コードギアス 戦場のライル   作:meitoken

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ガンダムSEEDと同じく、元は既にあるので一日から三日のペースでいけるかもしれません。

今年中に、せめてブラック・リベリオンや方舟の船団は終わらせたいところ。

暑いけど頑張りたいところ。


WARFARE-5『反ブリタニア』

ライルは先日の被害者達の元のゲットーへの移送を終えた。無論『フォーリン・ナイツ』と親衛隊、双方の隊員達を付き添わせている。あのオークションの収入を慰謝料代わりに手渡したが、それを誰かが巻き上げるようであれば止める監視も込みで。

 

そして……

 

「ライル様……少し休憩をなさったらどうです?」

 

飯田有紗だ。元々働き口を探していたそうだったので、彼女を小間使いとして側に置くことにした。困惑したが、作法などはエクトルが色々と教えている。

 

自分でも、どうしてそうしたのか……

 

西洋で言えば深窓の令嬢と思わせる清楚さと家庭的な雰囲気で従者用のロングスカートもよく似合う美貌だ。身体もその服の上からでも分かるほどに豊満である。気付かずに見とれていると、有紗から質問が来た。

 

「そういえば……この後……テロリストの鎮圧に行くんですよね?」

 

……無理もない。あちらの言い分はレジスタンスだ。自分が同じ立場になったら、果たして皇族として旗印になる気が起きるのだろうか?あの枢木スザクも場合によっては……

 

 

 

「……ああ。総督は先日に『日本解放戦線』……というより、『黒の騎士団』に煮え湯を飲まされて酷い損害を受けて再編の最中だから、そのつなぎにね。………私の知る限りでも初めてだよ、姉様がここまでやられたのは。」

 

軍事のことはよく分からないが、コーネリアがブリタニアで最大級の軍隊を誇ってその能力が圧倒的なのは有紗も聞いている。

 

「『日本解放戦線』だって、負けたのに…ですよね?」

 

「いや、『日本解放戦線』の場合は指揮官の判断が悪かったのではないかと思っている。空爆で生き埋めにされるリスクを避けたかったのかも知れないが、KMFの運用方法等で負けていた。」

 

「えぇと……それって、KMFの性能や指揮官同士の能力差が大きかったということですか?」

 

確か、今の軍の主力は報道でも見るサザーランド。第五世代という分類で、戦争で使われたあのグラスゴーをより改良した機体だという。そして、ゲットーにいたときにネットの映像を見た事もあったが、コーネリアの親衛隊はライルの軍でも運用しているグロースターというエース用の機体だという。

 

「KMFの性能、基本練度もだが……私は一番の敗因は藤堂鏡志朗の存在だと思っている。」

 

藤堂鏡志朗……『極東事変』でブリタニアを唯一撃退した日本軍中佐。ハラジュクの大人達も彼がいればまだ負けない、と言っているのを聞いたことがある。『厳島の奇跡』…有紗も知っていることだ。

 

「『厳島の奇跡』って……KMF無しで勝ったんですよね?」

 

「そう…綿密な戦術構想と情報分析による戦術的かつ局地的、つまりその場での勝利だ。同国人の君には悪いが、彼だって勝ったのはそれっきりだ。それから間もなく、日本は降伏した。」

 

「…はい」

 

つまり、ライルが言いたいのはその奇跡を彼がもう一度やってくれるという期待が敗因では、ということだ。

 

「だが………市民達は彼の勝利に縋って、政府や軍上層もやたらと持ち上げた。その結果……一般人や正規軍部隊の自爆…所謂カミカゼが横行した。その果てに、彼の奇跡に軍人達さえ目が眩んだ上に…」

 

「イレヴンは死ぬのが大好き、ですか?」

 

後ろから声がした。入ってきたのは、眼鏡の少年……ライルの軍学校時代の友人というフェリクス・D・ヴィオレットだ。

 

「……ノックくらいしろ。」

 

