六井旅行奇譚 ~鬼退治編~   作:犬原もとき

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第10話

僕のアレコレをちょろっとお出ししてから数日。

僕のところにはいろいろな人が来るようになった。

まぁ大体何かしらの技術を教えて欲しいって話ばっかりだ。

ハッキリ言うけど全部時間が掛かるし、魔法に至ってはこの世界に魔力がないから、僕くらい膨大かつ代替エネルギーを幾つか持ってないと無理だ。

因みに耀哉になんとかしてよ。と相談したら

「治療してもらっている私が言うのも何だけど、一人二人くらいは教えてあげてほしいな」

という返事だった。狙いとしては僕以外にもそうした力を使える人物を増やし、耀哉の治療をローテーションで行わせることだろう。

まぁやりたいことは分かるし、理にかなっている。

けどなぁ・・・人に教えるの苦手なんだよね。

「相棒。まーた悩んでるのか?」

「当たり前だろ。人に教えるなんてしたことないんだよ僕」

「いつも得意げに知識披露してるじゃあねーか。ああいう感じでいいんじゃあねーの?」

「良いわけ無いだろ。教えるってことは相手に伝わらなきゃ駄目だ。あんな知識の整理、反復なんて伝わるわけがない」

「あー・・・・たしかに俺は聞き流してるかもしれねぇ」

教える人のレベルにもよるけど、今のブリオみたいに話半分にしか聞かないものもいる。

ホグワーツの教師陣の苦労をこんな形で知ることになるとは思わなかった。

今度行く機会があったらグルメ食材で作ったスイーツでも持っていこう。

気の修行も悟空とクリリンの又聞きだから曖昧といえば曖昧だ。

おまけにこれ最低でも1年はかかるっぽいからなぁ。

まぁ魔法やグルメ細胞よりも現実的ではあるけど。

因みにまだそんな話はしてないのに既に行冥師匠とカナエさんからこの子育ててくんない?って話が持ち上がっている。早くない?

そしてその相手とは

 

「早く気の修行を付けてください」

カナエさんの妹のしのぶちゃんだ。

今僕は耀哉の治療のために蝶屋敷に仮住まいさせもらってるんだけど、その時にカナエさんが気とかの説明をしたらしい。

まぁ瀕死の身内が走ったりできなくなったとはいえ生きてたわけだから、ある程度の説明義務はあるかな~って説明した僕も悪かったとは思う。

加えて僕の身体も悪かった。

なにせしのぶちゃんは151cm。僕は135cmで僕のほうが16cm小さい。

なのに行冥師匠と同じ岩の呼吸が使えるくらいの筋力を発揮してて、上弦の弐からカナエさんを守りきったわけだから、彼女のコンプレックス刺激しまくりってわけだ。

ただでさえ自身の体格が原因で頸が切れず、それを補うために藤の花の毒を使うという搦手を使って頑張ってきたのに、それより小さい僕が普通に首を切れてるもんだから、前から気になっていたらしい。

多分その時は秘訣でも聞いて、実践してみようくらいの認識だったと思う。

ところが童磨と戦って生き延びちゃったもんだから、事情が変わった。

気、グルメ細胞。魔法。こうした鬼とは違う異能の力が加わった結果ならば、自分でも普通の隊士のように戦えるのではないか?そう考えてカナエさんや行冥師匠に詰め寄り、頼み込んできたというわけだ。

カナエさんからは「本当は戦ってほしくはないけれど、なんとか出来ないかしら?」と困ったような笑顔で、行冥師匠からは「彼女も鬼殺隊の一員。それまでの苦しみも理解できる」と涙を流しながら頼まれた。

二人とも口ではそう言うものの、僕ならなんとか出来るのでは?と思っている感じだ。

恐らく耀哉もこの剣には一枚噛んでいるだろう。

じゃなきゃ柱になる予定のしのぶちゃんを一時保留にしてまでコチラに寄越す理由がない。

そう。柱になる予定だったのだ。

鬼殺隊最高位の柱なんて他の隊士からすれば尊敬と畏怖を持って称えられる立場だ。

それをわざわざ保留するなんてよっぽど熱心に頼み込んだに違いない。

流石鬼殺隊なんかに入るような人だ。覚悟が違う。

は~・・・仕方ない。

「・・・最初に断っておくけど、僕は人に教えたことがない。やり方が間違っているかもしれないし、思った結果にならないかもしれない」

「覚悟の上です」

「・・・一年という期間の間じゃ何も形にならない、中途半端な代物になるかもしれない」

「その時は元のやり方に戻すだけです。なんですか?言い訳ですか?姉さんを救ったのも悲鳴嶼さんと渡り合えたのはただの偶然だったんですか?男ならごちゃごちゃ言わずにさっさとやれば良いんですよ!」

人も気も知らねーで簡単に言うなーもー!

