突然大正時代にタイムスリップしてしまった。そこで出会うマイコー。それは俺の奇妙な冒険の始まりだった。

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多分五話ぐらいで終わる箸休めです。


大正時代のマイコー

 突然だがお前ら、いきなり大正時代へタイムスリップしたらどうする?

 先ずは夢と思うだろう。事実、俺も夢だと思って地面に横たわったさ。結果は通行人から心配されて一晩泊めさせてもらった。

 次に驚くべよな。俺は目が覚めたら愛しの布団や電子機器が一切無くなった部屋を見て発狂した。おっ、俺のジョジョ全巻がぁあああッ!!!!!

 そして最後に警察に捕まる、だな。俺は発狂した結果、泊めてくれたオッサン(いい人)が「鬼だぁー!!」と叫んで家から出ていってしまった。どかのお笑い芸人よろしく「どこ行くねーん!!」ってツッコミを入れてもオッサンは帰ってこず、代わりに騒ぎを聞き付けた警察がやってきてドナドナされてしまった。あれよあれよと牢屋にぶちこまれ、警察から取り調べを受けたところで「大正?! マジで?!」と衝撃を受けるまでが一連だ。

 

 ここで終われば、まだ不幸話で終われた。

 

 牢屋にぶちこまれた翌日、いきなり目の前に○イケル・○ャクソンがやってきたのだ。

 なぜマイコーがここに?! と驚く間もなくマイコーが「配置した覚えの無い鬼がいると聞いたが、ただの人間の小僧とは甚だ興ざめだ」などと流暢な日本語を話し、「ついでだ」とか言いながらいきなり俺の脳天に指を刺してきやがったんだ。

 「なっ、なんじゃこりゃぁっ?!」と叫ぶ余裕もなく、俺は全身が激痛に見舞われた。

 頭は指が刺さっているから痛くて当然なのだが、どうしてが首から下も痛かったのだ。もうね、体内を大きな鰻がのたうち回るような感覚と言えばいいのか。とにかく凄い痛かったです。

 そうして床を転げ回る俺を見下ろしていたマイコーは「所詮この程度か」とかなんとか言って帰ろうとしやがった。

 そこでねぇ、やっちまったんですよ。プッツン、と。

 ここまでの不運に対する怒りも乗せて、俺は思い切りマイコーの足首を掴み、一気に手前に引っ張って地面に転ばせた。

 マイコーの「へぶっ?!」って言う間抜けな声で少しだけ胸がスッとしつつ、マウントポジションを取り、顔面を殴った。

 君が!! 泣いても!! 殴るのを!! 止めない!!

 この時には全身の痛みは引いており、テンションは「ハイッてやつだー!!」状態だった。

 そんな調子で30発ぐらいオラオララッシュしたところで、マイコーが「調子に乗るな!!」と叫ぶと同時に触手を生やして俺を振り払ってきた。

 何本が俺の身体にぶっ刺さったが、プッツンしていた俺はハイエロファントを掴んだスタプラよろしく触手を掴み「オラァッ!!」と引きちぎってやった。

 引きちぎった触手をマイコーへと投げ捨てようとしたところで、マイコーのやろうが「異常者め、これ以上貴様に構う暇は無い」とか抜かして再び逃げようとした。しかも今回はマイコーの後ろに襖のような扉が突然現れていた。直感でわかった。あれはどこでもドアの亜種だと。俺は急いでヤツの元へと駆け出した。

 マイコーが襖に入る直前、どうにかヘッドスライディングの要領でヤツの足首に噛みつくことに成功。このまま逃がしてなるものかと抵抗するも、ディオがダニーを蹴り飛ばしたように、俺もマイコーに蹴り飛ばされてしまった。なっ、なにをするだー!! と心のジョナサンが怒ったところで、マイコーは襖の奥に消えてしまった。

 残されたのは俺一人。ここでようやく冷静になった俺は辺りを見渡すと、そこにはしっちゃかめっちゃになった警察署が広がっていた。ついでに俺を牢屋にぶちこんだ警官も死んでいた。

 あれ? これって端から見たら俺がやったと思われね? と冷静な俺の脳みそは正確な未来を算出。このままでは冤罪に冤罪が重なってしまう。

 この状況、取れる手段は一つ。

 逃げるんだよぉー!! と俺は戦術的撤退をしようとした。

 まさにその時だった。

 