「失礼……まあ、今の話を続けますと、それが原因で我々ブリタニア人、そして貿易パートナーだったE.U.は貴女達日本人を死ぬのが大好きだと思い込んだ。」

 

いくら何でも酷い偏見だ。有紗もそればかりは流石に怒りを覚えた。

 

「くだらない偏見だ……だからどんどん死なせよう、いくら殺しても良いなんて愚か者が溢れかえって、私まで同類扱いされるんだ。だが……先方も先方でその偏見を認め、他人にやれと言う輩までいそうだ。」

 

憤っている。彼が『ブリタニア人はナンバーズに何をしても良い』、という考えが嫌いなのは自分達への対応でもある程度分かった。が、だからといってナンバーズに無制限に寛大なわけではないんだ。カミカゼや切腹をやたらと称えて、それを美化するイレヴンを嫌っている。

 

有紗もゲットーでそういう考えを聞いたことがある。あの頃はよく分からなかったが……深く思い出すと、小学校時代の同級生の男の子が何人かそれに憧れていた。自分もそういう風にブリタニアと戦いたいと。

 

「さて……美人の小間使いと愛を語るのはこの後、生きて帰ってからに。」

 

「愛…!?」

 

「冗談ですよ………でも、エクトル以上に気を許せる相手かもしれませんよ?」

 

エクトル以上?確か、彼とは二年ほどの付き合いだと……軍学校を出て間もない頃もあくまで身の回りの世話として遠征に同行しているとか。フェリクスも伯爵家の息子で、男性の友人の代表だと他の女性兵士から聞いた。

 

「イレヴンの私が……そういうのって。」

 

 

 

テロリストの鎮圧のためにG-1を借り受け、全員の出撃任務も整ったが………

 

「例のイレヴンの娘ですか?」

 

ゲイリーの質問にライルは睨み付けて返す。

 

「イレヴンは死ぬのが大好きだから、自爆するとでも言いたいのか?」

 

「いえ…そこまでは。」

 

「だったらなんだ?テロリストの内通者だから、処刑しろと……彼女が邪魔ならはっきり言え。大体、誘導をしたいならもっと良い手を使ったらどうだ?」

 

「申し訳ございません。」

 

同じく意見してきた幕僚の一人が縮こまった。ナンバーズが反抗の恐れがあるというが、大体それを招いているのはブリタニアの各国への侵攻だ。そのあたりを理解しているだけ、ゲイリーは頼りになる。

 

「大体、それなら名誉ブリタニア人制度自体…植民エリア政策自体が間違いなんだ。国が広がったって、人間の数が追いつくか。」

 

「そ、それは…仰りたいことは分かりますが。」

 

「エリア制度を維持したいなら、否が応でもナンバーズ出身者も起用しなければいけないんだ。遅かれ早かれブリタニア人だけには限界が来る。ブリタニア人がナンバーズの二倍以上働けるというのなら、証拠を見せて欲しいね。どちらも手足すら二本ずつしかないというのに。」

 

 

 

そのための『フォーリン・ナイツ』……耳にたこができるほど聞かされたが、主張そのものは理解できる。貴族だからと言って、戦場で死なないなどあり得ないし銃弾は外れてくれない。とはいえ、ライルのはやりすぎだというのがゲイリーの主観だ。

 

平民からパイロットを集めるのは悪くない。親衛隊の中にも平民出身者がいるし、実際に優秀だ。あのジュリアの幼馴染みの彼女は極めつけだ。

 

だが、ナンバーズ出身者はやり過ぎだ。実力主義を掲げ、出世の機会を与える。軍でそのモデルケースを作り、それによって恭順を推し進めて、ゆくゆくはナンバーズの人権向上による治安の安定と各エリアの発言権向上。それがライルの政治思想だ。つまり、教育も固めて同じスタートラインで競走しろというのだ。

 

『ブリタニア人がナンバーズより上なら、スタートが同じでも問題ないはず。それとも100メートル走といって、自分達だけ10メートル走をしなければナンバーズに勝てないというのですか?』

