転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
――湖の中央、大きな大穴がある。
そこに隣接するようにして建てられた、観測拠点があった。
その名はエルガド。
「王国」における、モンスターとの戦いの前線である。
そこに、一人のハンターが訪れていた。
少し短く切り揃えられた、ふわりとした黒髪。
全てを見通すようにぱっちりと開く瞳は、黒曜石のような輝きを放っていた。
華奢な体つきだが、鎧と忍びの服装を混ぜたような防具がその身体を包む。
全体的に青を強調したような服装である。
そのハンターは、迷うこともなくエルガドの中央広場へと歩を進めた。
そこに座る、どことなく高価そうな衣装を纏った茶髪の受付嬢へと声をかける。
その受付嬢は「王国」の王女、チッチェである。
「女王様直々の依頼ねぇ……中々なものだね」
「はい。最近は傀異克服
「確か、ハンターが一人殉職したんだって?僕はその時カムラの里にいたから駆け付けられなかったけど……」
「……気に病むことはありません。彼女は、シャガリは最後まで良いハンターでした」
「確か、一人で傀異克服
「そうです。その
「神域と名付けられた場所だよね。謎のモンスターがいるとか」
「古文書から解読したところ、そのモンスターは
「その
ハンターは依頼を確認すると、それを承諾した。
本来ならば、それは人に任せていい依頼ではない。
しかし、その者だけは例外だった。
カムラノ装を纏う、カムラの里の英雄。
今から狩りに行くというのに、軽やかに気分を弾ませて武器を選んでいた。
しなやかで柔そうな体躯、だがその威圧感は古龍を超えている。
鼻歌を歌い、狩りに行くとは思わせないほどの余裕。
その内にはハンターとしての経験と実力があった。
その「
――――――――
随分と、私は面倒な場所にいるな。
試しに
それには時空間の特殊性が影響しているらしい。
ユリアが言うには、ここはヴェルダナーヴァが創造した世界の一つではないのだと。
ヴェルダナーヴァとは全く関係がない、本当の別次元。
プロトは恐らくここの出身だろう。
ということは私もこの世界に連なる所の出身なのか?
その壁を基軸世界で越えられるのは……やはりリムルくらいか。
アイツなら何をやらかしてもおかしくないな。
とりあえず、私はここと連なる世界を
《という感じですね……聞いてます?》
……勿論だとも!
この次元がなんとか、とかそんな感じだろう?
《ふぅ、
そんな話だった。
ということで、ならば私は戻らなくてもいい……とはならない。
何故ならもう随分と改変をしてしまったからな。
私が、プロトが、何にしろいなかった世界など議論しても仕方がない。
クロエは「時間は作り変えられている」と言っていた。
要するにそういうことなのだろう。
さて、色々と権能を試したわけだが、リムルのいそうな場所に移動するとしよう。
なんか便利になった私を見せたい。
これだけエネルギーがあればフェルドウェイくらいなら軽く捻ることができるだろう。
ユリアが私が眠っている間にしていた研究によって、
私の家族たちなど、
流石はユリアというか……。
それを実用化するのに一体何年の時間をかけたのか。
私が想像もできないほどの長い年月を研究に費やしたのだろう。
「それじゃ、確認もすんだから
《お任せください、シャガリ様》
私はリムルがいるであろう世界へと転移した。
そこは私がいた場所と似た暗い場所で、世界の果て。
リムルも飛ばされたのか?と思うと同時に、周囲にリムルの姿が見えないことに困惑する。
もうリムルは去ってしまったのか?
もしくは、空間がズレたか。
だとすれば仕方がない。
気配の感じる方へ進むとしよう。
ここからでも分かる、かなり大きな気配だ。
リムルかは定かではないが、こんな果ての世界で生きているくらいだからすごい奴であることに変わりはないだろう。
竜種のような気配がする……ということは、ヴェルグリンドか?