「おいおい、糞鬼が随分と嘗めた真似してんじゃねぇかァ」

 

 警察署の出入り口に、それはもうザ・ヤクザ!! と言わんばかりの姿をした男がいた。顔は傷だらけで、目が逝っている。しかもドスではなく刀を装備という始末。どう見ても一般人とは思えない。

 そんなヤクザは俺を見るなり刀を振り上げて襲ってきた。

 「ちょっ、ヤクザは無害な堅気には手を出さないんじゃねぇのかよ!!」と俺が叫べば、ヤクザは「誰がヤクザじゃボケェ!!」と睨み返してきやがった。もれなく刀を振り回しながら。

 何を言っているんだこのヤクザは。鏡を見たことが無いのか? だとしたら今すぐにでも理髪店行ってこい。そこに真実があるぞ。刀を避けながらそう勧めると、ヤクザの顔は怒髪天をついたように怒り一色と化した。

 なんか「風の呼吸」だの「ぶっ殺してやるよぉ」とか言いながら刀を降る速度が格段に上がった。

 しかし、不思議なことに避けることは簡単だった。まるでスローモーション映像、もしくはコマ送りの映像を見る感覚でヤクザの動きを捉えることができた。あれだな。人はプッツンするとゾーンに入るようだ。

 「見える。私にも見えるぞ!!」と、某赤い彗星が如くヤクザの攻撃を避けていく。ヤクザから「おとなしく斬られろやぁっ!!」とブチギレられるも、おとなしく斬られるバカがどこにいるだよと反論。そんなに俺を殺したいだなんて、さてはマイコーの仲間か?! と俺が尋ねたら「誰だよ、ソイツぁ!!」と怒られ、さらに攻撃の速度が上がった。どんだけ殺意持ってんだよ。

 そうやって命をやり取りを数時間したところで、朝日が警察署に差し込んできた。

 おいおいこのヤクザ、夜間ぶっ通しで殺しに来てきたよ。どこのアウトレイジだ。避け続けた俺も俺だけど。

 俺は朝日が昇ったタイミングでもう止めにしない? とヤクザへ提案。ヤクザは「なっ、なんで朝日で死なねぇッ?!」とワケワカメな回答。アカン、話にならんでござる。

 呆然と立ち尽くすヤクザを前に、どうするかねぇ~と考えていたら、これまた突然「南無阿弥陀仏ッ!!」というヤクザ張りに殺意が高そうな坊さんみたいな声と共に俺の身体は警察署の奥へと吹っ飛ばされたのだった。

 なんでやねん!!

 これが、俺がタイムスリップをして受けた理不尽の数々だ。

 

……………

 

「大丈夫か、不死川」

「悲鳴嶼さん……手間ぁ、取らせましたぁ」

 

 風柱の不死川実弥は、救援にやって来た岩柱の悲鳴嶼行冥へ頭を下げた。

 それにしても、恐ろしく奇妙な鬼だった。

 悲鳴嶼行冥の日輪刀(?)によって鬼が吹き飛ばされた方を見て、実弥はここに至るまでの会話を思い出していた。

 人のことを散々ヤクザだの異常者だの叫んできた嘗めたヤツ。しかし、強さは自身に一切引けを取らない………いや、自分よりも上だった。こちらの攻撃は全て避けられ、何を思ったのかヤツからは一切の攻撃が無い状況。悲鳴嶼さんが助けに来なければ、自分は負けていたかもしれなかった。

 何よりも奇妙なのは、朝日に対して一切怯んで無かった点だ。

 鬼になりたてだと、時々弱点だと知らず日光を浴びる事がある。大抵の場合はすぐに飛び退くか、そのまま焼かれて死ぬ。

 だが、今しがた戦ったヤツは朝日を浴びても“何ともなかった”。今まで見てきた鬼のように光が当たる部分が焼けることなく、ごくごく自然に、当たり前のように日光を浴びてやがった。

 その瞬間。なにか………なにか恐ろしい存在、その片鱗を見た感覚に陥った。

 思わず立ち尽くしてしまい、そこを悲鳴嶼さんに助けて貰う失態をおかしてしまった。

 そんなクソ鬼だが、悲鳴嶼さんの一撃を頭部に受けて吹き飛んで行きやがった。流石に頭部を吹き飛ばされて死なない鬼はいないだろう。

 

