コードギアス 戦場のライル   作:meitoken

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タレイランの翼…正確にはオリジナルの強力組織が出てきます。


WARFARE-30『反抗の翼』

『グリンダ騎士団』の凱旋から間もなく、ブリタニア本国でもくすぶっていた反体制の灯が燃え上がった。

 

『タレイランの翼』を名乗る現体制に異議を唱える軍の一部が反旗を翻した。首謀者はウィルバー・ミルビル、ブリタニア貴族の一人であり軍事航空会社シュタイナー・コンツェルンの主任研究員。何よりも、帝都の守りを充実させるべく航空戦力としてのKMF運用を主軸とした『天空騎士団』構想の立案者だった。

 

『ブラック・リベリオン』に伴う本国内のテロで妻を喪い、それをきっかけに反ブリタニアへと転向してそれに伴いシュタイナー家はKMFの開発競争から脱落することになった。

 

「ブリタニア軍人でありながら、ブリタニア皇族に牙をむくとは…!」

 

「別におかしな話じゃないわよ。革命では貴族や僧侶だって王朝に敵対した人だっていたんだから。日本でも朝廷に歯向かった武将はいたんだし。歴史上、ままあること。」

 

クレアの客観的な分析にエルシリアはため息をついた。

 

「本当に、貴女は正論をというよりも時折ブリタニアに否定的ね。」

 

「好きな文化の国を壊したから当たり前でしょ?仕事してるんだから、文句言わないで。」

 

確かにエインズワース家は100年以上続く親日派の貴族………遡ればクレア皇帝に仕えていた日本人と交流を持ったのがきっかけと伝えられている。実際にエリア11成立後は早い段階で現地の観光事業や文化財の保存に力を入れている。

 

それでも、反体制派と言われかねない発言ではあるが。

 

 

 

「父上は帝都の守りの充実さえ取り合わなかった。それが原因だろうな。」

 

だが、彼ではないがライルは父の方針に疑念を抱かずにはいられなかった。『世界をブリタニアの旗の下で統一し、平和に導く』。大義名分としてはそれでよい。だが、その割には公の場にはほとんど顔を出さないのだ。

 

『フォーリン・ナイツ』の件でも皇帝からも寛大な処置を求めるべく謁見をしたのだが……

 

『そのような些事……全て、お前とシュナイゼルに任せる。』

 

些事…危うく帝都をKMF部隊が襲うところだった反乱を些事で片づけるその発言はライルに疑念を抱かせるには十分だった。『ユーロ・ブリタニア』の動向にさえ関心を示さず、なぜか皇帝の関心はエリア11に向いている。

 

何故だ…もうゼロはいないのに。『黒の騎士団』の残党はまだいるが、その追撃部隊の『ブルーバロンズ』さえ結成されている。

 

度々玉座を空けて、『ブラック・リベリオン』の対策会議さえ関心を持たなかったことと同じ?ならば、一体あの男の関心は何に向いている?

 

いずれにせよ、この一大事にブリタニア軍は迎撃を即決。バミューダ島の軍事基地に『グリンダ騎士団』が向かう一方、アラスカ州ジュノーの基地が決起したとの情報もある。その鎮圧にライル軍が任ぜられた。

 

基地とは言っても、ジュノーには州議会もあり、軍事都市だ。それを考慮してか、敵は住民を沖合の諸島及び付近の公園に退去させている。あくまで、敵はブリタニア皇族とその体制下の軍と政府であり市民ではないという意思表示のつもりだろう。

 

こちらは、特派が運用した航空艦アヴァロンのデータから建造したカールレオン級を四隻貸し与えられた。一隻はライル軍、二隻はエルシリアとシルヴィオ、セラフィナもエルシリアの艦に同乗、もう一隻は本国の将軍が搭乗する。

 

今回の任務に際し、ライルが自軍に演説を行う。

 

「すでに知っての通り、『タレイランの翼』を名乗る反体制組織が帝都ペンドラゴンを目指し、挙兵したという情報が入っている。それに呼応して、アラスカ・ジュノーも武装蜂起、我々に鎮圧の命令が下った。」

