仮面ライダーガッチャード&デッドプール&ウルヴァリン デイブレイク・オブ・フューチャー・パスト 作:バリー
拳から爪を生やしたローガンは、こちらに向けて歩を進めるクウガに突っ込んでいく。そして顔面を狙って、拳を突き出した。
だが、クウガは迫り来る爪を腕で払い除ける。ローガンは構わずに連続で腕を振るい続けるが、その度に弾かれていく。
そうこうしている内に隙を見つけたクウガは、ローガンの腹に膝蹴りを打ち込んだ。
「ぐふっ!!」
前のめりになった彼の顔をクウガは二、三発殴り、最後に胴体に正拳突きをする。
衝撃で彼の身体は弾丸の様に吹っ飛ばされ、地を転がる。
そのまま追撃をかけようと近づいたクウガは、顔面に向けて拳を振るった。
しかし、ローガンの交差させた両手の爪で、それは当たる寸前で防がれる。受け止めた拳を爪でそのまま押し返すと、ローガンは腹部に向けて腕を突き出す。
「おぉらっ!」
だが、クウガは身を捩って回避し、顔面にストレートを見舞った。意識が朦朧としている隙に、クウガはローガンに連撃を食らわせていく。
「クソッ!」
何とか拳を防ぎながらローガンは反撃の機会を伺うが、一撃一撃が重く素早いせいで中々次の攻撃に移せない。気がつけば、彼は防戦一方になっていた。
「オイオイオイオイ、マジかよ。オリジナル展開とか、聞いてないって。オレ四次元ポケット持ってないし、ここにオールマイトも来てないよ?」
ちゃっかり、部屋の隅に避難していたウェイドは、クウガに甚振られるローガンを見て、焦りの声を出す。
彼を助けに行きたいのは山々だが、ヘルメットから手を離した後のカサンドラのことを考えると行動に移せない。かといって、このまま手が塞がった状態だと、クウガに対応出来ない。
ヒーリングファクターによって戦闘中にローガンが死ぬことはないが、あの金色の凄まじき戦士をどうにかしなければ、自分達はやがて来るアライオスの腹の中。
打開策はないかと頭を悩ませるウェイドは、洞窟でのレジスタンスの会話やカサンドラに初めて会った時のことを思い出した。
「なあ、アンタ!今までチャールズとか虚無に来たヤツらぶっ殺してきたんだろ?ソイツらが持ってたモンとか保管してるところがある筈だ。そこに案内しろ!」
「誰が、お前の命令なんか―」
「早くしろ!このままじゃ、皆死ぬんだぞ!」
なおも反抗するカサンドラを、ウェイドは怒鳴りつけた。
「オレ達を殺さないと誓えないから、アンタのヘルメットは外せない。かと言って、このままじゃオレ達は元の世界に帰る前に出番終了してこの作品が打ち切りになっちまう。それは何としてでも避けたい。」
ウェイドは必死に語りかけた。
「いいか?アンタが死んで、オレ達をアライオスのランチにした後、お家に帰ったクワガタ野郎は皆にこう言いふらすんだ。『安っぽいナッツミルクの飴ちゃんみたいな頭したイカれ女ぶっ殺した後、ションベン引っ掛けて、ジャガーノートの目ん玉―略して『ジャガ玉』を口に突っ込んでやったぞ!』ってな。言っとくけど、これはオレの本心じゃない。台本に書いてあったクリスの台詞。ちなみに本人はカンペ無しで言えた。」
悪口のところは、敢えておどける様な口調で言った。ユウスケに対するカサンドラの怒りを煽るために。
「とにかく、このままじゃアンタは全世界の良い笑いものになる。ちっぽけな虫ケラに殺されたマヌケとしてな!そうなりたくなかったら、場所を教えろ!今すぐだ!」
カサンドラはウェイドをしばらく睨み付けていたが、やがて観念したのか、自身の側にある古びた机を力無く指差した。
直ぐに、ウェイドはそこに歩み寄る。カサンドラから腕を離さずに。
一方のローガンは、肩で息をしながらクウガを睨んでいた。憎たらしいことに、遠くにいる黄金のクワガタ野郎は息一つ乱れておらず、むしろ両手で手招きしてこちらを挑発している。
