稲荷様は平穏に暮らしたかった。   作:サード・アイ

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神話の再現

 

 

ークルセイリース大聖王国聖都セイダーー

 

八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)が銃神ダルサイノを消滅させ、レーザー攻撃によって破壊された網膜を修復した"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"はまっすぐと聖都セイダーに向かっていた。

 

だが、そこに閃光が天空を駆けて"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"に命中する。"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は閃光がやって来た方向を見ると、そこにはクルセイリース大聖王国の飛空艦隊の姿があった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

ー聖王家直轄飛空艦隊旗艦"メガ・クルス"ー

 

ワカスーカルトに向かっていた聖王家直轄飛空艦隊とは別働隊であり、聖都に待機していた彼らは"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"の出現に対して緊急出動したのだ。

 

彼らは奇襲攻撃で長距離艦隊級極大閃光魔法である"クルスカリバー"を放った。だが、対空兵器として愛用されていたクルスカリバーは"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"には何の効果も無かった。

 

『クルスカリバー、効果ありません』

 

「おのれ!ならば拡散フレアを発射しろ!」

『了解。拡散フレア発射します』

 

オペレーターの言葉と共に艦首に赤くなった魔法陣が浮かび上がり、魔法陣中心部から扇状に猛烈な炎が"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"に向かう。しかし、山よりも巨大な相手に、中距離艦隊級極大火炎魔法たる拡散フレアは一部分を炙っている様にしか見えない。

 

"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は火に炙られたのを気に障ったのか、口を開き、目から赤い一閃の光を放つ。その光は真っ直ぐに飛空艦隊に向かい、飛空艦2隻を爆破する。

 

『カーラス及びスルズメイ両艦爆墜!』

「ええい!なら目だ!目を狙え!リュウセイ準備!完了次第すぐに撃て!」

 

彼らは、今亡き銃神ダルサイノから齎された情報である目が弱いとの情報を下に目を狙う。

 

艦隊前方に形成された魔法陣の色が変わり、魔法陣中心から数えるのも億劫な量の光弾が発射される。

 

それは、日の光が差す中でも目視でもはっきりと分かる。光弾は何発も命中するが、命中精度よりも量を重視している"リュウセイ"は目に命中することは無い。

 

そもそも、魔導電磁レーダーとのリンクを行おうにも、反応が巨大すぎるが故に、"目"と言う小さな目標に当てることは不可能だった。

 

故に、体のあちこちに光弾が命中している"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は暴れることもなく反撃に赤いレーザーを放つ。

 

『トルビ及びメルジロ爆墜!』

 

こちらの攻撃が一切効かず、相手の攻撃はこちらを一撃で粉砕する。この絶望的状況に業を煮やしているの者が居た。

 

この場にいる聖王直轄飛空艦隊旗艦"メガ・クルス"の艦長であるサルガルであった。彼は怨みの念を口にするが、口にするは容易いが、行動するには難しい。そこで、彼は隣の人物に口を開いた。

 

「本来は軍部とは異なる独立した組織である我々聖王家直轄飛空艦隊の指揮権を渡すのはあり得ないが、今は非常事態だ。故に指揮権を委任したい。シエドロン殿」

 

そう、飛空艦隊総司令官ターコルイズの前任者であるシエドロンであった。彼は日本国調査団として日本国に渡航。その後、見分を広め日本国の国力や技術においてすべて負けていると感じた彼はクーデタ後のクルセイリース大聖王国に報告書を提出。しかし、メナスに思考誘導された軍王ミネートによって左遷させられていた。

 

しかし、彼の頭にある知識は本物だ。彼の経験と戦術、戦略知識はクルセイリース大聖王国でも一級品だ。彼は聖都軍本部からの連絡を受けたターコルイズからの連絡によって聖王家直轄飛空艦隊と合流していた。

 

これは、ターコルイズが以前とは異なり穏健派に傾いていたからこそシエドロンは左遷先から戻ってきたのだ。

 

「承知した」

 

自信ありげに言う彼だったが、その心中はどうやって目の前の敵を倒すべきか考えていた。何故なら、彼は対人、対国家戦争の将校であって間違っても化け物を想定した訓練は受けていない。そもそも、こちらの手札が効かない以上、どうやって敵を倒すべきなのか、兵器をどうやって運用すべきなのか分からないからだ。

 

だが、彼は一筋の光を見いだした。

 

「艦長。この旗艦とリンク飛空とリンク操作が可能な飛空艦はどれ程あるのだ?」

「リンクで飛行にリンク操作ですか?それなら旧式艦6隻を除いた全ての艦がリンク可能ですが…」

 

意図が分からず、困惑しつつも質問に答える艦長にシエドロンはホッとして言う。

 

