なお、ついこの前まである掲示板でこれを題材にした他の漫画のパロディとかやってましたが、今し方そちらは停止しました。
掲示板時代からずるずる続けていたのですが、停止します。
黄昏に染まった空間……一見すれば何処かの丘に建つ神殿だが、この神殿は空中に浮いている異様な空間であった。そこに…神聖ブリタニア帝国98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアが立っていた。
「ああ、分かっている。…早急に、システムの確認をせねばなるまいな。」
彼以外誰もいないはずのこの空間で皇帝は誰かと話しているかの様に独り言を続けている。そこへ皇帝の側に仕えているローブの男が一人、耳打ちをする。
「ライルがエリア11に?」
「はい、いかがいたしましょう…」
皇帝は大して間をおかずに唇の端を上に上げる。
「好きにさせよ…あやつに挑もうとするのであればそれもまた一興……」
皇帝の承認も得たとのことで、ライルはエリア11へ向かうことになった。出発前にティーナに会い、今後の調査についても議論した。
「調査の継続は片手間程度に頼めるか?何しろ、皇族殺しだ。本国も他人事ではないだろう。」
「はい……あの、お気をつけてくださいね?ゼロがクロヴィス殿下を殺したのなら、貴方も危ないのですから。」
ティーナの気遣いは混じりけのないものだ。それは見て取れた。
「ありがとう……次に戻ることがあれば、あの農場に招待させて欲しい。」
オレゴンの田舎にある農場…母の領地の1つで、あそこはライルにとってお気に入りだ。幼い頃は、他の弟妹達を呼んだこともあったが、ここしばらくは行っていない。邸宅を管理してくれている農場主や使用人夫婦は健在で、農家の人達も元気だとは訊いているが。
「それじゃあ、デビーも。本国待機の部隊の方は頼むよ。」
軍学校の先輩に当たるデビー・S・ベアーズリーが礼を取る。
「は!では、ミス・アルバートフではありませんが…ご無理はなさらぬように。」
「…君もね。嫌いな婚約者殿には気をつけて。」
「…手厳しいですね。殿下もゼロや枢木スザクに会えるからといって、浮かれないでくださいよ?」
デビーは苦笑したが、流石に付き合いが長くこちらの狙いを読み切った。
「これは一本取られたか。」
「殿下…本当に気をつけてくださいよ?」
ティーナが強く踏み出し、僅かに気圧された。
「分かっている…ただ、会いたいというのは本当だから、そこは分かって欲しい。」
発進した飛行機で、ライルはため息をついた。どうも、ティーナのあの押しの強さには頭が上がらない。これまで心配してくる人はいたが、そんなのは所詮損得勘定……ライル自身ではない。
従者の少年、エクトル・バルテレミーが入れてくれたブラックコーヒーを飲み、クッキーを一つかじって思案すると……
「ミス・アルバートフのこと……愛していらっしゃるのですか?」
従者の問いにライルはむせ込んだ。
「っ……なんでそうなる?」
「いえ、彼女とお会いしている時の殿下は…安心なさっているようでして。」
「…………恋愛対象とか、そういうのではないな。………一般家庭でたまに会える親戚って、ああいうものなのかな。と思ってね。」
そう…離宮や弟妹達にはない温もり………彼女にそれを求めているのかも知れない。向こうにとっては継承権などの問題もあるだろうが…少なくとも、ティーナが本当にライルのことを心配してくれているのは分かるし、嬉しかった。
エリア11ではリフレインの売人騒動が解決した後、『日本解放戦線』がコーネリアに壊滅させられた。が、これにはケチがついてしまった。『黒の騎士団』が新型の紅いKMFを投入して、この作戦に介入したのだ。『日本解放戦線』本拠地のナリタ連山で山崩れを起こし、コーネリアの親衛隊は半壊状態に追いやられてしまった。加えて、純血派もほぼ壊滅。『日本解放戦線』が壊滅したとはいえ、『黒の騎士団』の横槍でブリタニア軍も甚大な被害を受けたため、実質ゼロの一人勝ちだ。
データにあった紅い新型がランスロットに匹敵する破格のKMFで、そのランスロットを駆る枢木スザクがいなければコーネリアも捕縛或いは戦死していた。結果として、最悪の事態だけは回避できた。