いや、ヴェルグリンドとは
だとしたら違うな。
「最強不滅の、ヴェガ様なんて……下らない……」
向かった先には、虚な瞳で虚空を漂うヴェガがいた。
ブツブツと何かを呟いているが、コイツはこんな所で何をしているんだ。
竜種のような気配……というか、禁忌のような気配に近い。
それにしては意志がなさすぎるけど……。
とりあえず、事情聴取だ。
「おーい、聞こえてるか」
「……あン?誰だぁ?」
どうやら受け答えはできるようだな。
どこから攻撃が来てもいいように
……横で待機しているが、特に攻撃が来る様子はない。
ヴェガといえば、誰彼構わず攻撃を仕掛け、負けそうになったら逃げるような奴だったはずだ。
ここまで生き残っているのはすごいのだが、心がぶっ壊れてるように見える。
「ダムラダ、ミーシャ、ラプラス、フットマン、ティア、カガリ……ユウキ。俺は……馬鹿だった……」
「おう。馬鹿だから目を覚ませ」
「魂魄掌握」と「
これを使えば強制的に精神を健康な状態へと戻すことができるぞ。
もうちょっと効果を強くすれば、魂を再生させて「
まあ、これだけでとんでもないエネルギーを消費するが。
今の私なら片手間で行えるとはいえ、こんなのをできるのはヴェルダナーヴァみたいな創造神とか、リムルみたいな
「うおっ!?誰だお前!」
「誰だとは失礼だな。私はシャガリ。会ったことはあるはずだぞ」
「知らねぇな……」
ヴェガ、こいつは私を覚えていないようだ。
私を喰らおうとしてきたくらいだから覚えておけよとは思うが、どれくらいこの虚無を彷徨ったのかも分からないしそんなものか。
私は奇跡的に権能とかユリアのおかげで記憶をしっかり保っているが……。
ヴェガのような奴がこんな虚空で心を保てるはずもない。
古龍を超える強靭な肉体、プルチネルラを超える存在値。
だが、それ故に死ぬこともできないだろうな。
一体何をしたらこんな存在値になるのか。
現在のヴェガの存在値は余裕で一億を超えている。
フェルドウェイでさえ一億をちょっと超えたくらいだったというのに。
「お前は一体何だ?ついに俺様にも迎えが来たのか……?こんな果ての世界で……。地獄でもいいから、どうか俺様をここから連れだしてくれ……」
「お迎えではないな。うむ、だがお前を元の世界へ戻してやってもいいぞ」
おや?なんか絶望だけじゃなくて反省してるっぽい感じがする。
だったら戻してやっても大丈夫だろう。
リムルは手軽にパッと殺すのはいけないと言ってたからな。
こうして生きて、反省したのなら許してやろう。
「……あ、ありがてぇ。誰か分からないが、感謝する」
私はヴェガと握手を交わし、その魂を掌握する。
ここからは、コイツ次第だ。
「お前は今から私の家族だ。私達はお前を愛そう。だからお前は家族を愛せ」
「あぁ。俺様は、俺は前に何もできちゃいなかった。求めてばかりで、誰かに与えることをしなかった。反省する。これからは、少しでも……」
「充分だ。契約成立だな」
ヴェガの魂を優しく絆の膜が覆い、心を癒す。
そしてカチリ、と欠けたピースをふさぐように――
私とヴェガの間に"魂の回廊"が生成される。
うん、完璧だ。
「ありがとう……えっと……」
「ヴェルシャガリ=テンペスト・アルカーノ。シャガリと呼べ」
「あぁ。シャガリ、俺の家族になってくれてありがとう」
「どういたしまして、だな!」
私はヴェガの腕を掴み、現世へと戻る準備をする。
ヴェガがいるとはいえ、
さて発動するかと思った瞬間、ヴェガが突如として私の腕から離れる。
「お、おい!ヴェガ!」
「な、なんだこれ!た、助け――」
竜のようなシルエットが異空間に突如として現れ、ヴェガを連れ去ろうとする。
止めようとしたが――遅すぎた。
何故ならば、その竜のようなシルエットの使っていた権能は「魂魄掌握」
私と同格の、権能だ。
「ヴェガ――ッ!」
家族を見捨てる訳にはいかない。
発動、
幸いにも、ヴェガが移動したのは基軸世界。
私が目指していた場所だ。
ならば、そこで全員を救って見せる。
皆、今行くからな――ッ!