 

ナンバーズに優れた人材などいない、と言った貴族をそうして黙らせたのは記憶に新しい。元々燻っていた疑念がジュリアの事件で一気に爆発し、今の考えに行き着くのは分かるが急すぎる。

 

「いや……ブリタニアのやり方が殿下から見れば元々悪い意味で極端なのか?」

 

 

 

作戦前に有紗が入れてくれたアイスティーを飲んで、ライルは敵の情報を洗い直していた。この規模なら、十分にやれるが油断はしないでいこう。

 

ポーカーで例えれば、相手がワンペアでも自分に役がなければ負ける。だから、油断しないということだ。それはいいが……

 

「殿下、彼女を連れてきたんですね。」

 

「ああ……姉様やエクトルがいると言っても、私が権限で小間使いにしたようなものだ。家柄だけの手合いが何をするか。」

 

フェリクスは内心、ため息をついた。つまり、エクトルやコーネリアは信頼しているが他は信用できないから手元に、と言うわけだ。

 

「国是に背いているような貴方の方にも非があると思いますけどね。」

 

「教条主義と一緒にするな……大体、私の軍内部で区別しているじゃないか。」

 

「屁理屈の気がしますが。」

 

只でさえ、名誉ブリタニア人の歩兵達と一般兵で分けるのは大変だ。こちらはKMF部隊までだから尚のことだ。

 

「さて、切り替えて任務に集中しましょう。」

 

「ああ…」

 

 

 

アキタのテロリストはさほどの規模ではなかった。日本軍時代の戦車を有しているという情報と共に日本軍人がリーダーというだけあって動きは速かったが、やはり素人が大半であった。一機のKMFで戦車を引きつけてもう一機が撃破する各個撃破で戦車の数を削り、更にKMFに気を取られた他の戦車や砲台を名誉ブリタニア人兵士達の装甲車と歩兵隊の小回りで攪乱、バズーカや手榴弾で撃破していくことが出来た。そして、彼らを拠点へ追い込んだ。

 

「投降せよ。一般兵達については、命だけは奪わぬように総督に直訴する。」

 

だが、彼らの答えは玉砕だった。再三の降伏勧告も拒否し、最後は一人残らず自分を銃で撃ち抜くか、切腹をした。

 

ライルはむなしさと同時に怒りすら抱いた。

 

これでまた貴族は……『それ見ろ、イレヴン共は死ぬのが大好きなのだ。』、『ですから殿下、あのイレヴンの小娘も死ぬのが大好きなのですからさっさと殺しましょう。』

 

等と、有紗を指して言うんだ。

 

ふざけるな!だったら、自分達はどうだ!!屈辱ある生より誇りある死を美化しているくせに!!

 

ライルに言わせれば、騎士も侍もそこは似通っている。なのに、自分達だけは特別だとでも言うのか?

 

 

 

G-1で指揮に回っていたフェリクスは、ライルは今頃腸が煮えくりかえっていると想像できた。

 

「これは…殿下が快く想わない者達は彼女をスパイだとか言いそうですね。」

 

そうなったら、おそらくライルは酷く怒るだろう。何しろ……『フォーリン・ナイツ』に自爆をやらせようなどという作戦を進言した幕僚に

 

『なら、まずお前がやれ。でなければ採用しない。』

 

その一言で威圧し……

 

『戦術的に邪道やヒューマニズムが駄目なら……自爆作戦なんて効率が悪すぎる。人件費もKMFの調達費用も無駄に浪費する。それなら、納得か?』

 

軍隊において、至極真っ当な理屈をぶつけてきた。実際、高価なKMFをナンバーズに使わせているのだ。であれば、相応の成果を上げて貰わないと帳尻が合わない、と予算担当も言っていた。

 

