キミの支えになりたくて   作:飯即斬

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55話 想い

 

高校1年の夏、ある朗報が入る。努さんの書いた本がSNS上で話題を呼び、今年のオカルト部門の大賞に選ばれたのだ。

 

本のタイトルは「グレートリセット」。考古学や心理学など様々な分野を取り入れてオカルトの怪しげなイメージを払拭しつつ、読者の価値観を広げるといった本だ。

 

本を完成させるために俺と歩はできる限り努さんの手伝いをした。実際に現地に足を運んだり、資料をまとめたり、散らかった部屋を定期的に片付けたり、執筆と研究に夢中で食事を摂らない努さんにご飯を作ったり

 

まあ、後半の部分はいつのまにか歩の分までする羽目になってたけど・・・

 

それと俺たちの生活にも変化があった。大学教授としてある程度の稼ぎが出るようになった努さんは中古の一軒家を購入。歩もそこに住むことになり、俺も高校生になりバイトを始めて、国の支援を受けながら一人暮らしを始めた。

 

そのせいか、歩と登校する機会も減ってった。今まではお互い孤児院に住んでいたので待ち合わせしたりする必要がなかったが住む場所が変わり、何処かで合流してから行く必要が出てきた。特に問題ないだろうと思っていたが、いざ誘うとなると急に小っ恥ずくなり、一度そう思うとその気持ちが中々離れなかった

 

当然、向こうからも連絡は来ることは無く、最近では普通の連絡すら取らなくなっていた。多分、嫌われてしまったんだと思う。

 

今日も連絡はおろか会うことすら無かった。

 

 

「・・・はぁ」

 

「どうした?ため息なんかついて」

 

ある日の放課後、無意識に付いたため息にクラスメイトが声をかけくる

 

「ん?いや、別になんでもないよ」

 

「そっか、なぁ、今度の夏祭り、お前も行くだろ?」

 

「夏祭り?」

 

聞けば来週の土日に近くの神社で開催されるらしい。そういえばそんなチラシを見た気がする

 

「そーだなぁ・・・」

 

夏祭りか、どうせ暇だし行くか

 

行く、そう伝えるとそれからファミレスで色々打ち合わせをするらしく俺も行くことになった

 

 

雑談を交わしながら靴箱に移動しながら辺りを見渡す。もしかしたら歩が居るかもと思ったが結局靴箱に着くまで見かけることはなかった

 

今日も居ないか・・・

 

目の前を歩くクラスメイトたちにバレないよう小さくため息を付き、外用の靴に履き替えて校舎を出る。

 

少しでも遭遇する可能性を上げるためにできるだけゆっくり歩く。それでもどんどん校門に近づいていき、ついに目の前に来てしまった。

 

「おーい、早く来いよ」

 

「ああ、今行く・・・ぐぇ!」

 

これ以上クラスメイトたちを待たせる訳にもいかない、そう思ったとき後ろから強い力で引っ張られる。振り返るとそこには片手で袖を掴み、不機嫌そうにそっぽを向いている歩がいた。

 

「あ、歩・・・」

 

「やっと捕まえた。ねぇ、なんで連絡してくれないの?なんで急に一緒に登校するの辞めるの?ねぇ、説明してよ」

 

「え!?い、いや、それは・・・その」

 

どうしよう・・・なんて言えばいいかな・・・アイツらも待たせたるし・・・でもせっかく歩が話しかけてくれたんだし、これを逃したらまたしばらく話せないかもしれない。何より歩と帰るチャンスだし選択の余地はないよな

 

「分かった。帰りながらちゃんと訳を話す。アイツらに断ってくるからちょっとだけ待っててくれる?」

 

「・・・分かった。待ってる」

 

 

クラスメイトに断りを入れた後、歩と一緒に歩いてとりあえず歩と努さんの家に帰ることに。

 

 

道中、横にいる歩はずっと俺と顔を合わせないようにしていてやっと口を開いたのは家が見えてきたところだった

 

「そろそろ家に着くけど、なんか言い訳とかないの?」

 

明らかに怒っている口調に思わず身震いするもなんとか平然を装いながら答える

 

「連絡しなかったのは謝る、ごめん。」

 

「それで?」

 

「その、今まで一緒に帰るのが当たり前だったからさ、いざ連絡しようとしたら急に恥ずかしくなって・・・それで連絡しようにもできなくて・・・」

 

一言ずつ噛み締めながら答える。その間、歩は黙ったままだった。

 

