怪我をしたから遅れて田舎から出たけど幼馴染がとんでもないギルドを作っていた   作:蓮太郎

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2.幼馴染、再会する

 

「おい、着いたぞ」

 

 馬車が止まり、降りるように促される。

 

 オークを斬ってから時間が空いたため休んでいた俺は荷物を持ち馬車から降りる。

 

 目の前には高く聳える城門がある。そして都を囲うように高い城壁も備えて圧巻だ。

 

 はっきり言って人間が10人縦に並んでようやく届くかくらいの高さだが、それには理由がある。

 

 この都の中心には大規模なダンジョンがある。

 

 かつて、ここはもっと無法地帯だったと昔話として聞いたことがある。

 

 穴からモンスターが湧いて出てきては周囲を荒らして地方は散っていく、そういうことを繰り返されて人類は危機に陥った。

 

 だが、勇気ある者たちが立ち上がり、ダンジョンから出てきた周辺のモンスターを駆逐、囲い込み逆にダンジョンへと侵攻したのだ。

 

 結果的にはダンジョン自体を潰すことはできなかったが、内部にあった潤沢な資源やモンスターの死骸を持ち出して村を作り、街を作り、都となった。

 

 この高い壁も外敵ではなく、万が一が起きた際にモンスターを外へ出さないようにする防壁である。

 

「んじゃ、俺は商人の列に並ぶからあとはしっかりしろよ!」

 

「ありがとな、おっちゃん」

 

 馬車の駄賃を払って俺は関所へ向かう。

 

 大規模なダンジョンがあるだけあって身元の確認は厳しい。

 

 特に縁もゆかりもない田舎上がりは怪しまれる。そういった無知を装って侵入し悪さをする人間もいるからだ。

 

 幸いにも幼馴染が来る前から親戚がこの都に居る。その親戚と幼馴染の紹介状もあるから俺は比較的簡単なボディチェックと荷物点検だけで入ることはできた。

 

 まあ、ちょっと早く終わらせるために小金程度の賄賂を衛兵に渡したが。

 

 そんなこんなで都の中だが、とても活気がある。

 

 露天で食べ物を売っていたり、店には綺麗な服や鎧、高そうな剣まで飾っていてよりどりみどりというやつだ。

 

 少し寄り道したい気持ちはあるが、今はとりあえず親戚のところに行く。

 

 最初は寝床の確保、そして雇用先を見つける事。

 

 ダンジョンに潜るために来たんだ、遊びに来たわけじゃない。

 

 その為の準備を済ませておかないと、明日からでもダンジョンへ行きたいが行き当たりばったりになってしまう。

 

「ヘイムおじさん、いるだろ?俺だ、ソウだ」

 

 どんどんとあらかじめ知らされていた住所をたどり、親戚の家へ到着する。

 

 そしてドンドンと扉を叩く。

 

 気配はあるんだが、何故か弱弱しく感じる。

 

 一応は近づいてきているが何か様子がおかしい。

 

「……………………ソウ、か」

 

「ヘイムおじさん、だよな?」

 

 俺の知っているヘイムおじさんは元気な人だった。

 

 先にダンジョンに潜っては、たまに帰ってきて武勇伝を聞かせてくれるほど無駄に元気だった。

 

 それがどうだ、扉の隙間から見える顔はとてもやつれている。

 

 まるで悪夢を見ているかのような、二日酔いが抜けていない状況が続いているような酷い顔だ。

 

「そうか、お前がこっちに来る日だったか。忘れていた」

 

「何があったんだ、もしかしてダンジョンで怪我を!」

 

「…………いや、違う。そうじゃない、が、色々あったんだ」

 

 明らかに酒焼けした声で家の中に戻っていくのを俺は見ているだけしかできなかった。

 

 だが、ヘイムおじさんは再び戻ってきて一枚の紙を見せてきた。

 

「これがアラタが立てたギルドの広告だ。もっていけ」

 

 それだけを言って、押し付けるように広告を渡して強く扉を閉めた。

 

 気配も遠ざかって部屋に引きこもっているようだ。完全に心が折れた人間のように、一体なにがあった?

