孤児の成り上がり   作:雷光123

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【カード解説】
【炎馬覇将-グレートブレイザー】
NODE-4 / 炎属性 / 獣戦士族 / ATK3000
ノード素材:「炎馬」モンスター×4
① このカードがノード召喚に成功した時、相手フィールドのモンスターをすべて破壊する。
② このカードがフィールドに存在する限り、相手はバトルフェイズをスキップできない。
③ 1ターンに1度、自分フィールドの「炎馬」モンスター全ての攻撃力を+500する。

【炎馬絶蹄王-カタストロホース】
Lv10 / 炎属性 / 獣戦士族 / ATK3500 / DEF3000
交霊素材:「炎馬指揮官-シルヴァーン」+「炎馬」モンスター2体
① 交霊召喚成功時、相手フィールドのカードをすべて破壊する。
② 自分スタンバイフェイズ毎に1000LPを支払う。支払えない場合このカードは破壊される。
③ このカードは戦闘では破壊されない。



暴走する炎、炎馬絶蹄王ーカタストロホース

 シルヴァーンとのバトルは続く。砲声と怒号が幾重にも折り重なり、戦場の喧騒は脳髄を叩き続ける。火薬の匂いと血の匂いが混じり、空気そのものがざらついていた。アルカナでの戦闘は果てを知らず、銃弾や大砲が飛び交うたびに兵士の影は弾け、次々と灰へ変わって風に散っていく。

 

『カードを5枚補充だな』

 

 カードを引く。【裏霊導竜-アーリス】を除外して【裏霊導の副官セナ】を特殊召喚。セナは右手を手札の方に向ける。【裏霊導の祈祷師メイ】がセナの腕に引かれ場に飛び出す。二人の影が背後に立ち、揃った呼吸が俺の呼吸と重なる。冷ややかな霊風が足元を撫で、地面の砂が微かに逆立つ。

 

「さらに【霊導機-ギアワーカー】を特殊召喚。スパークメカとマイクロギア、ギアワーカーを除外して、【霊導機-メカニカルフォージ】を特殊召喚!」

 

 地鳴りと共に鉄の巨体が姿を現す。左手の砲塔が旋回し、白熱した光が収束。

 

「メカニカルフォージの効果発動! このカードが交霊召喚された時、フィールドにあるカードを1枚破壊! いけ!」

『なんだと!』

 

 次の瞬間、白線の刃が空を裂き、轟音が大地を揺らした。狙われたグレートブレイザーは機甲ごと粉砕され、火花を散らして崩れ落ちる。焦げた金属と油の臭気が遅れて押し寄せ、鼻腔を灼いた。召喚の代償で加速カウンターは6から4へと減少し、ソウルボードの数値が赤く点滅する。

 

「これでシルヴァーンの攻撃力は3300になったわね」

「このまま押し切る! セイランを攻撃表示に変更。効果により除外されたアーリスを装備」

 

 攻撃力を400アップ。さらに手札の【影纏う霊導核】により攻撃力を1000上昇させ、合計4200へ。指先が震えた。勝機が近いはずなのに、心臓は嵐のように跳ね続けていた。

 

「勇者シルヴァーンを守れ!」

「邪魔だ!」

 

 右から銃弾が飛んでくる。体を伏せて銃弾を避けたが、耳元を風切り音がかすめた。焦熱豪騎とセイランで戦闘が始まる。セイランは刀身で炎を切り裂き真っ二つにする。

 

「【影纏う霊導核】を装備したモンスターが敵を破壊した場合フィールドのカードを追加で1枚破壊!」

 

 【炎蹄の疾駆】を破壊。シルヴァーンは焦熱豪騎の攻撃力2300分、効果ダメージを受けた。残りライフは400。喉が渇き、息を吸うたび肺が砂を飲み込むように痛んだ。

 切断面に黒いひびが走り、炎が逆流して自らを焼く。核の影が地表に広がり、蹄跡の光を吸い取っていく。

 

『連術罠【炎馬術-烈駆障壁】! デッキからモンスター一体を特殊召喚!  現れろ【血戦の歩兵】! 血戦の歩兵は手札から炎属性モンスターを1体を呼び出せる』

 

