ほとんど原作のあらすじ通りですが、少しボタンを付け違えたらこうなるだろう。
という感じで書きました。


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ほとんど原作のあらすじ通りですが、少しボタンを付け違えたらこうなるだろう。
という感じで書きました。



絆 トワ ハーシェル

 そう、あの時まではただの可愛い弟みたいで、後輩の男の子だと思ってた。

 クロウくんが50ミラを借りた事から始まって、ジョルジュくんの技術棟によく顔を見せるようになって。

 私達は特化クラス七組との交流が始まった。

 トリスタを取り戻し、今日も校舎の屋上で誓ってくれた彼。

 重荷のほとんどを背負っているようにも見える。

 明日から、またカレイジャスで帝国東部を飛び回る事になるのを踏まえて、生徒会一同は引継ぎの準備をするために生徒会室へと集まった。

 優秀な子達が集まっているのでしばらくするとほとんど手持ち沙汰になってくる。

 そんなとき。彼が、生徒会に訪れる。

 他愛の無い話の終わりに、彼は何かを伝えようとしてやっぱりやめた。

 それは誰の目から見てもあきらかだたのだと思う。「会長はどうしたいんですか?」だなんて、生徒会の女生徒に言われてしまう位に、顔に出していたのだから。

 挙句の果てには「今日の会長はお疲れのようなので遊んできてください」と追い出されてしまう始末……

 生徒会室の扉を背に、何をやってるんだろう、と一人ごちる。

 少しでも、気分転換をしようとお祭り騒ぎの町へ繰り出す事を決める。

 でも、頭に過ぎるのは今までの事。

 八月になるとサボり気味、ううん。Cとしての行動をしていたおかげで、単位が取れなくなって、七組へクロウくんは行くことになった。

 アンちゃんが気付いた時点で何かを察してあげれば何か変わったのかもしれない。

 でも、クロウくんはクロウ アームブラストで居るよりも、Cであることを取った。

 私は、何も知らなかった、生まれの地方を知っているなら何か考えれたはず、ううん、それは結果論だ。

 七組に行っても、クロウくんはやっぱりクロウくんで遠めに眺めているからこそ、手を差し伸べられる位置に彼はいつも居る。もちろんあの喧嘩をしてから、クロウくんは本当に面白そうに笑う。何事にも全力でバカをするようになった。

