※キャラ捏造あり
※カッケェゴクチョーが書きたかっただけ
世界から魔女因子が消えて少しあと、桜羽エマたちを危険視する大人たちは未だに多かった。彼らの企みを阻止するべく、ゴクチョーは動き出す
ペンシルベニア大通り1600番地。矢とオリーブを抱えた大鷲の護る場所。魔女を殺処分すべきなんて方針を最初に打ち立てた奴ら。
分かりやすく言うと、ホワイトハウス。世界最高の権力者たちが集う場所で、ある決断が下されようとしてきた。
「やはり……魔女は危険な存在だ。彼女らは子供で、世界の害悪となる可能性が1%だとしても消えてもらう他無いだろう。」
「ああ。事実、大魔女ユキは文字通り世界を滅ぼす所だった。日本政府の対応はヌルすぎる。もう一度ヒロシマからあっためてやるべきかもな?」
「無駄口は控えろ。では、決定と言うことで……。」
会議の中心にある男が宣言する。
「桜羽 エマ。二階堂 ヒロ。夏目アンアン。城ヶ崎ノア。蓮見レイア。佐伯ミリア。宝生マーゴ。黒部ナノカ。紫藤アリサ。橘シェリー。遠野ハンナ。沢渡ココ。以上12名を死刑に処す。」
「中でも、何としても……『魔女殺し』を持つ桜庭エマを処刑せよ。刺殺焼殺暗殺滅殺爆殺絞殺毒殺失血衰弱孤独、手段は問わない。」
平和を取り戻したはずの少女たちに毒牙が迫っていた。
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舞台は移る。
日本領海内のとある島。かつて氷上メルルが血塗られた魔女裁判を開いていた場所。
そこで、あることが起こった。
2週目、と呼ぶべきだろうか。
二階堂ヒロが死に戻りを行ったことによって生まれたパラレルワールド、あり得てはならないイフ。
2周目の魔女裁判も悲劇に始まり、悲劇で幕を閉じた。二階堂ヒロはかけがえのない2人の友を失い、死に戻る為に自分の禁忌を超え……『自死』する決断をした。
救済のために犠牲になった世界。繰り返してはならない記憶。
……これが、2周目の大まかな認識。
けれど、ゴクチョーは覚えている。それだけのイフではないことを。
具体的には。
『劇をしようじゃないか!』
そう得意げに宣言した蓮見レイアのことを。
「結局、いつやるんですかね……?」
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そして、ここは3周目。
顕現した大魔女が自らの身を以て、魔女因子を消し去った世界。ハッピーエンドであるはずの場所。
魔女だった少女たちの殆どは島を出て、それぞれの生活へ戻った。
しかし、元々、世界に居場所がなかった少女たちは、この島を新たな居場所にしていた。夏目アンアン、城ヶ崎ノア、宝生マーゴ。
この日、彼女らは一様に勤労の汗を流していた。
衣装作りだ。
ノアがデザイン、アンアンが材料の選定と調達、マーゴが切り貼り裁縫を担当していた。
『なぜわがはいがこんなことを』
夏日の中、アンアンは倉庫から持ってきた布と会話用のスケッチブックをマーゴに投げ渡し崩れ落ちた。
「あらあら、お疲れ様。アンアンちゃんが裁縫をしてくれるなら、私が喜んで取りに行くのだけれど……。」
『嫌だ。もう貫かれたくない。』
疲れが見える2人に、棚の上でゆったりしているゴクチョーは悪びれもない。
「いやあ悪いですねえ……この島も、看守が居なくなってしまったもので。なにぶん人手不足なのですよ。私もほら、かわいい鳥ですから。」
『ぶさいく』
「直球ですねー……。」
「まあまあ、頑張ってあげましょう……相応の見返りがあるうちは、ね。」
怠惰なアンアンが仕事をしているのはマーゴの指導あってのことだ。
曰く「これも必要な勉強よ?勉強をしない悪い子は……鬼に食べられちゃうわよ♡」
アンアンはシャワーを浴びてベッドに潜り込みたい、という思いでいっぱいだった。それに耐え、衣装レイアウトを確認しようと手を伸ばす。しかし。
「だめ!」
描いた本人であるノアに隠されてしまった。
『綺麗なデザインなのに』
「そ、そうーかなぁ……?これ、ちょっと……ちょっとだけ、自信ないかも……」
城ヶ崎ノアはかつて『バルーン』の名で知られた天才芸術家だった。
しかしその評価は彼女の魔法ありきのこと。今の絵を世の人が見れば、以前から明らかに精彩を欠いていると評価するかもしれない。
『わがはいが好きだ。それでも自信にならないか』