「そうしている内に歩からも連絡も無いし、会うことも無かったから・・・嫌われたのかと思っちゃって・・・ごめん」

 

思っていた事を嘘偽りなく伝えた。それでも歩は口を開くことはなく、ついに玄関の前に着く。歩はそのままこちらに背を向けたまま玄関の扉を開いた

 

・・・やっぱり、嫌われたのかな

 

自分のやってしまった事を痛感し体が重くなる

 

自分の家に帰ろう、そう思い来た方向を戻ろうとすると今度は腕を後ろから引っ張られた

 

「あ、歩?」

 

「振り向かないで。そのまま聞いて」

 

「う、うん」

 

「・・・今度の」

 

「え?」

 

「今度の土日の夏祭り、兄さんと一緒に行く予定だったけどさっき連絡があって仕事で行けなくなったって。私は近くの公園からでも良いって言ったんだけど、兄さんがせっかくだから菊と一緒に行ってきなさいって。・・・だから・・・夏祭りに来るなら・・・許してあげる」

 

夏祭り・・・クラスの奴らが言ってたな。確か花火も上がるんだっけか。

 

しばらく答えずにいると腕を掴む力がどんどん強くなってくる。早く答えなければ折れてしまうかもしれない。まぁ、夏祭りの話を聞いた時、そうなったら良いなって思ったんだけど

 

「行くよ」

 

「・・・え?」

 

「行くよ、夏祭り。歩と一緒に」

 

振り返らす、前を向いたまま答えた

 

「・・・そっか、なら今回は許してあげる。あ、でも明日からは一緒に登校するからそのつもりで」

 

「フッ・・・ああ、もちろんそのつもりだよ」

 

「・・・じゃあ、また明日」

 

「ああ、また明日な」

 

そう答え後ろを振り向くと歩もまた後ろを向いていてそのまま家の中に入って行った。

 

夕日のせいか、一瞬だけ見えた歩の顔は少し赤く染まっていた。

 

 

夏祭り当日、会場から少し離れた自販機の前で歩を待つ。時間が経つにつれて段々人も多くなっていきすぐには見つけられそうにない程混んできた。

 

参ったな・・・これじゃああゆみが近くに来てもわからないぞ。ってか遅いな歩。なんかあったのか?連絡してみるか

 

スマホをポケットから取り出だそうと手をかけるとピコンと音が鳴る。スマホの画面を見てみると歩からのメッセージだった

 

えっーと、「後ろを見て」?

 

メッセージの通りに振り返と藍色の浴衣を身に纏った歩がそこに居た。

 

その光景に思わず息を呑んだ。

 

「お待たせ、どう?変かな?・・・菊?」

 

「・・・はっ!う、うん!変じゃない!よく似合ってるよ」

 

「そ、そっか、良かった」

 

「じゃ、じゃあ、早速行こうか」

 

「うん」

 

花火が上がる夜8時までまだ時間があるので鳥居から社殿までずらりと並んだ屋台を2人で並んで周る。人混みが凄く、はぐれないように注意しながら進んでいく

 

あまり感情を表に出さない歩も誰が見ても分かる程楽しそうにしている。よっぽど祭りにきたかったんだろう

 

それからも屋台を回っていると二つ目の鳥居に刺しかかったところで問題が発生した。歩がいつの間にか居なくなっていたのだ。

 

くそ、どこに行ったんだ・・・もうすぐ花火が始まるのに。スマホで連絡を取りたいけどこの人混みじゃあ・・・

 

なんとかポケットから取り出そうとしていると他の参加者にぶつかってしまい転びそうになる。すると隣にいた女の子に支えられた

 

「おっと」

 

「あ、す、すいません」

 

「いえ、大丈夫すか?」

 

そうやって支えてくれたの同じ年くらいのは黒いロングヘアで耳に何個もピアスをつけた子だった。

 

「ええ、ありがとうございます。助かりました」

 

「良かった。これだけ混んでますから気をつけないと」

 

「ですね。あ、そうだ何かお礼を・・・」

 

ジュースでもどうかと言おうとすると助けてくれた子を呼ぶ声が聞こえてきた

 

「おーい、休美!いい場所あったよ!早く行こー」

 

「すぐ行く!すいませんアタシはこれで」

 

「え、ええ。ありがとうございました」

 

可能な限り頭を下げてお礼を言うとその子はニカっと笑い、声のした方向へと向かって行った

 

・・・っと、いけない!早く歩を探さないと

 

なんとか人混みを抜け出し、境内の隅に辿り着いてスマホを取り出す。時刻は7時50分、花火の時間まであまり時間が無い。

 

急いで歩に電話を掛けるも人が多いせいか繋がらない。どうしようか考えていると歩の言葉を思い出した

 

確か歩はあの時・・・そうだ!歩はきっとあそこにいるに違いない。よし!急ごう!