これだけ言えば、流石に黙るしかなく…以後、少なくともライル軍の幕僚では名誉ブリタニア人部隊の生還も考慮が行われるようになった。大体からして、そんなことをやらせる指揮官が将兵に信頼されるわけがないのだ。ナンバーズの人権向上による治安の安定を目指すライルにとって、それは絶対にしてはいけない選択だ。

 

『予算の観点でそうしてくれただけでも嬉しく思うべきなのか?』

 

とライルはぼやいていた。ライルにとっては、そういう観点でも皇族から言わないとやらないこと自体が不服だろうが。皇族が言ったからやってくれるだけマシだと、フェリクスは窘めた。

 

「全く、世話が焼けるんだから。」

 

 

 

帰還後……ある貴族が私的に開いたパーティーに招かれたライルはフェリクスともう一人、親衛隊のセヴィーナ・マルククセラを護衛に読んだ。セヴィーナは平民出で、男装の麗人ジュリアとは家が近く幼馴染みだった。そして…自分を憎んでいる。だから親衛隊にした。憎まれているという意識を持ち続けるために。

 

コーネリアとユーフェミアは流石に貴族達に囲まれているが、ライルもそれなりに囲まれていた。当然と言えば当然だ……

 

「殿下、このエリア11でも華々しい戦果を上げておられるようですね。」

 

「ありがとうございます。しかし、本当に華々しいのは姉上でしょう。先日もこのエリアで最大の規模と謳われた『日本解放戦線』を壊滅させたと聞き及んでおります。」

 

「いえいえ、貴方のご活躍もコーネリア総督に勝るとも劣らないと聞いておりますよ。」

 

心にも思っていないことを言って自分のご機嫌を取ろうとしている。ライルが社交場でのそういった面を感じるのに時間はかからなかったが、決定打となったのはジュリアの死後だ。

 

「では、失礼いたします。姉上に挨拶に伺いたいので。」

 

「おお、そうでしたか。これはご無礼を。」

 

貴族が立ち去るのを確認し、ライルはフェリクスに声をかける。

 

「姉様とユフィに挨拶したら、適当に逃げられないかな?」

 

「お気持ちはお察ししますが、我慢してください。」

 

そして、隣のセヴィーナも……

 

「大体、私のような平民も取り立てるというアピールもしたいんだろうが。」

 

それは…確かにそうだ。仕方ない……

 

「二人とも、一緒に来てくれ。」

 

ライルは二人を連れて、コーネリアに挨拶をした。今回は唐突だったこともあり、コーネリアはいつもの軍服だ。

 

「アキタの方はご苦労だったな……」

 

「いえ……結局、一人として捕縛は出来ませんでした。」

 

「……セップクか。」

 

「…姉様まで、イレヴンは死ぬのが大好きだからどんどん死なせよう等という戯れ言で私の部下達にもそれをやれと仰りませんよね?」

 

その言葉に、コーネリアは怒気を露わにした。

 

「私を愚弄しているのか?ナンバーズは我がブリタニアが庇護すべきなのだ。そのようなことをすると思うか。」

 

「……失礼しました。それと、このエリア11の名誉ブリタニア人兵士達…せめて政庁の将兵達だけでも選抜したいのですが。」

 

「…………好きにしろ。しかし、万が一の場合はお前だけでは済まされないぞ。」

 

「分かっています。」

 

「そうか……ならば、無理だけはするな。あのイレヴンの娘も、彼女の代わりなどと考えるな?」

 

あの事件はコーネリアも知っていることだから当然だろう。だが…

 

「彼女の代わりって……」

 

「……どうしても、あのナンバーズ部隊のことで何かあったときは兄上に頼ると良いだろう。兄上なら私よりは良く計らってくれる。」

 

「シュナイゼル兄様、ですか…」

 

第二皇子シュナイゼルなら確かに頼りになるだろう。彼は帝国宰相を務めるだけあり、頭脳明晰でその思考も柔軟だ。新しい試みという意味ではライルと通じるかも知れない。大体、名誉騎士団の設立は彼の承認があったから通ったような物だ。

