私、これでも幹部なんですけど!?   作:石鹸52mm

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内海アオバの放浪記7

 

これは内海アオバのSSです。

 

─────────

 

D.U シラトリ地区

 

疲れたなぁ、って思いながら朝に目が覚めました。

色々あったことは覚えています。

 

まず、朝コンビニでATMからお金を下ろそうとしたら、とんでもない金額が表示されていたことです。

何か、つけてはいけないお金な感じがしたので、自分の覚えてる範囲内のお金だけ下ろしました。

とりあえず、ICカードに入るだけ入金。時間がありません、今日は限定スイーツを買いに行かないと!

そう思ってコンビニを出たところで、ミレニアムの制服を着た生徒さんに話しかけられました。

というか、髪色に見覚えがあるような…

 

「覚えていますか、アオバさん?私です」

 

「…アカネさん、ですか?」

 

「覚えていただいて何よりです」

 

アカネさんは、メイド服ではなく、制服の上から、髪色と同じのニットを着ていました。

まとめていた髪を下ろしてるので、ぱっと見分かりませんでした。

というか…えっ?なんでここにいるんです?連絡先の交換してもいませんし…

そんな私の疑念を払拭するように、アカネさんは優雅に一礼をしました。

 

「アオバさん、口座はもう確認されましたか?後日、正式にセミナーから連絡が入ると思いますが、アオバさん宛てに依頼報酬が振り込まれました」

 

「あ…確かに、とんでもない金額が口座に入ってましたね」

 

「ふふ、良かった。セミナーとしては、今回学校に振り込んで間接的に渡すよりは、個人に直接還元するのを優先したようですね」

 

「それで、なんで私のところに…」

 

「まぁ、そんなことはさておき」

 

"そんなこと"で、私の困惑の感情は片付けられてしまいました。

アカネさんはそこまで言うと、ほんの少しの間がありました。伏目気味に、私の方を見ている気がします。

 

…なんか嫌な予感がするんですけど。何もないことを半端に期待しながら、私はそれとなく聞いてみました。

 

「あの…それで、ご用件は?私は今日休みなんですけど…」

 

「あぁ、すみません。その、アオバさんのお時間がよろしければ、なんですけれど」

 

アカネさんは私の手をふわりと握ると、到底断りづらい笑顔を、私に向けてきました。

その眼鏡の下は、ほんのり桜色。

 

 

 

「今日私もアオバさんにご一緒してもいいですか?」

 

 

───────

 

 

「アオバさんは、休日はいつも何を?」

 

「私は休みがあまりないので…いつもは食べていないものを、食べに行きます」

 

「あら。でしたら、今日もお店はお決まりで?」

 

「まぁ…はい…」

 

今、ショッピングモールの中を、アカネさんと歩きながら話しています。

隣を歩くアカネさんの目は、逸らしたくなるほど頻りに私の目を見つめてきます。

 

「アカネさんは、何か行きたいところはないんですか?」

 

「私は、アオバさんの行きたいところであれば」

 

なんて、何気ないやり取りをしながら。いや、なんで?

理由を聞いても笑うだけで、何も教えてくれないんですけど。

アカネさんからは、ミルクのような香りがします。あんまり詳しくないけど、香水なのかな?

その香りが、私のオシャレとは言い難い恰好と非対称的で。少し胸がちくっとしました。

 

私の制服は部活動を続けるにつれ、そのうち硝煙の臭いが取れなくなりました。

服を買いに行く時間もないので、今は着やすいデニムとシャツを数着買って私服に回しています。

アカネさんは制服ですし、いまいち意図が読めません。

 

「というか、アカネさんは今日制服なんですね」

 

「あぁ、これですか?私服と悩んだのですが…この方が、アオバさんも分かりやすいかと」

 

「てっきり、何か私が何かしでかしたかと」

 

「?とんでもないです、これは"私用"ですよ」

 

私用で私に会いに来たっていうのは、つまり?

それを聞くためにアカネさんに向けた視線は、その向こうのスイーツ店に吸い寄せられました。

 

「あそこです」

 

「あれ?聞いていたところと違うような…」

 

「あ、あそこも気になってたんです!」

 

アカネさんの手を引くと、少し足早にそのお店に向かいます。

とりあえず、アカネさんの真意を確かめないと。

カラン、と鳴ったベルと共に、「いらっしゃいませ!」の機械音声。

テーブル席に掛けると、目の前にすっとメニュー表が出されます。

 

「お先にどうぞ?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

全然想定してなかったので、コーヒーと適当なモンブランを頼みました。

アカネさんはその様子をじっと見つめながら、紅茶を一杯。

店員さんが去った後、何気なくコップを手でいじりながら、私は口を開きます。

 

「それで…、本当に何をしに来たんですか?」

 

私がここに入ったのは意図的なものなのだろうと、バレているかもしれません。

それでも入ったのは、この人の目的を知るため。

敵か、味方かを判別する手段は、言葉でしか測れません。

アカネさんはこれまで心に貯めていた感情を、ようやく唇から漏らしました。

 

「アオバさんとデートをしに、って言ったら…信じてくれますか?」

 

「ひゃっ」

 

その言葉で、顔に熱が昇ってきたので、思わず手で顔を覆いました。あ、熱いんですけど…!?

少しした後、人差し指を動かすと、アカネさんの耳も少し赤くなっています。

 

「すみません。私も口にしてから、恥ずかしくなってきました」

 

「そ、それは…私に興味がある、みたいな…?」

 

「はい。まずは、お友達から始めようと思いまして」

 

そうこうしているうちに、コーヒーと紅茶が運ばれてきて。お互い続きを口にしない、気まずい雰囲気になりました。啜っているコーヒーの味は、分かりません。アカネさんも少し目を逸らして、紅茶を一口。

先に口を開いたのは、アカネさんでした。

 

「あの…モモトーク、交換しませんか?」

 

「は、はい。忙しいので、あまり出られないと思いますが…」

 

そういうと、不意に、アカネさんが口に手を当てて笑いました。そ、そんなに変でしたか!?

 

「すみません。戦っている時のアオバさんと違って、普段は可愛らしいのがなんだか新鮮で」

 

「別に…私はその辺にいるハイランダー生ですよ」

 

とは言いつつ、アカネさんに褒められるのは…満更でもない、っていうか。あれ?モモトークの友達追加って、どこでするんだっけ…

スマホの操作でまごまごしていると、隣でぽすりという音と、ミルクの香り。

私の右のこめかみに、温度が感じられます。

あ、頭から湯気が出そうなんですけど…!

 

「そこの、人のマークを押すと出てきますよ」

 

「あ、あう…」

 

そうしてモモトークを交換した後は、アカネさんとのデートに行くのでした。

 

──────

 

一緒に歩いていて気づいたことは、アカネさんは美人、ということだけでした。

ずっと、柔らかい手で優しく握られていて、心臓のバクバクが止まりません。

色んなところを回ったと思うのですが、どこを回ったのかは分からなくて。

日が暮れるような時間に、アカネさんがにこやかに手を振っていたのを覚えています。

 

ふと、両手の買い物袋を見ると、タグのついた服が入っていました。私が持っているのでおそらく私が着るものなのでしょう。

友達を通り越して、何かよく分からない繋がりができてしまいました。

私はそのまま帰路に着くと、モモトークでアカネさんに連絡を入れます。

 

"今日はありがとうございました"

 

"私の方こそ、お付き合いいただきありがとうございました。次はおしゃれなアオバさんが見れるのを、楽しみにしてますね♩"

 

アカネさんには、敵わないです…

それ以来、私のスマホに業務連絡以外の連絡が来るようになりました。

 

 

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