例えば箱庭学園のことを語るとすればその語り部は、順当に言えば人吉善吉であり、少し気をてらえば阿久根高貴あたりだろう。
さらに奇をてらえばそれは、雲仙冥利になり、さらに重ねて奇をてらえば日之影空洞あたりになる。
では、球磨川禊と安心院なじみ。
この二人を語るとすれば誰が語り部になるのだろうか?
順当に言えば名瀬夭歌であり、赤青黄であり、財部依真であり、重ねて奇をてらっても兎洞武器子だろう。
このような人物が妥当であり、そういう意味ではなぜ私みたいなやつがこの二人のやり取りを語らねばならないのか甚だ疑問なのだ。
黒神めだかや不知火半袖、不知火半纏は語り部には向かないのだからそういう意味では私の方が大人の事情をよく把握していると言える。
把握している以上、それに答えるのが私の使命であり大人としてのあるべき態度なのだろう。
大人と言えば久々原先生だったりが連想されるのだけれど残念ながらあの人は関係ない。
あの人は、私と同じにおいがするのだがまあ所詮赤の他人なのだ。
と言いつつも私自身この語り部の役目に文句の一つも無い訳ではないのだ。
言われた仕事を文句を言わず行うのはそれは素晴らしいことではあるが端的に言えばそれは思考の放棄に他ならない訳で、それが他の人と私の顕著な違いとも言える。
私は、ただ考えなしにこの役割をやる気はない。
やるからには球磨川禊と安心院なじみを最高に引き立てて見せる。
最高の引き立て役になって見せる。
「おーい何してんだ? 早くジャンプ読みに行こうぜ」
おっともう始まるらしい、ならばさっさと終わらせて定時に帰ろう。
「何を言っているんだ、男は黙って……」
定時に帰る。それができる大人のあるべき姿だ。
「ジャンプSQだろ? ヒート?」
「『僕にスタイル教えてよ、鴎ちゃん』」
「球磨川さん、ちーっす。え? いきなりどうしたんですか? スタイルを覚えたいなんて」
「『いや、ほら僕って将来的にはめだかちゃんを倒して学園の平和を取り戻さないといけないわけじゃない? でも安心院さんも倒せないようじゃそんな事到底無理だから、まず頭目の目的として安心院さんを倒そうかなって思って』」
「ずいぶん軽く言うんですね。倒せるんですか? あの人外?」
「『倒せるかどうかじゃないだろ。倒れてくれるかどうかだ』」
「あぁ、相手任せなんですね……」
以外に消極的。
「それでスタイルですか」
「『そう、安心院さんにスタイルが利くのは君の挑発遣いと凶悪ロリの桃園ちゃんが証明してくれたからね』」
「なるほど。だけど私の場合は、ほぼ我流だからあまり参考になったり指導なんてできないと思うけどそれでもいいんですか? それこそ贄波にでも聞いた方がいいじゃないですかね?」
「『むしろ我流の方が望ましい。猿まねなんて安心院さんには無意味だからね。どうせ覚えるならそれこそ主人公らしいカッコいいスタイルがいい』」
「いや球磨川さんどの作品でも主人公やってませんよね? じゃあ、具体的にはどんなスタイルがいいんですか?」
「『うーん。戯言遣いなんてどうかな?』」
「わーお、みんなが言いたくて言いたくてそれでも我慢していることをあっさり言うあたり流石、球磨川さんですね」
「『そこに痺れるだろ?』」
「ええ、憧れますよ。ですがいいんですか? スタイルを覚えるとなると否応なく修業パートが必要になりますけど」
「『構わないよ。むしろ僕は修業パートをするためだけに生まれてきたような男だぜ?』」
「それじゃ一生大成しないじゃないですか……」
まあ、やるだけやりますよ。