 それは七組でもそうだ。気づきずらいお節介と気さくな年上という事もあって七組の皆と、取り分けリィンくんとは特に仲が良くなったように見えた。

 自分の気持ちが解らない。だから私は、手をこまねいている。

 まるで、年下のようにあしらって、からかい、だけど、肝心な所ではいつもお小言を言わせる、常にムードメーカーの彼、クロウに間違いなく惹かれていた。

 でも、彼、リィンくんにも好意寄せられ、不覚にも、私は二人に好意を寄せているという事になる。

 四月からずっと学院からの依頼とはいえ、私のお遣いを嫌な顔せずに手を貸してくれる後輩。

 もしかしたら、彼を、クロウくんを取り戻すさなかに、命すら落としてしまいかねない所に行こうとしているのに。

 私達のお願い云々よりも、リィンくんにとってクロウくんはやっぱり気のいいお兄さんなんだ。だから、一歩私に寄るのを躊躇っている。

 ぼーっと町を歩いてきずくと、一人で第三学生寮に入っていくリィンくんの姿を見つける。

 追いかけようか悩んで、はっと思ったときには10分が経過していた。

 まだ、正直に言えば悩んでいる。きっと何かを取りに来ただけでもう出てくるかもしれない。でも、それにしては長いような……

 覚悟を決めて、リィンくんを探しに学生寮へと足を運ぶ。

 見てしまった。恐らくクロウくんの部屋だった場所に一人佇んで、座っている彼を。

「トワ会長?」

 足音にきずいたのだろう。

「ごめんね。こんな所を見るはずじゃなかったんだけどなぁ」

 バツの悪い私は鼻の頭をかく。するとリィンくんは少し笑って見せてくれる。

「それじゃ、この前見てしまった寝顔とお相子というのはどうですか?」

「むぅ、ずるいよ」

 勿論、本心から拗ねているわけじゃない。

 きっと、彼は近いうちにクロウくんとの決戦があることを予感してる。

 一人ここへ来て、覚悟を決めていたんだよ思う。そう、思うと熱いものが込み上がる。

「ごめんね。そんな本当に」

 いくら我慢しても、溢れ出てきたものは止まらず――

「つもりじゃ」

 嗚咽を漏らした。

「無かったのに。苦しい事を背負わせて、ごめんなさい」

 崩れるように、顔を下に向けて泣き崩れる。

 きっと、誰もが想像していた。内戦を引き起こした張本人であるクロウくんは、内戦が終わった後、貴族側が勝たなければ身の保障すらない、オズボーン宰相を殺した犯罪者。

 仮に、貴族側が勝ったとしても、口封じというのは想像に難くない。

「絶対に、助け出して見せますよ」

 優しく頭を撫でられる。

 いつもなら、お姉さんぽくないだなんて口を膨らまして怒るんだろうけど、受け入れてしまっている。嫌なら、拒絶をすればいいのに。

 本当にズルイ。彼の気持ちも判っているのに。ぎゅっと、抱きしめかえすと彼の鼓動が次第に、嗚咽を弱らせる。ズルイ……

 

 

 

 七曜暦1205年3月12日

 

