる貴族が多いのを祈ります。でも、それで私が殺されても問題ないのでは?」
「あの子の場合は違うね……文句があるならあんたに剣でもKMFでも模擬戦で勝って見せろ。そうすれば親衛隊に入れてやるって主義なんだ。敵ならともかく、一応友軍相手にそんなことしても得はない。」
なるほど……それにしても、主君となる人のことを自分は余りに理解していなかった。
「私、少し自信を無くしそうです…」
「別に、私はあの子が卒業した後も色々と世話焼いてやったからね。まあ、世話役も交代して久しいから…ちょっと、熱が入っただけだ。それじゃあ、頑張りなよ。」
それを告げ、ノネットはアーニャと共に去っていった。どうやら、向こうなりにレイの叙任は歓迎しているようだ。そして……
考えてみれば……皇帝直属騎士の『ラウンズ』の覚えがめでたいともなれば慎重にならざるを得ないし、半分は枢木スザクの同国人。しかも同郷出身。『虐殺皇女』の騎士というマイナスがあるとはいえ、最悪の場合は『ラウンズ』の一人とその後見人であるロイド・アスプルンド、更に個人的な交流がある宰相にまで火の粉が飛んでしまう。
確かに、これは火事の延焼は避けたいわね。もしかして、あの人………
それとなく、レイを持ち上げることでレイの身の安全性を高めて間接的にライルを助けた?
もし、そうなら……ライル様が慕うのも分かるわ。私の時も、あの人の一割でもそういう配慮ができる人がいてくれたのなら。
ライルは母と共に貴族に囲まれていた。
「先日の反乱事件、殿下の心境を測り損ねた不徳を悔いるばかりにございます。」
「いえ…最大の不徳は、彼らの根元にあった我が国への怒りや不信を測れなかった私にあります。」
ライルは余り相手に取り付く島を与えないように、自分の非を認めるスタンスを取っていた。あまり天狗になって、相手に煽てられていい気になりたくないからだ。同時に、意気揚々と上陸するタイミングでタラップを取ってやる狙いもあった。
とはいえ、流石に主君筋ともなればご機嫌取りをする貴族が多すぎる。だが、それならこのパーティーに一番乗り気な母にすればいいはず。やらなかったのは、自分の方が取り入りやすいと思ったからなのか?
「殿下。」
「ティーナ、久しぶりだね。」
ようやく、見知った顔に会えて一安心だ。入場して間もなく、ノネット・エニアグラムからは祝辞を受け取り、ジュリアの事件に一応の区切りをつけたことに労いを受けた。今の自分の基盤中の基盤を作った憧れの騎士で、初恋でもあった女性のねぎらいをライルは素直に受け取った。
その後は、媚び売りの応酬だったがここでようやく別の顔見知りが来て一安心だった。
「騎士の選任、おめでとうございます。」
「ああ……ジュリアにも報告をしようと思っている。」
「…その件ですが、今回の件もしばらくスレイター家周囲には注意を払うべきでしょう。」
それは当然だ。今のこの情勢では下手に内側の敵を増やしたくないが、短絡的な行動に出る輩はいる。そちらの方が、ライルにとっては厄介だった。
「ティーナさん…お久しぶりですね。」
「…シェール様、ご無沙汰しております。」
ティーナは母にドレスの裾を手に礼をするが、表情は余り穏やかではなかった。
「ライル、本当にこちらと結婚する気はないの?貴方のためにもいい家柄ではありませんか。あの騎士と違って、混ざっていないのですから。」
シェールを見たティーナは相変わらず両親から聞かされた通りで呆れてしまった。いくら親子でも皇族の騎士を選ぶ権利はその皇族自身のもので独立している。皇帝と言えども、勝手に解任することはできないのだ。
それができるのならば、皇帝より先にコーネリアがスザクのユーフェミアの騎士就任を却下しているのがその証拠だ。この人は、果たしてそれを分かっているのだろうか……叙任前だったから、あくまでライルは個人的な捜査をしているが、この上今の騎士を排除しようなどとしたら親子喧嘩という名の流血沙汰は避けられない。まして、親子仲の悪さではこの二人はある意味有名。しかも、母親の方に至っては嫌われているという自覚すらないのだ。
どっちがわがままなのか……わがままという意味ではティーナから見ればライルもそんな部分はあるが、少なくともライルの方は一定の筋を通すための無茶に近い。だが、問題はシェールだ。両親、ライルから見て祖父母に当たる子爵家の当主夫妻は大貴族からも一定以上の信頼があるのに、娘はこれだ。
もし、殿下が結婚したら子供がこの人みたいになるのかしら?