「この紅い新型、ブリタニアのものとは運用が根本的に異なるな。それでいて、ランスロットに匹敵するポテンシャル……E.U.か中華連邦が技術協力をしているのか?」
ヘリポートではコーネリアの他に彼女の側近であるアンドレアス・ダールトンとギルバート・G・P・ギルフォードが待っていた。
「お久しぶりです、コーネリア姉様。」
「うむ…」
先日、通信越しで話したときにもわかっていたことだが、冷たい反応だ。それは当然の事。彼女はナンバーズとブリタニア人の区別に厳しい女性だ。ナンバーズの部隊を率いている自分にいい顔をしていないのは自然だが、既に慣れている。
「殿下、政庁にて歓迎の準備が整っております。」
「悪いが、今私が興味をそそられるのはゼロの方だ。」
事務次官の準備の良さに舌を巻きながらライルはその提案を撤回し、再びコーネリアの方を向く。
「姉様、データの方で黒の騎士団については調べました。その事で提案があるのですが、ここでは何です。会議室の方でお話ししたいのですが。」
「判った。ただし、ここでは総督と呼べ。第八皇子ライル・フェ・ブリタニア。」
「失礼しました、コーネリア総督。」
場所を移し、コーネリアの他にダールトンとギルフォード、コーネリアの妹にして副総督のユーフェミアを交え、ライルは自分の策を提示した。現在エリア11の裏社会で行われているイレヴンを商品としたオークション、いわゆる人身売買を行っているグループを餌に『黒の騎士団』をおびき出すという策だ。そして、最近になり軍がこのグループの拠点と会場をも突き止めたという事も聞いていた。全てを聞き終えた後、ギルフォードが口を開いた。
「その組織については、確かに我々も聞いております。オークションの会場はシンヨコハマ租界です。しかし、現場を押さえなければ……」
「だから、オークションの当日…現場に共に踏み込むのです。そこで汚職貴族とマフィアにも僅かでも打撃を与えることができるし、上手く行けば黒の騎士団も叩けます。」
強く提示したライルのシナリオに会議室は暫し沈黙するが、ユーフェミアが問い掛けてきた。
「あの、ライル兄様…オークションを潰したら商品となっている方達は?」
区別の名を借りたナンバーズの差別に心を痛めるユーフェミアらしい疑問だ、と思いライルは少し表情をゆるめる。
「それも含めて、この作戦は私に一任していただきたいのです。失敗しても総督に損害はありません……どうでしょうか?」
「……良かろう。好きにするが良い。」
「ありがとうございます。」
黒の騎士団が移動拠点としているトレーラーでは組織幹部による会議が行われていた。先日、ナリタ蓮山とトウキョウ湾で壊滅した『日本解放戦線』の生き残りである藤堂鏡志朗とその部下である四聖剣の消息と共にどこからか流れてきた情報が今回の議題となっていた。
ブリタニアのメディアに務めているディートハルト・リートが説明する。
「シンヨコハマ租界で日本人を商品としたオークションが行われているという情報があります。また、次のオークションの正確な日時と時間も流れてきています。」
「オークションだと!?俺達日本人をなんだと思ってやがる!」
「売り物だなんて…」
情報を聞いた幹部達が憤りの声を上げるが、ゼロの関心は情報源に興味があった。
この情報、おそらくブリタニア側からリークした物。コーネリアと考えるのが打倒だが、あいつがこんな事のために我々を利用するとは考えにくい……となれば誰が。
麻薬の売買や汚職政治家などの対処もこなせるが、戦争が得意なコーネリアがこの類の情報をリークするとは考えにくいし、ユーフェミアは論外だ。考えられるのは警察や政庁の関係者だが…
「扇、そのオークションを潰すぞ。」
副司令の扇要は「良いのか?」と確認する。
「我々『黒の騎士団』はなんだ?」
「正義の味方です。」
ゼロの問いにこの中で最も若い少女…黒の騎士団のエース、紅月カレンが答える。その回答にゼロは「そうだ。」と返す。
「人身売買などという下劣な行為を許してはならぬ。故に、我々はその組織を壊滅する。」
