神出鬼没な冒険者と仲間になるのは間違ってるのか   作:やりも

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本拠_ホーム

 我は久々に茶屋の営業をしようと材料の買い出しに出かけていた。ただ、たまたま通ったファミリアのホームの敷地内に冒険者の人だかりができていた。我がしばらく離れたところで見ていると何故か大勢の冒険者が一目散に散っていった。なんでこんなに急に散ったのか分からなかったので我は面布で顔を隠して敷地内に入った。

 

 

「さっきの人だかりはなんだったアル?」

 

「え、どちら様でしょうか?」

 

「ただの通りすがりの冒険者アル~。」

 

 

 我はとりあえず軽く話を聞かせてもらう。どうやら、ここはヘスティア・ファミリアの新しい本拠(ホーム)らしい。前の廃教会はどうしたのか聞いてみた。

 

 

「前のところはアポロン・ファミリアに見るも無残に破壊されてね。」

 

「は?」

 

「戦争遊戯(ウォーゲーム)で買ったからアポロンはオラリオを追放、このホームと財産を受け渡してもらったんだけどね。」

 

「……あの変態神、いつか見つけ出して殺す……。」

 

「えっ…なんて?」

 

「なんでもないネー。」

 

 

 我は何とか誤魔化した。流石に神殺しを神の前で断言するのはダメだな。事故に見せかけて暗殺できないか?まずあの廃教会を建て直すか…幸い、金なら腐るほどではないがある。

 

 

「それで、君は入団希望かな?2億ヴァリスの借金付きだけど…。」

 

「2億ヴァリスの借金?何の借金アル?」

 

「僕の武器代です…。」

 

「武器代で2億ヴァリスなら、我の武器よりかはずっと安いネ。払ってやろうか?」

 

「えっ…?」

 

「に、2億ヴァリスって大金ですよ⁉」

 

「そうでござる!それを見ず知らずの冒険者の方に払っていただくのは!」

 

「あー神ヘスティア、ちょっとこっちに…。」

 

 

 我は神ヘスティアを手招きして建物の影で面布を外す。

 

 

「り、流幽君⁉」

 

「どうも、何事かと思って魔道具で顔を認識されないようにして話を聞いていたら入団希望を募ってるとは。だけど借金がバレて一目散に逃げられるとか中々面白いですね。」

 

「笑い事じゃないからね!だけど君、簡単に払うとか言っちゃってるけどそんなお金あるのかね?」

 

「これでも一級冒険者だしそれなりに蓄えはありますよ。2億ヴァリスなら支払先を教えてもらえば僕が肩代わりします。それにベルの武器は冒険者にとっては命を守るための道具ですから。」

 

「でも…!」

 

「まぁ、2億なんて僕の前に壊した不壊属性(デュランダル)の特殊武器(スペリオルズ)の値段の5分の1の値段ですし。」

 

「じゅ、10億ヴァリス…⁉ど、どんな武器を破壊しているんだい君は⁉」

 

「そういうことですしお支払いしましょうか?立派な本拠を構えているもののそれに見合った予算は手持ちになさそうですし。」

 

 

 神ヘスティアは少し考えた後に決心したように答えた。

 

 

「いや、その申し出はお断りさせてもらうよ。」

 

「…理由をお聞かせしていただいても?」

 

「あの武器は、僕がベル君に生きて帰ってもらうために神友に頼んで作ってもらったんだ。あのナイフは、ベル君が成長すればするほど共に成長していく。僕も、ベル君があのナイフと一緒に成長してくれることを願って造ってもらったんだ。だから、これは僕が支払わないといけないんだ。」

 

「……なら仕方が無いですね。頑張ってお支払いしてください。」

 

 

 我は面布を付けなおして表に戻る。

 

 

「話は終わったか?」

 

「終わったアル~。これ以上用はないし我は帰るネ~。」

 

「あ、待ってください!」

 

「ん?どうしたヨ?」

 

 

 ベルが我を呼び止めた。顔は魔道具のお陰で認識できないし声もちょっとだけ魔道具の効果で認識しづらくしているはずだけど。

 

 

「も、もしよければ、僕らのファミリアに入ってくれませんか⁉」

 

「ベル様⁉」

 

「どうしてか分からないんですけど、貴方には入って欲しいなって思ってしまいまして。」

 

「……。」

 

 

 しばらくぶりに正面から顔を見たがやはり似ているな。我はベルの頭にそっと手を置いて軽く撫でた。向こうは少し驚いたように固まると、我は手を下ろした。

 

 

「残念だけど、我はまだ今のファミリアを抜けれてもいいと言われて無いから無理ネ。だけどその誘いは嬉しかったアル。」

 

「そうですか…。」

 

「じゃあ我はそろそろ行くヨ。またどこかで、ベル。」

 

 

 我は背を向けてヘスティア・ファミリアのホームを後にした。

 

 

 ホームを見て、思い出してしまった。我が家族たちと一緒に過ごしたあの場所を。今はもう使われなくなった我の居場所。

 

 

「…寒いネ。」

 

 

 温かかった場所は、もうこの世にはどこにも存在しない。我が大好きで大切だった場所。戻りたいと言ってももう戻れない場所。

 

 店についた途端、荷物を抱えながらしゃがみこんで願ってしまう。

 

 

「もう一度、あの場所に帰りたい…。」

 

 

 我の切実な願い。

 

 俺が俺でいれたあの場所に。

 だけど、そんな場所、もうないことは分かっている。

 

 

 我は立ち上がり、荷物を置いた。

 

 

「あの廃教会、昔みたいに建て直すにはいくらくらいかかるだろ…。足りなかったらダンジョン潜ろ…。」

 

 

 我は頭の中で話を切り替えて、別のことを考えることにした。これ以上、思い出したら苦しくなるだけだから。

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