『イェーイ彼氏くん見てる〜?』
「え?は?なにこれ?」
頭がまわらない
『嫌、見ないで』
ビデオ通話を繋いだら自分の理解の及ばない光景が目に飛び込み同様で
「サクさん?何これえ?」
『ほらほらさっきまでノリノリだったじゃん
今更カマトトぶらずさっさと彼氏くんに挨拶しなよっと』
『アッ、や、そこ…ダメ…』
目の前に広がる言い訳のしようのない男と女の情事
『サクちゃんが決めたんでしょ?さ、早く』
『た、タカシくん。ご、ごめんなさい。アッ…く、わ、私、私ねもうタカシくんとンッ…一緒にいられないの…アッ』
好きな女の子のアラレもない姿と顔だけは何となく見たことある男の裸
『へ〜あんなに好き好き言ってたのになんで〜』
『クッあ、あなたが…アンッ』
『ん?なんだって?』
『わ、私、アキラくんのモノになっちゃったの…』
思考が停止する
『はい。よく言えました〜ご褒美にサキちゃんのだーいすきなアレやってあげるね?』
『ヒッ、や、ヤダ。タカシの前でそんな…やめて…』
『そんなこと言って〜ここはギュウギュウ締め付けてオレを離さないのにっね!』
『〜〜〜〜〜〜』
響き渡る獣のような喘ぎ声
『じゃ、そゆことだからもうサキに近づくんじゃねぇぞ?えーとサトシくん?』
ニヤニヤした男の顔を最後にブツっと画面が消える
放心
もう頭の中がぐちゃぐちゃだ
自分が今何をしているかも理解できない
「…?」
呆けてしまっている頭だが視界の端にすごい勢いで流れる
「…!?あ!!?!???」
そうして自分がいま何をしていて今何が起きてしまっていたのか理解する
「ギャーーーーーーーーーーー!!!!??!!?」
「こらタカシ夜にうるさいわよ!!!!」
母の怒声とともに今度こそ俺は絶叫した
何を隠そう今
趣味でソシャゲの実況プレイをやっていたところ運良くユーザーの同士の目に留まり少しづつ配信を見てくれる人が増え今ではライブ配信に100人程度は集められるようになってきたところだった
イベントの周回をしながら今期のアニメ何を見ているかの話や最近オススメのマンガやゲームの話、果ては今日の夜ご飯の予想までくだらない話をまったりとするこの時間が俺にとって至福の時間とも言えた
そんな至福の時間に先程の電話がかかってきた事が今回のことの始まりである
たっぷり30分ほどベッドでゴロゴロのたうち回った後(今度こそ画面が止まってることマイクがオフになっていることを確認した)
画面とマイクを改めてオンに直し
「え〜、なんと言うか本名バレしちゃったけど…」
俺は視聴者に向けて色々と複雑な感情を胸に一言
「今時こんなわかりやすくゲスいことしてくるやついるんもんなんだなぁ」
ため息と共にしみじみと呟くとコメ欄が普段と数倍の速度で流れていく
「草」
「タカシくんかわいそー」
「マジで大草原」
「何事もなかったかのように始めるの草」
「いい根性してる」
「草」
「元気出せ」
「草」
「修羅場キタコレ」
「あ、◯◯さん、慰めてくれてありがとう」
自分の
そんな俺の反応に草だらけだったコメ欄に同情のコメが先程までの
「みんなも励ましてくれてありがとう」
「と言うか何この人数?え?2万?は?」
「本当になんだこの人数」
「いいことあるって」
「俺の時はーーー」
「ご愁傷様」
「愉悦」
「↑自分語り乙」
「ファミチキください」
「草」
「約2万人に見られたリアルタイムNTRビデオ通話」
「マジでこんな事するやついるんやな」
「もう絶滅危惧種だろ」
「人が頑張って無かったことにしようとしてるのに蒸し返さないでくれないかな!?」
どう考えても収集がつくわけがないのに突っ込んでしまう俺は
「ったく…本当にこんな事してくる典型的なチャラ男くんいるんですね…とはいえ実際に体験するときついモノがあるよね…」
肩をガックリ落とし机に突っ伏すと
「そもそも何某さんとは付き合って無いんだけどなぁ」
とボソっと呟く
「ファ!?」
「イミフ」
「え」
「へ?」
「何それ」
「どいうこと?」
コメ欄が再加速する
「ええと、どちらかというとBSSになるのかな」
慌てて説明を始める
