Fate/Sangoku Revenant【三国志×聖杯戦争】   作:司馬櫻

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サムレムに影響されて初投稿です。お手柔らかにお願いします。


プロローグ 五丈原に星は落ち

 

 ──それは、星を祭る祭壇だった。

 

 天と地を繋げるが如く燃える炎。

 揺らめく炎身は無明である陣中を照らし、柔く覆い被さる天幕を焦がしている。

 

 「……告げる。我が魂は汝の元に、汝が命運は我が剣に」   

 

 呪するは招魂。希うは不死。

 長い黒髪に綸巾(りんきん)を被り、真っ白な鶴氅(かくしょう)の八卦衣を翻すその人影こそ、稀代の軍師として名高き蜀漢の丞相。── 諸葛孔明(しょかつこうめい)であった。 

 

 時は建興十二年(二三四年)。司馬懿率いる魏軍と雌雄を決すべく、五丈原に陣を敷いた孔明は、重い病によって死の淵に立っていた。 

 ……死を待つばかりのこの身で、先帝の遺志を果たすことは叶わないだろう。しかし、悲願を前に諦めることなどできようはずもない。

 

 「天罡(てんこう)の裁きに抗い、この意、この理に従うならば応えよ……!」

  

 七夜に及ぶ祈りの行が病身を蝕む苦しみすら、今や慮外。

 溢れんばかりの魔力が経絡(パス)を駆け巡る痛みをも意に介さず、彼はただ一心に祈祷を続ける。

 儀式の成立、悲願の結実は今宵にこそ。

 

 「汝、五行の言霊を纏う七星、人理の淵より来たれ、天秤の守り手よ──!」

 

 ……契約の呪訣(スペル)に召喚陣が蒼光を放つ。逆巻く風に神秘が具現せんとした、その時──

 

 ……陣営から鬨の声が響く。

 蜀漢の総大将である孔明に急報を告げるべく、将のひとりが陣中へと押し入る。

 

「──!」

 

 燈明の火がふっ、と掻き消えた。召喚陣の魔力は疾風に霧散しその光を失ってゆく。

 ……視界が眩む。耳鳴りが喧騒を洗い流す。 

 極度の瞑想状態(トランス)から解放された孔明は、糸が切れたように倒れ伏した。 

 

 「……丞相! ご無事ですかっ、孔明殿──」

 

 狼狽える将のひとりを押し除けて、男の愛弟子が彼に駆け寄る。

 姜維伯約(きょういはくやく)。かつての北伐(蜀による魏の征伐)の折に、我が蜀漢に降った涼州(現在の甘粛省)の俊英である。

 その憔悴しきった顔立ちに、孔明は弱々しげに微苦笑した。

 

 「死生命あり、か。天命とはままならんものだな、姜維」  

 

 大儀式は不首尾に終わった。もはや、蜀漢の滅亡は覆せまい。あるいは、この姜維こそが──。

 薄れゆく意識の中、孔明は我知らず天を見上げる。

 ──開け放たれた帳の向こうには、北斗七星がただ輝いていた。

 

 ……こうして、蜀漢を導いた丞相にして稀代の軍師の物語は幕を下ろした。 

 

 ──この物語はこれより始まる。

 

 滅びゆく漢の社稷(しゃしょく)を糺さんと覇を競い合った群雄の姿はもはや無く、数多くの将星や名だたる軍師の天数もいまや尽きた。  

 これは遺された者たちの後日譚であり──宿命に終わりを告げる物語である。

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