 さらに烈火蹄が現れ、烈火蹄の効果によって【炎馬-焦熱豪騎】が戦場に出現。焦熱の嘶きが低く鳴り、地面の表土が泡立つように膨れ上がる。

 

「俺はカードを二枚伏せてターンエンド」

 

 ターンを終了し、シルヴァーンに手番を渡す。シルヴァーンは迷わず【死者蘇生】を発動し、墓地の炎馬モンスターを蘇生。通常召喚で炎馬モンスターを呼び出す。墓地の赤光が一本の柱になり、蘇生体の輪郭をなぞって燃え移る。

 

『わがグレートブレイザーすら倒す人間が出たか……。ならば私の本気を見せてやろう! 魔法カード【復讐の誓い】発動! デッキから炎馬術式カードを手札に加える。さらに残印魔法【血脈の継承】!』

 

 血脈の継承が光を放ち、墓地からシルヴァーンを再登場させる。赤い血潮のような光が地中から噴き、蹄音と共に地表を割った。

 

「何を始める気だ!」

「わが父より受け継いだカード。カタストロホースよ現れろ! 【炎馬交霊】発動!」

 

 シルヴァーン自身とフィールドに並ぶ炎馬モンスターを交霊。三体の魂が炎に混ざり、一つの巨大な魂へと変質する。魂は火口のように紅蓮を吐き出し、熱風が頬の産毛を焦がす。

 

『怒りと憎悪に身を灼かれし絶蹄の王よ!すべてを灰に帰せ、交霊召喚。炎馬絶蹄王-カタストロホース!』

 

 カタストロホースが咆哮し、フィールド全体を焼き尽くす炎を放った。光と熱に目を覆い、必死に距離を取る。視界は白金に塗り潰され、耳は一瞬無音に沈む。遅れて爆ぜるような圧が胸郭を打ち、息が奪われた。

 

「残印罠【深淵の導霊結界】! 裏霊導モンスターが破壊される場合、デッキとフィールドからモンスターを一枚ずつ除外して敵の効果を無効化できる!」

 

 その直後、横から銃弾が飛んできて肩をかすめた。アルカナの方で大砲が鳴り、銃撃戦が始まっている。攻城戦だ。城壁に兵士が張り付き、梯子を登るのを熱湯や銃弾で阻む兵士たちの叫びが届く。思わず舌打ちする。かすり傷でライフは−2000、残り1500になった。硝煙が風で押し寄せ、火薬の辛さが喉を刺した。

 

「逆印罠【業火の報復】! 私は【炎馬-爆炎走者】を墓地へ送り、残印魔法の効果を無効化する!」

「一ターン目に伏せていたカードか! ならば逆印罠【神の通告】! ライフを半分支払い、その逆印罠を無効とする!」

『だが、ライフは750だ。二枚目の【炎蹄の疾駆】および契具魔法【復讐の焔】発動! カタストロホースは2回攻撃できるうえにモンスターを破壊すればお前は500ダメージを受ける』

 

 【神の通告】の術式印が光り輝き【業火の報復】が砕け散る。その後【深淵の導霊結界】の印がカタストロホースの炎を吸収した。

 

 カタストロホースの効果テキストが浮かび上がる。戦闘で破壊されず、攻撃力+800を得る。セイランの攻撃力を上回り、こちらからの撃破は不可能となった。攻撃でセナが破壊され、彼女の輪郭が薄煙となって指の間から零れ落ちた。胸の奥がすうっと冷え、震えが背筋を走る。ライフ250。後一撃で死ぬ。

 

『殺す前に聞こう。貴様はなぜわが父のカードを持っていた』

「捕虜の持っていたデッキに入っていた。お前の家族も一緒にな」

『貴様を撃破すれば手に入るか』

 

 シルヴァーンは速度を緩めずにつぶやく。彼の動きは止まっている。

 

『人間よ、わが名はシルヴァーン。いくつもの超広域国家を渡り歩いてこの地にやってきた。やっと見つけた安息の地を邪魔した恨み絶対に晴らしてやる!』

「超広域国家?」

『貴様を殺した後、私は人間たちに復讐する! カタストロホース、攻撃だ!』

 

 カタストロホースは巨体を震わせてこちらに近づいてくる。槍がメイを攻撃しようとしている。死の気配が近くなり体が底から冷気が溢れ出す。目線を落とし手札を見る。1枚のカードを見つけ、ソウルボードに差し込んだ。

