コードギアス 戦場のライル   作:meitoken

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タイトル通り、今度は『ユーロ・ブリタニア』の内乱、そして逃げた奴らの末路です。


WARFARE-36『揺らぐ大貴族』

「人を支配する最善の方法は…恐怖だ。それも正体の見えない恐怖ほど、人を圧するものはない。」

 

サンクトペテルブルクのカエサル大宮殿の司令室ではヴェランス大公と『四大騎士団』の総帥、大貴族の代表達がモニターに映ったあまりに凄惨な状況に言葉を失うか、これを引き起こした男の手腕と悪辣さに戦慄していた。

 

この状況を前にして、ただ一人笑っているのはジュリアス・キングスレイ。本国から皇帝が派遣した軍師だった。

 

外道が!

 

『ラファエル騎士団』総帥のファルネーゼもその一人。市民を導く、『ユーロ・ブリタニア』の騎士としてこの状況は容認できるものではなかった。

 

『方舟の船団』、それはブリタニア本国やE.U.の一部の者達が気付いていたように『ユーロ・ブリタニア』の謀略だった。しかし、それは全てこのジュリアスが仕組んだこと。グリーンランドの旧日本企業の工廠で建造したフロート搭載艦ガリア・グランデを衆目にさらし、発電所爆破の動画とハリボテの爆弾であたかも実在するテロ組織を作り上げたのだ。

 

「ヴェランス大公閣下、全軍に進撃命令を。」

 

だが、大公はこの状況そのものを忌避していた。

 

「今ユーロピアに進撃すれば、大勢の無辜の民を闘いに巻き込んでしまうではないか!」

 

それは彼らの望むところではない。かつて祖先を追放したとはいえ、本来彼らが慈しむべき民達なのだ。

 

「無辜の民?」

 

が、ジュリアスはそれをあざ笑うかのように復唱した。

 

「市民の犠牲を気にしていては、勝利を得ることなどできはしない。」

 

「キングスレイ卿!」

 

余りにすぎた侮辱にヴェランスも立ち上がるが……

 

「皇帝陛下は勝利のみをお望みだ……貴方は皇帝陛下のご命令を軽く見過ぎておられる。」

 

まるで、こちらの心境を計るかのような物言い。

 

「いや、反逆の意志がある。」

 

ヴェランスは何も言えない。

 

「貴公を皇帝反逆罪で幽閉する。」

 

ヴェランスらは悟った。この男は、欧州戦線をより速やかに進めるために派遣されただけではない。E.U.制圧の暁には、こちらが本国からの分離・独立を図っていたこと自体を既に見破っていた!いや、むしろ本当の狙いは『ユーロ・ブリタニア』を完全に本国の影響下に置くことが目的だった!?

 

「謀ったか!」

 

側近のミヒャエル・アウグストゥスも真意に気づき、『ガブリエル騎士団』のゴドフロアが立ち上がる。

 

「貴様!我が大公閣下に向かって、なんという!」

 

ジュリアスに掴みかかったゴドフロアをスザクが飛び蹴りで退け、間に入った。

 

「キングスレイ卿に歯向かうは皇帝陛下への逆臣の罪を免れないと知れ!」

 

これまで状況を静観していたシンが立ち上がった。

 

「この場はキングスレイ卿の命令に従うが、大公閣下のためと思われます。閣下、どうか。」

 

「シャイング卿…!」

 

そう、確かに権限の上で言えばこれ以上の反抗は大公の立場を悪くする。反逆の意志がないことを表向きだけでも証明するのが常道だ。

 

シンが正しいのは誰でもわかるが、宗主の幽閉に従うシンの言動の方が彼らには信じられなかった。

 

 

 

エミリアン・アブラーム……ストラスブール基地の司令官の将軍だが、彼は僻地の基地よりも快適で絶対に安全なパリの統合本部の勤務を望んでいた。入隊してから、実家のコネで安全な後方勤務でうまく立ち回って、ようやく基地司令かと思えばあんな辺鄙な町に造られた基地の司令官。

 