 

 

会場から抜け出し必死で走る。向かったのは歩の家の近くの小さな公園。そこに着く頃には息はもう限界を迎えていた。

 

公園の出入り口のポールに手をかけて息を整えながら公園の中を見るとベンチに小さく座っている歩を見つけた

 

い、いた!やっぱりここにいた!

 

体力を振り絞り歩に近づく

 

「おーい!歩!!ぜぇぜぇぜぇ」

 

「ど、どうしたの?そんなに息を切らして」

 

「ど、どうしてって、歩を探してたんだよ。急にいなくなるから」

 

「・・・ごめん、人混みで酔っちゃったみたいでさ。気づいたらキミを見失っちゃってて。スマホも繋がらないし。それでどうしようもなくてここに」

 

「そ、そっか、俺の方こそごめんな、ちゃんと見たなかった」

 

「ううん、それにしてもよくここにいるって分かったね」

 

「こないだ歩が言ってたことを思い出したんだ。ほら、夏祭りに誘ってくれた時近くの公園でも十分だって」

 

「・・・ああ、言ってたね。よく覚えてたじゃん」

 

「まぁね」

 

親指を立ててそう答えると歩が急に体育座りになり顔を伏せた

 

「どうした?」

 

「ごめん、私から誘ったくせに台無しになって。花火、見たかったんでしょ?」

 

震えながら言う歩に対して俺は歩の隣に座り迷わず答える

 

「確かに楽しみにしてたよ。でもそれはただ花火を見たかったからじゃない。"歩と"花火を見たかったんだ」

 

「・・・私と?」

 

「うん、そしてそれはまだ終わってない。俺にとってはこれからが本番だよ。ほら、見て!そろそろ上がるよ」

 

そう言言いながら上を見るとピューっと音が鳴り、大きな音と共に薄暗い公園を大きな光が照らす。それと同時に歩も顔を上げる

 

「・・・キレイ」

 

歩がそう小さく呟くと思わず微笑む。

 

無数の花火が打ち上がる中、ふと、横を見ると歩の横顔が目についた。花火によって時折照らされる彼女に、いつのまにか釘付けになっていた。

 

ずっと・・・ずっと前から抱えていた思いを今なら伝えられる。なぜかそんな感情が湧く。

 

小さく深呼吸をして勇気を出して彼女の名前を呼んだ

 

「ねぇ、歩・・・」

 

「ん?どうしたの?」

 

正面から顔を見るとさらに心臓の鼓動が速まる

 

「大事な話があるんだ。聞いてくれる?」

 

「・・・・うん」

 

自分の胸に手を当てて彼女の目を真っ直ぐ見て伝える

 

 

 

「・・・俺、歩のことが好き。ずっと前から・・・これからはもっと一緒に居たい。・・・だから・・・俺の恋人になってほしい!!」

 

言い終えると、ますます心臓の鼓動が早まり体温も高くなっていくのを感じる。きっと顔も真っ赤になっているだろう。

 

肝心の彼女はしばらく下を向いたと思うとすぐに花火の方を見た。

 

・・・ダメ、だったのか・・・、やっぱり言わない方が・・・

 

諦めかけていると彼女がこちらを向き俺の耳元で囁いた

 

 

 

「・・・私も、だよ」

 

 

 

 

そう言った彼女の顔は赤く染まっていた。

 

 

「ほ、ほんとに?」

 

「・・・うん。やっと言ってくれたね」

 

「もしかして・・・バレてた?」

 

「まあ、なんとなくだけど」

 

「そ、そっか、バレてたのか・・・は、ははは」

 

「顔、赤いね」

 

「そ、そっちこそ」

 

「わ、私は・・・そう、花火!花火のせいだから」

 

「お、俺だって、花火で赤くなっているだけで」

 

わかりきったことを言い合い、少しの間黙り込むとお互いに空を見上げ花火を見る。そしてそのまま俺はゆっくりと歩の手を握る。

 

握られた手を見て歩も黙ったまま握り返してきた。花火が終わるまでそれは続いた。たった10分の花火が永遠に続くことを心の中で願った。

 