シンヨコハマ租界にあるドーム。かつてのシンヨコハマにあったライブやイベントに使われた施設をモデルに造られているが、建造には汚職貴族が関わっている。ここでは月に一度、口に出して言えない方法で連れてきたイレヴンがオークションで売られており、多くの貴族が買い求める。男は労力、女は夜の相手として主に買い取られ、ゲットーで暮らすイレヴン達の苦痛など問題にならない程の待遇を受けている。
会場から離れた場所に数台のトレーラーが停車していた。民間から借り受けたトレーラーであり、今回ライルはそこを指揮所としていた。
「そして、このオークションにはマフィアの関与も疑われていた……」
トレーラーでライルは作戦目標の洗い直しと説明をする。説明を聞き終えた将校の一人に確認する。
「市役所に話は通しているな?」
「は。」
流石に、堂々と行っては気付かれてしまう。そのため、市役所にもごく一部を除いて伝えておらず、彼らも私服だ。
そのオークションに警察上層部も関与しているとの情報があることを幕僚達と共に計算し、軍や政庁の関係者もいる可能性を考え、指揮所もG-1ではなく民間から借りた大型トレーラーだ。その結果、敵に気付かれることはなかった。こういう時、KMFはトレーラーにも収容できるから便利だ。
敵も、まさか皇族の軍がテロリストと同じ方法を取っているとは思わないだろう。
「潜入調査員からの報告は?」
「既にオークション開始のために客達が入場を始めており、商品と思われるコンテナを積んだトレーラーが入るのを確認しました。」
ここまでは予定通り……後はゼロが餌に食いついてくれるかどうかだ。
「殿下…『黒の騎士団』は現れてくれるでしょうか?」
「現れた場合は状況次第で叩く。現れなければ、それでいい。ゼロに先んじたというアピールをするだけだ。」
ライルの応えに、フェリクスが微笑した。
「正義の味方がブリタニア軍に先を越された…というちょっとした嫌がらせにはなりますね。」
「嫌がらせ、ね。まあ…私としては出てきて欲しいんだ。」
「なぜです?」という士官の問いにライルは笑い答える。
「会ってみたいんだよ…ゼロに。」
そして…時間が来た。
〈殿下!『黒の騎士団』が現れました!〉
「本当に来たか……作戦開始!」
グロースターのコクピットで待機していたライルの号令と同時にトレーラーから『フォーリン・ナイツ』のグロースターが後に続く。
「目標はあくまでオークション会場だ!客、および関係者とおぼしき人物は全て拘束!また、『黒の騎士団』のKMFは敵機として対処せよ!『フォーリンナイツ』、一号機から四号機までは私に着いてこい!残存の『フォーリン・ナイツ』と親衛隊は逃走を試みる者達を拘束!最悪射殺も許可する!」
〈イエス・ユア・ハイネス!〉
『黒の騎士団』のKMFは全国のレジスタンスを支援するキョウトから渡された紅蓮弐式以外にはゼロと扇、玉城の無頼のみで後は歩兵だ。ゼロはオークションの主催者並びに客を拘束し、商品となっているイレヴン達の解放を目的として作戦を決行した。
〈け!ブリキ共め!俺達から逃げられるとでも…どわあ!!〉
突然玉城の無頼が撃たれ、右腕を損傷する。
〈KMF!?〉
撃ったのはナイトポリスとサザーランドだ。軍と警察のナイトメアがいるという事は、つまり…
「警察や軍もグルか…」
〈麻薬に続いて……アンタ達、腐ってるよ!!〉
紅蓮弐式のカレンが憤慨し、突っ込む。サザーランドがライフルで応戦するが、パイロットが素人なのかそれとも紅蓮が圧倒的なのか追い切れない。紅蓮は左手の機関銃でサザーランドを撃破し、右手でナイトポリスを掴む。直後、ナイトポリスのボディが膨張し爆発した。紅蓮の最大の武装輻射波動である。
「よくやった、カレン!後は商品となっている者達を…!」
〈そちらは既にこちらが保護した。〉
突然の第三者の声にゼロは無頼のカメラをドームの天井へ向ける。すると、天井からコーネリア軍のとは違う五機のグロースターが現れた。
紅蓮弐式が戦闘態勢に入るより早く、中央に立つグロースターがスピーカーで呼びかけてきた。
〈初めまして、ゼロ…ブリタニア帝国第八皇子、ライル・フェ・ブリタニアだ。〉
ライルだと?…なるほど、そういうことか。
ゼロの仮面の下の少年、ルルーシュ・ランペルージはこのオークションの情報源を悟った。
お前の活躍は聞いていたが…こんな事をやるくらいには成長した、ということか。
ライルはコクピットから出て、ゼロに呼びかける。
