これは内海アオバのSSです。
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D.U シラトリ地区
疲れたなぁ、って思いながら朝に目が覚めました。
色々あったことは覚えています。
まず、朝コンビニでATMからお金を下ろそうとしたら、とんでもない金額が表示されていたことです。
何か、つけてはいけないお金な感じがしたので、自分の覚えてる範囲内のお金だけ下ろしました。
とりあえず、ICカードに入るだけ入金。時間がありません、今日は限定スイーツを買いに行かないと!
そう思ってコンビニを出たところで、ミレニアムの制服を着た生徒さんに話しかけられました。
というか、髪色に見覚えがあるような…
「覚えていますか、アオバさん?私です」
「…アカネさん、ですか?」
「覚えていただいて何よりです」
アカネさんは、メイド服ではなく、制服の上から、髪色と同じのニットを着ていました。
まとめていた髪を下ろしてるので、ぱっと見分かりませんでした。
というか…えっ?なんでここにいるんです?連絡先の交換してもいませんし…
そんな私の疑念を払拭するように、アカネさんは優雅に一礼をしました。
「アオバさん、口座はもう確認されましたか?後日、正式にセミナーから連絡が入ると思いますが、アオバさん宛てに依頼報酬が振り込まれました」
「あ…確かに、とんでもない金額が口座に入ってましたね」
「ふふ、良かった。セミナーとしては、今回学校に振り込んで間接的に渡すよりは、個人に直接還元するのを優先したようですね」
「それで、なんで私のところに…」
「まぁ、そんなことはさておき」
"そんなこと"で、私の困惑の感情は片付けられてしまいました。
アカネさんはそこまで言うと、ほんの少しの間がありました。伏目気味に、私の方を見ている気がします。
…なんか嫌な予感がするんですけど。何もないことを半端に期待しながら、私はそれとなく聞いてみました。
「あの…それで、ご用件は?私は今日休みなんですけど…」
「あぁ、すみません。その、アオバさんのお時間がよろしければ、なんですけれど」
アカネさんは私の手をふわりと握ると、到底断りづらい笑顔を、私に向けてきました。
その眼鏡の下は、ほんのり桜色。
「今日私もアオバさんにご一緒してもいいですか?」
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「アオバさんは、休日はいつも何を?」
「私は休みがあまりないので…いつもは食べていないものを、食べに行きます」
「あら。でしたら、今日もお店はお決まりで?」
「まぁ…はい…」
今、ショッピングモールの中を、アカネさんと歩きながら話しています。
隣を歩くアカネさんの目は、逸らしたくなるほど頻りに私の目を見つめてきます。
「アカネさんは、何か行きたいところはないんですか?」
「私は、アオバさんの行きたいところであれば」
なんて、何気ないやり取りをしながら。いや、なんで?
理由を聞いても笑うだけで、何も教えてくれないんですけど。
アカネさんからは、ミルクのような香りがします。あんまり詳しくないけど、香水なのかな?
その香りが、私のオシャレとは言い難い恰好と非対称的で。少し胸がちくっとしました。
私の制服は部活動を続けるにつれ、そのうち硝煙の臭いが取れなくなりました。
服を買いに行く時間もないので、今は着やすいデニムとシャツを数着買って私服に回しています。
アカネさんは制服ですし、いまいち意図が読めません。
「というか、アカネさんは今日制服なんですね」
「あぁ、これですか?私服と悩んだのですが…この方が、アオバさんも分かりやすいかと」
「てっきり、何か私が何かしでかしたかと」
「?とんでもないです、これは"私用"ですよ」
私用で私に会いに来たっていうのは、つまり?
それを聞くためにアカネさんに向けた視線は、その向こうのスイーツ店に吸い寄せられました。
「あそこです」
「あれ?聞いていたところと違うような…」
「あ、あそこも気になってたんです!」
アカネさんの手を引くと、少し足早にそのお店に向かいます。
とりあえず、アカネさんの真意を確かめないと。
カラン、と鳴ったベルと共に、「いらっしゃいませ!」の機械音声。
テーブル席に掛けると、目の前にすっとメニュー表が出されます。
「お先にどうぞ?」
「あ、ありがとうございます」
全然想定してなかったので、コーヒーと適当なモンブランを頼みました。
アカネさんはその様子をじっと見つめながら、紅茶を一杯。
店員さんが去った後、何気なくコップを手でいじりながら、私は口を開きます。
「それで…、本当に何をしに来たんですか?」
私がここに入ったのは意図的なものなのだろうと、バレているかもしれません。
それでも入ったのは、この人の目的を知るため。
敵か、味方かを判別する手段は、言葉でしか測れません。
アカネさんはこれまで心に貯めていた感情を、ようやく唇から漏らしました。
「アオバさんとデートをしに、って言ったら…信じてくれますか?」
「ひゃっ」
その言葉で、顔に熱が昇ってきたので、思わず手で顔を覆いました。あ、熱いんですけど…!?
少しした後、人差し指を動かすと、アカネさんの耳も少し赤くなっています。
「すみません。私も口にしてから、恥ずかしくなってきました」
「そ、それは…私に興味がある、みたいな…?」
「はい。まずは、お友達から始めようと思いまして」
そうこうしているうちに、コーヒーと紅茶が運ばれてきて。お互い続きを口にしない、気まずい雰囲気になりました。啜っているコーヒーの味は、分かりません。アカネさんも少し目を逸らして、紅茶を一口。
先に口を開いたのは、アカネさんでした。
「あの…モモトーク、交換しませんか?」
「は、はい。忙しいので、あまり出られないと思いますが…」
そういうと、不意に、アカネさんが口に手を当てて笑いました。そ、そんなに変でしたか!?
「すみません。戦っている時のアオバさんと違って、普段は可愛らしいのがなんだか新鮮で」
「別に…私はその辺にいるハイランダー生ですよ」
とは言いつつ、アカネさんに褒められるのは…満更でもない、っていうか。あれ?モモトークの友達追加って、どこでするんだっけ…
スマホの操作でまごまごしていると、隣でぽすりという音と、ミルクの香り。
私の右のこめかみに、温度が感じられます。
あ、頭から湯気が出そうなんですけど…!
「そこの、人のマークを押すと出てきますよ」
「あ、あう…」
そうしてモモトークを交換した後は、アカネさんとのデートに行くのでした。
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一緒に歩いていて気づいたことは、アカネさんは美人、ということだけでした。
ずっと、柔らかい手で優しく握られていて、心臓のバクバクが止まりません。
色んなところを回ったと思うのですが、どこを回ったのかは分からなくて。
日が暮れるような時間に、アカネさんがにこやかに手を振っていたのを覚えています。
ふと、両手の買い物袋を見ると、タグのついた服が入っていました。私が持っているのでおそらく私が着るものなのでしょう。
友達を通り越して、何かよく分からない繋がりができてしまいました。
私はそのまま帰路に着くと、モモトークでアカネさんに連絡を入れます。
"今日はありがとうございました"
"私の方こそ、お付き合いいただきありがとうございました。次はおしゃれなアオバさんが見れるのを、楽しみにしてますね♩"
アカネさんには、敵わないです…
それ以来、私のスマホに業務連絡以外の連絡が来るようになりました。