怪我をしたから遅れて田舎から出たけど幼馴染がとんでもないギルドを作っていた   作:蓮太郎

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1.俺、田舎を出る

 

「おう、アンタも都に行ってダンジョン潜るって腹かい?」

 

「まあな。ちょっと出遅れた感はあるけど」

 

「ふーん?兄ちゃんくらいだったらまだ若いと思うがねぇ」

 

「ちょっと、まあ怪我して療養してたんだよ。それで地元から出るまで遅くなってさ」

 

「そりゃあ災難だったな!ゆっくり休んだ分は稼ごうぜ!」

 

 馬車でガラガラとあまり整備がされていない道を御者のおじさんと談笑しながら一緒に進んでいる。

 

 俺、ソウ・ウルファンは人間として二度目の人生を送っている。

 

 言わるゆる前世持ちというものであり、最初の人生は良くも悪くも普通だった。しいて言うなら大した戦いもなく、あっさりと事故で死んで何も成せなかったくらいだ。

 

 そして二度目の生は、まだ20歳にもなっていないとはいえ恵まれている方だと思う。

 

 何故かというと、俺には戦いの才能があった。いわるゆ戦闘スキルというものである。

 

 この世界はいろいろと厄介ごとが多い。衛生面は目をつぶるとして、村を出たら野生動物よりも凶暴なモンスターがいたり、なんならそういった巣窟のダンジョンまで存在する。

 

 下手に出かけたら命の危機だ。そういった危機を抱えながら俺たちは生きていた。

 

 だからこそなのか、世界が過酷な人生を生きる人間たちに世界は救いを与えた。

 

 スキル、あまり使えないものもあれば他人の人生に簡単に干渉できるほど大きな力を持つものもある。

 

 俺はその中間だった。そして可能な限り鍛えて使えるものにした…………つもりだった。

 

 まさか、3年前の話ではあるが国の危機になるレベルのモンスターが村に現れるとは思いもしなかった。

 

 しかも幼馴染と一緒に都へ行くタイミングで、だ。

 

 おっと、幼馴染は男だからそういった関係とかはない。『お前女だったのかよ!』という展開もないほどに男と確認は取れてるから間違いは起きない。

 

 幼馴染は道具に関するスキル、俺は動きに関するスキルで何とか対応して生き延びることが出来た。

 

 俺は片腕が千切れかけて右目も潰れて、死者が何人も出た。

 

 それでも村で戦えた人たちで全力で戦って何とか撃退まではもっていけたが大怪我をしてしまい、長期間の療養が必要になってしまった。

 

 結果として都に行くのは幼馴染だけになって、ぼろぼろになった俺と村人たちで見送ることになった。

 

 あいつも色々あった状態で向こうに送り出したんだから、かなり不安だっただろうな。

 

 定期的に手紙は送ってくれているから無事であることは間違いない。

 

 思っているよりも順当に頭角を現してるみたいだし、所属してるところに俺を紹介してくれるって言うから持つべきものは友達だよな!

 

 とまあ、なんやかんやと上手く縁が出来たため万全を期して上京、ということだ。

 

 まあ、異世界だから東京はないけどな。

 

「むむ、馬が怯えているな。こりゃ何か来るかもしれねえ」

 

「そうか、まあ…………確かに来るな」

 

 物々しい気配、大怪我を負ったあの日からリハビリがてら鍛えなおしてスキル以外で身に着けた技術。

 

 多少離れていても敵意や気配を感じるようになった。

 

 あの日、あの時、強大だったモンスターは気配を消すことに長けていた。

 

 だから知らないうちに村の人が、仲間が狩られていき辛うじて俺と幼馴染と他何人か生き延びることが出来た。

 

 ダンジョンに潜ったらアレよりももっと強いモンスターがいる。

 

 それにダンジョンは狭いし暗いとも聞く。だったら常に周囲を知っておかなければならないんじゃないかって思った。

 

「来るぞ、それもちょっとデカいのが」

 

 オーク、太った人間に豚の頭がついたようなモンスター。ただし、サイズは普通の人間より大きいし力も強い。

 

 戦い慣れしていない人は簡単に殺される、それくらいの脅威を持つモンスターだ。

 

「あっちゃあ、俺は戦えないんだよ。馬もビビってるし、兄ちゃんは戦えるのか?」

 

「腕っぷしは少し自信がある。ちょっと行ってくる」

 

 馬車から降りて一つ伸びる。体は座りっぱなしで固まってたから軽くほぐす。

 

 そして立てかけていた剣を掴み、鞘を引き抜いて刀身を出す。

 

 …………何度見ても凄いよなこれ。幼馴染が上京記念にと都から送ってくれたものだが切れ味はすごいし、何よりも軽い。

 

 羽のように振り回せるから便利ではある。これ高かったんじゃないか?剣の質に関しては素人同然だから何とも言えないが、あいつが無理して無ければいいんだが。

 

「Bumoooo…………」

 

 ずしずしと3頭のオークが姿を見せる。

 

 広い鼻の穴から荒い息を吐き出しながら、ヒョロイ人間が出てきたと思っているのか口角が上がっている。

 

 その手には木でできた棍棒が握られており、よくみると血がついている。

 

 何人か仕留めた後か?じゃあ始末しておかないと後に被害が出る。

 

 息を吸い、そして吐く。

 

 吐いて吐いて、止める。

 

 その瞬間、世界がゆっくりになる。

 

 いや、俺が高速になるのだ。

 

 苦しい中で俺は走り出す。いつもよりも何倍、何十倍という速度でオークの横を抜け、そして元の位置に戻る。

 

 攻撃は既に終わっている。何故なら、あとは息を吸うだけだ。

 

「ぷはぁ」

 

「Bumo?Bo…………?」

 

 オークはバラバラになった。

 

 肉体に何本もの線が入ったとオークが認識した瞬間に、重力に従い肉が落ちていく。

 

 オークですら自身の死を理解する事なく死んでいった。

 

 これが俺のスキル。息を吐いた後に息を止めている間だけ超高速で動ける。

 

 割と短い時間しか動けないとはいえ、効果は十分。むしろ3年前のアレが異常だっただけだ。

 

 それでなお、俺はこのスキルを鍛え続けた。

 

 やろうと思えばもっと早く動けるが、今はそこまで力を出す機会じゃない。

 

「おっちゃん、終わったぞ」

 

「うおっ、早いなおい」

 

「どうする?アレの肉持って行くか?」

 

「いらん!血の匂いで馬が不安になる!」

 

「相変わらず馬の話ばかりだな」

 

「当ったり前よ、仕事の道具だからな!」

 

 ぱかり、ぱかりと馬が動き、馬車も進み始める。

 

 ゆったりとではあるが、3年の遅れを取り戻しつつ都へ進む。

 

 幼馴染がどう活躍しているのか、最近は一派をたてたとかなんかで随分偉くなったと手紙に書いていた。

 

 あいつの成長も楽しみだ。

 

 そして、その思いが吹き飛ぶほど弩級にえらい事になっているなど、呑気に考えていた俺は知る由もなかった。

 




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