想像してみるが、あまりに恐ろしい光景だった。が、これ以上は弟分の機嫌を損ねるわけにもいかない。
「シェール様、殿下はまだ先日の事件と事後処理の心の整理が追い付いていないでしょうから……」
「ナンバーズごときにまだそのような。」
まるで息子の心境を理解していない発言に、聞いていた貴族は一部同調しながらもこのような場で、という心境だ。
「私は軍事の素人ですが…少なくとも、殿下にとっては共に戦場を駆けた部下との信頼関係が破綻したのです。パーティーとは、やはり勝手が違うのでは?」
素人意見を認めたうえで、ティーナは親戚の女性を窘める。そして……
「よいでしょう。」
「ありがとうございます……少し、殿下をお借りしてもよろしいですか?久しぶりに会った弟と、世間話をしたいので。」
「………あの混ざりものを近づけないことだけは評価します。」
一応の感謝、ということだろうがやはりティーナは貴族としても人としても彼女は嫌いだった。
「ありがとう、助かった。」
シェールが離れた後、二人は一旦休憩用のテーブルを見つけて水を頼んでいた。そちらへ…
「ライル様。」
深緑の髪の少女がやってきた。容姿はかなり整っており、あと数年もすれば社交界の華になっているだろう。
「サラ……本国に戻っていたのか。」
「ええ。流石にあの事件の後ですから、学校も休学です。」
「そうか、当然だな。…ティーナ、こちらはサラ・クラウザー嬢。エリア11で知り合ったんだ………サラ、こちらは私のはとこに当たるティーナ・B・アルバートフ。」
「初めまして。」
「…こちらこそ。」
お互いに礼をして、ライルが着席を勧めてサラも席に着く。
ゲイリーもライルの側近として出席し、囲まれていた。
「将軍はその…名誉ブリタニア人の将兵を気にかけておられるというお噂を耳にしたのですが?」
「ええ……眼をかけているものは一人おります。」
貴族たちは少し意外な顔だった。ライルの部下の中では、区別に忠実なゲイリーが名誉ブリタニア人…それもイレヴンの保護者を買って出るとは。
「いったい、どのような?エリア11の軍人の孫だとのことですが。」
「つまらない家庭の不和の延長にすぎませぬ。」
そうとだけ答えた。その被保護者……畑方秀作は川村雛と共に警護も兼ねて会場に入っていた。名目は、先日の事件で命を救われたライルからの細やかな褒美。
中には、二人が態度はともかくブリタニアに反旗を翻すことはまずないという証明、方針転換はしないし今更不可能だという意思表示もあるというのを察していた。
お気持ちは分かるが、少し極端だな……
秀作は好機や敵意の目を向けられていた。当たり前と言えば、当たり前だろうが。
人を魔物の一味扱いして欲しくなければ死ね、かと思って取り立てられれば魔物の分際で……こいつらも魔物どももどういう頭の構造をしているんだ?
イレヴンだから、奴の孫だからと疑われてきた。ライルに取り立てれば卑怯な手。
魔物どももブリタニアも、同じ穴の狢じゃないか。どこが違う?