 

「連術罠【黒翼の逆流陣】を手札より発動!俺のモンスターが破壊されたためカタストロホースを守備表示に!」

『しまった……』

 

 カタストロホースは槍を構え、動きを止める。双方のライフは残り250対400。だがシルヴァーンの維持条件は厳しく、スタンバイフェイズごとに1000ライフを支払わなければならない。

 わずかな静寂。熱の幕が薄れ、遠い城壁の罵声だけがやけに鮮明に届く。

 

「撃て!」

 

 前方から味方部隊の一斉射撃。マスケット銃弾が雨のように飛来した。体をひねって横にそれる。弾道は熱の揺らぎで歪み、耳元を掠めて土を跳ね上げた。砂粒が頬をかすり、そこだけ冷たく感じる。

 

『貴様の顔は覚えた。次会うときはどちらかが死ぬまで続けるぞ。アルト』

「今度こそ殺す」

 

 シルヴァーンは遠くへ去っていく。空気がゆがむような熱気が消えて一気に体が冷える。

 

「アルト、大丈夫?」

 

 ユーリの声。無事に逃げ切ったらしい。遠方では味方部隊が戦闘を開始。ソウルボードを確認すれば時刻は14時。強行軍の先発隊が到着していた。雄叫びと金属音が耳を満たす。

 

「お前ら、勇者を殺害したことについては何か言われたか?」

「グロイス連隊長が直々にやってきてアルトのところに行けとしか」

「アルト様、勇者を一般兵が殺した場合を知っていますか?」

 

 無言で圧をかけてマリアンヌの話を促す。マリアンヌは水を飲んでから話をつづけた。

 

「勇者殺しは寺院に幽閉されて士気高揚の道具にされるか英雄として祭り上げられるかですわ」

「自由がなくなるのか。拒否権は?」

 

 マリアンヌは首を振る。マリアンヌは逃げた後追撃してきた部隊をユーリと討伐した。彼女たちは討伐隊の一人に勇者が紛れていたようで殺したそうだ。

 

「逃げるわけにはいかない。もう前線以外で戦う道がないんだ」

 

 彼女たちに先ほどシルヴァーンとのバトルの最中に勇者を殺したことを伝える。これで分隊全員一人以上勇者を殺したことになる。

 

「ならばこのまま戦いを続けよう」

 

 街道の上を馬でゆっくりと歩く。歩兵戦用のデッキに組み替えてシャッフル。包囲されたアルカナを解囲するために先発隊は戦闘を開始。敵も倍の兵力を差し出して対抗する。

 

「俺が守る。だからついてこい」

 

 不安そうな顔をするユーリをなでる。彼女も納得したようだ。

 

「戦いに戻るぞ。今味方師団は後方の部隊の到着を待ちながら、布陣のための準備をしている」

「それで私たちはどうするのですか?」

「俺たちも戦いに加わりに行く。敵部隊は布陣を妨害してくるだろうがそれを食い止めるためだ」

 

 遠くを見ると続々と味方部隊が到着している。味方側は先発部隊に選りすぐりに兵士を選び戦いに挑んでいる。勢いが弱い。みんな息が上がっているのか動きがにぶく炎馬の突撃によって次々灰となっていく。

 

「とにかく功績を立てれば金貨や銀貨が手に入る。勇者一人じゃ発言権は弱い。この戦いで10人殺して発言力で上回ればいいんだ」

 

 戦場の熱気が伝わってくる。馬から降りてマスケット銃を持ち出した。先ほどのバトルの傷は会話中に癒しライフも8000に戻した。俺たちが位置しているのは味方側最左翼。

 

「勇者は後方部隊の中央にいるな。ユーリ撃て」

 

 敵兵士が斬りかかってくるが、それを刀で防ぐ。ユーリは弓矢に持ち替えて曲射。バトルエナジーが散逸していないことから敵兵士が防いでいるようだ。何度も撃たせているとバトルエナジーが飛び散った。

 

「撃破したよ」

「よくやった」

 

 彼女の声は震えている。偉業に等しい行為を二回もやったのだ。無理はない。

 

(このまま英雄化ね。このあたりの伝説になるわよ)

(むしろ生ける伝説になった方がいい。もう普通には戻れない)

