東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第11話ー⑨ー

紅魔館のすぐ脇には結構な大きさの湖があった。

 

とは言っても霧が立ち込めていてその全貌は見渡せないのだけど…

 

現在僕は、ちょっとしたトラブルを回避した後にその湖の畔を歩いている。

 

 

以下回想

 

 

「暦お兄様が出掛けるなら私も一緒に行く!ねえ私も行って良いでしょ!?」

 

僕が博麗神社に出向く事を伝えると同行すると言ってきかないフランだった。

 

「駄目ですよ妹様、今日は陽射しが強いので外に出たら火傷ではすみません」

 

と、まあこんな感じで出口の見えないやりとりを繰り返しているのだけど…

 

いや、互いの言い分を聞いていれば明らかに咲夜さんが正論。

 

「暦お兄様ー!咲夜を説得してちょうだい!」

 

「僕がですか!?」

 

うわ…咲夜さんめっちゃこっち睨んでるよ…

 

これで僕が迂闊な事を言ったら殺すぞと言わんばかりだ…

 

かと言ってさっきから僕にしがみつくフランも譲る気はないみたいだし…

 

今日も今日とて災難っぷりは絶好調か…

 

僕は腰を落としてフランと同じ目線までしゃがむと、その頭に手を置いた。

 

「いいかフラン、僕は今から出かけなきゃならないんだ。でもこの時間はフランにとって危ないのはわかるよな?僕もフランと出掛けたいんだけど、それでフランにもしもの事があったら立ち直れない…だから良い子で待ってられるね?」

 

「…私が良い子にしてたらちゃんと帰ってくる?」

 

なんだこの可愛い生き物!?

 

「当たり前だろ?それにフランも昨日はちゃんと寝れてないみたいだし夜には帰ってくるからそれまで寝てろ、帰ってきたらまた遊ぼうな」

 

「わかった!私良い子にして待ってる!」

 

こうして無事に一人で屋敷を出ることができた。

 

そういえば屋敷の門の前でまだ会ってなかったこの紅魔館の住人と出会った。

 

全体的に緑色のチャイナ服を着たわがままボディの赤い髪が似合う明るい人だった。

 

ちなみにわがままボディについては僕の主観である。

 

「貴方が伝説の吸血鬼の眷属、阿良々木暦様ですか!私、この紅魔館の門番兼庭師をしている紅 美鈴と言います」

 

「ほん…みりん…?」

 

「私の名前を日本特有の照りが出る甘味調味料みたいに呼ばないで下さい!私の名前は『ほん めいりん』です!」

 

「失礼、噛みました」

 

「わざとですよね!?絶対わざと噛みましたよね!?」

 

と、こんなやりとりがあった。

 

紅魔館の人達の中でも特に話しやすい人で仲良くなれそうな感じの人だったな。

 

僕の事については咲夜さんに聞いたらしい。

昨晩の弾幕騒ぎの中でもずっと寝てたというその神経の太さはどうかと思うけど…

 

 

回想終わり

 

咲夜さんには妹様の扱いが手慣れすぎてると言われたが、僕にも似たような兄を溺愛する妹が二人いる事を伝えたら納得してくれた。

 

納得というよりは同情に近かった気がするけど…

 

 

さて、咲夜さんに博麗神社までの簡単な地図を書いてもらったけど結構な距離があるな…

 

昨日は霧雨さんに乗せてきてもらったからそんな感じはしなかったけど、歩いて行ったら相当な時間がかかりそうだ。

 

 

「しょうがない…走るか」

 

吸血鬼性の向上を確認しておきたかったし、力が上がっているなら霧雨さんとまでは行かなくても相当な速さを出せるはずだし。

 

こうして僕はクラウチングスタートの姿勢をとる。

 

走るかと言ってもジョギングをするつもりはない。

体力の上がっている今だからできる全力ダッシュだ。

 

「待てぇい!」

 

クラウチングスタートの間抜けな姿勢をしているところに急に声がかかった。

 

勿論その間抜けな姿勢のまま首だけ傾けて声のした方向に目を向ける。

 

「この辺はあたいの縄張りだ!お前どこのどいつだ!?」

 

そこには全体的に水色な小さい女の子が浮いていた。

その隣にはどうみても内気そうな緑の髪をした子もいる。

 

隣の子は普通の羽みたいなものが生えてるし、水色の子も背中には雪の結晶みたいな羽がある…ということはやっぱり人間ではないのかな?

 

「僕は阿良々木暦、昨日からあそこの紅魔館で世話になってるんだ。二人は幻想郷の住人か?」

 

ん?名前を名乗っただけなのに二人の表情が強張ったような気がするけど…

 

「あ、あたい達はこの湖に住む妖精だ!お、お、お、お前、紅魔館にいるって事は吸血鬼なのか!?」

 

「チルノちゃん、危ないよ!帰ろうよ!」

 

…成る程。

 

二人の様子から察するにこの幻想郷においても吸血鬼は恐れられるだけの存在という事か。

 

大蜘蛛みたいに問答無用で襲いかかってくる奴には意味がないけど。こういう場合、吸血鬼の名前は有効らしい。

 

「まあ…吸血鬼って言えば吸血鬼かな?吸血鬼の弱点みたいなものはないけど…」

 

「弱点が無い!?そんなのズルだ!卑怯だ!」

 

「チルノちゃん!刺激するような事は言っちゃダメだよー!」

 

卑怯って言われても半分人間だからなあ…太陽も大蒜も銀も十字架も弱点になるわけがないし…

 

「そういえばさっきこの湖は自分達の縄張りみたいな話をしてたけど、ここって通っちゃ駄目なのか?」

 

困ったな…地図にはここ以外の道は書いてないし…

 

「ま、まあ今日はこれくらいにしといてやろうかな!ぜ、絶対通っちゃいけない訳でもないし…なあ大ちゃん!?」

 

「う、うん!そうだねチルノちゃん!通っちゃダメって言うか是非通って下さい!!」

 

「そっか、助かるよ。しばらくは紅魔館に住んでるから何かあったらよろしくな」

 

そう言って僕はクラウチングスタートしたーーー

 

後ろから

 

『見ろ大ちゃん!吸血鬼があたいに恐れをなして逃げ出したぞ!あたいったらさいきょー!』

 

という言葉が聞こえた気がするけど微笑ましいのでそういう事にしておこうと思う。

 

それにしても速い速い。

 

これならあっという間に博麗神社に着きそうだ。

 

あと、二、三日吸血を続けたらジャンプ一回で行けるかもなーーー

 

 

こうして地図に記された道を走り続ける事、およそ五分。

 

今度は妖精とは言い難い相手が現れた。

現れたというかいつの間にか僕の隣を並走していた。

 

「あなたが噂の外来人ですか!?取材させて下さい!!」

 

幻想郷は今日も僕に平穏を与えるつもりはないらしいーーーーー

 




区切りが悪くて短くなってしまいました…
明日にでも次話を投稿しますので、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!
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