「まさか、こんな見え透いた手に引っかかってくれるとは思わなかったよ。自信があるのか、それとも単なる馬鹿なのか…おそらく、君の場合は前者だろう?」
ゼロは答えず、KMFから出てくる気配もない。余程出てくるのが嫌か、それとも自分が顔を出す価値が無い相手なのか……しばらくして、ゼロがコクピットから出て来た。画像で見たのと同じく、黒い仮面とマントで身を包んでいる。
「ライル殿下、貴方にお尋ねしたい事がある。」
「何か?」
「このオークションの情報は貴方がもたらしたものですか?」
随分とストレートに聞いてきたな…
「そうだ、君を誘き出すための罠であったが…どうやら状況からしてこの功績は山分けのようだ。しかし、自分で考えた作戦である以上私にも面子があるし、最低限の目的は果たしたい。」
ゼロが「ほう?」と笑ったように聞こえたが、ライルはかまわずに続ける。
「君たちが拘束したオークションの関係者並びに客を全て引き渡して貰いたい。そうすれば、この場は見逃してあげるよ…」
「断る。と言ったら?」
ゼロの白々しいとも取れる態度にライルは「わかっているだろう?」と挑発的な態度を取る。断ればライルはこの場でゼロを撃つつもりでいた。確かにあの赤いKMFは厄介な相手ではあるが、交戦した部隊から貰ったデータと特派からの情報で最大の武器はあの右手から放たれる輻射波動という機能だということはもうわかっている。あの右手さえ潰せば勝機は訪れるし、ゼロの機体はグラスゴーのデッドコピー機である無頼。自分と『フォーリン・ナイツ』の力量ならばこの場で勝つ自信がライルにはあった。更に保険として別の場所に待機させたトレーラーには親衛隊も控えている。
…どう出る、ゼロ?
出方を疑うライルに対してゼロが笑ったような気がした。
「良いでしょう。この者達は貴方にお譲りします。ですが、もしこの取引条件を破って攻撃を仕掛けた場合、こちらにも考えがあります。」
「第八皇子の地位……いや、枢木ゲンブ首相の方が良いだろう。彼の名にかけてそのような事はしない。」
正義の味方を謳っているとは言え、基本は反ブリタニア。ならば、刺激する恐れもあるとはいえ相手方の偉人ならばある程度牽制できる可能性もあるだろう。自分の地位よりはマシな程度かもしれないが。
「……信じましょう。この者達の証言データも送信します。」
「ブラフやウィルスがあった場合は…」
「先ほどの言葉をお返ししますよ……」
なるほど、『正義の味方』としての筋の通し方、といったところか。
「良いよ…商品となっていたイレヴン達の安全確保が最優先だ。」
ゼロは約束通り、オークションの主催者と客を全員引き渡した。モニターで確認した客の中には本国でも名のある貴族とマフィアの幹部の姿もあった。しかも、その中には政庁の関係者までがいた。
「ゲイリー、オークションの主催者と客をゼロから受け取った。それから、『黒の騎士団』は撃つなよ…」
〈殿下…!〉
「言いたいことは分かる……だが、主催者共と客はともかく被害者達は巻き込みたくない。統治者として、自国の不正の被害に遭った市民を保護するのも我々の役目の筈だ。」
〈……殿下がそうおっしゃるのならば、従いますが…総督はお怒りになりますよ?〉
「分かっている……だが、アレだけ周到な計画を建てられる男だ。何を仕掛けてくるか分かったものではない…」
そういわれれば、確かにゲイリーも気にはなる。何しろ、相手はコーネリアすら手玉にとったのだ。何を仕掛けているか、分からない。万が一、このドームを爆破でもされたら最悪中の最悪だ。
「建物に犯人共の証拠隠滅を兼ねた爆弾があるやも知れません。殿下もお早く。」
〈ああ、分かった。被害者達は政庁まで護送し、そこでしかるべき措置を取る。彼らにはもうしばらくコンテナの中にいて貰ってくれ。それと、主催者や客が逃亡を試みた場合は最悪射殺しても構わない。〉
「イエス・ユア・ハイネス。」
ライルは元々ナンバーズへの差別に良い感情を抱いていない傾向が強かったが、やはりこういう話題では寄り顕著だ。それが逆に首を絞める結果とならなければ良いが。
大まかな指示を出した後、ライルはゼロの事を思い浮かべる。
ゼロ……何の策も無しにこの場に来たとは考えにくい。一体どんな手を用意していた?
