幻想世界のからくり主従   作:K+#ガソ林

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魔界構築開始/ふたりの過去

『ネム、至急テセウス港まで来てください。ミノス島の近くに、謎の小島が新たに発見されました。…【魔界】が形成されようとしています。』

 

 魔王発生(スタンピード)にはいくつか手順がある。

 まず、魔王級モンスターが一箇所に集まる。

 次に、【魔界】が形成されドラゴン級相当の眷属が大量に発生する。

 最後に、外への侵攻を行う。

 

「わかった。行くよ、ワラキア。」

 

「ギョイ。」

 

───────────────

 

 集まるは錚々たるメンバーである。

 ペルス島島主、エリオット=エヴァンス

 エルガン軍魔王発生(スタンピード)鎮圧総指揮、ローラン=ディルフィニア

 対魔王発生(スタンピード)相談役冒険者、ヘレネ=レルカンティア

 

「…魔界形成が、実際に始まろうとしている。」

 

 白い髭を生やした筋骨隆々の老人がローラン。見て取れるほどの腕前の高さで、ネムと黒騎士が束になってかかっても、傷一つ負わないだろう。

 様々な冒険者たちや、軍の兵士達が待機する中、ローラン=ディルフィニアが命令する───。

 

「魔界が形成される前にミノス島周辺に赴き…そして制圧せよッ!!」

 

───────────────

 

「師匠、私たちはどこに送られるの。」

 

「…。」

 

「ヤマクジラを討伐したということで、ミノス島に送られることになりました。」

 

「ミノス島?」

 

 ミノス島周辺に赴くという話ではなかったのか?

 

「どうして?別にいいけど、流石に何十体も魔王級を相手になんてしてらんないよ。」

 

「ネム、セクエンス…。あなた方は、ミノス島にいるだろう統率個体を暗殺してきてもらいたいのです。」

 

「!」

 

 統率個体…。魔王発生(スタンピード)の引き金となる、モンスターの司令官だ。過去あったさまざまな魔王発生(スタンピード)から、魔王発生(スタンピード)事に1体存在していると証明されている。

 統率個体を倒せば、魔王発生(スタンピード)は終わりを告げる。

 

「4体の魔王級が魔界作戦のために小島に散ったために、現在、ミノス島には8体の魔王級が存在します。…現状で最強とされるメンバーがそこに突入する予定です。」

 

 北、黄昏ネムとワラキア、薔薇剣のレギーナ

 南、魔王級冒険者、【ケルベロス】のジン=アレス、【剛力無双】坂田雷虎

 西、最優騎士、デビッド=ディルフィニア、魔術師団団長、ヘルモス=バアル

 東、隼騎士、ウィング=スレイ、エルガン軍巨流師範、リチャード=メルツ

 

 この程度の人員であれば、魔王級モンスターが察知することはない。積極的に追いかけてくることはないだろう。この8人で統率個体を捜索する。

 

「よろしくお願いします。」

 

「ん。任された。」

 

───────────────

 

 作戦の決行は1週間後…。眷属達の卵を産んだ魔王級モンスターが最も弱る瞬間を叩く。

 また、それを陽動として統率個体を捜索するのだ。自宅にて、ネムと黒騎士は英気を養っていた。

 

「セクエンス。」

 

「……。」

 

「100年前のこと、覚えてる?」

 

───────────────

 

 100年前のこと。セクエンス=エヴァンスはエヴァンス家の当主の座を受け継ぎ、結錨の大剣を授かった。そのままひとつ、指令を言い渡される。

『伝説の人形師、ヘレネの協力を得てこい。』

 

 その頃は、エヴァンスの港の近くでスタンピードが起きようとしていた。魔物のレベルは高くなり、無理に前線に出しても無駄死にすると分かっていたのだろう。

 セクエンスはヘレネの家を訪ねた。その時に、ヘレネの弟子だった少女…黄昏ネムと出会った。

 

『自分は、セクエンス=エヴァンスというものです。ヘレネ様のお宅で間違い無いでしょうか。魔王発生(スタンピード)に関する話を聞いていただきたいのですが。』

 

『うちは宗教勧誘お断り。』

 

『えっ。違いますよ!エルガン軍です。ところで…お弟子様であってますか?改めてヘレネ様をお呼びしていただきたいのですが…。』

 

『今、いないよ。』

 

『それでは外で待たせていただきますね。』

 

 その後なんだかんだあって、ヘレネを師匠にしたセクエンスは、ネムを連れ立って魔王発生(スタンピード)の解決に乗り出した。その方法は今回と同じく、統率個体の排除である。

 統率個体は人程度の体躯なのに、とてつもないパワーを秘めていた。おそらく、魔物の天敵…すなわち人間を真似ているのだろう。器用に武器や体術、魔法を使いこなし、セクエンスとネムは追い詰められてしまった。

 

『俺ごとやるんだ…!ネムッ!』

 

『…わかった…。これで…終わらせるッ!!』

 

 戦いの中、機会が訪れ統率個体を羽交締めにするセクエンス。セクエンスごと、ネムは統率個体に大剣を突き刺したのである。

 

『…あ、り、がとう…。』

 

『セクエンス…。』

 

 が、その時に奇跡が起きた。

 セクエンスの魂が、統率個体の身体に入りこみ、そのまま支配してしまったのだ。

 

『 ウ、オ、オオ、オオオオッ!! 』

 

『駄目、セクエンス…!…これをやるしかない、か…!』

 

 しかし、統率個体の身体は魔物である。故に暴走を始めてしまうところであった。そこで、ネムが結魂の儀を執り行い、魂を共有することで統率個体を完璧に支配することができた。

 かくして、100年前の魔王発生(スタンピード)は終わりを告げたのである。

 

───────────────

 

「覚えている。」

 

「███し█……。」

 

 ぼそり、聞き取れなかったが───ネムが何かを呟いた。

 

「…?」

 

「いや、何でもない…。前みたいに解決はできない。今回は…必ず倒さなくちゃならない。必要なからくりをいくつか作っておかないとね。」

 

 スタミナ、再生能力、器用さ、成長速度…これらの要素を対策できれば、経験に優れるこちら側が勝てるだろう。

 今度こそ───誰も奪わせない。

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