あのピエルス将軍の娘がきたから、少しは潤うかと思えばガードが堅い。部下の小娘も同様だ。しかも、上司と部下がそろって前線勤務を希望しており、それをあしらうのにも苦労させられる。全く理解に苦しむ連中だ。

 

そして、この騒乱が発生したアブラームは即座に逃げることにした。外交官の家系出身だった彼は、実家のコネを活かしてブリタニア本国にもパイプがあった。手土産は、あの『w‐ZERO』のイレヴン共が乗る新型機のデータ。できればマルカル家かクレマン家の令嬢のどちらかも手土産か自分用に欲しかったが、仕方ない。今いる愛人を連れて、ノルマンディー基地から脱出せねば。

 

そう、実家のコネで多少低くても爵位を得て栄達する。いくら賄賂を贈っても、統合本部にスマイラスがいるためか中々それができないなら、ブリタニアで栄光を。

 

そう思いながら、オート・ノルマンディーのル・アーブル基地に到着した。名目はイギリス方面の軍との直接協議だが、既に基地司令官に話をつけて共に亡命する手はずを整えている。

 

が、車から降りたところで護衛に来ていた兵士が突然銃を突きつけた。

 

「な、なんの真似だ!?」

 

「見てのとおりですよ、アブラーム将軍。」

 

現れたのは、年配の男…この基地の司令官のオクタヴィアン・フィオ・マスカール准将だ。

 

「マスカール准将…これはどういうことだ!」

 

「分かりませんか?この騒乱を前に、責務を放棄して自分だけ逃げようとした将軍を取り押さえるのですよ。ああ、先に到着していたあなたの愛人はパリへ送還しました。そして、『w‐ZERO』の新型機のデータを盗んだ証拠もあります。痕跡をたどり、貴方の個人端末だと判明しました。もう、言い逃れはできませんよ?」

 

ば、馬鹿な?なぜ?ただの一般層の男が、革命に賛同した文官の末裔であるこの私を!?

 

「ま、待て!共にブリタニア本国へ亡命しよう!そのために私の護衛に着けば、君達も」

言い終えるよりも先に、アブラームは蜂の巣になってしまった。

 

 

 

マスカールはアブラームの死体を見降ろし、もう聞こえないであろう意志を言い放つ。

 

「責務を放棄した貴方を殺して、私はそれをもとに出世…と言いたいですが、これでも職業軍人なものでしてね。腐りたくはないから、こうしているんですよ。」

 

イレヴンの隔離収容に思うところがあるとはいえ、自分にそんな力はない。かといって、打開する力を得ようという意欲も沸かない。その力を得るには、すでにユーロピアはぬるま湯に浸かり過ぎていた。

 

なら、ブリタニアに負けても和平派として尽力できるだけの基盤を作って市民や家族のためにやろう。そのために、こいつには踏み台になってもらった。大体、こんな奴が亡命したところで皇族達が重用するとは思えない。いるとすれば、有事の能力など皆無の小役人か誰かの太鼓持ちくらいだろう。

 

「さて……無駄だとは思うが統合本部に事態を報告。ル・アーブル近郊から大西洋方面へ向かう航空機と船は全て押さえろ。」

 

 

 

ピエルスは妻と共にパリ脱出を図っていた。何とか他国との会談を名目に外へ出る車を手配し、その後『ユーロ・ブリタニア』へ亡命する予定だ。手土産は四十人委員会の議員リストと娘…『四大騎士団』の総帥で釣り合いが取れそうなのがあのイレヴンだけなのが痛い。だが、大貴族軍には最近イレヴンの若い娘を部下にしている若手貴族がいるという。その男に娘を差し出し、縁戚を得ればそれなりの地位を得られるだろう。

 

娘にそのことは伏せて、既に合流するよう伝えてある。そこへ、検問が見えた。

 

「どちらへ行かれるのですか?」

 

憲兵の問いに、ピエルスは自ら顔を出す。

 

「私はピエルス将軍だ……スペイン軍の知人が急遽、私に会いたいと言ってきた。」

 