 

花火が終わり、しばらく話し込んだ後は歩を家に送ることにした。家に着くと部屋の灯りがついてた。どうやら努さんが帰ってきているようだ

 

「今日はありがとう。楽しかった」

 

「うん、俺も楽しかった」

 

「・・・寄っていく?」

 

「そうだなぁ、努さんに挨拶だけしとこうかな」

 

そう言うと歩はインターフォンを鳴らす。すると家の中からドサドサと物音が聞こえてきてそれからしばらく反応がなかった

 

・・・努さん、なかなか出てこないな

 

大方、山積みの資料につまずいて動けないでいるんだろう。そう思いながらしばらく待っていると扉が開く

 

「いてて、お帰り、歩、菊。祭りはどうだっ・・・た・・・」

 

頭を掻きながら出てきた努さんは明るく出迎えてくれたかと思うとコチラを見ると動かなくなってしまった

 

どうしたのかと思っていると公園からここまで手を握ったままでいたことに気がついた

 

慌てて離そうとすると歩が力を込めて離してくれなかった

 

そうこうしていると努さんが動き出して俺の両肩をガッチリと掴んで真っ直ぐ俺の目を見てくる

 

「やっと・・・やっと、その気になったんだね、菊!」

 

「・・・はい?」

 

「だって、夏祭りに行って手を繋いで帰ってくるなんてそういうことなんだろう?そうなんだよね?歩」

 

「うん、私こと好きだって。一生大切にするって」

 

「・・・え?!い、いやそこまではまだ言ってな・・・」

 

「そうか、そうか!よく言ってれたよ!早く告白しろよ!って思ってたけど本当に良かった!」

 

そ、そんなこと思ってたのか・・・

 

当然の発言に困惑して思わず苦笑いをする。すると努さんは俺の肩から手を離して頭を深々と下げた

 

「ちょ、ちょっと!努さん!?」

 

「菊、歩は僕以外の人間にあまり心を開くことはなかった。そのせいか周りとどうしても浮いてしまうことだってあった。僕はそれがとても心配でしょうがなかった」

 

「兄さん・・・」

 

「そんな歩が初めて自分から興味を持って近づいたのがキミだった。そしてキミも歩とはとても仲良くしてくれた。そのお陰で歩は少しずつだけれど周りと話すようになって学校にも行ってくれるようになってきた。本当に感謝している」

 

「努さん・・・」

 

「そんなキミが歩のことを、僕のたった1人の家族で大切な妹のことを好きだって言ってくれて本当に嬉しく思う。だから歩のこと、これからもよろしくお願いしたい」

 

「そんな、お願いするのは俺の方ですよ。努さん。だから顔を上げて下さい。そして俺の話を聞いて下さい」

 

そう言うと努さんはゆっくりと頭を上げる。そして今度は俺の方が頭を下げた。

 

「努さん。歩と・・・妹さんとの交際を認めて下さい。お願いします」

 

ゆっくりと噛み締めて伝える。すると努さんは俺の頭がくしゃくしゃになるほど撫でてきた

 

「あはは!まさか菊のがそんなことを言うなんてね。つい最近まであんなに小さかったのに」

 

「ちょ、つ、努さん!や、やめてくださいよ」

 

「そんなキミが歩の恋人になってくれるのならこんなに嬉しいことはないよ。それに僕の許可なんか無くてもいいんじゃないのかな?だって歩もそれでいいんだろう?」

 

「・・・うん」

 

「だったら、僕から言うことは一つだ。歩のことよろしくお願いします」

 

「つ、努さん!」

 

「よし!この話は終わり!今度は未来の話をしようか!」

 

「未来ですか?」

 

「兄さん、いったいなんの話をするつもりなの?」

 

俺と歩がそう言うと努さんはおもむろにポケットからスマホを取り出す

 

「なにって、2人の式場や2人とその子供と住む家の話を・・・」

 

 

 

「「気が早い!!」」

 

 

2人で顔を赤くしながら協力して努さんのスマホを奪いとる。これで落ち着くかと思うと今度は泣き出してきてこっちの方が大変だった。

 

 

その後は泣きすぎて近所に迷惑だと正座をさせられながら歩に叱られていた。

 

そんな光景を見て俺はこんな関係がいつまでも続いてほしいと密かに願った。

 

 

 

 

でも、その願いが叶うことはなかった。

あの事件のせいで・・・

 

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