あれから何度も反撃を試みたものの、その度に払い除けられ、カウンターを食らわせられるばかりだった。まるで、噛みつこうとする小動物をあしらうかの様に。無駄に体力と時間を消耗するだけで、クウガに有効打は一切与えられてない。
「どうした、もう終わりかぁ?来ないなら、こっちから行くぞ。」
そう嘲笑ったクウガは、わざとらしくゆっくりと迫ってくる。こちらの恐怖心を煽っているつもりなのか。
一体どうすれば、とローガンが焦ったその時だった。
「おチビちゃん!」
遠くからウェイドが、片手でローガンに向けて何かを投げてきた。もちろん、もう片方の手は、カサンドラをがっちり掴んでいる。
ローガンは自分の前に転がってきたものを、両手で拾い上げた。ストップウォッチの様な丸い物体が二個。中央部には大きく顔が描かれており、ベースとベゼルが二色に分かれていた。
「これは何だ!?」
「この女のせいで、くたばったヤツの持ちモン!仮面ライダーから奪ったパワーが封じられてるんだって!」
ウェイドが説明している間にも、クウガはローガンに歩を進めていく。
「上のボタンを押せ!」
『エグゼイド!』
『オーズ!』
ローガンが指示通りに操作すると、力強い声が丸い物体—『ライドウォッチ』から響いた。そして、彼の周りに一頭身の小人と三匹の動物—赤い鷹、黄色い虎、緑のバッタ—のエネルギー体が現れ、猛スピードでクウガのもとへ向かっていく。
「うぉっ!?」
一瞬にして、自らのもとに到達した軍勢にクウガは動揺する。鷹が翼をはためかせながら嘴でつつき、虎が鋭い爪で装甲をひっかく。バッタと一頭身のピンクの小人の『マイティ』は、自らに振るわれるクウガの拳や蹴りを軽快なフットワークで回避し、逆にパンチやキックを彼の身体に叩き込む。
その光景を見たローガンは拳の爪を収納すると、身を屈める。そして四つん這いの状態で走り出した。
猛獣の如く唸り声を上げながら地を駆け、その勢いを利用してクウガに飛びかかる。
周囲のエネルギー体を薙ぎ払おうとしていたクウガは、自分に向かってくる敵に気付いて拳を放とうとした。しかし、ローガンが両腕の爪を胴体に突き刺す方が早かった。
「ぐあああああっ!!」
鋭い痛みにクウガが悲鳴を上げたが、ローガンはそれに構うことなく右腕の爪を引き抜き、今度は心臓部を狙った。
左腕を胴体に突き刺したままにすることで自身の身体を固定し、右腕を激しく動かしてクウガの頑丈な装甲を抉り込むように刺し続ける。
何度も。何度も。何度も。
「フンッ!フンッ!フンッ!フンッ!」
返り血が、ローガンの黄色いスーツを赤く染める。
やがて、クウガの背中から三本の爪が生えた。頑丈なアダマンチウムの爪が、目の前の敵の心臓を装甲ごと貫いたのだ。グチャッという生々しい音を立てたクウガの身体はビクンッと震え、両腕がダランと垂れ下がる。
「よっしゃあ、やったぞ!さっすが、ウルヴィー!カナダが生んだ『神の手』を持つ男!」
ウェイドが歓声を上げる一方、ローガンは攻撃の際の激しい運動のせいで呼吸が荒くなっていた。未だに爪をクウガから引き抜こうともせず、汗を垂らしながらただ小さく息をしている。
心臓を貫いた感触は爪越しからでも分かった。クウガは死んだ。これで戦いは終わっ—
「フッフッフッフッ…」
—てはいなかった。
「ハッハッハッハッ ハッハッハッハッ !!!!!」
ローガンはハッと前を見る。クウガが笑っていた。心臓を突き破られ、絶命した筈の者が動いている。その光景にローガンは、一瞬動揺した。してしまった。
クウガは両腕に紫のエネルギーを纏わせると、そのまま前に突き出す。強烈な衝撃波がローガンと周囲にいたエネルギー体を襲った。
「ぐっ、がああああああっ!!」
派手に吹っ飛ばされたローガンの身体は、そのまま勢いよく床に叩きつけられ、その上を激しく転がる。ライドウォッチで生み出された援軍は、先程の攻撃に耐えきれず消滅していた。
ウェイドは、クウガの黄金の装甲に付けられた深い刺し傷がみるみるうちに塞がっていくのを見た。