 

が、ライルはあえて不敵に笑って見せる。

 

「…だが、これは汚名返上のチャンスだ。ここで実績を示せば、煩い奴らも少しは黙る。まだ文句を言う貴族共の鼻先をへし折ってやろう。」

 

聞いていた将兵達は含み笑い、或いは大声で笑った。

 

「初陣の将兵もいるが、相手はブリタニア軍でも逆賊ごときに負けるわけない…」

 

士官学校を出た若者たちは「その通り。」と内心で頷くが……

 

「そんな思い上がりではすぐに死ぬ。経験と実力は相手の方が上だ、実戦経験のない君たちが正面からやれば、絶対に勝てない。」

 

皆が当惑するが

 

「今の言葉は正しい……棘があるが、立場で勝てる戦争なんてないんだ。」

 

セヴィーナがフォローを入れ、デビーも…

 

「それに、新兵の出撃だ。訓練じゃない、と言っているんだ。」

 

要は、『そんな心構えでは早死にする。それでは、今回の出撃は認められない』と部下の命を考えて言っている。

 

「では…出撃する!」

 

「イエス・ユア・ハイネス!!」

 

 

 

「これ、要するに兄さんを私達で見張れってことですよね?」

 

セラフィナは不服そうだ。セラフィナにとって、ライルは初恋の相手。無理もないだろう。

 

「セラフィナ様、シュナイゼル殿下は我々に見届け役を任せたのです。」

 

エルシリアの側近のアマデウス・ウィンスレットが窘めてきた。

 

「どういうことです?」

 

「つまり、役割の一つは先ほど姫様が仰った通り名誉騎士団の監視でもあります。しかし、同時に皇族のお三方がライル殿下の名誉騎士団が功績を立てたと証言する。もう一隻のロビンソン将軍は職務には忠実な方。ライル殿下と個人的に親しくされる皇族のお三方、いずれとも接点の薄い将軍の証言をもってライル殿下と将兵達の名誉挽回を内外に知らしめるのです。」

 

つまり、あの処刑の上に更にアピールを重ねるわけだ。今でもブリタニアは名誉ブリタニア人制度を継続、皇族に忠誠を誓う者には厚遇をもって迎える用意がある。と示す意図もある。スザクだけが特例というわけではない、という証明も兼ねているのだろう。実際、あそこまで目立っては皇族も門を広げざるを得ないだろう。

 

「……つまり、それで彼らのこれまでの働きがまぐれでないと証明させる意図もあるんですね。」

 

「さようです。」

 

「貴女も、だいぶ政治的な駆け引きができるようになったわね。」

 

クレアがセラフィナの頭を軽くなでた。

 

「まあ、貴方が興味を持ってるあの子が日本のプラスにするようなことはないって言うし、少なくともあの子は大丈夫でしょ?」

 

「どうして、秀作が出てくるの?」

 

「別に秀作だなんて言ってないわよ?」

 

クレアに言われ、セラフィナは黙る。どうして、いきなり秀作の名前が出てきて心臓が高鳴ったんだろう?

 

「……あまり入れ込み過ぎなければいいけど。」

 

「あら、政略の観点で言えばどうして枢木スザクを皇族と結婚させなかったのかしら?」

 

セラフィナに聞こえないようにエルシリアとクレアが会話を交わす。内容がどういう意味なのか、セラフィナがこの数日で秀作に強い関心を寄せているからこその会話だった。

 

「ただ、あの子に限れば……セラにとっては自慢できる家族がいるのに憎んでいるという真逆の考えが新鮮なのでしょうね。」

 

「…コーネリア姉上に対抗意識を燃やしている私は?」

 

「貴女のは純粋な軍人としてのライバルでしょ?」

 

「お二人とも、そのあたりで。」

 

エルシリアのエースパイロットの一人アルトゥーロ・D・グラビーナに窘められ、二人は思考を戻す。

 

 

 

遡ること数刻前……

 

