幻想世界のからくり主従   作:K+#ガソ林

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オークション崩壊/王室と予言

「こちら、受付です。紹介状はお持ちですか?」

 

「これを。」

 

「…ふむ。ペルス島冒険者ギルドの正式なものですね。お入りください。」

 

 シャンデリアで明るいのに、暗い印象を受ける。国立大劇場の絨毯の先、仰々しい扉をくぐる。

 すさまじいほどのオークションの熱気…静かな空間に、感情だけが伝播する。国内国外関係なく、貴族商人王族の金持ちが集合していた。

 

───────────────

 

「金貨800枚。」

 

「金貨800枚です!他に魔王級の白城蜘蛛の糸に入札される方はいませんか!?」

 

「………。」

 

 場が静まり返る。金貨800枚は小さな国の国家予算に相当する。それを簡単にポンと出されては引き下がらざるを得ない。

 

「では、白城蜘蛛の糸は…黄昏ネム様に進呈されます!」

 

 場がざわめく。

 

「…知っているか?」

 

「魔王級冒険者だ。統率個体を葬った…歴史的偉業だぞ!」

 

「しかし、ネムは女のはず。討伐で何かあったのかもしれないのう。」

 

 白城蜘蛛の糸は空間拡張型のマジックバックに梱包され、セクエンスに手渡された。マジックバックは外部からの振動や熱をある程度遮断することができる。

 

「どうぞ。」

 

「どうも。」

 

 もうここに用事はない。さっさと帰るとしよう。

 

───────────────

 

 セクエンスがちょうど会場を出た直後、国立大劇場は爆炎に包まれた。

 

「な、なんだあ!?」

 

 貴族達が次々に外へ走って逃げる。まさか、魔物の襲来か!?だったら見過ごすわけにはいかない。

 

───────────────

 

 スラムル族の岩巨人と、素晴らしいエルガン王国の国王が対峙していた。あたりには、"潰された盗賊達の死体"…。

 

「……命を救ってくれたこと、礼を言う。しかし、そなたらはいったい何者だ?」

 

「我らはスラムル族。五百年の眠りから目を覚ましたばかりで、この時代の暮らしにはまだ疎い。」

 

「スラムル族…あのスラムル族か。」

 

(伝承に謳われた岩の巨人。その末裔は、今も北のオチャケ領で暮らしているはず……。五百年の眠りから目覚めたというならば、王室に伝わる【予言の書】が示す【災厄】が動き出したのか。)

 

「目覚めてから同族の姿を探したが、誰一人見当たらぬ。行き場を失い、彷徨うばかりだった。」

 

「……それで、なぜこの場に?」

 

「近くの村が盗賊に襲われているのを見つけた。奴らを締め上げたところ、より大きな盗賊団が“オークション会場にいる王を誘拐する”と企んでいると聞き及んだ。だからここまで足を運んだ――そして、今に至る。」

 

 スラムル族は国王、エレガント=エルガンに問う。

 

「では───【6の氏族に誓う盟約】を。」

 

「…。盟約、か。そなたらを貴族と認め、人と交わり、領を治めさせるという約定のことだな。六の氏族は皆、人とともに歩み、各地の領を治めておる。スラムル族もまた、今は北のオチャケ領に住まうはずだ。」

 

「……試すような真似をして、すまぬ。それならば、我らもオチャケ領へと赴こう。」

 

「それが良い。兵士をいくつか案内につける。…此度の働き、大義であった。」

 

───────────────

 

 セクエンスが駆けつけた頃には、戦いは終わっていた。襲撃者は盗賊団メルシュ。劇場を爆破して忍び込み、オークション参加者を人質に取るなどして安全に魔王級モンスターの素材を盗み出す算段だったらしい。

 しかし、そんなことは今はどうでもいい。もっととんでもない大ニュースが発表されたのだ。

 

『───エルガン王国国王、エレガント=エルガン四世である。急な布告となるが、王国の至宝、【予言の書】が示すところ、この地に大いなる災厄が訪れる可能性がある。』

 

『ここからは、国王としての勅命である。“六つの氏族”と名乗る者らが現れたとき、見た目は魔に近い姿をしていようとも、断じて攻撃してはならぬ。むしろ礼を尽くし、直ちに軍へと報告せよ。』

 

 岩巨人スラムル族。

 飛竜人ドラグ族。

 木人コルク族。

 虎人ハシーン族。

 霊人アレクス族。

 馬人タウロス族。

 

『以上である。予言、災厄、そして氏族に関する詳報は、追って布告する。……民よ、恐れるな。我が王国は決して諸卿を見捨てはせぬ。』

 

 伝声魔法を通じ、王の言葉は王都の隅々にまで響き渡った。民衆の間にはざわめきが広がる。

 

『国王に代わり申し上げる。エルガン王国軍警備隊総指揮、中村潤である。市民の皆さま、ただいまの布告に驚かれ、不安を覚えておられることと思う。しかし、心安らかにあられよ。予言とは未来の可能性を示すものであり、必ずしも訪れるものではない。』

 

『───我ら王国軍は総力を挙げて、いかなる災厄をも打ち払う。民の暮らしを守ることこそ、我らの誇り。どうか安んじて日々を過ごされたい。以上である。』

 

 ───果たして、世界の行く末は如何なるものとなるのか。

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