「………えへへ、アンアンちゃんがそう言ってくれるなら!じーっくり見てね!でも、アンアンちゃんの脚本も今度じっくり見せてね!」
『……いや、まだスランプ気味で良いのがかけてなくて……』
「スランプでもなんでも、ノアはアンアンちゃんの文章が好きだよ?それとも、ノアの感想はアテにならない?」
『参ったな。』
2人の幼子が和気藹々と、自身に足りない所を埋め合っている。
微笑ましく、未来への希望を感じさせる光景だった。
マーゴは腕の速度を落とさず、ゴクチョーに目を向ける。
「全く、若いって素敵ね。」
「はて?マーゴさんもそんな年じゃないでしょうに。」
「あら、嬉しい。……でも、年長の責任ってやつがあるわ。私には彼女たちを守る責任がある……ゴクチョー、あなたは何のためにこの作業をさせているの?」
マーゴは懸念していた。
魔法少女はその危険性から、一度は国に殺処分の対象とされた存在だ。
大魔女が世界から魔女因子を消し去ったことによって、それは取り消された。しかし、『念の為だ、やっぱり魔女因子を持っていた少女たちを皆殺しにしておこう』なんて奴が現れないとも限らない。
「『魔法少女は変わらず従順で安全です。』って報告し続けてくれないと困るもの。その為なら協力は惜しまないわ。」
その可能性を1%でも下げるため、マーゴはゴクチョーが仕事を振るたび協力していた。
それを読み取ったのか、ゴクチョーは困ったように天井を見上げる。
「……あらあら。私は全くそんなつもりはなかったのですか……私の依頼なんか無視して頂いても全く関係ありません。それに、この依頼は国とは全く関係ありませんよ?」
「じゃあ、何のために?」
「それは……劇が見たいからですが?」
ゴクチョーは当然のように言い放った。
「……劇?」
マーゴは数秒考えてから、ようやくその存在に思い至った。
『2周目』で蓮見レイアが企画した演劇のことだ。
不安に暮れる少女たちに目的意識を与え、またゴクチョーに自分たちの安全性を証明するため……あと、レイアの承認欲求を満たすために。
「ええと……」
それは、もう皆忘れているんじゃないかしら。
とはマーゴは言わなかった。
ゴクチョーの目は澄んでいた。
「はい、私すっごく楽しみにしてたんですよ。でも、裁判やら何やらでやっている暇がありませんし、挙げ句レイアさんが死んじゃいましたから。いやー、レイアさんが生き返ってくれて良かったですよ。」
「……ええ、ほんとに。」
「この前、ラウンジのテレビが地上波に繋がったって話はしましたっけ?彼女の復帰ステージを録画してあるので是非見てみてください。すごく仕上がってましたよ。」
「………ええ、見ておくわ……。」
「楽しみですねぇ……。皆さんが予定を合わせてこの島に来るのも大変でしょうから……小道具だけでも準備できればな、と。」
「ええ、気長に待ってちょうだい……」
レイアも皆も、絶対に忘れているわ。
とはマーゴは言わなかった。
「あ、そうそう。」
「何かしら。」
「元魔法少女たちに危害が及ばないかと心配されていましたけど……そこは、安心してくださいね。」
いつものゴクチョーとは違う、軽薄さのない言葉。大人の威厳。
そういうものを感じさせる。
「随分力強い言葉ね。何か確信があるのかしら。」
「ええまあ、魔女の発見、破砕、根絶。それが私の仕事なので。普通の少女になった皆さんが魔女の疑いによって害されるなら、それもまた魔女の災害です。絶対に、守りますから。」
「……初めて、あなたを信じたいと思ったわ。」
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再び、ホワイトハウスに場所は戻る。
そこは多くの大人たちが悪巧みをしていた場所。『魔女を駆逐せよ』と無辜の少女たちを殺そうと悪巧みをしていた。
今は血飛沫に塗れ、一匹の鳥を除いて皆床に伏している。鉤爪についた拳銃から硝煙を燻らせていた。
「全く。少女たちがあんなに綺麗なエンディングにたどり着いたのに。残念世界は残酷です、なんてサビ残だとしても許せません。子どもを守る。大人の務めを果たしましょうか」
島にいるのとは別個体のゴクチョーだ。彼は連絡を受けると、一息つく間もなく次の場所へ飛んでいく。かつて魔女だった少女たちを守るために。
「だから、いつか。元気な皆さんの……劇を観たいものですねぇ。」