「ジュノーは山と海に囲まれた都市。普通なら空爆するのが最も確実だが……」

 

今回の指揮はライルが執ることになった。ライル自身も試されているようなものだろう。

 

「先だって鎮圧に派遣された部隊が全滅しています。」

 

ロビンソン将軍の報告に長野が質問をする。

 

「ロビンソン将軍、その詳細を教えてください。」

 

将軍が数秒の沈黙を得て、回答する。

 

「シュタイナー・コンツェルンの技術協力で開発した可変飛行型の試作KMF、開発名サマセットが確認されました。西海岸経由で上陸を試みた部隊が壊滅、艦を拿捕されています。」

 

モニターに映ったのは民間に払い下げられたMR-1に武器と翼をつけた簡易KMFだ。

 

「民間の折り畳み式KMFに武器を取り付けた即席のKMFですか……いや、折り畳み式である分飛行型としての運用に適しているのか。」

 

「長野少佐、貴官の分析通りだ。おそらく、この基地の将兵達はかなり前から主義派勢力としての力をつけていたのだろう。そこへ、今回の戦力提供があった。」

 

この基地の規模は決して小さくはないが……それでも、ここまでの戦力提供をするものか?

 

「バミューダと同じ陽動かもしれない。」

 

ライルの分析にシルヴィオが頷く。

 

「私も同意見だ…あまり、時間はない。どうする?」

 

相手が簡易型とはいえ、空を飛ぶKMFで攻めてくるとなれば爆撃機だけで攻めたところで負けるのは必至。となれば……

 

「ランスロットはフロートユニットで動かせるんだな?」

 

「は、枢木卿の戦闘データをフィードバックした状態でありますが…」

 

それを聞いたセラフィナがライルに問う。

 

「まさか、いきなり?」

 

そのまさか、だ。

 

「秀作を呼んでくれ。」

 

秀作は作戦の内容を聞かされた。

 

「内容は分かった、狙いも。で……俺を合法的に殺すのが目的じゃあないんだな?」

 

「死んでも、ジュノー基地を潰せれば我々の勝ち。だが、死ねば『任務にかこつけて殺された』と日本側を喜ばせる。そんなのお前は死んでも死にきれないだろう?」

 

「当たり前だ。」

 

ゲイリーの問いに秀作は即答し、ライルは念を押す。

 

「だから無理をせずに帰ってくる。これが絶対条件だ。」

 

「……枢木スザクと同じことができるとは思わないが、俺が基地を潰してもいいんだよな?」

 

皇族に対する者とは思えない口ぶりだが、ライルもゲイリーも咎めずに会話を続ける。

 

「無論だが、まだ試作段階でフロートユニットの燃費は悪い。エナジー切れになれば、文字通り地獄に真っ逆さまだ。」

 

ゲイリーに念を押され、秀作もうなずいた。

 

「分かった…エナジーの残量には気を配る。」

 

 

 

ジュノー基地はカールレオン級が四隻、接近してくるのを察知した。市民が退避した地域には赤十字と白旗を用意させ、基地は掌握。基地の司令官は別の場所に幽閉し、他の体制派の将校も同じか殺害されている。

 

「カールレオン級が四隻、接近してきます。」

 

「航空艦を出してきたところで、結果は同じこと。サマセット隊、出撃。航空機部隊は援護。」

 

〈イエス・マイ・ロード!〉

 

正規軍人で構成されるだけあり、彼らの動きは迅速。KMFの制圧力は熟知していた。しかし……

 

「敵艦から、発艦する機体があります!スクリーンへうつします。」

 

モニターに映ったのはKMF。それもまだ配備数が少ないフロートユニットを装備している。加えて…

 

「ランスロット!枢木スザク…いや、『グリンダ騎士団』でも『ブルーバロンズ』でもない…まさか!」

 

間違いなく、ランスロットだが枢木スザクの白でも『グリンダ騎士団』の赤でもない、かといって『ブルーバロンズ』は担当が違う。ならば…

 

「第八皇子の名誉騎士団!?」

 

なんということだ!自国の間違いを正すべくたった我らの前に立つのが、その間違いの尖兵になっている名誉ブリタニア人とは!

