悪の組織の下っ端ですが、魔法少女を拾いました   作:ひぶうさぎ

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お久しぶりです
これからは1週間に1〜2話投稿になります


第三十二話 悩みというには贅沢な

「裕樹さん、早く起きてください! もう朝ですよ!」

 

「裕樹、起きて」

 

「早く起きないとくすぐっちゃうぞ〜」

 

 

 

 朝起きたら、いきなり、三つの見覚えしかない顔が視界に入ってきた。

 ……おかしいな、この三人用の寝室は別で用意していたはずなんだが。

 

 しかも、前日の夜にはちゃんと朝俺の部屋に入ってくるなと釘を刺していたはずなんだけどな。

 

 どうして、こんな狭い所に全員で来ようとするんだ。

 ちょっと寝起きの脳には情報が多すぎるんだよ。

 

 ……少しだけ、そう、ほんの少しだけ現実逃避をしたくなる。

 だが、まあ残念なことに。

 

 

 

「む、起きた」

 

「あーあ、裕樹起きちゃったね」

 

 

 

 俺の視界に入っていることは全く間違いなんかじゃないようで。

 ちゃっかりと、三人が俺の()()()ベッドに潜り込もうとしていた。

 

 大事なことだからもう一度言わせてもらうが、このベッドは一人用だからな?

 どこからどう見ても、二人入るだけでかなり狭くなるような、ただのシングルベッドだからな?

 

 思わず、そんな言葉が口から出そうになる。

 

 だが、今この場面でこんなことを言っても三人には何の効果もないんだろう、と思い返し、その言葉達を飲み込む。

 

 まずは、自分の部屋からこいつらを追い払うところからだな。

 

 いつもは起きてくるのが遅いっていうくせに、たまにこんなに早く起きてきて良く分からないことを企みやがるんだから……。

 

 

 

「で、聞くまでもないんだろうけれど、何で三人揃って俺のベッドにいるんだ?」

 

「も、勿論裕樹さんを起こしに来るためですよ!」

 

「うんうん、決して裕樹の寝顔を堪能とか、そんな邪な思いは一切……あ」

 

「なるほどな、お前らが何で朝早くからここに来たのかは良く分かった」

 

「え、えーっと、裕樹?」

 

「……それじゃ、さっさと帰れ」

 

 

 

 完全にボロを出してくれたので、一旦追いだす理由が出来る。

 よし、これでひとまずは安心だろう。

 

 いやぁ、危なかった。

 

 最初の魔法少女(の分身)と遭遇して、なんとか撃退した日から、なんか玲衣達も咲みたいになってるんだよな。

 

 百歩譲ってミラーは前からあんな感じだったとは思うが、少なくとも玲衣はこんな感じじゃ無かったと思うし。

 

 勿論、別に、嫌ってわけじゃない。

 けれど、毎日毎日寝起きからずっと監視されているようで、ちょっと怖いんだわ。

 

 周りから見りゃ羨ましい光景かもしれないけれど、当事者からしちゃ恐怖でしかないんだよ。

 

 だって、目を覚ました途端に直ぐに目をグルグルさせた知り合いと目が合っちまうんだぜ?

 そんなもん、冷静に考えなくても怖いだろ。

 

 少なくとも俺はめちゃくちゃ怖いと思っているよ。

 

 

 

「裕樹、裕樹」

 

「うおっ、びっくりしたじゃねえか……ってミラーか」

 

「今日、ワタシが本部に行くんじゃ」

 

「……あ、言われてみりゃそんな用事もあったな」

 

 

 

 すると、ミラーが例のすり抜ける力を使って、ドアを開けずに入ってきた。

 何をしに来たのかと思っていたが、今日の用事を伝えに来た様子。

 

 今日本部に行くことは覚えていたものの、ミラーを連れて行くということは忘れかけていたから、ちょっと助かった。

 

 それにしても、俺が忘れかけていることをミラーとか咲が覚えていることが最近多い気がする。

 なんでなんだろうな、今日の任務とかはちゃんと覚えているのに、誰かを連れて行く時に限って忘れているんだよ。

 

 それで、用事だけ伝えて戻るのかとミラーの様子を見守っていたのだが……。

 

 

 

「……おい」

 

「え、どうしたの、裕樹」

 

「なんでさらっと俺のベッドに潜り込もとしたいんだ。もうそこに俺はいねぇぞ」

 

「裕樹の残り香がある」

 

「え、えぇ……」

 

 

 

 ミラーは帰らないどころか、妙な行動しかしない。

 これは、いつも通りといえばいつも通りなんだが……改めて自分の家でやられると……うん、その、な?

 

 とはいえ、この妙な行動をするのがミラーという人間なわけで。

 俺がどれだけ冷たい視線を向けたとしても、それだけで行動を変えるなんてことはない。

 

 だから俺は、しばらくの間、俺のベッドに潜り込みながら珍しいほどのニマニマのミラーを見ることになってしまうのだ。

 

 

 

「裕樹の布団、いい匂い……」

 

「ミラー、なんか玲衣みたいな顔になってるぞ……」

 

「玲衣はもっとおかしい」

 

「変わらねぇって、お前も玲衣も」

 

 

 

 ミラーはこうやって弁明をするけれど、本当に玲衣もミラーも変わらねぇからな。

 なんなら、最近は咲が一番落ち着いているたである。

 

 おかしいな、俺の初めの見立てでは玲衣が一番落ち着いているはずで、咲が不安定になるんじゃねえかと予想していたのに。

 

 実際蓋を開けてみると余裕で玲衣とミラーが咲より不安定になってるんだ……?