「柱に選ばれたとはいえ、私はこの身体で頸も切れない・・この先毒が効かない鬼が出た時、対処できなくなるかもしれない・・・頸さえ切れれば、そんな心配しなくてもいいんです」

「なら毒を極めれば良いんじゃない?」

いくら鬼の再生能力がすごくても、自然系には何千と毒がある。

それらすべてに対して抗体を持っているわけではないだろう。

仮に再生能力によるゴリ押しというのなら、それはそれでやりようがある。

「鬼に聞く毒は藤の花の毒だけです。少なくともフグの毒やハチの毒は効果がありませんでした」

「選択毒性ってやつか」

僕が呟いた単語にしのぶちゃんが首を傾げる。

選択毒性とは特定の種族に対してだけ致命的な効果を発揮する性質を持つ物質のことだ。

分かりやすく言えば殺虫剤や除草剤、抗生物質なんかがそれに分類する。

他の毒に反応せず、この世界の藤の花の毒にだけそうした反応を示すということは、人食い鬼と藤にはそうした因果関係を持っていると見たほうがいい。

「となると目指すべき道は藤の毒の強化、多様化かな」

「どうやるんですかそんなの」

「だーいじょうぶ。そういうの結構得意なんだ」

にやりと笑う僕に、不安というか胡散臭い顔で見るしのぶちゃん。

なぁに心配しなくていいよ。

劣化版とはいえ仙豆を再現せしめたんだぜ?

インフィルオンの施設があれば余裕だよ。

 

それから僕はしのぶちゃんを連れてインフィルオン内の工業エリアで藤の花の毒を強化しながらバイオームエリアで生育させているグルメモンスターで修行しながら、肉体そのものの強化にも務めた。

しのぶちゃんはどうやらグルメ細胞に適合しやすかったらしく、一週間で馴染んだ。

腕相撲で実弥と互角の戦いを繰り広げた際は、嬉しさのせいで敗けたというなんとも微笑ましい結果を残した。

その後実弥が自分にもよこせと言ってきたので、好物であるおはぎをくれてやった。

妹が見た目は殆ど変わらないのに体重が50kgぐらいになったので、カナエさんは驚いていた。ちなみにグルメ細胞の影響か、結構ムチムチで女性的な身体になった。

さて耀夜への気の治療だけど、思ったより大変だ。

治療とは言うけど厳密には僕の気を耀哉に渡し、その気力を使って元気になってもらおうと言うだけだ。

気を感知してみると、耀哉の気は小さいけれど輝きの度合いでは悟空や他の地球戦士たちに引けを取らない。ただ、気の大きさはそれだけ生命力の強さでもあるから、いくら光輝いていても小さかったらそれだけ弱っているという証拠だ。

それに弱っている人に急に気を与えすぎても、肉体がついていかないので慎重に与えなくてはいけない。

馴染ませるようにゆっくりと気を注いでいく。この作業がけっこう面倒だ。

早くてもダメだし、遅かったら呪いの進行力に負ける。

呪いの進行力を僅かに上回る程度で気を注ぎ込まないと、呪いが現在の状況を誤認してくれないから、一気に大量に送ってチャージするなんてご法度だ。

呪いの進行力は気力の総量で決まるみたいで、今の状態で一気に回復させたら気力が一気に削がれてしまい、ただでさえ少ない元の生命力が消えてしまう可能性がある。

ただ呪いの力は思ったより判定がゆるいから、大きく戻りさえしなければ進行力が変わることはない。

今の調子なら現在の右目が見える状況を3年は続けていけるはずだ。

「よし。今日のところはここまでかな」

「ありがとう志乃。これをしてもらうと随分楽になるよ」

「そりゃあ僕の気を送ってるからね。寧ろ元気になってもらわないと困るよ」

「ははは。それもそうか。ついでに美しくなったりしないかな?」

「ソイツぁ別料金だな」

軽口をたたきあって立ち上がる。

思えば耀哉ともそれなりの付き合いになった。

聞けばしのぶちゃんと修行しているころ、新しい柱が出来たらしい。

一人は炎柱 煉獄杏寿郎。

炎の呼吸の一門、煉獄家からの排出で、下弦の鬼を倒したことでこの度炎柱になったという。

煉獄家は代々炎柱を出しているいわゆる名門らしく、鬼殺隊が設立されて以来ずっと鬼殺隊士を出している、当に鬼狩りの一族と言って過言ではないだろう。

次は蛇柱の伊黒小芭内。彼は前任の炎柱、煉獄慎寿郎によって助け出され、2年ほどの療養を経て水の呼吸の育手の下、、全集中の呼吸を学び、独自の呼吸 蛇の呼吸を生み出し、鬼殺隊入り。大量の鬼を殺した功績を持って蛇柱になったという。

これで柱は行冥師匠、天元、富岡、実弥、煉獄、伊黒の6人。今任務中のしのぶちゃんが正式に柱になれば7人になる。

何でも柱は最大で9人までらしいから残りは2人ということになる。

誰がなるんだろうか?

「君とか良いんじゃないかと思っているんだけどね」

「やだよ。誰かを従えるのは性に合わないんだ」

「挑戦することも大事だよ。長い人生なんだろう?」

「一度やったことあるから言ってんだよ」

「じゃあひなきを君の妻に・・・」

「じゃあで決めていい話じゃないだろ」

ジト目で睨みつけるが、耀夜は笑うだけだ。ま、いつものやり取りだしね。

しかしまだ8歳だぞあの子。将来決めさせるには・・・・いや風俗を考えたら普通なのか?

いやそうはいっても一桁年齢だからそうした話はまだ早いだろ。たぶん。

早いよな・・・?

確かめるように耀哉を見るけど、彼はニコニコと微笑みを返すだけだった。

 

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