鳥人族に転生した男が銀河を渡り歩く話

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メトロイドを原作として書くのは初めてです


宇宙の渡り鳥

 皆さんはメトロイドというゲームをご存知だろうか。銀河最強のバウンティハンター、サムス・アランを操作して未知の惑星を探索し、装備をパワーアップしながらミッションの達成を目指す。そんなシリーズである。

 

 俺は、そんなメトロイドの世界に鳥人族として転生してしまった。鳥人族というのはこの世界において最も高度な技術を持つ長命種族のことだ。なお、原作開始時点ではほぼ滅亡しているが……

 

 ちなみに原作開始から百年くらい前だ。当然ながらサムス・アランはいないし、何なら銀河連邦だって影も形もない。鳥人族の少子高齢化は始まっていたが、その程度はまだマシなほうだ。

 

 鳥人族にはソウハ族とマオキン族という二つの部族があることは知られているが、俺が生まれたのはそのいずれでもなかった。銀河は広いのだ。原作に出てこない部族があっても不思議ではないだろう。

 

 俺の部族はワタリ族という。特定の居住惑星を持たずに星から星へと渡り歩き、生涯の多くを宇宙船で過ごす渡り鳥のような部族だ。その祖先は入植する予定の惑星に先んじて乗り込み、脅威を排除していた先遣隊である。少数民族であるのだが、他の部族と比べると若者が多かった。

 

「イーグルアイよ、そなたは我らワタリ族の掟を覚えているかね?」

「はい、長老。30歳に達したワタリ族の戦士は一人旅に出なくてはならない。私にもその時が……」

 

 イーグルアイ、それが俺の名だ。ハクトウワシのような姿の鳥人族の若者であり、部族の掟に従って一時的に巣立ちをする時が来ていた。次に帰ってこれるのは、50年以上は先だろう。

 

「イーグルアイ、付いて来なさい。そなたに専用のスターシップを与えよう」

 

 この年老いた鳥人は、ワタリ族の長老にして俺の育ての親の一人だ。両親が事故で亡くなり、俺には親がいなかった。そんな俺を長老が拾ってくれたのだ。

 

 長老に追従した先にあるのは、この巨大宇宙船の広大な格納庫だ。その中に一際目立つ漆黒でスタイリッシュなスターシップが鎮座しており、その傍らにパワードスーツの鳥人族がいた。

 

「イーグル、ようやく来たか!ガハハ、ついにあのチビが旅立つ時が来るとはな!」

 

 この豪快な鳥人族の男はワタリ族の戦士長であり、俺の父の兄だ。俺の伯父で、戦闘技術をこの俺に叩き込んでくれた第二の育ての親である。

 

「伯父上、これが私のスターシップですか?」

「あぁ、そうだ。お前が使うことを想定して準備した。思う存分、使うがいい。ガハハハハッ!!!」

 

 こんな感じだが、伯父上はワタリ族最強の戦士である。彼の自室にはこれまでに狩ってきた巨大原生生物や凶暴なエイリアンの頭蓋骨が転がっていたりする。

 

「イーグル、必ず帰ってこい。お前の実力なら問題ないと思うがな。今度会う時は酒でも飲み交わそうじゃねえか!」

「伯父上こそ、くたばらないでください。数少ない親族が帰ってきたら死んでいるなんて冗談は聞きたくないので」

「おう、言ってくれるな。まあ、互いにくたばらないように頑張ろうじゃねえか」

 

 そして、旅立ちの時が来る。俺はスターシップと同じく漆黒のパワードスーツを身に纏い、スターシップの上へと飛び乗る。

 

 振り返ると、ワタリ族の皆が見送りに来てくれている。みんな、血は繋がらないが俺の大切な家族達だ。

 

「では、行って参ります」

 

 俺は上部のハッチからスターシップの内部に入り、コックピットに座る。俺に合わせて調整されているので乗り心地は良く、操作系統も最適化されていた。

 

 スターシップが浮遊を開始し、その場で旋回しつつ部族の皆をその視界に収めて目に焼き付ける。もしかすると、これが最後になるかもしれないのだから。

 

 この世界は脅威に満ちている。この時点で発見されていないだけで銀河社会を滅ぼすような危険因子が当たり前のように存在し、鳥人族もそのような存在を創造する未来にある。

 

 俺はこんな世界で生き残らなければならない。そのためには力が必要だ。テクノロジー、武器、戦闘技術、人脈……何でもいい。必ず生存し、この世界の行方を見届けて老衰する。それが俺の目標だ。

 

「皆、お元気で……」

 

 この日、一人の鳥人族の若者が宇宙に旅立った。

 

 

 

 

 

 あれから50年以上は経過しただろうか。至らない所はあるものの、俺は一人前の戦士として認められるようになった。現在はコスモ歴2003年。銀河連邦の成立は秒読み段階に入っているところだ。

 

 様々な星々や種族を纏めるのは苦労の連続だ。銀河全体に影響力を残す鳥人族が各所に飛び回り、調整に調整を重ねた上で現在に至る。俺も何回か交渉に参加したことがあり、人脈もかなり広がった。