無論、嘘だ。スペインに知り合いなどいない……だが、ピエルスは上手くいくと信じて疑わなかった。

 

〈下手な言い訳もここまで来ると大したものね、お父様?〉

 

突然、どこからか娘の声がした。辺りを見回すと、声の元は質問をした憲兵の無線からだ。

 

「クラリス?今どこに!?」

 

〈ストラスブールに決まってるじゃない…こっちは暴動の鎮圧やら何やらで大変なのよ?〉

 

「な、何を言っている!今すぐ『ユーロ・ブリタニア』へ亡命をするんだ!私もお前も死んで良い人間では…!」

 

思わず、本音が出てしまった。無線から、娘のため息が聞こえた。

 

〈そんなことだと思ったけど……もう少し、取り繕いなさいよ。ああ、それとそこにいる憲兵…ウチの同僚よ。本物はもう逃げちゃったの。〉

 

それの答えとして、憲兵がゴーグルとヘルメットを脱ぐ。出てきた顔はイレヴンだった。

 

「外人部隊所属…池田誠治旧日本軍少佐。貴方を国外逃亡及び内通の容疑で拘束します。」

 

他の憲兵達も一斉に銃を抜き、車のタイヤを撃つ。

 

「これで逃げられませんよ、将軍。」

 

「あ、ああ…ま、待て!私の護衛に着け!そうすれば…」

 

〈みんなあんたに着く気はないわ……娘の私が許すわ。二、三発ぶん殴ってから連れ戻しても良いわよ。〉

 

「了解…では、将軍。統合本部へお送りします。ご心配なく、将軍の安全は我々がしっかりとお守りします。」

 

そう言っているが、実際は自分を逃がさないための監視なのはピエルスも理解できていた。

 

〈さて、今すぐ統合本部で対策練りなさい……出来ればだけど。〉

 

ピエルスは訳が分からなかった。何故この私がイレヴンごときに拘束される?何故娘がイレヴンと共謀している?

 

KMFという兵器の有用性を見抜く目を持ちながら、それらを己の利益の追求にしか活かせないピエルスは理解できなかった。彼らは軍人であるということを。

 

 

 

行村は訳が分からずにいた。合流する予定の者達の死体が目の前に転がっていた。そして、後ろから突然殴られて意識を失い、目を覚ました彼の目に映ったのは海棠らの顔であった。

 

「うれしいね、わざわざ戻ってきてくれて。」

 

「か、海棠?何故だ…何故私を…いや、そもそも何故私の逃亡先が分かった!?」

 

「お前の部下の中に、海棠大佐に鞍替えした奴が紛れていたんだ。」

 

土田が回答し、セーラが侮蔑の視線を向けながら続ける。

 

「そ、ずっといやな役をやって貰ってたのよ………本当に逃げるとは思わなかったけど。」

 

「あんたには名声を獲得して貰う……他所の国のためにも命をかける勇者の名声を…その上で死んで貰う。軍人のくせに、野盗の真似して逃げ回るなんざ許さないぞ。」

 

橋本も同様の目を向けていた。

 

「わ、私は独立の勇者だぞ!こんな事を…」

 

「独立の勇者はゼロだ……俺達は只の負け犬。負け犬らしく無様に吠えて、噛み付こうや。」

 

海棠が殺気を込めて睨み付けるのが分かった……行村はそれに怯えるしか出来なかった。

 

 

 

鎮圧が一区切りした浅海は一度基地へ戻り、ため息をついていた。そんな彼女にオランダ人の同僚が声をかける。

 

「俺達の同僚も何人か逃げたけど、市民に見つかって殺された……散々お前らに楽をさせてきた罰が当たったんだよ。」

 

だが、浅海にとってそんなの慰めにもならなかった。

 

「私…今名誉ブリタニア人と同じ事をしているのよね?」

 

「…そうだな。」

 

「何となくだけど……分かる。あの人達、生活とか家族とかのためにこういう嫌な思いしてたのね。」

 

そこへ、デルクがやって来た。

 

「中には、お前達を馬鹿にしたE.U.軍人達みたいに反対派を馬鹿にするなり、憎むのもいるだろう。お前達のせいでまともな生活が出来ない、と。我々がゲットーの住民の恨みを買うように。」

 

そうか……ライルの言ったことが分かる。彼の部下達はみんなそういう人達なんだ………本当に独立したいなら、恭順派の恨みも買う…それを分かった上でやらないと駄目なんだ。

 

でも…出来るの?私に、そんなこと?