 

だが……どうもライルはシュナイゼルに全幅の信頼を置けない。これ以上借りは作りたくないのもある。確かに、信頼するにたる能力と人格はあるはずなのに……何か………そう、まるで本能が恐れているかのように。

 

 

 

ダークグレーのショートとコバルトブルーの瞳に黒縁眼鏡をかけたセヴィーナ・マルククセラはライルを憎んでいた。ジュリア・ボネットの幼馴染みで、一緒に遊んでいた彼女が騎士に任命されたときは素直に祝福した。だが…彼女は家族と共に殺されてしまった。

 

訃報を聞いたセヴィーナは貴族達の仕業だと直ぐに気付いた。だが…それ以上に………

 

葬儀で涙を流すライルに殺意すら抱いた。元はといえば、この男のせいだ。この男が騎士に任命したから、ジュリアは殺されたんだ。

 

だから、セヴィーナはライルを殺そうとした。ライルは抵抗をせずに受け入れようとしたが、それが逆にセヴィーナの神経を逆なでした。

 

『私は皇族だぞ、と言って命乞いしろよ…!』

 

『……したところで、殺すだろう?』

 

核心を突かれたが、死にたがっているその顔がセヴィーナに武器を下げさせた。

 

『…名誉ブリタニア人部隊を作ると聞いた。それは、お前なりの貴族への報復か?』

 

『……………復讐心があるのは事実だ。せめて、仇くらいは取りたい。』

 

その静かな、強い復讐心は本音だと思えた。ならば…

 

『だったら、私も親衛隊に入れろ。このまま腑抜けて殺されるなんて許さん……死ぬのなら、ジュリアを騎士にしたお前の判断が間違っていない証明をして見せてから死ね。』

 

銃を再度顎に突きつけたセヴィーナはライルを半ば脅迫した。第三者が見れば、間違いなく皇族弑逆だ。が、それでもセヴィーナはやらずにはいられなかった。そして、出来ることならばこの男も犯人も殺してやりたい。

 

『…分かった。でも、それで許してくれるわけじゃ無いんだろう?』

 

『当たり前だ……少しでも腑抜ければ殺す。』

 

それから、セヴィーナはライルの親衛隊に配属された。ジュリアの幼馴染みということで彼女の代わりだとか言われていたが……その不遜な態度と殺す契約を交わしていたような関係をライルが打ち明け、すぐにそれは解けた。代わりに、彼女はいつライルに牙を剥くか分からない猛獣という印象も根付いたが。

 

 

 

政庁で留守番をしていたエクトルは他の侍女と共に有紗にスカートの裾の持ち方や礼の仕方を教えていた。元々才能があったのか、彼女の成長は中々のものだ。更に言えば、ようやく働き口を見つけたということもあってか学ぶことに意欲的だ。

 

「ブリタニア人なら、貴族のメイドとして仕えるには十分な才能だったかも知れませんね。」

 

「…そう、かしら?私…ライル様に恩返ししたいだけだし……身の回りの世話しか出来ることがないから。事務や

KMFの操縦とか習った方が良いのかしら?」

 

それは欲張りすぎだ、とエクトルは窘める。そもそも教育水準の低いゲットーで彼女はそれなりの学力を持っているが、それでもまだまだなのだ。会話はともかくブリタニア語の読み書きのムラはある程度直さないといけないし、やることは山積みだ。

 

「上達は早いですからね……暫くは僕がフォローしながらお仕えしていきましょう。」

 

「実地研修ってことよね?」

 

「そうです。貴族では最低限の作法とか習いますけど、本格的に仕えるのはもっと幼い頃のケースもあるんです。」

 

「……私は、戦争で両親が死んだ後はゲットーで炊き出しの手伝いや地区の責任者の方の好意でそういう勉強はさせて貰ってたけど……」

 