 

 不審ではあるが、これも幼馴染であるアラタのところへ行けば分かるかもしれない。

 

 広告に書いてある地図の通り、色々と人が多い道を進み歩いていく。

 

 対した装備もつけていないからか何だあいつという視線がたまにあるが、おもったよりも顔見知りばかりが集まっているから田舎上がりは目立つのかもしれない。

 

 で、肝心の幼馴染が運営してるギルドに到着した訳だが…………

 

「本当にここ、なのか?」

 

 思わず独り言が出るほど豪勢な館が地図の示す場所だった。

 

 扉こそウエスタン風な押し扉だが、見るからな高貴な感じがする建物なんだが?

 

 え?これをマジで3年程度で買ったの?都の外側に位置しているとはいえ、一等地以上に建物を建てちゃう?

 

 結構稼いだとか手紙で知ってたけど、ちょっと限度というものがない?

 

 まあとにかく、間違ってないか確認はしないといけない。

 

 わざわざヘイムおじさんが教えてくれた話に間違いはないと思うが、扉を開こーーー

 

「ってことなので私が一番乗りです!」

 

 尻が飛んできた。

 

 扉に手をかけようとした瞬間に内側からバッと開き、走り幅跳びを後ろでしたのかと言わんばかりのポーズで尻が飛んできた。

 

 あ、これ間に合わない。

 

 ドグシャアアッ!

 

「ごああああっ!?」

 

 俺は吹き飛ばされる。

 

 俺の胸あたりにヒットした尻の勢いを殺しきれず、足が地面から離れて宙に浮いて後ろへ吹っ飛ぶ。

 

 強い衝撃と共に息を止める。そうすると世界がゆっくりになり、俺が吹き飛ぶ速度も減速される。

 

 それでも勢いが死んだわけではない。空中に浮いたまま高速で体勢を立て直して転ばないように地に足をつけて踏ん張る。

 

 なんだあいつ、普通に胸が痛いし頑張って踏ん張ろうとしても結構制動距離があるぞ。

 

 スローモーションのままズザザ、という音もゆっくり聞き足に力を込める。

 

 距離にしておよそ3m、意外と道幅が広く他の人に当たらなくて助かった。

 

 助かった、とはいえぶつかられた所は普通に痛い。どんな尻してるんだ、鉄か?鋼鉄製か?

 

 目の前にはその尻を飛ばしてきた女がきょとんとした目で俺を見ている。

 

 先程の体勢からそのまま地面に尻から着地せず、しっかりと両足で着地できたみたいだ。相当な身体能力をしているのは分かった。

 

 それはそれとして、まさか気づいていなかったのか?え、人を弾き飛ばして?

 

「おいおい!扉から出る前は確認しろよ!流石に尻を食らうとは思わなかったぞ!」

 

 流石に温厚な俺でも抗議を入れる。

 

 悪気はなかったとはいえ凄い威力だった。俺じゃなきゃ滅茶苦茶横転して大怪我していた!

 

「誰なのあなたは!扉の前に立ってるのが悪いのです!」

 

「ごごご、ごめんなさい!シェリー!この人は僕らに用があって…………」

 

 俺を吹き飛ばした尻を持つ少女は逆ギレ、非をこちらに押し付けようとしているが急いで出てきた誰かが俺に謝りつつ少女をなだめる。

 

 もしかして、日常的にこういったことが起こっているのか?そう思うくらいとても手慣れた謝り方と叱り方だった。

 

 叱られた少女は強くない叱り方にしゅんとしているが、なんで私が悪いのかと年相応な責任転嫁を考えている顔をしている。

 

 可愛らしい顔をしていじけても簡単に許さんぞ。

 

 全く、どこまでも面倒見がいいのは変わらずか。

 

「久しぶりに顔を合わせたな、アラタ」

 

「そ、ソウ!?あっ、今日来る日だったんだ!」

 

 久しぶりの再会。たった3年でギルドというダンジョン攻略する一団を築いた天才と田舎上がりの俺。

 

 アラタのコネで入ることになるのだが、アラタとその仲間がそれぞれとんでもない狂い方をしているなんて、思いもしなかった。

 




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