 凄く、懐かしい夢を見ていた気がする。皆がいて、いつも通りで、最後にはやっぱり、クロウくんにいじられる夢。

 私の意識はそこでうっすらと意識を覚醒していく。

「わわっ、リィンくん!?」

 眠たい頭の状態で、視界に入ったのは、リィンくんの困ったような顔。

「ふえええっ!? どうして私の部屋にいるの!?」

 今起こっている出来事に頭が付いていけず、情けない声を上げながら部屋を見渡すと、ここが何処なのかを理解する。

「そうか、寝ちゃってたんだ……」

「すみません、ノックはしたんですけど」

 困った顔を何とかしたくて、私は両手を振る。

「あ、あはは……私が悪いんだし気にしないで」

 また寝顔を見られたのかと思うと恥ずかしくなり、目を逸らし――

「ああもう、なんでリィンくんには、こんな所ばかり」

 更には、目も閉じて、自分の恥ずかしさを誤魔化しにはいる。

「ううっ……また寝顔を見られちゃったし」

「えっと、なるべく見ないようにしましたから」

「それなら、いいんだけど」

 今直ぐにでも逃げ出したい。だなんて思っていると何故だろう、リィンくんの顔は困っているというより怖がっている。

「あれ? 何だか顔色が悪いようなきがするけど」

「いえ、なんでもないですよ」

 不意に視線を逸らされる。疑いくらいだったはずのものが、一つの行動と、言葉で強がっているのは一目瞭然だと判断できる。 

「夕日のせいかな? 体調は悪くないですし……」

 ウソだ。だってすごく辛そう。

「リィンくん、こっち」

「え……」

 手を引いて強引にソファーへと座らせる。

 困惑しているみたいだけど、無理をしているのはあきらかだもん。 

「あ、あの?」

「あのね、リィンくんは男の子だし、実際この一年間で成長したと思う。ううん……も

う、男の子とはいえないかな? でもね――」

 実際に手を取ってみると良くわかる。やっぱり女の子の手とは違う大きな手。それ包み込んで――

「いつもずっと立ち続ける必要ないんだよ?」

 可能な限り優しく諭す。これが、今の私に出来る精一杯だから。

「疲れたら、気が抜けちゃったら、我慢しないで座ってもいいと思う。大人だって、男の人だってね」

 瞳だけを見つめる。手を握っている彼が崩れてしまわないように。

「あ……すいません、俺……」

 そう答えるとリィンくんは顔を下に向けてしまう。多分ほんの数十秒間の沈黙。

「会長……すいません……」

 リィンくんの声は震えていた。いろんな事を抜きにしても助け出したい人がいなくなってしまった。

 あの第三学生寮で、崩れてしまった私を支えてくれた。

 だからこそ、戦えたとも思ってる。関係の深かった人がクロウくんの事を聞いて悲しむのは当たり前だ。七組の皆だけじゃない。アンちゃんだってジョルジュくんだって。

 助け出して見せますよ。だなんてある意味呪いにも近いことを約束させて。

 達成出来るかも分からないお願い事を約束させてしまった。身を削って戦ってくれた彼を責めるだなんてありえない。でも、リィンくんは悔い続けている。

「俺、約束を……守れなくて」

 今のリィンくんに何をしてあげれるのだろう。

 そう考えていると無意識のうちに、彼の頭を抱え胸に寄せていた。

「クロウを取りもどして……先輩達と卒業させるって……それなのに……」

「いいの、いいんだよ」

 今度は私が支えてあげる番。

 してきたことを全て肯定するように、震えているリィンくんに答える。

「リィンくんはちゃんと、私達の想いをクロウくんに届けてくれた……クロウくんの思い

も、私達にちゃんと。だからね、そんなに哀しまないで。」

 私は十分に泣けた。だから今度はリィンくんの番だ。

「私もリィンくんも、他の皆だって英雄なんかじゃない。もう十分にがんばったよ。ね?」

 泣き崩れたリィンくんをあやし続ける。ありがとうって。

 どれくらいそうしていただろう。

 少し目を腫らしたリィンくんが照れくさそうにこうこう言う。

「すみません。みっともない所を見せてしまって」

「ふふっ、これでおあいこだね。私も、何度もリィンくんに恥ずかしい所を見られちゃったし」

 お互い恥ずかしくなって小さく笑う。それをごまかすように、生徒会室をリィンくんは見渡した。

「引継ぎ、一通り完了したんですね?」

「うん、これで私も晴れて生徒会長解任、かな」  

 さっきよりもずっと顔色が良くなてるのがわかる。

「お疲れ様でした」 

 その言葉を聞くと、哀愁感がある。私にとってここは大切な場所だから。

「卒業したらNGO――非政府組織巡りでしたか」

「うん、政治・経済・技術・医療よ幾つかの分野があるんだけど、一年間は勉強させてもらうつもり。その後……軍か省庁に入るかは、ちょっとわからないけど」

「どちらもしつこいくらい、熱心に勧誘されていましたよね。それで一年間の猶予付きで何とか引き下がってもらって」

 誇らしげで、どこか寂しそうに彼がいう。

「カレイジャスを率いて、アレだけの指揮を取っていたら、当然なきもしますけど」

 これも、どこか呆れ顔で。

 ここまでいわれるのは事は嫌じゃない、けど、やっぱりどこか恥ずかしくて頭をかく。

「う、うーんただ必死だっただけなんだけど、でも、そうだね。艦長をしたっていうのはこれからの事を考えると凄く良かったって思う。色々な視点は持っておきたいから、軍に入るにしても、省庁にはいるにしても、自分の考えは持っておきたいんだ。何より帝国の未来のために」

 自分に余裕が出来ているのが改めてわかる。自己満足かもしれないけど、リィンくんに少しだけ、お礼が返せた。

 そうじゃなかったら、恥ずかしくてこんな事は思っていても言葉にしなかったかもしれない。

「てっ、えへへ、ちょっと大げさすぎたかな?」

「いえ、会長がそういう道を選んでくれて、本当に心強いです。頑張りすぎて、無茶だけはしないで欲しいですけど」

 リィンくんが決意に満ちた表情になる。内戦でここぞ、という時に見せてきた顔。

 どれだけの人が彼に励まされただろう。

「会長」

 重くて、低いトーンで私を呼ぶ。

「はい!」

 その声にびっくりして、思わず仰け反り、声が裏返る。

「俺が、会長の隣を一緒に歩く事は出来ませんか? クロウ、いや、ここで、クロウを出すのはズルイですよね。俺は、トワ会長が好きです。トワ会長の横に並ぶ事を許してもらえませんか? まだ、若輩者ですけど、絶対に相応しくなって見せます。だから」