戦争で両親が死んだ……それはエクトルも傷に触れてしまったという意識を抱いた。昔は国是に従ってナンバーズ相手にそこまで気を遣わなくても…というのがエクトルの考えだったが、ライルが名誉ブリタニア人の積極的採用を掲げ、簡単ながら名誉兵士達の事情などを聞いているときのライルが後ろめたい様に見えた。そして、こんな事を聞いた。

 

『昔……家庭教師に聞いたんだ。国をとられ、家や家族を奪われたんだからゲットーの人たちは怒るんじゃないの、って。』

 

ライルによれば、誰も納得する答えをくれなかったそうだ。だから……自分で納得する答えを探しているのかもしれない。

 

そして……確かに、彼女は本気でライルに恩義を感じているのだろうが、やはり国や家族を奪われた恨みもあるのだろう。

 

それを切り離す……あの平民の女性の事件での憎悪を親衛隊のセヴィーナどころかライルだって切り離すことが出来ていないのに。

 

気丈な人なんだ………

 

 

 

ライルはそれから、貴族達の応対に追われていた。娘を紹介されたり、遠回しに交際を迫られたりと…いつもの通りだ。

 

「そういえば、殿下…イレヴンの娘を小間使いにしたとの噂を耳に致しましたが?」

 

「ええ……マフィアの被害者で、行く宛もなかったそうなので。」

 

相手には無邪気な善意もしくは気紛れに映っただろうか?

 

「でしたら、殿下…その娘、私が引き取りましょうか?代わりと言ってはなんですが、ゲットーから…」

 

「……聞かなかったことにします。それとも、今この場で総督に告げ口しましょうか?」

 

コーネリアの名前が出て、流石に相手は怯んだ。

 

「申し訳ございません。戯れが過ぎました。」

 

退散に追いやり、安堵しながらもうんざりしていた。ナンバーズの積極的採用を、奴隷か何かと勘違いしているのか?

 

確かに『フォーリン・ナイツ』は反ブリタニア勢力から『売国騎士団』、『奴隷騎士団』などと罵られている……そして、ブリタニアではいくらでも使い捨てられる道具。反ブリタニア勢力ならばそう言うだろうが、ブリタニア内部でソレ以外見られないのはもはやうんざりだ。少しは違う見方を出来る人はいないのか?

 

何か飲もうと思ったとき……一人の少女が目にとまった。年齢はライルやユーフェミアとほぼ同年代で、結い上げられたダークグリーンの髪と血のように赤い瞳が印象的だ。顔立ちも整い、控えめな露出度のドレスに身を包んだ彼女の眼は自分と似ていた。このパーティーがつまらない、といったような眼だ。もしかしたら話が合うかも知れない、という万に一つもないような期待を抱いてライルは彼女の元へ向かった。

 

「よろしければ、ご一緒に外へいかがです?」

 

「…え?は、はい。申し遅れました、クラウザー家長女サラ・クラウザーです。」

 

「ブリタニア第八皇子ライル・フェ・ブリタニアです。」

 

ライルはクラウザーという名前に聞き覚えがあった。確か、没落以前のアッシュフォード家に匹敵するほどの資産と影響力を持った貴族で、兵器開発…特に新型KMFの開発にも出資している。

 

「こんなところでクラウザー家のご息女とお会いできるとは。このエリアへはどのような目的で?」

 

「…父がサクラダイトの利権を求めてこのエリアに……私も今はアッシュフォード家が経営している学校に通っています。」

 

なるほど、とライルは内心頷いた。高温超伝導体製造に欠かせない鉱物資源サクラダイト…その鉱脈の保有数を巡ってE.U.と中華連邦も必死である。その中でも世界最大のサクラダイト産出国であった日本を手に入れることはブリタニアにとっては大きな利益であり、その利権を求める貴族が多くいる事、日本時代のコネでエリア11へ渡ったアッシュフォード家が学校を経営しているというのはライルも聞いている。たしか、クロヴィス暗殺犯として疑われた枢木スザクも通っているイレヴンとブリタニア人の共学とユーフェミアが言っていた。