 

我らの過ちを正すために、名誉ブリタニア人をその手にかけねばならぬとは……いや、こうなっては致し方ない!

 

「ランスロットに戦力を集中せよ!」

 

サマセットとヘリがランスロットを取り囲むが、沢崎敦の事件でランスロットが単機でフクオカ基地の航空戦力のほとんどを撃破したのは記憶に新しく、僅かに尻込みしてしまう。

 

今回はサマセットもいるが、やはり小回りでフロートに軍配が上がる。青いランスロットは小回りでこちらを翻弄し、ハーケンの巻き戻しとフロートの加速で距離を詰めてサマセットを蹴り飛ばし、そのまま振り向きざまに両手に装備したアサルトライフルでヘリを撃墜。急降下から反転して再びハーケンでヘリを貫く。

 

「第七世代機、これほどなのか!」

 

エリア11でのランスロットの活躍は彼らも聞いていた。イレヴンごときのまぐれ、等と彼らは思っていなかった。むしろ、枢木スザクの実力や才能だと正当に評価していた。

 

だからこそ、解せない。このパイロットもスザクに引けを取らない。それがなぜ、祖国を奪った国の皇子に忠誠を誓うのだ!?

 

 

 

「試験搭乗はしていたが、実際に見るとよくわかる。」

 

ランスロットは規格外だ。あれでオリジナルよりもパワーが落とされているのだから、恐ろしい。実際にライルをはじめ多くの人間がランスロットに乗ったが、ライルを含めて大勢がその性能に振り回されていた。それをフロート装備であそこまで。

 

「よし、秀作が敵の戦力を惹きつけている。その間に、我々は基地へ向かう。」

 

今回の作戦は秀作を陽動に艦で基地を制圧するというオーソドックスなもの。サマセットに対抗できる手段が少ない以上はそれ以外に手がなかった。

 

こちらに気づいた敵が空から攻めてくる。下の方はブレイズルミナスと砲台があるために近づけない。ならば、と上から来るが。

 

上には親衛隊と『フォーリン・ナイツ』が既にいた。全方位シールドはまだ完成していない。なら、上から来ると誰でも考える。だからこそ、VTOLでKMFをあらかじめ上に乗せていたのだ。

 

新兵たちのパンツァー・フンメルも迎撃しており、射程距離ならば現行のライフルやバズーカよりも長い。しかもある程度動けるので、事実上の移動砲台として動かしていた。

 

新兵の一人ニコラ・ド・フィリドールは不服だった。士官学校を上位で卒業し、既にKMFパイロットの試験もクリアした。エリア11の事件で新兵が増えたことでニコラも前線勤務の機会が増える。

 

かと思えば、配属先は先日失態を演じた第八皇子…しかも、指揮官はあのハーフだ。

 

「私はブリタニア貴族だぞ…!それが、ナンバーズ共より下など!」

 

〈爵位より階級が優先されるのが軍隊。学校で習わなかったの?〉

 

艦の上でバズーカとミサイルで武装した白と青のグロースターから通信が入る。イレヴンの川村雛だ。

 

「イレヴンが辺境伯家嫡男の私に!」

 

〈でも、あんたは准尉であたしは少尉。上官よ?〉

 

「だが、私は騎士候だ!」

 

が、川村雛はまるで意に介さない。こちらの高貴な血筋が分かっていないかのように。

 

〈ああ言えば、こう言う。こりゃ、ウチの皇子様が貴族共あてにしないのも道理だわ。〉

 

「なにを!?」

 

〈その言い草と考え方よ。ナンバーズがブリタニア人より高い階級になるな、なんて法律はないわ。〉

 

詰まった。法律の上では、確かにそんなものはない。だが、差別と不平等がブリタニアだ。それが…!