クウガのベルトであるアークルには、『アマダム』という霊石が埋め込まれており、それには装着者に強大な回復力を与える効果がある。
サイトラックの魔石の欠片によってその能力が強化され、致命傷となるダメージを受けても瞬時に治癒することが可能になったのだ。
つまり、今のクウガにはウェイドやローガンが持つヒーリングファクターに相応する能力を持っているということ。
「おい、このパターン前も見たぞ!作者、引き出し少なすぎだろ!」
全快になったクウガは、空いた距離を詰める様に歩を進める。床にある二つのライドウォッチを踏み潰すと、倒れ込んだローガンの身体を掴んで起こし、腹に拳を食らわせる。痛みでうずくまった彼の顔に今度は膝蹴りを入れ、再び地に転がした。
そこからは暴力の嵐。クウガは何度も立ち上がろうとするローガンの頭を床に叩きつけたり、倒れ伏した身体に拳や蹴りの雨を降らせていく。
「ハハハハハハハハハハッ!!」
クウガは笑っていた。相手を一方的に蹂躙する快感に酔いしれていた。まさしく、その姿は古代人が畏怖していた『究極の闇をもたらす者』—『ン・ダグバ・ゼバ』のそれだった。自らの拳が、相手の頬や腹に命中した時の感触に心を踊らせている。
「もう、どうすんだよこれ!!アイツ、絶対つまみ食いしたこと根に持ってんだろ!こんなファンに喧嘩を売るような展開続けたら、読者が離れて行っちまうぞ!」
目の前で繰り広げられる陰惨な光景を見たウェイドは、助太刀したくても出来ない己の状況に歯噛みする。
何か他に手はないかと半ばヤケクソで、机の上を片手でごちゃごちゃと漁りまくる。黒いボーラーハットやターバン。さくらんぼやドリアンが描かれた錠前がウェイドの手に当たるが、どれも役に立たなそうだと彼は判断した。
ふと、ウェイドは視界の隅に『あるもの』を発見する。彼はそれを手に取ると、カサンドラに見せた。
「おい、『これ』は、どんなことが出来る!?」
「知らないよ…」
「ここに来て、まだ惚ける気か!?」
「押しても何も起こらなかった!多分、『ソイツ』には何の力も無い…『空っぽ』さ…」
「ふっざけんなよ!『中身スッカラカン』じゃ、持っててもしょうがねぇだろっ!ここにパワーが無いんじゃ、もうどうしようも―」
ウェイドの言葉が止まった。視線を自身が持っている『それ』に落とす。彼の頭の中で、ある仮説が浮かんだ。
そして一筋の希望の光が見えた気がした。
クウガから激しい暴行を受けたローガンは、床に倒れ伏していた。常人の腕力を凌ぐパンチを受けまくったせいか、唇が切れて血が滲んでおり、目や頬には青痣や腫れがいくつもできている。意識が朦朧としており、目の焦点が定まっていない。幸いアダマンチウム製の骨格にヒビはいっていないが、内臓が潰れていた。ヒーリングファクターが作用してはいるものの、立て続けにダメージを受けたせいか回復に時間がかかっていた。
しばらくローガンを痛めつけた後、手を止めたクウガは頭蓋骨の眼窩から外を見た。仮面越しに、ニィッとほくそ笑む。遥か彼方に、禍々しい暗雲が立ち込めていた。
「もうすぐ、アライオスがここに来るぞ!アイツが基地の真ん前に来たら、アンタとあの赤タイツを放り込んでやる!そしてオレは元の世界に帰って、この力を存分に振るうんだ…!」
クウガはローガンの血で赤く染まった拳を見つめる。
「今までオレを不愉快にさせた奴らを!逆らってくる奴らをこの手で全員殺してやる!オレがどれだけ強いかを皆に思い知らせてやる!そしてオレは…世界を支配する王になるんだ!ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
『世界の破壊者』と呼ばれていたとある青年と旅をしていた方の『小野寺ユウスケ』は底抜けのお人好しだった。しかし、『世界中の人の笑顔を守る』という目標のために戦う正義感の強い男でもあった。時には己の身を犠牲にしてでも、悪の道に堕ちた友を止めようとしたこともある程である。
