彼を改造した調布のりこは声優デビューを目指す自称量産型である。
オタクに厳しいギャル男は自分の青春のために幼馴染の面倒を見るのだ!
「オタクちゃんさぁ……オタク何年目だっけ?」
「やめて! オタクに厳しいギャル男なんて需要……あるかも。でも陽ちゃんは私のことを甘やかして!」
「舐めんじゃないよ!」
調布のりこは幼馴染の八雲陽はオタクに厳しいギャルとしてのりこに恐れられていた。
男だがギャルである。スクールカースト上位で男女隔てなく喋ってくれるならギャルである。
「良いじゃん! 好きな作品の話になったんだから周りを置いていくくらいの会話したいよ!」
「いや、これオーディション用の動画撮影ね!? 抑えてねー?」
声優事務所に登録した幼馴染がオーディションに提出するために、五分程度の自己紹介動画を撮影するというから手伝いに来たというのに、途中から話がヒートアップして尺を宙の彼方まで飛び出して行ったせいで提出することができなかった。
昔から好きな物を語るとたまにブレーキが壊れることがある。が長年の付き合いになると最早呆れることしかできない。
「だってぇ……量産型で地味な私が目立つにはぁ……ああした方が良いかなって」
「お前そのむちむちボディで量産型は無理があるだろ。量産型調布のりこ近接援護仕様がよ」
しわしわの顔で言い訳するのりこに対して珍妙な言葉が投げつけられたため一瞬で素面に戻される。
「なんて? 今オトメに対してとんでもない事言わなかった?」
のりこは自身のことを量産型というが、陽は量産型が好きだった。
主人公ではないベテランパイロットが乗りこなして活躍するのも好きだし、主人公が量産型からスタートして徐々に自分用にカスタマイズしていき、専用機の前身になるような物も好きである。
「とにかく、撮り直しするぞ」
「やっぱりゴダイゴとか坂本九とか歌った方が良いのかなぁ?」
「撮るなら撮ってもいいけど、そういう売り方するには早いでしょ」
歌唱前提の声優も少なくない世の中だが、最初から圧倒的な歌唱力があって歌手としてやっていける者に許されるムーヴである。
なりたい物が声優である以上、演技を磨いてほしいと思うのが、ファン一号としての希望だった。
それでもやりたいというなら協力を惜しむ理由は無いため、結局はのりこ次第になるのだが、それを口にしない辺り、面倒くさいファン一号でもあった。
「はぁ……そろそろ腹減ったし、飯にするか。何食べたい?」
「うぇーい、陽くん。幼馴染何年目だっけ?」
実際に時計がお昼時というには若干過ぎたくらいの時刻を指示しているのを見てしまい、そのせいで空腹になってきてしまったのりこはさっき言われたことを言い返してみた。
「舐めんなよ。茶碗蒸しな」
「違う! 確かにプリンっぽいけど、茶碗蒸しとプリンは違うよ! 陽ちゃん! しかも、お昼ご飯としては不適切だよ!」
幼馴染の好物は把握しているが、何となく煽った表情にかちんと来たので微妙に外すことにした。