「あの…畑方秀作少尉ですか?」
声を掛けられて、振り向くと赤い髪の少女がいた。歳はライルと同じくらいだろうか?
「……そうだが、そちらは?」
「私はブリタニア帝国第31皇位継承権者セラフィナ・ギ・ブリタニアです。」
ブリタニアの皇女?31番目となれば、100人に及ぶ皇子と皇女の中では比較的高い継承権だ。
「これは失礼を、無作法ながら。」
一応の敬礼をして、秀作は答える。
「いえ、畏まらないで。こちらは警護のクレア・エインズワース卿です。」
「初めまして……クレア・エインズワース中佐よ。伯爵家の跡取り娘で、騎士候の地位を持っているわ。」
「その若さで中佐……よほど実力がおありのようで。」
「あなたの同郷出身ほどじゃないわ。」
こちらの細やかな皮肉も受け流したこの女性……周囲の男が目を奪われる美女だが、どうも制服が特徴的だ。
日本の忍者…より正確にはくノ一に似た礼装と騎士のマント、さらに下げているのは小太刀だ。
「これが気になる?」
「そういうわけでは…」
「気にしないで、よく言われる。ウチは日本文化愛好家で、留学の経験もあるし今は向こうで文化財保存をしているの。」
それはまた、酔狂な。
「で、そんな世間話をしに?」
が、クレア・エインズワースが首を横に振る。
「あなたに興味があるのは、私じゃなくてこの子。私は付き添いよ。」
「少し、場所を変えませんか?」
「……姫様に付き従いましょうか。」
金髪に赤紫の瞳の美女…エルシリア・ギ・ブリタニアはアルバートフとクラウザーの娘からライルを借りていた。
「先日の事件……大丈夫なのか?」
「これが、大丈夫に見えますか?」
愚問だった。完全に参っている。先ほどノネットと会っているのは見かけたが、やはり彼女との再会でもまだ堪えているようだ。
「余計なことだが、暫く名誉ブリタニア人の採用は控えた方が良い。」
「そうは言いますが、こういう時期だからこそ方針の維持だけは必要だと思うのです。」
その考えも分かるが…
「なら、いままでの4か5,行っても6にしておけ。」
「他の貴族達のようにやめろ、とは仰らないのですね。」
「止めて聞くような子でないことは兄上達だってご存じだ。」
そう、ライルはなかなかに我儘とも頑固とも取れるところがある。昔と違い、今は一定の筋が通っているし、何より現実論を重視する点のみならば、コーネリアより上かもしれない。
コーネリアを軍人としてライバル視するエルシリアにとっては、弟が先にコーネリアよりKMFで上と太鼓判を押されたのはやや悔しいが、仕方ない。
「そういえば、セラは?」
「お前の部下の畑方秀作に会いに行った。あの畑方源流の孫という身の上に興味を抱いたのだろう。」
これが思いもよらない展開につながるとは、エルシリアもライルも予想だにしていなかった。
雛はソフトドリンクを片手に会場をチラチラ見ていた。いきなり、こんな舞台に出るとは。それだけライルから高く評価されている、というのは分かるが……
「ねえ、あたしら来てよかったの?」
様子を見に来て、先ほどソフトドリンクをくれたフェリクスに質問をする。
「政治的なアピールですよ…長野隊長も出席しているのですから。」
要は、名誉ブリタニア人制度の継続と少なくとも長野や雛は造反の意志がないという証明が目的か。
「それなら、まあわかるけど……」
何しろ、長野に至っては先日少佐に昇進したばかり。しかも、旧日本政府関係者の護衛官でその上司の山本はまだ健在。
NACが壊滅した今となっては、山本が最もエリア11で事業を拡大するコネ作りの相手としては重要なのだ。
が、それにしてもあろうことか二十歳かそれより少し上の娘を紹介する貴族までいる。権力でも何でも使えば、妻子の存在程度は分かるはずなのに娘を紹介するとは。