 

 

 

『方舟の船団』の作戦後、シン・ヒュウガ・シャイングから大貴族達に火急の用件で議会を開きたいという申し出があった。

 

ヴェランス大公は先の一件で現在幽閉されており、その直轄の『四大騎士団』の総帥達が招集することに問題はない。だが、彼らはシンが貴族どころかブリタニア人ですらなく、イレヴンであることを知っていた。

 

元々マンフレディとファルネーゼが拾った孤児であり、武術の腕を磨いて『ミカエル騎士団』総帥の次期後継者にして名家シャイング家の養子になったのだ。だからこそ彼らは憤っている。いかに貴族の跡取りとはいえ養子、しかもイレヴンが『ユーロ・ブリタニア』を統括する大貴族連合の自分達を招集する不遜な態度に。

 

彼らが陰口をたたいている間に件の人物が側近のジャン・ロウと共に現れ、中央の座に立つ。

 

「大貴族議員の方々にお伝えしなければなりません…神聖ブリタニア帝国の軍師、ジュリアス・キングスレイ卿を騙る男がゼロを名乗っていた賊であると判明しました。」

 

ゼロ、その名はブリタニアだけでなくE.U.と中華連邦にも知れ渡っている。二人の皇族を殺し、ブリタニアに大きな衝撃を与えた仮面の男だ。しかし、彼が中心となって起きた蜂起『ブラック・リベリオン』は失敗し、ゼロも現在『ナイトオブラウンズ』になっている枢木スザクに捕らえられ、処刑されたと公表されたはず。半信半疑の議員達にシンは更に事実を告げる。

 

「全てはキングスレイの企てた偽り。であるので……私が殺しました。」

 

本国からの使者を殺した。例えゼロであったとしても、公式では皇帝の使者だ。それを独断で殺すというあまりの暴挙に大貴族議員もどよめき、一人の議員が立ち上がり抗議する。

 

「待て、シャイング卿!本国への確認もしないでか!?」

 

「あなた方は本国の…皇帝に不満を抱いていたのではないのですか?」

 

確かに今の皇帝の体制に不満がある。正当な血統を持つ貴族である彼らは、皇帝とそれに忠誠を誓う貴族達の本国では傍流となっていた。それが不満の源泉で、『ユーロ・ブリタニア』の貴族達が抱く大半の感情。が、しかし…

 

「皇帝に表立って刃向かえば本国との戦争になるぞ!」

 

「ご覚悟なされるがいい………西はユーロピア共和国!東にはブリタニア帝国!『ユーロ・ブリタニア』が生き残るためには戦うしかないのです!!」

 

確かに、E.U.は父祖の大地を取り戻すために戦わなければならない相手。そして、本国の使者が本当にゼロであったのならば皇帝自身がゼロと繋がっていたことになる。しかし、彼らはまだ決断できずにいた。

 

「大公は!ヴェランス大公のご意見は!?」

 

「もう戦いは始まっているのです。武士の我々に全権をお任せください。」

 

大公不在のまま事を進めるシンに他の議員が反論するが、シンはそれを意に介さない。しかし、現状それを主張するのはシン一人。他の総帥達の意見が全くない事に疑問を持った議員が確認を取る。

 

「それが『四大騎士団』の総意か?」

 

すると、『ミカエル騎士団』の兵士が何かを持って現れた。

 

「残念ながら私以外の総帥達は戦いを恐れ、本国へ逃亡を図ったため…」

 

白い布を取り払うと、その上には人間の生首があった。それも『ガブリエル騎士団』のゴドフロア・ド・ヴィヨンと『ウリエル騎士団』のレーモンド・ド・サン・ジルのものであった。あまりの衝撃に議員達皆が狼狽える。

 

「ヴィヨン卿…!」

 

「サン・ジル卿がまさか!?」

 

これは大公から最大戦力にして象徴である『四大騎士団』の総帥達が裏切ったということ。彼らは『ユーロ・ブリタニア』でも最強格の騎士…それが裏切るなどと!

