「球磨川さぁぁぁぁぁん!!」
球磨川さんは、うめき声一つ上げずに吹き飛ばされていた。
今もなおボロ雑巾のように横たわり続けている。
いや!! 「安心院さんパンチ」って!!
「安心院さんパンチ」って何!?
せめてもう少しバトル漫画みたいな演出しましょうよ!!
修羅場をくぐり、新スキルまで身に着け、志高く戦地に赴き対峙した球磨川さんがなんか滑稽じゃないですか!!
「いやぁ、球磨川君。君の新スキル『嘘戯告訴(メタフィクション)』には恐れ入ったよ。まさか、こんな恐ろしいスキルがあるとはね。こんなに恐怖したのは、今朝箪笥の角に足の指をぶつけた時以来だ。まさか一京分の一のスキルの内、五十個も使うことになるなんてさ」
その五十個全部が怒りに関するスキルって……。
安心院さん、スタイルが怒っている人には効かないって既に看破してたんですね。
「さて、僕の提案したとおりに読むのが面倒くさくて、一気に三章飛ばして読んだ人に分かりやすく説明すると。球磨川君はいつも通りまた勝てなかったって話さ」
言い方軽っ!?
いや確かにそうですけど!!
でもいろいろ私と球磨川さんのドラマがあったじゃないですか!!
「本当は百個のスキルで臨みたかったんだけど、僕を操っているパトロンがこんなゴミ虫じゃこれくらいが限界か。残念、残念」
「そんな内部事情、暴露しないでください!!」
ホントどれだけ自由なんですかあなたは……。
「それでこの後どうするんですか? こう言ったらなんですが正直この結末は分かりきってましたよ。予定調和だったとすら言えます」
「僕も大概だけど、君も大概だね鶴喰君……。さっきまで応援していた君はどうしたんだい?」
「いえ、だって今回の私の立ち位置は、お二人のやり取りを盛り上げるためだけの存在ですから。ただの盛り上げ役です。立ってたでしょ? 球磨川さんの死亡フラグ」
「『やれやれ、つまり僕は一杯食わされたわけか。やられたぜ、鴎ちゃん』」
「球磨川さん、ちーっす。お早いお帰りで」
「『今さっきのダメージを大嘘憑き(オールフィクション)でなかったことにした。まあそんな分かりきったことはどうでもいいとしてだ。それで、これから本当にどうするの? これが落ちじゃ締まらないよ? 鴎ちゃん?』」
「いやごめんなさい。私もこの先の展開は何も考えてなかったです。もうここはいっそ、球磨川さんの『また勝てなかったぜ』ってかっちょいいセリフで締めるのはどうですか?」
「おいおい、何もう勝手に締めに入ろうとしてるんだい? 球磨川君に鶴喰君? まだやってないことがあるだろ?」
「やってないこと? 何かありましたっけ? 球磨川さん?」
「『さあ?』」
「約束通り一分間、君たちにかまってあげたんだ。ここからは僕の暇つぶしの時間だ」
「暇……つぶし?」
「『なんかこのタイミングで一番聞きたくない言葉だね……』」
「さあ、ここでクソ茶番『球磨川禊vs安心院なじみ』は打ち切りだ。ここからは新番組『球磨川禊vs鶴喰鴎』の連載スタートだ」
「え? 本気ですか安心院さん?」
「本気も本気さ。僕は嘘なんて生まれた時にしかついたことは無いよ」
逆になんて嘘をついたのか気になる!!
「因みに鶴喰くん。君は語り部降板だよ」
は?