「流石は聖王家直轄だな。最新式が多い。旧式艦6隻を除く全ての艦に通達せよ。リンク飛行及びリンク操作は私が行う。旧式艦6隻は目標を誘導しつつ聖都から離脱せよ」

「お待ち下さい!まさか、あなたは多次元魔力爆縮放射砲…メルガランテを使用するつもりですか!?」

 

艦長の言葉に「そうだが?」と何事も無いかの様に言う。

 

「シエドロン殿、正気ですか?!あれは飛空艦の全魔力を消費してしまうので、飛空艦は唯の船となって撃墜するのですよ!それに、乗員の魔力もすべて消費する。貴方の命の保証は無いに等しいのですよ!」

 

艦長の忠告に動じることなく言う。

 

「我々の手札では敵に何一つ傷を負わせる事が出来ない。では、どうやって危機に瀕している聖都の臣民を守るのだ?」

「それは…ですが!アレは禁呪!貴方は命を捧げるのですか!?」

 

その言葉に、シエドロンは躊躇いもなく言う。

 

「もとを正せばシルカーク王国に侵攻からの敗北。そして、化け物の復活。一連の流れは軍部のクーデタが原因だ。故に、軍部のツケは私が精算する義務がある。臣民を守る為にこれ程の栄誉はない。指揮権を委任された私からの命令だ。退避命令を出せ。だが、残るも退艦するのも自由だと伝えておけ」

 

彼が発動させるのは強力だが不完全な自爆魔法だ。艦長は聖王家直轄飛空艦隊と自分の不甲斐なさを憂うと共に、パラシュートを展開して自身の乗っていた旗艦"メガ・クルス"を去るのだった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

ー聖王家直轄飛空艦隊旗艦"メガ・クルス"ー

 

旗艦に艦隊で唯一人残ったシエドロンは攻撃に参加する艦艇の全てを操作しながら思案していた。

 

彼は自爆魔法を使うと決意した時、退避命令を無視して数人は残ってくれれば嬉しいと感じていた。何故なら、自爆魔法は艦隊に残る者達の魔力も吸い取るので、複数人残れば微々たる物だが威力も上がると考えていたからだ。

 

しかし、予想に反して誰も残ることは無かった。彼は聖王直轄飛空艦隊と言う組織に対して毒づいた。

 

(クソっ!国の危機だと言うのに!貴族の箔付け部隊故に聖帝ガウザーに胡座をかいて訓練もしない!命を投げ出す覚悟もできていない間抜け共め!そもそも、普段からこちらを見下しておいて命の危機となったら左遷された身である私を引っ張り出すなど…これだから貴族と言うものは!)

 

シエドロンは平民でありながら頭角を現した実力者だ。それゆえに、国に対する愛国心も高かった。故に、ノブレス・オブリージュ(高い地位には義務が伴う)を実行しない彼らを態度には出さないが、嫌悪していた。

 

間抜けな貴族の子息達を罵っている間も艦隊は自爆魔法を放つべく移動し、エネルギー充填を開始している。そして、そのエネルギーにベクトルと圧縮を付与する。そうして、膨大なエネルギーとなった"メルガランテ"は発射可能状態となる。

 

「"メルガランテ"」

 

シエドロンは発射ボタンを押す。同時に大量の魔力が吸収されていく。彼は魔力とそれに伴う生命力を吸収されゆく中、走馬灯を見てシエドロンはこの世を去った。

 

その対価として発射されたメルガランテは青白いエネルギー波となって"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"を飲み込み、後方の山を粉砕するのだった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

シエドロンが発動した自爆魔法は"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"に傷を与えることに成功したが、倒すには至らなかった。

 

"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は攻撃を受けてすぐに余りある魔力を使って回復をしている。それに対して、クルセイリース大聖王国の象徴とも言える飛空艦隊は空から地上へと落下していく。

 

魔導エンジンの魔力すら攻撃に転用したことで動力を失ったのだ。

 

"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は羽虫の事など気にせず目の前の餌に集中する。大きな口を開け、聖都が火の海となり死を待つのみの者達の魂を喰らっていく。

 

その間も旧式の飛空艦が攻撃を行っているが、先ほどのクルスカリバーなどの攻撃を脅威ではないと判断した"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は無視して食事を続けている。

 

"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"は聖都セイダーに残る民を喰らいつくし、ワカスーカルトに向かうのだった。

 

 

 

 

◆

 

 

ー海上自衛隊駆逐艦"夕立"ー

 

「稲荷神様。漂流していたパールネウス王国兵の救助は概ね完了しました。行方不明の者もおりますが…」

「では、暫く救助活動を続行。その後、シルカーク王国の使節団を護衛して帰還。その後、準備を整えてクルセイリース大聖王国に対して最後通牒を突きつけるべく進軍します」

 

船員の報告に稲荷神はテキパキと答える。しかし、実際の所は艦長のカンペを読んだだけであった。

 

閑話休題

 