 

〈おい、取り付くぞ!〉

 

サマセットが目前に現れ、コイルガンを突きつけた。目前に迫った死を実感した瞬間、ニコラは手を動かすのを忘れてしまった。が、

 

〈何やってんだ!〉

 

『アルガトロ混成騎士団』から配属されたヴェルド・ホーネットのグロースターがハーケンでサマセットの翼を破壊し、そのままパワーにものを言わせて艦から叩き落した。更にとりつこうとしたサマセットを名誉騎士団の隊長機がハーケンでとりつき、巻き戻しで肉薄。斬るかと思えばそのまま上に乗った。KMF一機の重量に折り畳み式の機体が耐えられるはずがなく、そのまま落ちる。が、隊長機はその間にもハーケンでヘリに取り付いて、もう一基のハーケンで別のサマセットに取り付いてライフルを撃つ。そして、ハーケンで友軍の艦に取り付く。疑似的な空中戦だ。

 

「な…!ば、馬鹿な!イレヴンが!」

 

〈まだ学校出たばかりのルーキーにできるか?あれが。〉

 

ヴェルドが問いかけるが…

 

「で、できますとも!イレヴンごときにできたことが」

 

機体に衝撃が走った。グロースターがランスで小突いたのだ。

 

〈だから、ダメなの。他人が、ナンバーズや平民ができたから貴族ができて当たり前って法則はない。戦争に限らず、誰にでも得意不得意があるの。はっきり言うが、あんなの俺も無理だ。ま、こっちでならウチの大将くらいかね。他は…お、あれ見てみな。〉

 

皇族を随分と軽々しく呼ぶ、と思ったが促されたほうを見ると……あちらではスレイター家のハーフのグロースターがハーケンでヘリを捕まえ、先ほどの隊長機と同じ空中戦を行う。それに加え、僚艦に降り立った後、エンジンを損傷した機体をハーケンでサマセットにぶつけるという荒業もやってのけた。

 

〈できる?〉

 

「あ……で、でき…ません。」

 

認めるしかなかった。無理だ。最新鋭機のグロースターとはいえ、あんな無茶な空中戦を。しかも捕まえたヘリを敵とぶつけるなんて。

 

そして、畑方秀作のランスロットでの大立ち回り。枢木スザクの躍進をまぐれと信じて疑わなかった二コラだったが、同じイレヴンの畑方秀作に川村雛、長野五竜。そして、混血のレイ・コウガ・スレイター。

 

このわずかな時間で自分が信じて疑わなかった貴族の優位性が根本から覆されてしまったのを、ニコラは認めざるを得なかった。

 

〈くそ!ナンバーズなんかより手柄、ぐあ!〉

 

新兵のサザーランドが撃破された。

 

「くそ!」

 

彼は気を取り直し、今サザーランドを撃破したサマセットに照準を定める。射程距離では確かにこちらが上。砲撃に特化した分、精密射撃もしやすい。トリガーを引き、サマセットを撃破した。

 

 

 

シルヴィオの軍も同様にフロートユニットを装備したKMFの配備が間に合わず、艦上での迎撃が主だ。しかし、それは功を奏していた。制圧力が売りのKMFが空を飛んで艦に強襲をかける戦術は通じなくなっている。おまけにランスロットが敵を引き付けてくれているために、こちらの対応は少ない。ランスロットさえ撃破すれば、と普通なら誰でも考える。

 

だが、KMFの制圧力をブリタニアは熟知して、それは浮遊航空艦が相手になっても変わらない。空を飛べればいいだけだし、戦術の幅も広がる。その失敗と困難さがこれだ。

 

〈あの子、すごいわね。〉

 

「ああ、やはり今後もエリア制度を継続するなら人材が物をいう。」

 

木宮の賛辞をシルヴィオは肯定する。貴族達は耳を貸さないが、国土が広がればその分人材の層が薄くなる。今後ともエリア制度を継続する以上は、いずれナンバーズ出身者を使わざるを得なくなる時が来る。国是に忠実なコーネリアは否定的だが、やはりブリタニア人の誰もがコーネリアの親衛隊と同等の能力を得られるわけがないし、ブリタニア人がナンバーズの二倍や三倍の能力があるという法則など存在しない。