 精一杯背伸びしてみたり、頑張ってきた今までのリィンくんが浮かぶ。

 でも、私はどこかでまだ、選ばれるべきじゃない。だなんて思っている。

 あの日から、一度閉じ込めた心はそう簡単には反応してくれない。

「俺の恋人になってください。絶対にもう、泣かせるようなまねはしません」

 私も、逃げないで向き合う時がきたのかもしれない。

 まだ、諦めきれずにいる私は相応しくないって。

 あまりの目力に目を逸らしてしまい、歴代の生徒会長が座っている椅子の方へ視線を向けると、夕方だと肌寒さを感じる春の風が吹く。そこに一輪のライノの花が教室へ入ってくると幽霊という幻なのか、夕焼けに染まる教室に実態の薄いクロウくんの姿が見える。

 声こそ聞こえないけど、「何迷ってんだ。お似合いだぜ、二人とも」って言われてるようで、心の中で、「そうかな?クロウくん」と呼びかける。

 嬉しそうな顔をして「ああ、お似合いだ」と言って、私の背をおした。

 えっへへへ、ありがとう。「前に、進まなきゃダメだよね」また問いかける。「ああ、死人に遠慮なんかすんじゃねぇよ」

 リィンくんに向きなおし少し泣いてしまいそうな心を静める。

「私で、いいのかな? リィンくん」

「トワ会長じゃなくちゃダメなんです」

「うん。私、トワ ハーシェルはリィンくんの気持ちを受け入れて、恋人になります」

 口笛まで吹く動作をした幻は、最後にキザったらしく、じゃあなと右手を上げると、茜色に溶けて消えていく。

 ありがとう。クロウくん。

「会長?」

 リィンくんが不思議そうに外を眺めている。今いるはずもない、窓際を。

「ごめんね。ちょっと声がしたから」 

「でも、誰もいませんね」

「ト・ワ」

 どういうこと? と首を傾げる彼氏にもう一度。

「トワって呼んでくれるかな?」

「はい、えっと、ト、トワ」

「トトワじゃありません。もう一度」

「トワ」

 自分でも顔が真っ赤なのが解るほどに顔があつい。

「あっははは。やっぱり照れくさいね」

「今まではずっと会長でしたからね」

 リィンくんは立ち上がって私の手を取ると、さぁ、帰りましょうか。と一声。

「うん」

 簡単に返事を返し立ち上がろうとすると、ずっと座っていたせいなのか、足がもつれてリィンくんに寄りかかってしまう。

「あ、あの……」

 虫が泣くようなほど小さな声でそういったものの、お互いの顔は近い。それこそ、少し近寄ればキスが出来てしまうほどに。

 クロウくんに背中を押してもらって、気持ちも整理できた。ここで引いたら、全部嘘

だ。

 自分から求めにいくなんてはしたないかもしれない。心臓が飛び出しそうなほど高鳴ってる。

「目をつむって、ほしいな」

 茜色に染まる生徒会室に、優しく、でもすこし、冷たい風が入り込む。ライノの花びらが揺れながら。火照った体にはちょうどいい。

 二つの影と花びらがそっと重なる。

「ねぇ、リィンくん」

「何ですか?」

「私たちの中をクロウくんが祝福してくれた、って言ったら信じてくれる?」 

「ええ、勿論ですよ」

「うん。ありがとう」

「いえいえ」

「手、繋ごうか」

「はい、喜んで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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