 

「『ユーロ・ブリタニア』が生き残るには戦う以外はない!私は大公の執政権と大貴族会議全権の委譲を要求する!!」

 

ゴドフロアとレーモンドが首をはねられたのならば、ファルネーゼも。もはや、大貴族達に選択の余地はなかった。

 

 

 

海岸沿いのとある基地…すぐ近くに『ラファエル騎士団』のG-1が放置されていた。

 

そこは『ラファエル騎士団』の緊急用の拠点の城だ。一室の扉が開き、返り血を浴びた『ラファエル騎士団』の兵士や幹部と共にファルネーゼは入る。

 

「賊は『ミカエル騎士団』と思われます!」

 

「シャイング卿だ。奴はマンフレディを殺したのだ…そして私も。」

 

彼らは賊の襲撃を受けた。しかもKMFは味方の識別信号を出していたので、完全に虚を突かれることとなった。『ラファエル騎士団』は多くの犠牲を出し、かろうじてこの城にたどり着いた。

 

「『ガブリエル騎士団』、『ウリエル騎士団』、総本部との連絡も取れません!」

 

この事態を知らせようとした兵士の報告にファルネーゼは事態を確信する。これは自分だけに向けられた刃ではないということを。

 

「『ミカエル騎士団』の襲撃を受けたか。総帥達は殺されたな……」

 

ファルネーゼは中央の椅子に腰を下ろし、返り血の着いた手袋で額に手を当てた。

 

「ヒュウガ…許さぬ!」

 

あの時、マンフレディと共に彼を拾いその武術の腕を磨きそれをファルネーゼも見守ってきた。エリア11が成立しても彼がブリタニア人の国籍を得られたのは他でもないマンフレディが保護者となっており、シャイング家に彼を紹介したからだ。だが、奴はその恩を刃で返した。

 

どうやったかは知らぬが、己が野望のために恩師であり、兄同然でもあった男を殺して『ミカエル騎士団』を乗っ取り、『ガブリエル騎士団』と『ウリエル騎士団』を滅ぼした。奴の目的が『ユーロ・ブリタニア』の掌握であることはもはや明白。大貴族達も彼の策に屈していただろう。

 

この事態を打開するためには、大公閣下をお救いする以外にはない!

 

 

 

サンクトペテルブルグから東へ2000㎞以上離れた小さな都市…そこには襲撃を逃れた『聖ガブリエル騎士団』の騎士達が集まっていたが、彼らのKMFも彼ら自身も満身創痍であった。その一人、マルセル・コヴァリョフは『ガブリエル騎士団』の生き残り達に連絡を取ろうとしていた。

 

「駄目です!『ラファエル騎士団』、『ウリエル騎士団』共に連絡が取れません!」

 

「…くそ、シャイング卿め!これで間違いないな……!」

 

「何がだ?」

 

上官がマルセルに問い、マルセルは応える。

 

「マンフレディ卿は奴に殺された!何らかの方法で自決を演出したんです!『ユーロ・ブリタニア』を乗っ取るために……!」

 

「…この状況下では、確かに疑いようもないな。」

 

だが、この状況下では下手に動けない。彼らは完全に手詰まりになっていた。

 

 

 

スロニムから北へ500㎞程離れたリトアニアの拠点に総本部から脱出した『聖ラファエル騎士団』の部隊が逃げ込んでいた。その中にはルビー・メイフィールドもいた。

 

「ファルネーゼ卿とは連絡が着かないの?」

 

『ミカエル騎士団』の襲撃を受けた彼女らはかろうじて追撃を振り切り、ポーランドと国境を隔てたリトアニアに潜み、情報を収集していた。上官が殆ど殺され、なし崩し的に万全に近いルビーが暫定的な指揮官になっていた。

 

「はい!ファルネーゼ卿の安否も不明!『ガブリエル騎士団』と『ウリエル騎士団』も同様に…!」

 

他の2つも?まさか、あの子もこれに?