 

本当に先を見据えるのなら、そうした視野も必要なのだ。ライルは根本的な動機が稚拙だが、それが発展して今の方針に至る。そこに今後を見据えた思考が加わっている。

 

「だというのに……体制や周りの考え方との相性が壊滅的だ。」

 

〈それは言えてるわ。〉

 

貴族でもロイド・アスプルンドやカノン・マルディーニ等、貴族どころかナンバーズだろうが誰でも変人と言われそうな二人と友人づきあいをするシュナイゼルはあの枢木スザクを高く評価している。その柔軟さはブリタニア随一だ。そして国是に忠実ながら、ナンバーズでも平民でも優秀な人間を認めるコーネリアでさえ貴重なのだ。

 

ブリタニアの不平等をブリタニア優位論に挿げ替えている現在のブリタニアではライルの方針を理解できる人間は少ない。しかもその優位論さえ、戦勝国という根拠にさえなってない根拠だ。

 

このままいけば、ブリタニアはいずれ自滅する。『タレイランの翼』がそこまで考えているかはわからないが、どこかで自滅を防止する政策は必要。『グリンダ騎士団』のようなテロ鎮圧とはまた違う何かが……

 

 

 

「秀作、大丈夫なの?」

 

セラフィナは秀作のことの方がライルよりも心配だった。今回は最悪の事態に備え、皇族たちは全員艦内だ。ライルは元々乗れるKMFがないが、シルヴィオ達もただでさえ皇族が乗っている船で充分引きつけられるのだ。これ以上のリスクは犯すべきではないという幕僚達の意見だ。

 

「それは、ライルの部下たちに聞くしかない。敵の航空部隊は?」

 

「KMFは残り三機。航空機はほぼ全滅です。」

 

恐ろしい性能だ、ランスロット。それを乗りこなした枢木スザクも…そして、あの男も。

 

「問題は地上部隊だが、手はず通りに行けるか?」

 

「は!」

 

司令室では司令官がパネルを叩いた。

 

「く!たった一機に航空戦力がKMF諸共全滅させられるとは!」

 

侮っていたわけではなかった。が、ランスロットに引き付けられた敵を航空艦の上に陣取ったKMFが援護する上に制圧することもままならなかった。母艦を撃沈しようとしたが、艦上のKMFに取り付こうとしたサマセットは撃破されるし、航空部隊も相手のヘリかKMFに撃ち落とされる。

 

「だが、まだ地上戦力ではこちらに分がある!」

 

「敵艦が高度を落とします!」

 

「なに!?迎撃用意!」

 

だが……迎撃の部隊が集まるより先に司令室に振動が襲い掛かった。

 

「な、なんだ!?」

 

「敵艦の上から砲撃です!射程距離からして、E.U.のパンツァー・フンメルかと!」

 

より正確には、これまで鹵獲された長距離砲撃型のパーツ、それを手持ち火器に流用した砲撃だ。航空戦力を失った今、完全に的だが司令部を始めとした基地の主要施設は軽微だ。

 

「あてずっぽうだ!部隊を下がらせて籠城を…」

 

「敵艦の、下部のハッチが開きます!」

 

今度はなんだ!?

 

モニターに移すと、艦の下から何かがのぞいている。あれは…何かの資料で見た覚えが。

 

 

 

「雷光、第1射。撃て!」

 

エリア11から接収した散弾砲、雷光。大型すぎるために今回は突貫作業で砲身を増設、射程距離を強引に伸ばして収容すると同時に旧式のグラスゴーを増設してうまくいった。三隻のカールレオン級に一機ずつ積み込んで、航空戦力を削いだ後上空からの砲撃で基地を徹底的に破壊する。それが今回の作戦だ。

 

力押しの作戦だが、早期決着を狙う以上ライルは他に考え付かなかった。上空からの散弾砲、まさに鉛玉のシャワーだ。しかもリニアカノンだから着弾時の衝撃も強い。下にいた歩兵たちもミンチにされたのが分かる。

 

「下手な空爆より、残酷な殺し方だ…」

 