とにかく、パールネウス王国兵を救助するにしても海流に流された者や沈んでしまった者を戦場で救助するのは危険故に困難を極めた。

 

「…!報告!レーダーに新たな感あり!大きさは山よりも大きいです!ワカスーカルトに接近中!」

 

南野の言葉が信じられず、同僚はレーダーを覗く。彼もまたレーダーの反応に驚く。

 

「なんだこの大きさは!?敵はなんて兵器を持っているんだ!」

「山をも超える兵器がやってくる!?この世界には機動要塞があるって言うのか!?」

 

そう言って軽く混乱している戦闘指揮所。しかし、艦長は冷静に指示を飛ばす。

 

「総員戦闘配置!救助活動を中断し、沖合へ向かえ!」

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

沖合にシルカーク王国海上自衛隊派遣部隊が到達した頃、ワカスーカルト郊外では日本国では創作の世界であった怪獣決戦が行われようとしていた。

 

相対するのは、黒月族の兵器たるキル・ラヴァーナルと古の邪神である"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"である。

 

さしずめ、メカゴ◯ラvsゴ◯ラと言った所だ。

 

キル・ラヴァーナルに搭乗するワカスーカルト防衛軍司令長官エル・ガンエンは怒りに燃えていた。

 

何故なら、メナスの思考誘導から解放された軍王ミネートがキル・ラヴァーナルに搭乗するエル・ガンエンに向けて魔信を送ったのだ。その内容は、

 

『メナスの裏切りによって聖都郊外の地下に封印されていた化け物が復活し、聖都を破壊し、民を喰らい尽くしている』

 

と言う衝撃的なものであった。彼の実家は聖都にあるため、家族が無事かどうかも分からない。彼はワカスーカルト郊外で食い止めようと東にキル・ラヴァーナルを移動させていた。

 

何故なら、日本国の戦闘を予測してワカスーカルトの住人を避難させていたが、動くことが出来ない者や自ら残った者が街にいるのだ。彼は役職に恥じぬ働きをしようと"八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"と言う邪神に立ち向かったのだ。

 

まあ、彼の性格上ある程度の保身と出世欲も含まれていそうだが…

 

閑話休題

 

彼の目には、8つの山と谷を超える程の大きさの大蛇が真っ直ぐ向かってきているのが見えた。

 

エル・ガンエンは黒月族の文字で書かれた石板をなぞり、キル・ラヴァーナルが持つ長射程・高威力兵器を初手で放とうとしていた。

 

キル・ラヴァーナルは両手を『前倣え』の様に突き出すと、黒い球体が左手と右手の間に形成される。それと同時に、空間が前方方向に圧縮される。それに伴い原子は原子核と電子に、原子核は陽子と中性子に、陽子や中性子はクォークへと。そうして散布されたクォークは瞬時に結合して電子を吸収し、原子へと戻る。空間圧縮に伴う物質破壊によってプラズマが走っているのだ。

 

だが、物理法則を知らないクルセイリース側、とりわけキル・ラヴァーナルを操作するエル・ガンエンはそんな事が分かるはずもなく、凄いことが起こっていると言う認識ですらない。だが、彼はそんな事を考えている暇は無かった。

 

デカい的だから必ず当たると考えて発射準備しているこの技は術式構成に時間と膨大な魔力を消費する。クルセイリース大聖王国内では破格の魔力量を誇る彼だが、それは人種の中での話。黒月族が使うことを想定したキル・ラヴァーナルの消費魔力量はキル・ラヴァーナルに溜め込んでいた魔力量を使用するとしても大量に魔力を消費していた。

 

それにより、彼は魔力を吸われる痛みを少なからず味わったが、それは気合で乗り切った。

 

「空間圧縮魔法を食らうがいい!」

 

キル・ラヴァーナルの動力部分の魔力以外を消費して発動する魔法、空間圧縮魔法が放たれた。黒い球が通過する場所の空間は歪み、地面は抉れる。そして、黒い球は八岐の大蛇(ヤマタノオロチ)"に命中し、爆発。その威力を解放した。

 

 

 

 

 

 

 






〜コラム〜

クルセイリースの銃

クルセイリース大聖王国の銃はホイールロック式と呼ばれる銃に似た魔導銃を想定している。なお、狙撃銃は本編でも述べたようにコストが凄く掛かる兵器だ。例えるならば、グラ・バルカス帝国の超大型爆撃機グティマウンである。

実は、グティマウンはどうやって作れたのか分からない。つまり、奇跡的に製造出来た兵器。つまり、設計図やネジなどの規格を失えば製造不可能である。この狙撃銃も同類である。

アニメに例えれば幼女戦記の95式演算宝珠である。これは奇跡的(存在Xの介入によって)生まれた奇跡の産物。つまり、量産は難しい。精々が劣化版の97式突撃演算宝珠である。

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グラ・バルカス帝国の存亡について

  • 徹底抗戦からの無条件降伏
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