だが、このユウスケは違う。手に入れた力を己の欲望のままに振るい、暴力に快感を覚え、人間の命を平気で踏みにじる外道だった。グロンギと同等、いやそれ以下の下衆。万人が見たら、間違いなく彼がユウスケと同じ名前と顔を持つことに嫌悪感を露わにするだろう。
自らの勝利を確信したクウガは、哄笑を頭蓋骨内に響かせていた。その時—
「ヘッ…笑わせるな…」
寝込んでいたローガンが、口を開いた。
「力っていうモンはな…ソイツを持ってないヤツを守るためにあるモンなんだ…自分の欲望を満たすためなんかじゃない…力に溺れているヤツは破滅する…」
ゆっくりと、だが足を地にしっかりと付けてローガンは立ち上がる。未だに頭がふらつき身体がズキズキと痛むが、それでも彼は口に溜まった血をペッと吐き出し、クウガを見据える。
「お前は王にはなれねぇ。今も。そして、これからもな。」
スーツがボロボロで顔も傷だらけ。膝が笑っていて、今にも崩れ落ちそうだったが、闘志を宿した目で彼はクウガを睨みつけた。
「きっさまああああああああああああああっ!!」
激昂したクウガは、ローガンにもう一発殴りかかった。
「ローガン!」
第三者の声。遠くからウェイドが、何かをローガンに向かって投げつける。
また何か妙なものをよこすつもりかとクウガは飛んできた物体を破壊せんと、右腕に闇のエネルギーを纏わせ、波動を放とうとした。それによって、彼の意識がローガンから逸れる。
その隙にローガンは、伸ばした足を力強く振り上げる—クウガの股間目掛けて。
「あ゛がっ」
装甲をまとっているとはいえ、急所への攻撃は流石に効いた様だ。蹴られたところをクウガは押さえて蹲る。ローガンは無事にウェイドに投げ渡されたものをキャッチした。
「おいっ!これ押しても、何にもならねぇぞ!?」
「それをアイツの土手っ腹に押し付けてみろ!」
「なんでだ!?」
「いいから!」
二人が激しくやり取りしている間に、クウガがローガンに襲いかかる。
「この野郎ぉぉっ…!」
拳を振るい続けるが、先程の一撃による疼痛が響いているのか動きが鈍く、更に怒りに任せているのも相まって大ぶりになっていた。
身を捩ってクウガの連撃を回避し続け、やがて隙を見つけたローガンは懐に潜り込んだ。
そして手に持っていた『
すると時計の針が一周するエフェクトが浮かび、ウォッチが変化した。
『クウガ!』
「なっ、なんだっ、これはっ!?」
クウガが驚きと動揺の声を上げる。突然、自らの体が電光を帯びながら、ノイズがかかった様にブレ始めたのだ。
クウガとユウスケの姿が交互に現れる不安定な状態がしばらく続いたかと思うと、やがてクウガの鎧は粒子と化して消滅した。
人間の姿に戻ってしまったユウスケは慌てて腹部に両手をかざしたが、アークルは出現しない。ふと、彼はローガンが持つ『クウガライドウォッチ』に目をやる。
「返せえええっ!」
ユウスケはウォッチを奪い取ろうと襲いかかるが、ローガンはすかさず手に持っていたそれを後方に投げ捨てると、彼の顔面に右ストレートを叩き込む。
呆気なく吹っ飛ばされたユウスケは床に転がり、気絶した。
「上手くいったみたいだな。」
ウェイドがカサンドラを連れてローガンのもとにやって来た。
「お前、なんであれがヤツに効くって分かったんだ?」
「『根拠に基づく希望的観測』ってやつだよ。」
最初にライドウォッチを手にした時、ウェイドはカサンドラから『仮面ライダーから奪った力が封じられている』と説明された。そして、形状が似ているブランクウォッチのことを『何の力もない空っぽ』だと言ったのだ。そこでウェイドは、ある仮説を思いついた。
もしやこの黒いウォッチは仮面ライダーの力を吸い取るための『器』であり、それによって変化したものがライドウォッチなのではないか?
これを使えば、仮面ライダーの一人であるクウガを弱体化させられるのではないか?