「俺まだ、告白してないんですよ。何某さんから告白されたというわけでもなくて」
「草」
「盛り上がってまいりました」
「大草原不可避」
「草」
「ワインが美味い」
「詳しく説明を」
話せば少しは楽になるかなぁ
「まああんなのが来た以上、何某さんも少なからず俺に好意はあったのかなぁとは思います。いわゆる両片想いってやつですかね」
改めて彼女との関係を振り返る
「クラスは別なんですけど、委員会が同じで、あ、図書委員なんですけど」
出会った頃の彼女とはあんまり話せなかったなぁ
「週に2、3回かな一緒に作業して、最初の頃はお互い人見知りだからあんまり話をしなかったんですけど」
キッカケはよく覚えてる
「たまたま共通の趣味が見つかってそこから色々話していったら他にも似てる部分が見つかって、毎週何某さんに会うのが楽しくなっていったんです」
「甘酢っぺぇ」
「青春しとったんやな」
「配信なんかやってる癖に」
「↑それは偏見が過ぎるぞ」
「いい青春や」
「それがどうして…」
「そんなこんなで1年ぐらい他愛のない話をして仲良くなっていって、『ああ、2人でいると心地いいなぁ』とか思ってたんです」
その頃のことを思い出しつつ
「で、まぁチョロオタクなんかこんな展開があったら簡単に好きになっちゃうに決まってるじゃないですか」
「そりゃそうじゃ」
「せやろな」
「うむ」
「タカシくんイベントごとに推しキャラ増えてくもんね」
「それでそれで?」
「タカシやめてください、今更かもしれませんが」
本名は困る
「んとですね、なんだかんだと色々なイベントをへて何ヶ月か前に2人きりでおでかけ、所謂デートをしたんです」
改めて
「何某さんもオタクなんでアニメショップ行ったり本屋行ってお互いのオススメ買ったり楽しかったんです」
本当に楽しかった
「その時の何某さんオシャレしてきてくれて、派手じゃないけどオタクの好みをよく抑えた所謂ナチュラルメイクだったのかな?マジで好きってなって最初キョドっちゃいました」
キモかったろうなぁ俺
「王道やな」
「メシが急に不味くなってきたんだが」
「かー!俺もこんな青春したかったなぁ!!!」
「丁寧な前フリ急落した時のギャップだけで達してしまいそうだ」
「おい変態がいるぞ」
「で、また今度の約束もして解散したんです」
「翌週の委員会の時は甘酸っぱいいい雰囲気だったなぁと思うくらいには自分でも浮かれて入れたんですけど」
ドキドキするけどもっと一緒にいたいなぁって
「でも翌々週くらいからかな、なんとな〜く距離を置かれている感じが出てきて」
いま思い出すとこのあたりから何かあったのかな…
「あら」
「ん?」
「流れ変わったな」
「おっと?」
「はよ続きを下半身寒いんだが?」
「変態だ」
「パンツは履いてください」
冷静にツッコミを入れつつ俺は過去を思い出していく
「思えばそのくらいから何かあったのかなぁ…でもちょうどその頃配信初めてみて思ってたよりも楽しくて…」
ずっと興味あったけど手出すの怖くて、でもちょっと彼女のおかげで自信がでてきたんだよな
「あ〜」
「うわぁ」
「盛り上がって参りました!」
「どんだけテンプレ積み重ねてんの?」
「仕事にかまけてる内に…ってやつか」
「そうですね、仕事っていうか趣味の延長線なんですけど配信始めたての頃はやっぱり勝手がわかんなくて色々試行錯誤しなきゃいけないから」
「でもその試行錯誤してるのも楽しいし、それでみんな反応が良いともっともっと工夫しないとってやっちゃうし」
「こっちとしては視聴者のこと考えてくれて嬉しいんだけどね」
「ありがたい…が」
「あ〜」
「のめり込んで現実が疎かにになったか…」
「ほんとその通りですね…気づいたら委員会に来ない日も増えてて、たまに顔を合わせた日は気まずそうに謝ってくるだけだったから。気を遣わせないようにわざと大丈夫って言って細かい話聞いたりしなかったんで」
「タカシ…」
「お前は悪くない」
「まだ学生だろ?そんな機微わかんなくて当然や」
「元気出せ」
「胃が痛くなってきた」
「もうやめてもええんやで」
