未熟な忍者と侮るなかれ!!   作:☆☆☆宮☆☆☆太郎

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大人なら一人で相手してみせたらどうじゃ?

☆☆☆

 

左近と蓮、二人の前に立ちはだかる男たち、服装は他の警備兵と大きな違いはない。だが立ち振る舞いは他の兵士たちとは明らかに違った。

 

(強い。間違いなく)

 

自分の強さと秘術の力に絶対的な信頼を置いている左近だが、正直に言うとこの二人を相手にするのは不安が残る。勿論一対一なら負ける気はない。

だが、仮に彼らが緻密な連携を用いてきたのなら、出会ったばかりで戦い方すらまともに知らない蓮とでは分の悪い戦いになるだろう。

 

だからこそ、左近は相手を挑発する選択を取る。安い挑発なんて乗ってこないかも知れない。それでもやらないよりはマシだろう。

 

「ふん、子供相手に頭数を揃えて来るとは格好悪いのう。大人なら一人で相手してみせたらどうじゃ?」

「いやぁ~、ほんとそうっすよねぇ。しかも聞いて下さいよ。リーダーったら、完璧な策、それは俺が行ってぶっ飛ばすことだ!とか言っておきながら、その後自分に一緒に来るように声かけて来たんすよ?ダサいっすよねぇ」

 

うりうりと軽薄そうな茶髪の男リックがリーダーと呼ばれた男の脇を肘で突く。

リーダーは突いてくる茶髪の男の肘を手で払い除けると不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「勘違いするな。お前たち程度俺一人で十二分に相手できる。問題は――」

 

そこで一度言葉を溜めると、リックへと視線を向ける。肝心のリックは急に向けられた視線に首を傾げる。今の会話の流れから何故自分に視線が向いたのか本気で分からないといった態度だ。

それに対し、リーダーは溜息を吐きながらも、リックを親指で指す。

 

「こいつが全くと言っていい程に団体行動に向いていない、という点だ。

ハッキリ言って、こいつを競技区画北地区に置くくらいなら俺が連れて行った方が役に立つ。」

「あれ!?自分を選んだのって信頼の表れじゃないんすか!」

「当り前だ。信頼という点で言えばお前よりもデイブの方がよっぽど信頼している。

 

…いや、デイブよりもお前の方を信頼している分野もある。」

「おお!それは?」

「戦闘だ」

「り、リーダー…」

 

リックはボロボロと泣き出す。そして――、

 

「俺、リーダーの期待に応えられるように頑張ります!」

 

やる気を漲らせた。どうやら感激のあまり泣いていたらしい。

 

やたらと個性の強いやり取りに左近は少し胸やけを起こす。何よりも狙っていた成果は出なかった。一人で相手出来ると豪語するのなら是非そうして貰いたいものだが――、

 

その思いから、挑発を兼ねて口を開く。まだまだ、左近の口撃は終わらない。

 

「ふん、物は言いよう。結局は二人で儂らに挑むための方便じゃろう。だっさいのう」

「好きに捉えて貰って構わん。所詮は子供の戯言、付き合う理由がない。ないが、まぁ、お前たちのような子供の要望を叶えてやるのも大人の義務か…どうだ?お前たちはそれぞれ、どちらと戦いたい?」

「なんじゃ急に二体一で戦ってくれるということかのう?」

「いや、こっちのリックも給料を貰っている身だからな。偶には働いてもらわなければな。ただ、一対一では戦ってやるということだ。」

 

(成程、案外悪くない提案じゃな。少なくとも二体二の状況と比べれば雲泥の差じゃ)

 

左近は蓮へと視線を向ける。すると蓮も左近の視線に一つ頷く。

 

「左近君はどちらと戦いたい?」

「儂はあの金髪オールバックじゃな。なんか偉そうでむかつくのじゃ」

「了解。それじゃあボクは茶髪のお兄さんに相手して貰おうかな?」

 