 

 

 

「お姉ちゃん…」

 

テレサ・スクラーリはシンの命令で『ウリエル騎士団』の本部を攻撃して以来、同様に攻撃された『ラファエル騎士団』にいる双子の姉・ルビーのことが気がかりであった。

 

「テレサ・スクラーリ。」

 

後ろからの声に振り返ると、そこには『ミカエルの三剣豪』と呼ばれるエース達がいた。

 

「貴様の姉は『ラファエル騎士団』の所属と聞く。」

 

『青の団』を率いるドレが確認を取り、テレサはうなずく。

 

「え、ええ……」

 

「何か知っていることはないか?」

 

『白の団』のショルツの問いにテレサはその真意を悟る。

 

「知るわけないでしょう!大体姉が本国に逃げようとしたのを知っているのなら私は姉に着きます!」

 

一瞬三人が怯み、『黒の団』のブロンデッロが前に出る。

 

「すまぬ、肉親の情を考慮しなかった我らの短慮だ。」

 

三剣豪が離れ、テレサは唸る。

 

本当に総帥達が逃げ出したの?大公閣下も連れずに?

 

 

 

トルコ州の首都であったコンスタンティノープルに『ウリエル騎士団』の生き残り達が集まっていた。ここは『ミカエル騎士団』の駐屯地でもあったが、ナルヴァの戦いの後に彼らはサンクトペテルブルグに移動している。まさかここにいるとは思うまい。

 

「くそ、何故『ミカエル騎士団』が…!」

 

ヴァルター・E・クルークハルトは固定された右腕を睨みながら毒づく。突然『ミカエル騎士団』に襲われた彼は他の騎士達と共に襲撃を逃れ、かろうじてここにたどり着いた。

 

「クルークハルト様!サン・ジル卿がシャイング卿に処刑されたと!」

 

「何!?そんなバカな!」

 

何故、サン・ジル卿がシャイング卿に殺されなければならない!

 

「それが…ヴィヨン卿と共に戦いを恐れ本国へ逃亡を図った、と。」

 

本国へ逃亡?そんなバカな!しかも同じタイミングでヴィヨン卿と『ガブリエル騎士団』も!?

 

「…謀ったのか、シャイング卿!」

 

 

 

アーネストも大貴族会議からの発表に目を疑う。

 

「キングスレイ卿がゼロ?しかも、ファルネーゼ卿達は逃げようとした?」

 

美恵にコーヒーを渡し、アーネストは事情を説明をする。

 

「本当でしょうか?本国の使者がゼロだったなんて…」

 

「分からぬ……だがそれなら『ナイトオブラウンズ』が護衛に着くのも頷ける。しかし、何故シャイング卿がそれを知った?」

 

「キングスレイ卿の顔写真とかは分からないのですか?」

 

コーヒーを一口飲んで、アーネストは「そうだな。」と応える。

 

「ペテルブルクに確認をする……シャイング卿に気付かれぬようにな。」

 

こうなってくると、マンフレディの自決も怪しい。状況的には明らかに自決だ。だが、ゴドフロア達が逃亡などという信じがたい話を聞かされると、疑わずにはいられなかった。

 

下手に探りを入れれば、こちらも何か仕掛けられる。当面は『ミカエル騎士団』の動向に注目するしかない。

 

 

 

 




クラリスの基地司令のアブラーム、見ての通り無様に殺されました。実はアブラームは掲示板時代にこの時点のダメ軍人としていたのですが、殺したマスカールは名無しだったのでしたが、名前が欲しいというリクエストで急遽考えました。

こちらの勝手な解釈で『ミカエル騎士団』に襲われた他三つの騎士団、生き残りを出しました。流石に本編でも全員死んだことはないでしょうから。

とはいえ、不意打ちだったから壊滅状態でしょう
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