「あれ? 最近二人とも見かけなかったけど、どこかに行ってたのかい?」
安心院さん、再会時の第一声だった。
「安心院さん……。あれですよね? 一京分の一のスキル『四の五の言わず忘れとけ(フォーゲット・ファイブユーラブ)』で忘れてるだけですよね? まさか、本当に私たちを異世界に置いてけぼりにしてそのことをすっかり忘れてた、なんてこと言わないですよね?」
「『四の五の言わず忘れとけ(フォーゲット・ファイブユーラブ)』? あぁ、知ってる知ってる。あれおいしいよね。どうだい? おいしいフォファブを売ってる店があるんだけど、今度二人で一緒に食べに行ってみないかい鶴喰君? もちろん球磨川君をハブにしてさ」
「やっぱり確信犯ですか!!」
「『ここまで戻ってくるまで死ねない!! って言って必死だったもんね、鴎ちゃん』」
「それでどうだったんだい? 球磨川君はスタイルを身に着けて帰ってこれたのかな?」
「『もうばっちりだよ、安心院さん。正直、なぜ今まで安心院さんに勝てなかったのか不思議で堪らない。今僕の目には君は矮小に映って見える』」
「わっ、はっ、はっ、はっ。少しは言うようになったみたいだね球磨川君。どうやら君は少しばかり鶴喰君の『挑発遣い』に影響を受けて要るようだ。お供に鶴喰君を選んだのは正解だったようだね。しかし、僕はこれでも忙しい身でね、この後にすぐ暇つぶしをしなくてはいけないんだよ。君たちにかまってあげられるのは精々『一分』って所だけど大丈夫だよね」
「『一分? いや無理無理。一分じゃカップ麺もできないって』」
球磨川さんカッコわる!!
「『なんて、冗談さ。一分もいらない。一瞬さ』」
「いいねぇ、球磨川君。この7932兆1354億4152万3222個の異常性と、4925兆9165億2611万0643個の過負荷、合わせて1京2858兆0519億6763万3865個のスキルを持つ完全体の僕相手にそんな大見得を切ったのは数ある激戦の中でもあの影武者六人衆以来だ。これはまた、歴史に名を刻む戦いができそうだ」
「『言ってろよ、人外。過負荷『大嘘憑き(オールフィクション)』とスタイル『戯言遣い』を合わせた僕の新しいスキル『嘘戯告訴(メタフィクション)』。これで君を服従させてやるよ。今日から君の枕は、僕の右腕だ』」
ついに始まる。
這よる過負荷。
球磨川 禊。
悪平等の人外。
安心院 なじみ。
この二人の本気の戦い。
球磨川さんは、括弧つけて言っていたが実際にこの戦いは一瞬で終わる。
球磨川さんの新スキル「嘘戯告訴(メタフィクション)」。
あれはそういうスキルだ。
勝ち負けなんて度外視した、圧倒的殲滅。
球磨川さん本人すら殺しかねない捨て身のスタイル「戯言遣い」。
その性能を完全に引き出すために大嘘憑き(オールフィクション)でたがを外した。
その結果、発動したら最後。
球磨川さん本人でも止めることのできないあれが発生する。
そうなれば、私も危ない。
だが私は、この二人の戦いを見届けなければならない。
悲しいかな、私は球磨川さんに勝って欲しい反面、発動が失敗すればいいと思う私もいるのだ。
こんな勝ち方ではなくきちんとした勝ち方で勝って欲しかった……と。
ふっ……。こんなセンチメンタルに浸るなんて私らしくもない。
少々、一緒に苦楽を共にしすぎて情が移ったらしい。
「一人ぼっちの誕生日」が聞いて呆れる。
「はっ!! 勝手に呆れてろよ!!」
一人ぼっちが二人集まったんだ、それはもう一人じゃない!!
1+1の答えが2じゃないってことを教えてやれ!!
「行け、球磨川さん!! 勝てぇぇぇぇぇ!!」
努力。
友情。
その次に待っている物がなんなのかその手で掴め!! 球磨川さん!!
「『嘘戯告訴(メタフィクション)発動』」