「ねえ、あれ娘を隊長さんの愛人にして手綱握ろうって魂胆なの?助け船入れた方が良い?」
「やめておいた方が良いですよ…」
「貴族の方のご冗談は、卑しい生まれの私には着いていけぬものがあります故……」
「そ、そうか…」
何とか適当にあしらい、長野はワインを飲み干した。
先日の事件で事態を収拾するべく、率先して動いた手腕及びエリア11の植民地政策に協力する山本の部下というのが効いた長野は大きなお咎めもなく、今回も特例としてのパーティー出席を命じられた。
が、まさかイレヴンしかも旧日本軍人の自分にまで貴族が群がるとは思わなかった。中には、独身の女性もいた。
遠回しに結婚まで迫る手合いまでいて長野は流石に呆れるしかなかったが、自分の生まれを言い訳にして何とかかわした。護衛官に就任してから、こういうことは何度かあったがまさか本国にまで来てこうなるとは。
しかも、今の自分は宮仕えの中でも極めて珍しく、しかもブリタニア皇族の臣下というブリタニアでは最上位になってしまった。軍の階級は少佐のままではあるが、今後の実績や人事次第で中佐や大佐もあるという。まさか、日本軍では大尉だった自分がいきなりこうなるとは。
そして、忠誠を尽くすに値する人物に会うとは、日本軍にいたころは予想もしていなかったことだ。
「畑方少尉は、あの畑方源流将軍のお孫さんですよね?」
場所を変え、お互いにソフトドリンクを飲んでいたセラフィナ・ギ・ブリタニアと畑方秀作だが、最初の質問以後完全に無視されていた。
「あの…何か、気に障るようなことを?」
「…別に。」
本人はそう言うが、どう見ても怒らせたとしか言いようがない。
「おじい様の事、お嫌いなんですか?…せめて、それだけでも。」
思い当たる節と言えば、他になかった。祖父の名を出した途端に、血縁の肯定以外は無視だった。
「嫌いじゃない……むしろ、憎んでいるんだ。」
憎んで、いる?
「血縁だけの俺の両親も、奴も…生きているなら、この手で八つ裂きにしてやりたかった!いや、いっそ殺してくれと介錯を乞うような苦痛でも良かったかな?」
その顔は、姉と共に戦場を渡り歩いたセラフィナでさえ恐怖を抱いた。殺意と憎悪、狂気の笑み以外何もなかった。
「あ、それって……」
「セラ、そろそろダンスよ?」
ダンスの時間になり、パーティーのもう一人の主役であるライルがパーティーの相手を選ぶことにした。無難なのはティーナではある。だが、ここでティーナを選べばあの女を喜ばせる。
だが、他のは論外。ところが…
「サラ、私と一曲踊ってくれるかな?」
「喜んで。」
サラ・クラウザーはライルとのダンスに少し興奮していた。エリア11の時でも感じたが、顔はよく整っていて、どちらかと言えば中性的だ。童顔のスザクや、知的な風貌の彼とも違う美男子だ。
「その……変な人たちに言い寄られてませんでした?」
「言い寄られていたよ。遠縁や『ナイトオブナイン』がいてくれなかったら荒れていた。」
「…私じゃ不満なんですか?」
ライルは機嫌を害した、ということを悟った表情になる。
「あ、すまない。君が不満というわけじゃないんだ…君がいたのは正直、嬉しかった。」
その言葉が、サラにとっては少しうれしかった。二人はそのまま踊り続け、最後まで相手を変えることはなかった。
取り入ろうとしても、まともな人間性のある貴族は「今まで散々ハーフをネタに虐めた自分達が信用されるわけない」と思い、謝罪止まり。人によっては「謝罪さえもう信用されない」と思ってるでしょう。
実際にレイは謝罪さえ信用してません。
ライルも逃げたくて溜まらなかった感じです。
秀作はここでライルの義妹の一人と出会いました。ネタバレで、雛も皇子の一人と絡みます。