二人はそれぞれ、相手を指定する。

リーダーは快くその指名を受け入れる。リーダー自身生意気な子供の方が好みであったし、何よりも監視カメラ越しに観察していた左近の大立回り、奇怪な戦い方、正直に言って興味があったのだ。

 

「だそうだ。リックお前は何処か別の場所で戦え。ここは俺と向こうの小僧で使う。」

「え~、俺も移動とかしたくないんですけど…」

「リーダー命令だ」

「…了解。そっちのお兄さん、自分と一緒にもう少し戦いやすい場所に移動しましょうか」

「分かった」

 

蓮とリックが離れていくのを横目に左近は姿勢を低くし、臨戦態勢を取る。その態度に笑みを浮かべるとリーダーもまた、拳を構えた。

 

「それじゃあ。思う存分殺り合おうか!!」

「お主が地に這いつくばる姿が容易に想像つくわ!」

 

☆☆☆

 

商業施設の屋上、120台は車が止められそうな駐車場は激しい稲光と鉄をも溶かす火花でもって彩られる戦場と化した。芸術的とすら言える破壊の嵐。その中心で二人の男が対峙している。一人は雷電家の跡取り息子。もう一人はこの施設の警備を任された、リーダーと呼ばれる男。

 

二人の戦いその行方は――。

 

《秘術・飛翔電鞭》

 

「温いぞ!小僧」

 

本来、視認困難且つ、通電している影響で防ごうとしても感電してしまう雷電家の透針をリーダーは素手で掴む。

それに対し、左近は舌打ちを一つすると徹甲苦無を取り出す。初めは偶然かと思ったのだが、どうやらリーダーは雷撃を何らかの手段で防ぎ、且つ透針を認識する手段があるらしい。

となると、左近の取れる手は途端に少なくなる。

 

先ず初めに試すのは《空渦》を用いた投擲術だ。

 

片足を上げ、体を捻る。地面の反発力と全身を使って生み出した運動エネルギーを苦無へと乗せて飛ばす。苦無は常人では反応できない速度で飛んでいく。

けれど――、

 

「成程!これは脅威だ!」

 

リーダーは腰から二本のナイフを抜くと、いとも容易く切り払う。300メートル先まで届き鉄板をも貫く苦無だ。反応できたとしても本来ならそう簡単に切り払えるものじゃない。それをああも簡単に切り払う。

 

(奴の動きは人の範疇を超えておる。特異体質か?)

 

その考えが脳裏に過る。日本では古くからその存在を受け入れ、戦力として活用してきたが、何も、それは日本だけの話ではないだろう。外国に秘術使いに類する一族がいても可笑しくはない。若しくは突発的な特異体質持ちという可能性もある。

 

「戦いの最中に考え事か!?感心しないな!」

「ちっ」

リーダーは左近へと接近し拳を振るう。その攻撃を何とか避けるが、その際にコンクリートで出来た床が砕かれる。

拳を痛めた様子もない。

やはり――、

 

左足噴射機構起動(レフトバーニアオン)

 

その言葉と共に、左足の脹脛からノズルが飛び出し、火を噴く。その勢いに乗りながら左近へと突進してくるリーダー。体からノズルが飛び出してくるなんて()()()()()()()()()()

通常人体では絶対に実現出来ない動きに然しもの左近も回避行動が取れない。

このままでは諸に攻撃を喰らう。ならば――、

 

(逆に迎撃するまで!)

