怪我をしたから遅れて田舎から出たけど幼馴染がとんでもないギルドを作っていた 作:蓮太郎
「ひっろ!一派閥が持っていい敷地じゃないだろ!」
アラタがギルドマスターを務めるギルド、その裏には下手な農地くらいの広場があった。
確かに都からやや外側の位置にある訳だ、このようなスペースを確保するとなれば、街中に作れるわけもない。
色々な道具の実験にしても、ちょっと過剰に広いんじゃないかと思うが…………
「いろいろと試すには丁度良くって、都の外でやると苦情がいっぱい来ちゃって…………」
「はい、やらかしポイント1」
「何の何のためのポイント!?」
こいつ、村に居た頃もアイテム作製でボヤ起こしたこと忘れてるな?
死ぬほど怒られたというのに、村の人の目が無くなったらこれか。
いや、注意はされているんだろうけどさぁ?探究心はかなりある方だから反省しても後悔しないタイプだからなこいつ。
「よっしゃ、俺が逸れの相手をしてやろう。なに、手加減は出来る」
そう立候補したのは何故かあのロビーで俺を見ていた1人の騎士。
何で常に鎧を付けているのかは知らないが、声からして男というのは確信できた。
「ダメだからね!真剣だけは絶対ダメだからね!木刀!それしか使用禁止!」
「当然だろ、手合わせ程度に真剣を使うような馬鹿は…………」
おい、何故目を逸らす。
まさかとは思うが、刃引きしていない手合わせ、いや訓練をしているわけではないよな?
都で今一番ブイブイ言わせてるギルドが、そんなまさか危険な事をして強くなった、というまいな?
「ちぇ、仕方ないな」
「今仕方ないつったか不良騎士」
「誰が不良だ、昔の話だ!」
「ま、不良云々はどうでもいい。今は…………」
アラタがどこからか取り出した木刀を俺に渡し、不良騎士にも投げ渡す。
投げる瞬間にぶんっ!と凄い音がしたな。何でそんなに腕力が強くなって投擲の威力が強くなっているんだ?
それを当然のように、平然として片手でキャッチするのも…………
これが上位まで上り詰めたギルドの人間か。
ダンジョンは世界を蝕む癌であるが、乗り越えた者には肉体と魂を新たなステージへ導くと聞いた。
3年、アラタはともかく他のメンバーはそれ以上にダンジョンに潜り、スキルがあろうがそこらの人間よりも遥かに強いだろう。
今の自分がどれほど通用するのやら。
条件付きとはいえ十分強力なスキルを持つ俺でも油断でやられる可能性だってある。
だから…………
「別に勝ってもいいんだろ?」
負けてもいいなんて思うわけないだろ!ぜってえ勝ってやるかなら!
「…………随分と威勢がいいな、我が主の友人は」
「取り繕っても遅いよ、ロック。素行は全員知ってるんだから今更先輩風吹かせても」
「そもそも最初のやりとりで本性だしてたよね~」
「そこ!うっせえぞ!」
距離を取ってる間に漫才が聞こえてきた。
どうやら、結構仲はいいらしいな。変な軋轢とかは無さそうで何より。
ただ、なんか妙に忠誠心が高い気がする。また何かやらかしたか?
あのお人好しは其処が抜けているから、やらかしてるんだろうな。具体的に何とは言わんが…………手紙の内容をもっと覚えてるべきだったか。
あいつの手紙の内容、前にも言ったが普通に長すぎて覚える気があまり出なかったんだよな。
要点だけを纏めて呼んだのが仇になったか?
「おーい、準備はいいかー?」
そこそこは離れた位置でロックと呼ばれた不良騎士が俺に声をかけてきた。
木刀をトントンと肩で叩き、とてもリラックスした状態だ。
舐められてる、と言っても過言ではないが実力差は間違いなくある。
油断しないよう、気を引き締めるか。
「いつでもー!」
「遠慮なく」
声をかけた瞬間、既に懐に潜り込まれていた。
「しっ!」
そして一息に振りぬかれる木刀。
あまりの速さについていけなかった、油断していなくても普通なら捉えられることができない動き。
即座に息を止めて高速の世界に入り、かろうじて振り抜かれた木刀の軌道にこちらの木刀を挟むことしかできない。
直撃は防げても威力は殺せない。
木刀同士がぶつかった瞬間からありえない衝撃を受け、け、け、け、ダメだから、避けるべきだった。
地面から足を離し、受け止めるのではなく受け流すしかないこれ。
叩き折られる樹木から、設置されてバットで殴られるボールのようにあえて宙に浮いた俺は勢いそのまま吹き飛ばされる。
受け止めた衝撃だけでも全身を打ち、その威力で吹き飛ばされたのだ。
高速の世界でもなかなか地面に足が届かないほどやや斜め上に飛び、そして広場を囲う壁にぶつかっ…………
ドガッシャアアァァアアアアッ!
「あ、ヤベッ」
勢いよく壁に叩きつけられるどころか壁を貫通してぶっ飛んだ。
「ロック!何してるの!?手加減でしょ!?」
「わりいわりい、いつでもいいって言われたからな」
「うーわ、酷いことするなぁ。『修行』無しであれ初見でやられるのは厳しいでしょ」
「壁の修理が…………また仕事が増える…………」
不良騎士ロックが新人に対してやらかした所業の反応は様々であった。
ギルドマスターであるアラタは焦り、ピンク髪痴女は憐れみ、眼鏡をかけた魔女帽子を被る少女は頭を抱えた。
彼らは強い、彼女たちは強い。
ダンジョンの奥深く、世間では前人未到でありダンジョンで死の地と呼ばれる『深層』へ日常的に潜るような狂人たち。
何度も死ぬような思いをし、
特定の誰かのために強くなるという折れぬ心を持ち、ギルドどころか人類でもトップクラスに
故に、世間一般からも相当ズレている部分もあり、彼らでは簡単にいなせるであろう攻撃が一般人にとって致命的であることをイマイチ理解できていない。
無理もない、生半可な攻撃で傷つくような『深層』に潜むモンスターを常に相手しているのだから。
「…………あれ、出てこなくない?」
「あん?あれくらい大丈夫だろ」
「いやいやいやいや!?」
ネジが外れてしまった彼らは気づいていない。
普通、あの攻撃を喰らえはとんでもない重傷になると。
怪我をしても回復できる魔法がある、死んでも何とかなる程度に
そして、それら全てに関わっているアラタだけが正しく、いや、微妙なところであるが他のメンバーよりも理解はしていた。
「でも、これである程度分かっただろ。力の差がありすぎるって」
強くなりすぎて加減がわからなくなっていたロックはそれだけを呟き、壁が破壊されたことで立ち上る土煙から背を向ける。
振り向いた先に、奴はいた。
「これは、一本の判定でいいか?」
喉に木刀の切先を突きつけられ、土と砂で汚れたままであるが、先ほど吹き飛ばされたはずのソウが、弱者がそこにいた。
種明かしをすると、壁に叩きつけられた衝撃を分散しようとしたのはいいが、壁をぶち抜いてしまい観客から見えない所まで行ってしまった。
痛みはあるが、あえて呼吸を止めることで自分の痛みが動けるくらいに治るまで自分を加速させ、落ち着いてから広間の外周を急いで回って背後をとった、それだけである。
「油断大敵ってアラタに教わらなかったか?」
痛みについては必死に痩せ我慢しているが、カッコつけたいためだけにソウはキリッとした顔で言い放った。
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