淀君ってさ……可愛くない?(強火オタク)

1 / 1
雑魚エスパー、危うきに近寄らず

 エスパーって実在すると思う?

 

 ほら、『エスパー9』って番組が昔あったじゃん。ゴールデンタイムに放送されてた、自称超能力者の小学生達が出てたヤツ。

 

 覚えてる?いや、7年も前の事だから覚えてないかな?親戚のオジサンは『7年前は最近だろ』とか言ってたけど、現役高校生には分からない感覚だ。

 

 ちなみに、世間ではヤラセと思われてたらしいエスパー9だけど、僕は半分くらいガチなんじゃないかなーとか思ってるんだよね。

 

 何故、そう思うかって?ふふふ……それは簡単だよ。

 

 ──僕も、超能力者(エスパー)だからさ。

 

 ああ、勘違いしないで欲しい。エスパー9には出演してないよ。実は応募しようか迷ってた時期もあったけど、他の小学生達の力を見たら自信なくしちゃって。

 

 ぶっちゃけ、サイコメトラーとか透視少年は眉唾にしても。スプーン曲げ少女とか、天才念動力者とか、同じ物理現象系のエスパーと自分を比べちゃうとさ……。

 

 あ、勿体ぶるほどでもないから先に言っておくけど、僕の力は『体表の周りに厚さ1センチの膜を生成する超能力』だよ。

 

 勝手に付けた能力名は『セーフティスキン』。……呼ぶ機会も呼ばれる機会もないけどね!

 

 便利ではあるよ。手袋なしでも膜で汚れ防止できるし。僕が馬鹿だから思い付かないだけで、役に立つ場面もあるかもしれない。

 

 でもね。やっぱり、どうしても思っちゃうわけだよ。

 

 もっと雑に強い能力が欲しかったー!

 

 ってね。

 

 だって、能力バトルとか憧れるじゃん。電撃とか炎とか出したいじゃん。

 

 膜って。膜って、君。

 

 とりあえず、エスパー9のような連中と出くわしたら、僕みたいな雑魚エスパーなんて何もできずにボコボコだろうね。

 

 絆創膏を買う必要がないのだけは、お財布に優しくて素晴らしいよ。

 

 だから、まあ。

 

 雑魚エスパー、危うきに近寄らず。そんな人生を送ってきたわけ。

 

「……淀君。僕、帰って良いかな?」

 

「良いわけないでしょう。あと『さん』が抜けているわよ」

 

 魅惑の魔女、淀君凛子。エスパー9の1人である彼女に超能力がバレるまでは。

 

 

 

「半径30メートル。ようこそ、私の絶対領域へ♡」

 

 ヤバい光景を見てしまった。

 

「……何なりとご命令ください、淀君様」

 

「私に傅く男の姿……堪らないわぁ。滾っちゃう♡」

 

 銀髪の女子高生が屈強な男性を跪かせ、ゾクゾクと興奮に身を震わせている。何を見せられてるのかな、僕は?

 

「あら、どうしたの?貴方も私に傅きなさい」

 

「えぇ……」

 

 銀髪のツインテールちゃんから、何か空気読めてない奴みたいな目で見られた。映画の撮影現場に間違えて入った時って、こんな気持ちなのかもね。

 

「あの……僕まだ台本とか渡されてないんだけど、飛び入りでも参加した方が良い?……ですか?」

 

「はぁ?」

 

 にしても、この娘。どっかで見た事ある気がするんだよなぁ……。それも、ずっと前に。

 

 勿論『大きくなったら結婚しようね』と将来を誓い合った相手なんかじゃないし、そもそも僕は女友達が少ない。逆はがない状態だよ。紳士的に振る舞ってるのに酷い話だね。

 

 じゃあ、美人だし有名人かな?でも、僕ってあんまりテレビ観ないしなぁ。エスパー9終了のきっかけになった放送事故を見て以来、特に生放送はトラウマで……。

 

 ……エスパー9?

 

「えっ、もしかして……!エスパー9の、淀君凛子!?」

 

「あら、私を知っているのね。良い心がけだけど、『さん』を付け忘れていないかしら?」

 

「え、マジで!?本物!?」

 

 僕は思わず小躍りした。

 

「大ファンです!サインください!」

 

「私のファン?他にも派手なエスパーはいたでしょう?……執行夕闇とか」

 

 淀君凛子が僕に探るような視線を向けてくる。夕闇?

 

「……あっ、スプーン曲げの?ごめん、僕、淀君にばっかり注目してたから、他の人はうろ覚えで……」

 

 にわかで申し訳ない。超能力の性能ばっかり気にして、1人1人のパーソナリティーまで覚えてないや。最推しの淀君以外。

 

「淀君が一番可愛かったし……って言うとスプーン曲げの人に失礼かな……?」

 

 数秒の沈黙。淀君は手で顔を覆って俯いた。そして、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……。『さん』を……。いえ、今は良いわ。原理は分からないけど、貴方には私の男性限定魅了能力『テンプテーション』が効かないようね。体質かしら?」

 

「魅了能力……?そんなものなくても、淀君は充分に魅力的だけど……」

 

 急な話題の転換に少し戸惑ったけど、エスパー9の時の設定について言ってるのかな?ファンの前で夢を壊さないでいてくれるとか、プロ意識の高いタレントだね。

 

 だけど、気にしなくて良いんだよ。実は、僕が淀君を推してた最大の理由は、絶対にヤラセだと確信していたからなんだ。

 

 化け物じみた超能力を持ったエスパーには、絶対に、絶対に関わりたくないからね。好感よりも面倒な気持ちが勝る。

 

 その点、仕込み100%にしか見えない淀君は素直に『可愛いな』と思えたよ。会えて良かった。

 

「貴方。私の下僕にしてあげるわ」

 

「え、やったー!喜んで!」

 

 

 

「……って言ってたわよね、貴方」

 

「そ、そうだっけ?淀君の記憶違いじゃないかなぁ……。あはは……」

 

「……潰すわよ?」

 

「何を!?」

 

 悪いニュースと悪いニュース、どっちから聴きたい?

 

 オーケー。1つ目は淀君が本物のエスパーだった。目の前で友人を操られたら信じるしかないよ。

 

 証明の為に半裸踊りをさせられた彼(プライバシー保護の観点から匿名)には涙を禁じ得ない。尊厳破壊ってこうやるんだなぁ。ごめんよ、僕は無力だ……。

 

 まあ、この時点で淀君に対する好感度は地に堕ちたよね。

 

 しかしねぇ……本当にヤバいのはここからだよ。なんとなんと、淀君はスプーン曲げの人をブチっとコロコロしたいと言い始めた。

 

 そんな鍋パみたいな感覚で、ガチの犯罪行為に誘わないでくれるかな?もう、僕には君が外道だという事以外、何も分からないよ……。

 

 そもそも僕、雑魚エスパーだから!淀君のテンプテーションは偶然相性が良くて効かなかっただけだから!

 

 君達エスパー9とは、ダイヤモンドと石ころくらい超能力のレベル差があるからね!粉々にされちゃうよ!

 

「待ってなさい、執行夕闇!」

 

「お家に帰りたいよぅ……」

 

 こうして、僕──薄川(ウスカワ)肌身(ハダミ)の平和な日常は泡のように消えたのである。




感想お気に入り評価付与、ありがとうございます。

異能バトル長編もよろしくお願いします。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。