 

電撃を封じられ、対人武器の通じない相手に取れる手段は確かに少ない。だが、左近はまだ切り札を切っていない。

 

その名も《秘術・霆撃雷鈷》。電磁力と反り返った刀を用いた高速の抜刀術。強固な扉を一太刀の下に斬り伏せたこの技ならば人外の肉体構造を持つリーダーが相手でも致命打を与えられる筈だ。

 

リーダーの体は猛スピードでこちらに迫ってくる。仮に脛からもノズルが出てきて火を噴いたとしてももう止まりきれないだろう。

 

完璧なタイミングを狙う。リーダーの攻撃を避けることは出来ないだろうが()()()()()()()()()()()()()故に左近は恐れずに前に踏み出し、抜刀。超速の居合がリーダーの胴から下を切断する。

 

 

――ことはなかった。

 

「その攻撃は既に見た」

 

リーダーは左近の刃の一センチ外にいる。止まることは出来なかった筈だ。左近はリーダーが接近するのを待っていただけではない。一歩踏み出したのだ。それなのに、どうやって止まったのか、――その答えはリーダーの背中が語っていた。

 

「ワイヤー?」

「そうだ。噴射機構で加速しているとブレーキや前方への噴射だけでは止まり切ることが出来ないからな。緊急停止用のワイヤーを背中に仕込んでたんだ。」

 

そう言いながらリーダーは左近の胸倉を掴むと拳を握る。

現在の左近は隙だらけだ。思いがけない回避方法に呆気にとられたというのもあるが、元々《秘術・霆撃雷鈷》という技は使った後の後隙が大きい。そのため、今の状況は敵の奇策などが原因ではなく単純な実力。一人の戦士として完全敗北をした結果だった。

 

「さて、それじゃあ引っ掻き回してくれた礼だ。先ずは一発!」

 

余りにも重い一撃、サイボーグの拳が左近の左頬に直撃する。歯の砕ける音が辺りに響く。服が引っ張られ、耐え切れずに破ける。

けれど、そのおかげもあって左近は下に落ちていく形ではあるが、リーダーから距離を取ることが出来た。

 

「ふむ、力を入れすぎた」

 

リーダーは特に焦った様子もなく落ちていく左近をジッと見ていた。

 

☆☆☆

 

商業地区にある公園の一角、蓮は棒手裏剣を携え、リックは無手で戦っていた。

武器を使わない徒手空拳。字面ではリックが圧倒的に不利に思えるが、生憎とリックの体術は通常の体術(それ)とは一線を画していた。

 

足を蛸のように軟化させたかと思えばアコーディオンのようにそのまま縮め、凄まじい勢いで蓮へと迫ってくる。

更に、拳を硬化させるとその(かいな)でもって棒手裏剣を打ち払う。偶然にも同時刻に別の場所で行われている左近たちと似たような戦況。

けれど、決定的に違うのが――、

 

「痛った!あっつ!」

 

蓮の投げた棒手裏剣が通常の物とは異なるという点だ。

蓮の棒手裏剣は破壊力に重きをおいた爆薬搭載式の一点物。爆薬を搭載するに辺り、形状にも大幅な変更を加え、手裏剣の中程辺りが膨らみ、後部にはダーツやロケットの羽のようなものが取り付けられている。

爆発による攻撃力と正確に敵に着弾させる命中精度。その両立が叶った本人曰く傑作兵器なのだ。

 

その強力無比にして凶悪な兵器の一撃に、リックは大きく吹き飛ばされる。

縮めた距離が一気に離れる。腕からも血が流れ、熱によって所々爛れている。

 

けれど、それだけだ。

蓮はその状況に眉を寄せる。

 

「一体なんで?

それだけの傷で済む筈がない」

「ふふん、それは自分の能力に秘密があります。自分の能力は大きく分けて三つ!

一つは軟化、手足を滅茶苦茶柔らかく出来ます。この状態でも手足は自由に動かせるし、柔らかくしているから伸び縮みも簡単。そして二つ、軟化した手足を元の状態に戻せます。この時に物凄い速さで元に戻るのでその勢いを利用して高速移動とかが可能!そして三つ、硬化、手足を自由に硬くできます。これを使えば爆発もへっちゃら!問題は手足しか軟化も硬化も出来ないこと!」

「…それ、話してよかったの?」

「あっ」

 

二人の間に気まずい沈黙が流れる。

リックが目を逸らしながら、頭を掻く。

 

「あの~、聞かなかったことにして貰えませんかね?」

「それは…。

 