「悲鳴嶼さん。現場処理は隠しに任せて俺たちは──」

「……………」

「悲鳴嶼さん?」

 

 撤退しましょう。そう言いたかった。

 だが、声をかけた悲鳴嶼さんは警戒を解くことなく、鬼が吹き飛んだ先を見つめていた。

 つられて俺も見てみれば、悲鳴嶼さんが警戒を解かない理由がわかった。

 悲鳴嶼さんの日輪刀は手斧と棘付きの鉄球を鎖で繋いだ特異な代物。その鉄球と手斧を繋ぐ鎖が張っていた。

 悲鳴嶼さんが鉄球を手元に戻そうと手斧を引っ張っているのにも関わらずだ。

 そもそもだ。頭部に悲鳴嶼さんの攻撃を受けたら、胴体と頭が千切れるのが常だった。

 それが千切れずに吹き飛んだ時点で倒せてないと気付くべきだった。

 

「ひっ、悲鳴嶼さんッ!!」

「不死川………構えておけ。少しずつ、鎖が戻ってきている」

「っ………承知しました」

 

 今も鬼との綱引きをしている悲鳴嶼さんの額には汗が浮かんでいた。

 おいおい。あの悲鳴嶼さんと綱引きができる鬼なんて、今まで見たことがねぇ。どんな力をしてやがるんだ。

 刀を構え、いつでも技を放てるように腰を落とす。

 ゆっくり、ゆっくり、と。一秒が数分にも思える緊張感が漂う。

 額から汗が一滴垂れ、流れるように顎から地面へと落ちた。

 その時だった。

 

「この俺には、立派な社畜のレッテルが張られている。そんな俺は大人だから、ある程度の理不尽には耐えれる自身がある。そうじゃなきゃ、ブラック企業が蔓延るこの令和の日本において、真っ当な社会人として生きてはいけねぇ」

「…………なんと」

「………嘘だろ、おい」

 

 悲鳴嶼さんの鉄球を片手で軽々と持ちながら、ソイツはやって来た。

 鉄球を受けたと思われる頭部には目立った傷すらなく、足取りもしっかりしていた。

 戦闘によってボロボロになった壁や天井の隙間から差し込む陽光。それらを受けながら平然と、こちらに向かってくる。

 

「不死川ッ!!」

「っ!! 風の呼吸────」

 

 立ちすくみかけた俺を、悲鳴嶼さんが声をかけてくれたお陰でどうにか動けるようになった。

 動けるのなら、即座に頚を狙う!!

 悲鳴嶼さんが動けない今、俺がやるしかなかった。

 呼吸を整え、捌ノ型、初烈風斬りを放とうとした。

 

「──────だがッ!!」

 

 そんな俺を無視するかのように、鬼は喋りだす。

 

「こんな俺にも。俺だからこそ、超えてはならねぇ理不尽を知っている!!」

 

 ギシ、リ。

 悲鳴嶼さんが数歩、鬼の方へと引っ張られた。

 

「超えてはならない理不尽とは、相手の言い分を一切聞かず、テメェの道理を好き勝手押し通すことだッ!! ましてや人様の脳天に指を刺してきたり、刀や鉄球で襲ってくることなど言語道断ッ!!!!」

 

 コイツ、何を訳の分からねぇことをべらべら言ってやがる。

 脳みそが頭に詰まっていないのか───ってぇッ!?

 ブォン、と。鬼は鉄球を俺に向けてぶん投げて来やがった。

 

「不死川ッ!!!!」

「ちぃ───参ノ型 晴嵐風樹ッ!!」

 

 咄嗟に放つ技を変え、防御に回る。

 悲鳴嶼さんが鉄球を投げられたと同時に引っ張ってくれたようで、どうにか鉄球を反らすことができた。

 改めて鬼を睨み付ける。

 

「テメェ………嘗めた真似してんじゃ───」

「テメェらやマイコーの罪は労働基準監督署や労働組合では裁けねぇ……だから」

 

 ねぇ。

 その一言を言いきることはできなかった。

 

「俺が─────裁くッ!!!!」

 

 ドゴォ!!!!