 

「イレヴンとの共学……私も興味深いですね。ところで、このパーティーがつまらないと仰っていましたが?」

 

その問いにサラは顔を曇らせて外を見る。

 

「パーティー自体が嫌いなのです。いつも心にもないことを言って取り入ってくる人ばかり……父も母も私のことより家の方が大事で…今日のパーティーも殿下が来られるからと…」

 

それを言われると、ライルは彼女に対して罪悪感や後ろめたさを覚えてしまう。今日のパーティーで自分が彼女声を掛けたことで彼女の父はライルとの繋がりをより深くするようにと出てくるだろう。

 

「申し訳ありません…私のせいで。」

 

 

 

突然の謝罪にもサラは無反応であった。彼はこれまで会った男とは少し違うが、そういった謝罪もウンザリするほど聞いてきた。だから、馴れてしまったのだ。

 

「どなたか想い人でもいらっしゃるのですか?」

 

その問いもされてきた。そして、イエスと答えれば自分の方が家柄同士の釣り合いもとれるだろうと言い、ノーと答えればその相手になりましょう。どう答えても言い寄られるのだ。

 

「いるわけではありません。貴族である以上、いずれは政略でも結婚しなければいけないのは分かっているんです。でも……」

 

「でも?」

 

「…それまでに一度くらいは普通の女性らしい恋愛をしたいんです。」

 

これはサラの本音であった。だが、これまで出会った男は皆それすら利用する。彼とて例外では無いだろう………

 

「分かりますよ……私も普通の男として一度は身分や人種を無視した恋をしたい。一般庶民の学校ならある試験勉強やクラブ活動…友人同士の買い物………一般人にとっては我々の暮らしが雲の上と部下からも聞きますが、私にとっては彼らの平凡な暮らしが雲の上です。」

 

返って来たのは予想とはまるで違う答えであった。これまで会った男はそれも踏みにじるような男ばかりだ。だが、この人は違った。

 

「客観的に見ればさんざん贅沢をしているくせに、と思われるでしょうね。でも、私だって人間なんだ…人形じゃない。」

 

ライルの手が震えていた。怒っているのかも知れない…そして、悲しそうだ。いったい、彼に何があったのだろう?

 

「失礼、貴女に言ってもどうにもならないのに。出口までお送りしますよ。」

 

「あ…ありがとうございます。」

 

 

 

ホールの入り口で送迎のリムジンが待っていた。乗り込もうとするサラにライルは声をかける。

 

「今度…機会があれば貴方が通っている学校を見てみたいですね。」

 

その言葉にサラが笑顔を見せた。踊っていた時とは少し違った笑顔だ。

 

「学園祭がありますから、一般の方達に紛れ込めば良いのでは?」

 

リムジンが道路を通っていき、ライルはそれを見送った。

 

「サラ・クラウザーか……良い人だな。それにしても、同じ価値観の人とは探せばいるものか。」

 

 

 

サラは第八皇子ライルの顔を思い浮かべた。端正な顔にサファイアブルーの瞳、癖毛の前髪が印象的な灰色の髪…生徒会副会長の彼と勝負できるほどに整っていた。

 

「もう一度、会えるかな?でも…」

 

あの時、人形じゃないと言った彼の手は震え、僅かに憎しみが見えた気がした。あの言葉の意味は?

 

 




ちなみにライルはKMFに乗るとき、パイロットスーツは着ていません。コーネリアのようにパイロットスーツを兼ねた軍服でもありません。

常に連動性を上げない状態になれておくスタイルです。ガンダムで言えば、シャア、ハマーン、シロッコです。

ちなみに親衛隊で平民のセヴィーナは男装の麗人というイメージです。

アキトであったイレヴンへの偏見にライルは心を痛める…というより、その偏見で「どんどんイレヴンに自爆をやらせよう」という貴族だけでなく、『それを美化するどころか他人にやれというイレヴン』にも怒りを抱いています。
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