 

 銀河連邦が成立すれば、銀河社会は更なる発展を遂げることができるだろうし、銀河連邦軍による治安維持も期待できる。

 

 しかし、光の裏には必ず闇がある。そう、銀河社会の平和を脅かす脅威が現れたのだ。その名はスペースパイレーツ。星間航行する宇宙船を狙っていたならず者が集まった集団なのだが、近年はリドリーという司令官の元で一つとなり、勢力を強めているようだ。

 

 リドリーは後にサムスの宿敵となる奴だ。まだ出会ってはいないようだが、数年以内に彼女の故郷が奴と率いられたパイレーツに襲撃されて両親が死亡し、鳥人族に保護されるだろう。

 

 リドリーとパイレーツによる襲撃に介入することも考えたが、サムスが戦士にならないので未来が変わってしまうし、彼女がいなければ対処できない脅威もあるので却下だ。

 

 そもそも、リドリーに勝てる気がしない。弱腰だと思われるかもしれないが、奴はチート野郎である。並大抵の兵器では傷すら付けられない外皮に、恐ろしい程のフィジカルとその巨体から繰り出される近接攻撃、口から吐き出される強力な熱線……おまけに性格は好戦的で残忍である。それが大気中や宇宙を高速で飛行して襲い来るのだ。

 

 サムスが一人前の戦士になるまで、奴が倒されたことはない。残念ながら俺風情に倒せる相手ではないので、サムスが表舞台に現れるのを待つしかないだろう。

 

 それはさておき、俺はワタリ族の元から再び離れていた。追い出されたわけではない。銀河連邦の成立に向けて、銀河に蔓延るスペースパイレーツの掃討を命じられたのだ。

 

 この数年でかなりの数のパイレーツを討ち取り、基地を壊滅させてきた。奴らはゴキブリの如くしぶとい上に大量にいるので、これでも氷山の一角だ。俺がいくらパイレーツを狩ろうが、原作通りに事は進むだろう。

 

 そして今、俺の数メートル前をパイレーツの輸送隊が横切ったところである。

 

「気づかれてはいないようだ……」

 

 かなり距離は近かったのだが、気づく奴は一人もいない。生い茂った背の高い草の間に隠れ、クローキングデバイスで透明化しているからだ。

 

 パイレーツ部隊は全部で十人。甲殻類タイプのエイリアンで、戦闘用の装甲と前腕に固定された鎌、アームキャノンで武装している。一般的なパイレーツ戦闘員といえるだろう。

 

 俺は透明化したまま奴らの背後に出ると、弦のない弓のような武器を構える。名をビームボウといい、ビームの矢を飛ばす武器だ。また、リムの部分は完全に刃となっていて、そのまま振るったり分割して双剣にするなど、近接攻撃にも対応している。

 

 透明化して不意に現れ、ビームボウで狙撃するスタイルで大半のパイレーツを狩ってきた。そのため、奴らの一部は俺のことを“漆黒の亡霊”と呼んでいるらしい。

 

 手頃な岩に足を掛け、ビームボウを構えて引き絞るのだが、これがかなり重い。この間にビームを圧縮し、増幅しており、それが直に伝わってくるのだ。

 

 そして、パイレーツの一体に狙いを付け、引いている手を放す。同時に解き放たれたビームが矢のシルエットを形作り、空気を切り裂きながら飛翔。そのまま、奴の頭部を射貫いた。

 

「大当たりだ」

 

 頭部にビーム矢を受け、ドサリと倒れるパイレーツ。周囲のパイレーツもいきなりの攻撃に慌てふためいている。奴らに与える慈悲はないので、俺は二の矢を冷静に放つ。

 

 一人、また一人と地面と抱擁を交わしていく。何体か倒したところで奴らも矢の軌道から俺の場所を大体だが把握したらしく、集中砲火を浴びせてくるが、そこにもう俺はいない。

 

 俺がいるのは、お前達の側だ。

 

 奴らの背後で実体化し、ビームボウを振るって両側の刃で2体同時に首を切り落とす。地面に生首が転がった音で残りの3体が気付き、前腕の鎌を構えて一斉に襲いかかってくるが……

 

「遅い」

 

 ビームボウを分割して双剣に変え、三連撃を放つ。一つの斬撃につき一体だ。俺は一撃も食らうことなく、一瞬で切り伏せた。

 

 奴らの死体と物資が周囲に転がる。これでパイレーツ輸送部隊の排除は完了だ。奴らの行動を抑制することができ、こちらも物資を補給できるので一石二鳥である。

 

「気づかれる前に撤退するか……」

 

 左腕に装備しているコンピュータを操作し、付近に透明化して隠してあったスターシップを呼び出す。目の前に着陸したそれに乗り込み、この星から離脱した。

 

 俺は宇宙の渡り鳥。星から星へと渡り歩き、銀河の平和を乱す脅威を狩り続ける。それこそが、ワタリ族の受けた使命なのだから。


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