 

 この前まで俺を必死に家から出さまいとしていた咲が一番落ち着くことになるだなんて予想もしてなかった。

 

 ……ていうか、自分の布団の中に人がいるのはちょっとアレだな。

 あの布団、俺がついさっき起きるまで使っていたもので汗とかもついている気がするんだが。

 

 

 

「お、おい、ミラー……」

 

「大丈夫、裕樹は汚くないから」

 

「いや、俺の方が大丈夫じゃないんだ」

 

「むむっ……」

 

 

 

 いくら潜り込んでいる人間が大丈夫だと行っても、その布団の持ち主としては全然大丈夫でもないからな。

 

 普通に恥ずかしいからやめてくれ。

 

 俺にも、人並みの羞恥心とかは持ち合わせているんだ。

 自分の汗がついたところに人を入らせるわけには行かないだろ。

 

 

 

「むぅ……じゃあ、また今度」

 

「そもそもやるなよって話なんだが!?」

 

「またする」

 

「……まあ、せめて俺が見てないところでやっておいてくれ。そんじゃ、遅くなったけど朝飯作るぞ」

 

 

 

 とはいえ、そんなことを言ったって聞かないだろうし、とりあえず諦めることにしよう。

 

 ミラーは、この家の中にいる人間の中で一番年上のはずなんだけどな……。

 

 最近は咲でさえもミラーのことを妹を見るような目で見ている節すらあるし。

 どうにか、もう少し年長の威厳を見せてくれよ……?

 

 

 

「あ、ミラー! また一人で抜け駆けして!」

 

「わ、私も出来ることなら裕樹さんの部屋にずっといたいんですよ……!」

 

「ぶいぶい」

 

 

 

 ……これじゃあ、年長の威厳が出る日は暫く来ないだろうけれどなぁ……。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで、俺とミラーは本部まで来た。

 

 玲衣も咲もついて行きたがっていたが、流石にそう何回も魔法少女を連れて行く訳には行かねぇし、玲衣に至っては日本最強だし。

 

 流石にな、玲衣なんかが来たら、本部の入り口に近づくだけで本部の中が大騒ぎになっちまう。

 

 玲衣みたいに、魔力の扱いが上手いとしても、あんな馬鹿みたいな量を持ってる人間が魔力を隠し倒せるはずがねえんだ。

 

 ただ、それを言ったらミラーも大概ではあるんだよな。

 少し前まで組織の地下にいたから構成員も慣れているっていうだけで。

 

 

 

「ここから入るの、やっぱり良いね」

 

「お、ミラーにもここの良さが分かるか。良いよな、ロマンがあって」

 

「前に通った時も思ってた」

 

「俺はこれの前の路地裏からの道も嫌いじゃないだが、やっぱり棚の裏からっていうのは別格だよ」

 

「うんうん」

 

 

 

 やっぱり良いよなあ、この入り口は。

 秘密基地って感じがするし、やっぱり好きだわ。

 

 この入り口みたいなのは、玲衣も好きなんだろうな。

 あいつ、地味にこういうロマンを求めたがるから。

 

 っと、それより今日はボスの部屋とかじゃなくて訓練場に呼ばれているんだった。

 

 そこにミラーを呼ぶってことは何かしらの魔道具とか、そんなもんを開発したとかそんなところなのか?

 

 それくらいじゃねぇと、わざわざ訓練所には呼ばねえよなぁ。

 ……それにしても、地味に嫌な予感がしているんだよ。

 

 うちの組織で魔道具とかを担当する人物。

 俺は、その人物に心当たりしかない。

 

 最近はめっきり顔を合わせていないが、この前は後輩と一緒に振り回された。

 

 ったく、組織の幹部っていうのはどうして能力がピカイチな癖してコミュニケーション能力やら何やらに大きな問題があるんだ。

 

 ほら、そんなことを考えながら訓練場に向かえば、ボスと予想通りの顔ぶれが見えてきた。

 

 

 

「あ、弟くーん、こっちだよ!」

 

「久しぶりだな、裕樹」

 

 

 

 まず、ボス、そして綾乃さんが声をかけてくる。

 

 ここまでは、まだいいんだ。

 ここまでなら、まだギリギリいつも通りの面子なのだから。

 

 強いていうなら下っ端が定期的にボスに呼ばれているというのはおかしいことだか、その点は俺にとってはいつものこと。

 

 しかし、問題はその後ろに隠れている長いロングの赤髪をした女性。

 俺達が気づいたことに気づいていないのか、手元で良く分からないものをいじっている。

 

 そして、ボスに声をかけられてやっと、俺達の存在を気に留めた。

 

 

 

「……あ、裕樹じゃん! そういえば最近全然会ってなかったね!」

 

 

 

 そう、この女性こそが、この組織のもう一人の幹部であり、また組織で使われている魔道具ほぼ全てを担っている人物。

 

 そして、俺の実の()でもある。




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