 気がついた時には、クソ鬼の紫色に染まった筋骨隆々の腕が俺の鳩尾に突き刺さっていた。

 

「がはァ───」

 

 まるで悲鳴嶼さん数人が一斉に殴ってきたような衝撃。

 意識が飛びそうになるのを必死でこらえる。

 どうにか意識は保てたが、とてつもない激痛と共に肺の奥から空気という空気が一気に絞り出されてしまう。

 これでは呼吸を扱えない。

 

「オラァッ!!!!!!!!」

「南無阿───っ!!」

 

 鬼は殴った勢いをそのままに、俺の身体を悲鳴嶼さんの方に向けて突き飛ばしやがった。

 鉄球が解放され、鬼を攻撃しようとした悲鳴嶼さんが俺を受け止めるため攻撃を中断してしまう。

 そしてガシャーン、と。悲鳴嶼さんと共に壁へと激突してしまう。

 

「……不死川、無事………か」

「あぁ、大丈──」

 

 夫だ、と。言いたかった。

 言いたかったのにも関わらず、再び俺は言葉に詰まってしまった。

 俺と悲鳴嶼の場所に影が差し込んできたからだ。

 恐る恐る、顔を上げる。

 そこには般若が立っていた。

 

「テメェの罪は───テメェで拭いな」

 

 いつの間に来ていたのか。鬼が俺たちの目の前にいた。

 鬼は顔の横で右手を小指から順に握り混込む。俺にとってそれは処刑への秒読みに思えた。

 反撃の構えの一つで取りたかったが、先ほどの攻撃の影響か指一つ動かせなかった。

 

「…………」

「くったれがぁ…」

 

 後ろにいる悲鳴嶼さんは当たり処が悪かったのか、今は意識がない。

 何て事だ。柱でありながらこの始末。腹を切れるのなら切りたかった。

 お館様………申し訳ありません。

 

「オラァッ!!!!」

 

 鬼が俺たちに向けて拳を繰り出す。

 せめてもの抵抗として、拳に向けて頭突きの一つでも喰らわせてやる。

 かかってきやがれ。

 俺の頭と鬼の拳がぶつかる。その瞬間、

 

「そこまでだ。両者ともに、矛を納めてはくれないか」

 

 聞き覚えのある声が聞こえた。

 ブォン!!!!

 それと同時に凄まじい突風が俺たちの全身を突き抜ける。鬼の拳が目と鼻の先でピタリと止まっていた。

 

「すまないね。少々話をしてもよろしいか?」

 

 俺と鬼の間に立つように、声の主、一羽のカラスがやって来る。

 見間違う訳がない。お館様の鎹烏だ。

 鬼は鎹烏を見て、少し驚いた表情を浮かべた。

 

「……カラスが喋ってる? 大道芸かなにかか?」

「残念ながら、私は大道芸人に仕込まれた訳ではないよ。それと二人について謝らせてほしい。どうやら我々と貴方との間には認識の違いがあったようだ」

「認識の違い、だと? いきなりこのヤクザと坊さん崩れが殺意と武器持って襲ってきたのにどんな認識の違いがあるって?」

 

 お館様のお言葉を前になるたる不遜な態度。

 俺は一言注意をすべく、口を開く。

 

「貴さッ───この方を何方とッ!!」

「実弥。少しだけ黙っていてくれないか」

「っ───」

 

 優しく、しかしキッパリとお館様の鎹烏が俺の言葉を遮られる。

 完全に蚊帳の外だ。

 何て事だ。自分の不始末を自分で片付けることすらできなくなってしまった。

 

「改めて自己紹介をさせてほしい。私は君を攻撃してしまった二人の長になる産屋敷 耀哉の鎹烏。いわゆる伝令役。伝書鳩の一種だが、この場では長本人の代理人を任されている」

「……俺は新月 心(しんげつ こころ)。ただの理不尽に巻き込まれた一般人だよ」

「心殿だね。先ずは謝罪を。此度は認識の違いがあったとはいえ、二人が君へ事情も話さず攻撃してしまったこと、深く御詫び申し上げる」

 

 お館様の鎹烏が深く頭を下げる。

 その姿を見た鬼は、ゆっくりと俺に振りかざしていた腕を下ろした。

 

「一先ず、殴るのは止めてやる」

「感謝する、心殿」

「まだ許してはねぇから、感謝は不要だ。それと教えてくれ。認識の違いってなんだ? また襲われでもしたらたまったものじゃない」

「勿論、その説明もさせて貰おう。君は、鬼を知っているかい?」

「鬼? 桃太郎やこぶ取りじいさん、頼光伝説に出てくる伝説の生き物か?」

「一般的にはそっちが有名だね。しかし、本物の鬼がこの世には存在するんだ」

「人を憎むとか、心に住まう邪悪とかか?」

「いや、概念的ではなく、物理的にいるんだよ」

「……はぁ?」

 