ウェイドは、そう結論付けたのだ。
「まー、まさか変身まで出来なくしちゃうのは予想外だったけどね。」
あれだけローガンを痛めつけて悦に入っていたユウスケは、今みっともなく白目を剥いて床に転がっている。力を使えなければ、彼もカサンドラと同じく普通の人間に成り下がるのだ。
ウェイドの返答を聞いてローガンは一瞬呆気にとられた。その後笑い出した。
「『希望的観測』か…!」
何だか可笑しくて仕方がなかった。笑っているローガンを怪訝そうな顔で見つつも、ウェイドは自らが抑えているカサンドラの方に意識を向ける。右胸から出血している彼女の顔は土気色になっていた。
「さーて、邪魔者は静かになったことだし、話し合い再開いきますか。」
「このままじゃ死ぬぞ。」
「あー、じゃあいいか?ヘルメットを取っても?オレ達を殺さないと誓え!」
「誓うよぉ…直ぐ様、お前らを殺すってね!!」
「あーもう!なんでそうなんだよ!!」
「私が知りたいよ…!」
風前の灯にも関わらず、自棄になったように笑うカサンドラに対し苛つくウェイドに、ローガンは言った。
「もう取れ。」
「は?」
「取れって。」
「なんで?」
「いいから。」
「クソな過去を変える唯一のチャンスなんだぞ!?」
「早く取れ!!」
ローガンはウェイドを怒鳴りつけると、己が着ているスーツを指さしながらカサンドラに言い放つ。
「このスーツの意味は…色々あるが、これを着る一番の理由は…『X-MENだ』ってことだ…!お前の兄弟を知っている…心からお前を殺したい!俺の全身の細胞がお前を殺したがっているが、『あの人』は!そんなことを絶対に!許さないだろう!」
溢れ出しそうになる怒りや衝動を必死に抑え込むかの様に体を震わせながら、ローガンは言い放った。彼はウェイドの片手をヘルメットから外させると、カサンドラの方に両手を伸ばす。
「彼のためだ…チャールズのため!」
ローガンがカサンドラからヘルメットを取ると、彼女の頭に浮かんでいた血管が少しずつ消え始める。
そして、完全に消滅した瞬間、彼女はウェイドの方に手をやった。
ゴームズの様に殺されると思い込んだウェイドは悲鳴を上げて、身を縮こませた。だが、痛みはやってこない。恐る恐る顔を上げる。カサンドラは手をウェイドの方に向けていたが、意地の悪い笑みを浮かべているだけだった。
自身の超能力で傷を癒やしながら、カサンドラはローガンに話しかける。
「チャールズに愛されてたね…」
「彼は皆を愛した…!」
「そりゃ、いいこった…」
「お前も、愛されただろう…」
ローガンは彼女に歩み寄る。
「チャールズがお前を知れば…お前がここにいると知れば、彼は世界に穴を開けてでもお前を連れ戻しただろう…!」
力強く言い放つ。しばらくカサンドラは黙っていたが、気丈に振る舞おうと声を絞り出す。
「ここが居場所だ…!」
涙を呑む様に言った彼女に対して、ローガンは懇願する。
「アイツの世界を救わせてくれ…!」
カサンドラはウェイドを僅かの間見つめた後、頭蓋骨の眼窩の方に向けて歩く。
「可笑しな話、聞きたい?素人のマジシャンが、ちょっと前にここに来た…もちろん、私が殺して、四日間ソイツの皮をまとった。で、見つけたんだ。ソイツの指に—」
カサンドラはポケットに手を突っ込む。
「ちょっとしたアクセサリーがあった…!」
彼女はあるものを取り出すと、左の人差し指と中指にはめた。二つの指輪を金具で横並びに繋げた様な道具で、両端にはそれぞれ赤と緑の宝石が埋め込まれている。
「『ストレーンジ』…!」
ウェイドは囁く様にそのアイテムの持ち主の名を口にする。
『スリングリング』をはめている方の指を目の前に向け、空いている右腕をカサンドラは円を描く様に回す。すると、虚空に火花を散らす巨大な輪が誕生した。中は眩いほど白く輝いている。
「マーベルの輝く輪っか!」
「何だ?」
お馴染みの光景を生で見られたことに興奮しているウェイドとは対照的に、X-MEN以外のマーベルヒーローについて無知なローガンがカサンドラに尋ねる。