「俺も泣けてきました…あ〜振り返るの辛いなぁ」
目の端に涙が浮かぶ
「でも吐き出したい気持ちもあるんで聞いてください。あとちょっとなんで」
「いくらでも吐き出せ」
「聞いたるで」
「話してみ?」
「聞くよ」
「ええんやで」
「ありがとうございます」
目の端に浮かんでは溢れていく涙を拭い、少しツンとする鼻をかみ続きを話す
「で、ちょうど今日ですね委員会で顔を合わせまして」
「その時は久々に前までに戻ったように話が弾んで、笑ってる顔も久しぶりに見られたんです」
あぁ久しぶりに楽しかったしドキドキした
「今改めて思い出すと前までより距離がすこ〜し近かったような気がします物理的に」
泣いてるせいで働きづらい脳みそを頑張って回転させ今日の出来事を思い出す
「そんなこんなで久しぶりに楽しく何某さんと委員会をしてから家に帰って、気分良く配信を始めてガチャを引いていたらまさかの……」
「うわぁ…」
「コリャひどい」
「えぇ…」
「最後のつもりだったんかね?」
「何でやねん」
「イミフや」
「元鞘に戻ろうと決心したけどチ◯ポには勝てなかったよパターンだろ」
「はい?」
「上コメで納得した」
「なる」
「あぁそこまでテンプレか…」
「そういうことか…◯◯◯さんのおかげで今日あんなに近くてあんなに楽しく過ごせたのにあんなことしてきたのかなぁと考えてたんですが納得できました」
と言いつつ溜め息は出てしまう
「どうしてこうなったかなぁ」
天を仰いでしまう
「何というか乙」
「どんまい」
「どんまい」
「気をしっかり持て」
「タカシには俺たちがおるで」
「甘いもん食え元気出るぞ」
「愉悦恍惚ワインが美味い」
「おい麻婆くさいぞ」
「流石に今煽りって言うか人の不幸を笑うコメはブロックします」
そろそろ見逃しておけないくらいに目についてきてしまったヤツをブロックする
「それにしてもタイミングよくね?」
「どんまい」
「何のこと?」
「ん?」
「いや、こんな事がある日に配信してて音声切り忘れからの画面オンって出来過ぎじゃない?」
「確かに」
「偶然にしては確かに」
「流れ変わったな」
「えぇ…」
「流石にないやろ」
「深読みしすぎ」
「何とも言えんな」
「うーむ」
何か予期せぬ方向で荒れてきた
「えーとですね、そもそも今日の枠立ては先週からしてます」
自衛のためなるべく理論立てて弁明をおこなっていこう
「配信してたのは今日いいことがあって何かガチャでいいのきそうなきがしたからですし、今日は結構いい雰囲気でビデオ通話きてしまったので画面と音声をオフにしました」
「だって音声オンにしたり画面オンにしたら俺のデヘデヘしたキモい顔見られるし、何某さんの顔も晒しちゃうじゃないですか」
「確かに」
「草」
「チョロオタクだもんな」
「女の子からビデオ通話なんか来たら俺もデヘデヘするわ」
「納得した」
「鎮火うまいな」
「草」
「そんなわけで自演などではありませんし、もうすぐに配信が終わったらすぐに不貞寝します…」
「後今回の配信はアーカイブすぐ消します」
「じゃ皆さん愚痴聞いてくれてありがとうございました。また配信出来るかは不明ですがまた会う日があったらよろしくお願いします」
捲し立てるように言うとすぐに枠を閉じる
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
改めて走馬灯のようにサクさんとの思い出が襲い掛かりベッドでのたうちまわる
「最悪だ…何で俺がこんな目に…サクさん…」
シクシク泣きながら布団を頭まで被りカタツムリになる
翌朝、配信の告知などで使っているSNSのアカウントに数えきれないほどのDMとスパムが来て目ん玉が飛び出るかと思ったら、配信サイトや掲示板にトップニュースとして取り上げられている「タカシNTR」等のワードが並んだ切り抜きや有名配信者の反応を見て今度こそ熱がでて三日間寝込んだ
ちなみに配信に関してはにわかなので細かい部分のツッコミはNGです
続きを書く予定は今のところありません。書きたい人がいたら書いてくれてもええんやでの精神です。