 

 腹をくくる。敵兵士を次々と倒していると強大なバトルエナジーを持った敵がやってきた。

 

「勇者様のお出ましということか」

「私たちならやれますわ!」

 

 敵兵士たちが剣を振りかぶる。複数人の攻撃を刀で受け止める。重みに膝を曲げそうになった。歯を食いしばり押し返す。体の中から力が湧いてくる感覚を覚える。

 

「アルト様! 撃ちます!」

 

 後ろから銃弾が飛んでくる。敵兵が倒れ残り8人。敵兵が恐怖におびえる顔をする。二人の首を薙ぎ撃破。次にもう一人を召喚したセイランで攻撃し、よろけさせる。追撃の銃弾が後ろから飛んでくる。

 

「アルト、勇者を狙う!」

「任せろ!」

 

 マリアンヌとともに突撃する。俺が道を切り開き、マリアンヌがとどめを刺して前線を押し上げる。横を見ると近場の味方部隊が息を吹き返しつつある。味方勇者も敵を吹き飛ばし呼吸を整える隙を作っていた。

 

 敵は背を向けて逃げ出す。ユーリの放った弓矢が逃げ遅れた勇者の頭に突き刺さり、バトルエナジーが霧散。正面にいる兵士に銃を発砲。しりもちをついて殺される者、味方を押しのけて逃げ出そうとする者など混乱している。

 

「俺たちはそのまま中央側に進む」

 

 騎兵突撃により、敵の一部戦列が崩れる。二人を引き連れて奥へ。中央に近づくほど熱気が激しくなる。近場に膨大なバトルエナジーを感じ取る。勇者同士のカードバトルだ。二人に目くばせし、マスケット銃を構える。

 

「撃て!」

 

 味方勇者と敵勇者は味方陣地を背に戦い、周囲はそれぞれの陣営の兵士が勇者を守るべく露払いしていた。俺たちはその隙間から敵勇者を狙いうち、被弾させた。敵勇者は驚いた顔をして倒れる。

 

 その瞬間、戦場全体がわずかに静まり返った。敵兵士の喉から息が漏れ、刹那の間だけ誰も動かなかった。

 

「大隊の勇者が……倒された……」

 

 呻くような声が戦列の奥から漏れる。隣の兵士に伝わり、さらにその後ろへと広がり、ざわめきが波紋のように走った。兵士たちは互いに顔を見合わせ、恐怖に凍り付いたように剣を握る手を緩める。数人は腰を抜かし、泥にまみれたまま武器を投げ捨てる。

 

 一方そのころ、味方兵の列からは歓声が弾けた。それは勝利の咆哮というよりも、死の恐怖から一瞬解き放たれた安堵の叫びだった。銃を掲げる者、涙を流す者、膝を叩きながら笑う者までいる。勇者の存在の大きさを肌で感じた。

 

「押せるぞ!」

 

 誰かが怒鳴り、兵士たちが武器を掲げた。震えていた剣が、今は戦意を取り戻すように前へ突き出される。

 

 隣に立つマリアンヌの肩が大きく上下していた。荒く乱れた息が喉の奥で震え、握る銃がかすかに揺れている。ユーリも弓を持つ手を震わせ、唇から細い吐息をこぼした。二人の息遣いが耳に触れ、戦場の轟音の中で異様に鮮明に聞こえる。

 

 その一方で、敵陣全体には圧し掛かるような重苦しい空気が流れていた。勇者を失った部隊は魂を抜かれたかのように沈黙し、誰も立ち上がろうとしない。怒鳴り声で鼓舞しようとする指揮官も、その声が震えを隠しきれず、兵士たちの耳に届かなかった。

 

 敵兵の顔色は青ざめ、逃げ出す者の背中が次々に目に入る。勇者の死はただの戦果ではなく、彼らにとって“死神の影”そのものだった。

 

 俺はその光景を確認し、呼吸を整える。恐怖も歓喜も関係ない。ただ一人の勇者が消え、戦場の均衡がこちらに傾いただけの話だ。

 

「いいぞ。このまま進めるぞ! 勇者の死を利用するんだ!」

 

 ユーリとマリアンヌを引き連れ、勇者狩りを再開する。二人とも興奮しているが、やがては慣れるだろう。

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