「お前達の帰り道。命を助けてもらった借りがある…だけど、すんなりじゃつまんない。お前らが餌食になるまで、あと四秒ってところかな?」
カサンドラは外を見る。アライオスが目と口を輝かせながら、こちらに向かって進んでいた。まるでヘビの様に凄まじいスピードで地面を這い、眼前にある獲物を喰らおうとその巨大な暗雲の塊である体を前進させる。
「ハッ、競走だ!」
ウェイドとローガンは顔を見合わせると、光の輪に向かって走り出した。
アライオスが基地に迫る中、腕で囲まれたコロッセウムでの剣闘士達の戦いは続いている。
胴体に『ジグソウ*1』の銃撃を受けたローラが、そのまま地面に押し倒される。『ズ・ゴオマ・グ』を斬殺したブレイドが、背後から『K.Kオーグ』に刺される。太ももを切られたエレクトラが体勢を崩し、ガンビットがタックルを食らう。
『オーガ』の『オーガストランザー』による袈裟斬りを受けて地面に倒れ伏したカイザが、首を掴まれて持ち上げられる。『キリギ*2』の喉笛を搔き切った蟷螂怪人の背後から、『ドレゴネーター*3』が大剣を振りかぶる。
アライオスが咆哮する。ローガンとウェイドはまだ走り続けている。
ローラは自身を踏みつけている相手の足に爪を何度も突き刺し、ガンビットはロッドを拾う。
アライオスとジャイアントマンの死体の距離が縮まっていく。
ジグソウの脇腹にローラが、蹴りで爪先から生やした爪を突き刺す。K.Kオーグの喉をブレイドのナイフが切り裂き、ガンビットがカードを遠くにいるオーガに投げつける。カードが爆発した衝撃でオーガがカイザから手を離し、その後カイザは地面にあるカイザブレイガンを手に取って、刀身をオーガに叩き込む。殺気を感じ取った蟷螂怪人は振り返って、ドレゴネーターの大剣を鎌で防いで弾き飛ばし、機械の体に自身の鎌をめり込ませる。
ガンビットはエネルギーを込めたロッドを下に振るい、向かってきた『シザーズジャガー』の足首を吹き飛ばして転ばす。エレクトラは弾かれた釵をキャッチして、起き上がろうとする『トラアマゾン』の背中に突き刺す。ローラが拳の爪を横薙ぎに振るって、ジグソウの顔面を切り裂く。
アライオスが数センチの距離にまで迫ってきた。ウェイドとローガンが眼窩にまで到達すると、踏み込んで跳躍する。
カサンドラの手下達の死体が横たわる戦場で、レジスタンスのメンバーが上を見上げる。
巨人の目からジャンプしたウェイドとローガンは、そのまま空中で光り輝く輪へ飛び込んだ。
二人が到達するまで、あと数メートル。
ブレイドとガンビットが笑みを浮かべた。
到達まで、あと数センチ。
口を開けたアライオスが襲来し、光の輪と二人が暗雲に飲み込まれた。
アジト内でローガンに気絶させられたユウスケは、カサンドラに起こされて尋問されていた
「お前、面白いことを言っていたね?『TVA』がどうとかって。そこで死んでるパイロと何か関係あるのか?」
「分かった!話すよ!話すから、指突っ込むのだけは勘弁してくれ!な?」
ユウスケの嘆願を聞いたカサンドラは、彼に見せつけるように両手をコートのポケットの中に入れる—アジトで拾ったクウガライドウォッチごと。
「パラドックスっていうTVAの職員が、オレとパイロに言ったんだ!アンタを殺した方を、虚無から出してやるって!オレは外、コイツは内側から攻めるって作戦だった!」
「こっちには干渉しないって取引したのに?」
「ハハッ…そんなのまともに守るようなヤツじゃねぇさ…」
するとカサンドラはすうっと目を細めた。
「……守らせるよ、絶対に。」
その声はとても静かだったが、底しれぬ怒りが滲み出ていた。
《小ネタ紹介》
・『クウガの股間を蹴り上げるローガン』
『ファイナル ディシジョン』ネタ。四肢を斬られても即再生する『スターフィッシュ』を倒すため、ローガンが取った行動である。
「治してもらえ。」