――無理な相談だね」

 

蓮は《空渦》を用いて棒手裏剣を飛ばす。先ほどとは威力と速さが桁違いだ。

胴を硬化出来ないのなら、先程の爆発は咄嗟に腕で胴を庇っただけの可能性が高い。なら、守りに入られるよりも早くこちらが攻撃を届かせればいいだけのこと。

 

単純だが、狙いは悪くない。問題は――リックが鞭のように腕を振るい棒手裏剣を弾いてしまったことだ。()()()()、鞭のような柔軟性と圧倒的速度でもって爆発よりも早く、全ての棒手裏剣を、だ。

 

「言ったでしょう?自分は手足を軟化させられるって」

 

リックは軽い口調で言ってのけるが、実際はあのひと振りを成立させるために複数の肉体操作を行っている。先ず初めに軟化によって腕を縮める、次にその腕を元に戻す。その勢いに身を任せながら再度軟化させる。そして最後に掌と拳だけを硬化させる。今の一時にこの四工程を詰め込むのだ。仮に同じ特異体質が存在してもリックと同じことを瞬時には出来ないだろう。自らの生まれ持った能力に胡坐を搔くことなく研鑽を積んできた証だ。

 

そのままリックは一直線に蓮の元まで走ってくる。

 

(この距離は分が悪いな)

 

けれど、蓮とて態々相手の有利な間合いで戦う趣味はない。

懐から爆薬を取り出すと、それを転がす。

ギリギリ、リックの手も足も届かない距離だ。

 

今まで血の滲むような研鑽を積んできたのは蓮も同様。この刹那に相手の間合いを見極めることも可能だった。

 

爆風に身を委ね宙を舞う。それも風の力を最大限受けられるようにむささびの術を使用して。

勿論、リックとて只で逃がす気はなかった。だが――、

 

「あっちも、こっちも、空からも爆弾が落ちてくるんですけど~」

 

蓮の置き土産の爆弾の処理に手一杯になっていた。

 

その隙に蓮は滑空し、ある場所へと向かう。

 

そこは――、

 

「…てっきり倒して来たのかと思ったけど…随分手ひどくやられたね。左近君」

「…油断した、だけじゃ。次は…」

 

GPSを持たせて常に位置を把握していた左近の(もと)だ。

左近に大きな動きがみられたため、接触を試みたのだが、どうやら状況は思ったよりも悪いらしい。今の状況も辛勝というよりは敵から身を隠し、休息しているように見える。蓮は敵の特徴を左近に尋ねる。

 

「敵の戦い方は?」

「体自体が、武器じゃ、比喩じゃない。肉体を改造しておった。雷撃も聞かん。」

 

(成程、それで彼がこっぴどくやられた訳か…なら)

 

「ボクに考えがある。」

「考えじゃと?」

 

☆☆☆

 

リーダーは左近を倒した後、トランシーバー片手に新兵達の報告を受けていた。場所は未だに商業施設の屋上だ。

 

『リーダー!敵をホテル街東地区で発見しました。()()()たちと共に籠城しています』

「ほぉ、なるほど」

『どうされますか?』

「軽くちょっかいを掛けてやれ。別に制圧する必要は無い。その場から動けないようにすればいい」

『了解』

 

さて、自分は雷坊主を追いかけるか、それとも瀕死の坊主はほっといてリックの様子を見にいくか、新兵達の手助けに行くのが正解か、リーダーは迷う。

 

どれも捨てがたい。楽しそうだ。そう胸躍らせていた。

 

 

――けれど、どうやらこれ以上迷う必要は無いらしい。

 

「次の相手はお前か、リックはどうした?」

「選手交代さ、向こうは左近君にお願いした。」

「成程、そうきたか」

 

向こうから旨そうな獲物がやって来た、そう思いながらリーダーは舌なめずりをした。

 




明日か明後日には更にもう一話投稿…したい!
出来そうならします。確定ではないです。
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