東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第1話ー出発ー

僕としては大変遺憾ではあるのだけど、世の風潮として漫画やアニメ、果てはゲームまでの娯楽を教育への悪影響として危惧する傾向がある。

 

でも、これは大変嘆かわしい現実であると共に、それら二次元の影響を受けて若者による犯罪が増加傾向にある事も揺るがない現実なのだ。

 

これについては数多くの意見が交わされる世の中なのだけど、

 

そもそも文字を読むという点において漫画という物は、時に素晴らしい教科書になるのだ。

 

最近の学校の教科書においては人気アニメのキャラがイラストとして登場することも少なくない。

 

アニメにしても感性を養うという意味では悪いだけの物とは言いきれない。

都条例なんかはどんどん厳しくなっていく一方で、根強い人気も残している。

 

ゲームにしても同じ、想像力や達成感を得る事ができる。

特に近年のゲーム業界は、技術の進歩によって世界的発展を遂げている誇るべき分野の仕事とも言える。

 

まあ結局の所、僕は一体何を言いたいかといえばーーー

 

単純に自室のベッドで漫画を読んでいるように見えて、僕は断じて勉強をサボっているわけではないという事だ。

 

 

「まだ風呂入ってないの兄ちゃんだけだぜ」

 

「そうだよお兄ちゃん、勉強もせずに漫画読んでるだけならさっさとお風呂入っておいでよ」

 

相変わらずノックも無しに僕の部屋に押し入るこの二人は僕の妹ーーー

 

ファイヤーシスターズという僕にとって迷惑この上ないタッグを組んだ阿良々木火憐と阿良々木月火だ。

 

まあ最近ではドアを蹴破る事も無くなってきたので、これでも一応は改善傾向にあるというのだから恐ろしい…

 

「はいはい、わざわざご苦労さん。僕は国語と美術の勉強を熱心にとりくんでるだけだから邪魔するなら部屋に戻って寝ろ」

 

「いや、漫画読んでるだけじゃねえか!」

「そうだよお兄ちゃん!わざわざ呼びに来たのに…プラチナむかつく!」

 

この二人、個々でも立派にやかましいのに二人揃うとより一層やかましい。

 

どんな相乗効果だよ…

 

「わかったわかった…これ読んだら入るから静かにできないなら早急に出ていけ」

 

まず、明日は休日だというのにこいつらの生活リズムを押し付けないでほしい…

 

「たく…もうこんな愚兄はほっといて部屋戻ろうぜ月火ちゃん」

 

「そうだね火憐ちゃん、こんな阿呆なお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃないね。もう見放して部屋に戻ろうか」

 

こうして言いたい放題言った二人は僕の部屋を後にした。

 

その物言いに思うところが無かったわけではないけど、とりあえず今は漫画だ。

 

凶悪な騒音被害もなくなったところで僕は再び目を漫画に戻す。

 

それはちょうど主人公が悪者と闘い、必殺技を繰り出すようなシーンだった

 

「主人公ねえ…良いよな、こんな格好良く決められる主人公は…」

 

これまでに経験し、解決してきて数々の修羅場を思い返してつい皮肉が零れる…

 

いつだって僕は足掻いて、泣いて、汚れて、傷付いて、失いながら事件を解決してきた。

 

こんな漫画の主人公のように華麗に、勇ましく、鮮やかに、全てを救いながら勝利した事は無い…只の一度たりとも。

 

「どうしたどうしたお前様よ、そのような卑屈な顔をして。似合いすぎて笑えんぞ?」

 

気が付けば金髪金眼の凄惨に笑う幼女が立っていた。

 

忍野忍

 

春休み、僕を襲った吸血鬼

 

怪異の王にして怪異を食う者

 

通称・怪異殺し

 

鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼の残りカス

 

今ではその力の大半を失って、僕の影とその名前により存在を縛られた吸血鬼の成れの果てだ。

 

「なんでもねえよ、只の愚痴さ。僕もこんな格好良い主人公になってみたかったなあ…っていう、つまらない愚痴」

 

この幼女が僕の影に住むようになってもう長い、今更突然のように現れても驚いたりはしなくなった。

 

 

まあ最初は驚いたけど…

 

「かかっ、なんじゃそんな事か我があるじ様よ」

 

「悪かったな、そんな事で。お前にとってはそんな事でも僕にとっては永遠の課題で永遠の憧れなんだよ。」

 

僕がこんな理想の主人公像どおりにの人間だったならと思うと、どうしても悔やまれるあれやこれやが多すぎるのだ。

 

「そんなものを課題にするなら学校の課題を片付ければよかろうよ?」

 