『日本解放戦線』の本拠地ナリタ連山では山崩れを起こしてコーネリアの部隊を孤立、シンジュクやサイタマでは暗号を読んで指揮系統に介入するという芸当をしてのけたゼロ…一体どんな策を用意していたのか……
〈なあ、ゼロ。本当にあいつ信用できんのかよ?〉
玉城の問いにカレンも同様の質問をする。
〈ライルって言えばコーネリアと同等かそれ以上の実力者で『ブリタニアの狂戦士(バーサーカー)』って呼ばれているんですよ?商品の人達を殺すなんて事は…〉
「案ずるな。奴についてはある程度調べがついている。」
〈ある程度って…〉
扇が半信半疑に聞き返し、ゼロは彼らの疑問に答える。
「ライルはナンバーズの人権向上による治安の安定を掲げている。」
〈人権向上?偉そうに!そうやって丸め込もうって言うの!〉
カレンが憤慨するが、ゼロは続ける。
「だが、実際に支配を推し進める上では有効だ。ブリタニアの植民地政策がナンバーズを労働力とするのは知っているだろう?」
〈それはそうだ…〉
扇が口を濁して言う。実際に自分達がそうなっている立場だ。ブリタニアの植民地政策にとってナンバーズは労働力として必要な存在なのだ。
「ライルはその中でも庶民や名誉ブリタニア人の採用に積極的であり、民間人の保護などにも力を注いでいる。各エリアに対しても名誉ブリタニア人制度の採用拡大を働きかけている。庶民やナンバーズからの支持は得ているし、それに賛同する貴族もいて植民地政策に協力する企業や政治家の支持者もいる。」
〈下手に弾圧するより、生活や人権を保障する形で反発を避ける。時間はかかるかも知れないが、鎮圧のために軍を派遣する予算にも余裕ができれば福祉にも力を入れられるというわけか。〉
扇が意図を理解した。そういう意味では、ユーフェミアと手を取り合われたら厄介かも知れない。基本的にライルは軍人ながらも穏健寄りで、名誉ブリタニア人の人権向上などを積極的に働きかけて……下手をすれば、彼もライルに着くかも知れない。
〈じゃあ、商品になっていた人達は……〉
カレンは未だに疑っているが、ゼロは「問題ない。」と言ってそれを封じる。
部下達との話を終えたゼロは仮面の中で息をつき、ブリタニア人の学生ルルーシュ・ランペルージに戻り、その左目に手を添える。あのシンジュクで手に入れた王の力……これがあったからこそ今の自分が、ゼロが、『黒の騎士団』があるのだ。
万一の場合、ライルを捕らえて聞き出そうと思ったが……まあ、良い。
幼い頃…まだルルーシュ・ランペルージが皇族の第十一皇子ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだった頃……ライルは家であったアリエスの離宮に遊びに来てチェスをしていた。殆どはルルーシュが勝っていたが、ライルは勘が鋭く、ルルーシュが敷いた陣形の僅かな隙を突く事が多かった。逆にポーカーでは負け越していた。より正確には例えワンペアでも相手に役がなければ勝てる……それで勝負するタイプで、勝負を降ろされることの方が多かったかも知れない。
そして、今は兵の質においてはコーネリアの軍以上と噂される軍を率いている。あのシンジュクの時からの因縁である白い新型KMF…白兜とコーネリアにライルも加わった三者を一度に相手にするには駒が決定的に不足している。
今回、ゼロは正義の味方の本懐を優先しました。
被害者の安全を最優先するという共通認識でゼロを見逃したライルですが、当然コーネリアは怒ります。
ただし、ゼロにとってもライルとコーネリア、ランスロットを一度に相手にするには手が足りないから今回は避けました。ゼロから見れば、『戦えば勝てる相手だが、駒の基本能力ではコーネリアの軍隊より差が大きい』。