だが、こちらの犠牲を最小にする以上は他に手がない。

 

「第二射、撃て!」

 

再び発射され、基地を瓦礫の山としていく。さらに、今度は艦上に配置したキャノン隊も一斉射撃をする。

 

「降伏勧告は?」

 

「しております。ですが、応答はありません。」

 

〈おい、どうする?〉

 

秀作が既にランスロットの補給を終えている。とどめを刺すことは可能だが……

 

「秀作、念のためトドメとして待機してくれ。」

 

〈ああ…〉

 

ランスロットが再度発艦したのちにライルは直接降伏を呼び掛けるが、応答はない。

 

残ったサマセットがこちらに突っ込んだ。一隻だけでも道連れにしようという気か!?

 

だが、その執念はかなわなかった。艦上のKMFが一斉砲撃し、ヘリ諸共撃墜。最後の一機は翼を破壊され…

 

〈悪いが、自爆されないうちに司令部を潰すぞ!〉

 

秀作から断りが入り、捕まえた機体をそのまま司令部へ投げつけた。

 

 

 

「くっ、総員退避!」

 

司令は敗北を悟り、基地の自爆装置を起動させようとした。だが、遅かった。ランスロットが司令部目掛けて捕まえたサマセットを投げつけた。もはや、退避も間に合わない。

 

なんという、ことだ……!ブリタニア人であるがゆえに今のブリタニアを正そうとした我らが、よりにもよってブリタニア皇族!それも、ナンバーズに落とされて自由と権利を奪われた人々を戦場へ向かわせる第八皇子の名誉騎士団に敗れるとは!!

 

彼らにとって、あまりにも皮肉で痛烈なカウンターを叩きこまれる形でこの地の翼は完全にもがれた。

 

司令部が沈黙し、残った地上部隊のKMFは互いを撃ち、歩兵達も同様の末路をたどった。

 

 

 

「ここまでして、ブリタニアの現体制を覆そうとしたのか。ウィルバー・ミルビルにそこまでの期待を…」

 

ライルは彼らのブリタニアを正そうという思いだけは否定できなかった。ライル自身、矛盾をはらんでそれを試みているのだ。同時に、ブリタニア人でそうした考えを持つ人間がこれほどいるのだと思い知らされる。

 

自分以外は指で数えるくらいしかいない、と思っていたが……世界が狭かったのを思い知る。もしかして、ゼロもブリタニア人?そう思いながら口にすると…

 

〈それだけの決意があるのなら、何故このような手段を取った?〉

 

エルシリアはライルに否定的だが、シルヴィオがそれに対する回答をする。

 

〈だからこそ、だろう。力こそが正義と陛下が謳っている。ならば、その力こそ正義という言葉を我々に突き返そうという意趣返しだ。〉

 

それもあるだろう……自らの論理で滅びるのに、それを不条理というのならばそれは矛盾ですらない。ただのワガママだろう。

 

「…力こそ正義、それなら私の名誉騎士団が才能や努力で今以上の地位を得るのも、正義になるんでしょうか?」

 

〈軍隊、という範疇で言えばお前の考えは間違っていない。私とて、前線で将兵を率いる身。爵位など二の次であることは重々承知している。〉

 

〈それに、今回は秀作が一番の功績をあげました。ロビンソン将軍も、それはお分かりですよね?〉

 

セラフィナがロビンソン将軍に問うと、モニターに褐色肌に金髪碧眼の中年の男が映る。

 

〈名誉ブリタニア人の分際で、と申し上げたいところですが今回の畑方少尉の働きに限れば異論はありません。少なくとも、彼の昇進は私からも上伸いたします。〉

 

「貴方がそういうお考えのできる人で安心しました。」

 

〈貴族嫌いの殿下から、そう仰っていただけるのならば光栄です。〉

 

 

 

 




新兵のニコラ・ド・フィリドール……ライルとは絡みません。

ちょいちょい顔を出す黒の騎士団でいえば、南と杉山、斑鳩のオペレータートリオ感覚です。
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