 そこから鎹烏は鬼について説明を始めた。

 

 これより数百年前。鬼の始祖が誕生し、今日に至るまで人々の生活を脅かしていた。

 世に蔓延る鬼は全て始祖から生まれ、人を襲い、食べてしまう。

 そんな鬼から人々を守るため、鬼の始祖を討ち果たさんとするために鬼殺隊が生まれた。

 鬼は不死身であり、日光でしか倒すことはできない。日光と同じ性質を持つ日輪刀で頚を斬ることで、太陽がなくと間鬼を倒すことができる。

 

 その他、鬼殺隊の重大機密に関わること以外の全てを、鎹烏は鬼に説明した。

 

「んで、その鬼と俺を間違えて攻撃してしまったって言いたいのか? 一般人の俺を鬼と」

 

 勘違いも甚だしい、と。鬼は怒りと呆れが半々に混ざったような表情で声を少しだけ荒げた。

 こいつ、今の自分の姿を理解していないのか?

 俺の気持ちを代弁するように、鎹烏が鬼へ説明を続ける。

 

「心殿の心中お察しする。しかし、非常に申し上げにくいのだが、今のご自身は一般人では無いのです。ちょうどそこの窓に写る姿を見てください」

「はぁ? 何を訳の分からねぇことを」

 

 鬼は陽光により、自分の姿が写る窓をみた。

 くっきりと、筋骨粒々な姿が写っている。

 

「ほらみてみろよ。どこか一般人じゃないだ。この紫色の肌。肩のプロテクター、金剛石のように逞しく筋骨隆々な肉体───ってぇ、誰ッ?!! このザ・スタープラチナみたいな人、マジで誰よっ!!」

 

 自分の姿を見るなり、鬼は慌てふためきだした。

 どうやらマジで自分の身に何が起こったのか理解してなかったみてぇだ。

 というか、悲鳴嶼さんの日輪刀を片手でいなした時点で気付けよ。

 現状を把握した鬼は「ウソダドンドコドーンッ!!」等とまた訳の分からねぇことを喋りながら地面へ両手膝をついた。そんな鬼を慰めるように鎹烏が肩に乗る。

 

「理解して頂けましたか?」

「………まぁ、ある程度は。この姿を見れば、先の話も含めて、あんたらが俺の命を狙うのも理解できる。んで、俺を殺すのか?」

「いや、その逆だ。君を産屋敷耀哉は保護、或いは協力体制を取りたいと考えている」

「「なっ?!(なるほど)」」

 

 俺の驚きの声と、いつの間にか意識を取り戻していた悲鳴嶼さんの声が重なった。

 鬼殺隊が鬼を保護するなど前代未聞だぞ?!

 俺は悲鳴嶼さんの方を見るが、悲鳴嶼さんは「黙って見ておけ」と返答。

 クソが。お館様の考えを理解できないのは俺だけかよ。

 すでに黙れと命令されている以上、俺はお館様の提案に否を唱えられなかった。

 

「保護……ねぇ」

「あぁ。できれば応じて貰いたいと思っている。それに、その形相から心殿も普通の生活は難しいだろう?」

「怪しいが………一理どころか、真理だな。一つ約束してくれ」

「何かな?」

「一つ。俺の命を狙ったら、殺しはしないが再起不能になるまで抵抗する」

「わかった。此方からは一切の手出しをしないよう厳命すると誓おう」

「ならいい。んで、どうすればいい?」

「此方から産屋敷邸へ案内しよう。行冥、頼めるかい?」

「御意」

 

 鎹烏の指示により悲鳴嶼さんは鬼を運ぶため近づく。鬼は「んじゃ、好きにしてくれ」と言って両手を頭の上へと上げた。

 完全降伏の構えだ。

 今なら頚を斬ることはできる………が、流石にこの状況で動くほど俺もバカじゃねぇ。

 悲鳴嶼さんが鬼を担いで警察署を後にするのを見送る。

 俺は反吐が出そうな現実をどうにか飲み込み、その後に続いた。

 お館様へ、この異例の事態に対する真意を問うために。


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