「お前にだけはそんな現実的な事は言われたくなかったよ!」

 

どれだけ俗世に染まってるんだこの吸血鬼は…

 

「じゃが…確かに課題と言えば課題じゃのう。今後の事を考えればお前様にも成長してもらわねば儂としても先が危うい。」

 

「そんなもん、成長しようと思って成長できるならとっくにしてるよ…僕は僕でしかないんだぜ?」

 

一長一短でヒーローになれるなら誰だってヒーローになっている。

 

そんな奴がいないから人はヒーローに夢を見るのだ…

 

「何を小難しく考えておるのじゃお前様よ?それなら直に理想の主人公とやらに教えてもらえばよかろう。」

 

「え?」

 

閑話休題

 

そして現実、僕と忍は北白蛇神社にいる。

 

「ちょっと待て忍!勢いでここまで来ちまったけどお前はいったい何をするつもりだ⁉︎」

 

言われるがままに家を出た僕達は、忍に良いから良いからと押し切られる形でここまで来ていた。

 

「じゃから言っておろう?行くんじゃよ、お前様が言う理想の主人公の所への」

 

「そうゆう意味のちょっと待てじゃない!じゃあ何か?お前はまたいつかと同じようにタイムスリップでもするつもりか⁉︎」

 

以前ここから過去へとタイムスリップした事を思い出すーーー

 

あれこそ僕の惨敗の歴史の中でも、代表的と言える失敗例だ。

 

「それはちょっと違うのうお前様、これはタイムスリップでは無く時空移動じゃよ」

 

「時空…移動?どういう事かわかりやすく説明してくれ」

 

そもそもタイムスリップも時空移動と同義じゃないのか?

 

「相変わらずお前様は物わかりの悪い奴よのう、よいか?タイムスリップと違って時空移動とは、現在この世界のどこかにあるであろう場所へと飛ぶ事を指すんじゃよ。そう、お前様の求める理想の主人公がいる場所へのう」

 

「現在の世界を移動する…?つまりは時間軸自体は変わらないって事か?」

 

「そうじゃ。簡単に言えば前回のあれはタイムマシンで、今回のこれはどこでもドアじゃな」

 

得意そうに胸をはる忍だったけど僕はどうしても言っておかなければならない事があった…

 

「お前…やっぱりノブえもんだな…」

 

「吸血鬼パンチ!」

 

殴られた。

 

「いつつ…で、でも忍!確か、この場所の霊的エネルギーだっけ?あれは前回のタイムスリップでほとんど使いきっちゃったはずじゃないのか?」

 

「なに、そもそも過去へ飛ぶのとは違って場所の移動だけならそこまで膨大なエネルギーはいらん。ここに残る僅かなエネルギーで充分じゃ」

 

いよいよ忍のチートっぷりがわからなくなったな…

 

でも確かにこれは面白そうだ!

 

それに現在の世界のどこかに飛ぶなら帰れなくなったり歴史が大きく変わるような危険も無いし…

 

それで明日は休みで予定も無いとくれば行かない手はない!

 

「よし忍!話は大体わからないけど大体わかった!面白そうだし早速行ってみようぜ!」

 

「どっちなんじゃよまったく…まあよい!ではゲートを開くぞ?」

 

忍は神社の鳥居を前にして、またあの日のように怪しげな呪文の詠唱を始めた。

 

「あれ?おい忍、その呪文の詠唱っていらなかったんじゃ…」

 

「気分じゃよ気分!雰囲気が出んじゃろ?まったく無粋な男じゃな…」

 

やっぱりいらないんじゃん…

 

そうこうしている間に、鳥居の中が空よりも黒く染まる…ゲートが開いたのだ。

 

「よいかお前様、今回はお前様が思い描く理想の主人公とやらを頭に強く念じるのじゃ。それで自動的にその場所へと飛ぶはずじゃ。おっと、間違っても外人のヒーローなんぞ想像するなよ?国外ではどこにとぶかもわからんからの」

 

僕の手を握って忍はゲートに飛び込むように構えた。

 

「わかったよ、あくまで日本人で考えれば良いんだな?あいにく僕はそこまでグローバルな人間じゃないからな、心配ご無用だ!」

 

「聞いてて悲しくなってくるのう…まあよいわ!では行くぞお前様!」

 

「お、おうよ!」

 

主人公…ヒーロー…世界を救うような…

 

ええいままよ!どこに行ったところで僕より不出来な主人公もないだろ!

 

行き当たりばったりだこん畜生!

 

こうして僕と忍は、硬く手を握り合ってゲートに飛び込んだーーー

 

その行く先に何があるかも知らずにーーー




初のクロス作品になります。
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