東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

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第14話ー異変ー

暦が博麗神社を去ったのと同時刻。

 

妖怪の山にてーーー

 

「いやぁ、本当に面白い人達でしたねぇ。これは今回の『文々。新聞』は増刊になるかも…って、えぇ!?」

 

此度の文々。新聞の為にたった今とってきたネタを書きためたネタ帳を落としかけた。

 

射命丸 文にしてこのネタ帳はカメラと同じくらい大切な物で自分の一部と言っても過言ではない代物、そんな大事なネタ帳を落としてしまうくらいの衝撃的光景が目の前に広がっていたーーー

 

「椛っ!どうしたの椛!?しっかりしなさい!」

 

文の目の前に広がっていた光景…

それは妖怪の山に住まう天狗達の無残に打ち払われた姿だった。

 

その多くは普段から山の警備に当たっている白狼天狗。

その中には普段から特に交流の深い犬走 椛の姿もーーー

 

 

「何があったの椛!?」

 

自分の腕の中でぐったりとしている椛ーーー

 

そもそも組織性の強い天狗という種族において、その実力差は相当な開きがある。

 

鴉天狗の文と白狼天狗の椛とでは、戦闘において格段とレベルが違うのだ。

だが、だからと言って白狼天狗が必ずしも弱い訳ではない。

 

ましてやこの惨状を見ての通り、この山には部隊編成された白狼天狗が数多く警備に当たっていた。

 

そんな天狗達がここまで一方的に打ち負かされるという事自体が既に異常なのだ。

 

「文…様ですか…?」

 

「椛!大丈夫なの!?いったい何があったの!?」

 

椛が文の腕の中で目を覚ました。

 

が、その様子は重症で息も絶え絶えといったところだ…

 

「来るのが遅いですよ…にしても…不覚をとりました…申し訳…ありません」

 

「それは良いわ!これは誰の仕業なの!?」

 

「突然でした…侵入者は三人…この幻想郷では見た事の無い者です…」

 

「見た事が…ない?」

 

 

それはこの犬走 椛以外の人物が口にしたなら追加調査が必要だな、と思わせる言葉だが、こと椛に関しては違うーーー

 

白狼天狗・犬走 椛が有する能力は

 

 

『千里先まで見通す程度の能力』

 

 

常日頃から山の警備をする椛にして見た事のない者とまで言うなら、それは必然的に外界からの侵入者と考えた方が自然なのだ。

 

「警告を与え…山から立ち去るように告げた瞬間です…弾幕では無く実戦での交戦でした…ただ…見た事の無い技の使い手でした…」

 

「弾幕ごっこではない戦闘?確実なルール違反…やっぱり外界の者?」

 

「大天狗様に報告に向かう暇もありませんでした…文様…どうかお気を付け下さい…ただ…」

 

「ただ?」

 

「去り際に…吸血鬼はここじゃない…と…」

 

「わかったわ!兎に角すぐに手当てを!ってちょっと椛!?椛ー!?」

 

再び意識を失った椛。

 

天狗社会というのは縦社会であり、上下関係がしっかりしている。

 

その反面で団結力が強く、同じ天狗仲間を攻撃される事は天狗にとって許しがたいものだった。

 

例に漏れず、射命丸 文も自分の内に湧き上がるまだ見ぬ敵に対しての憎悪の念と必死に戦っていた。

 

しかしそこは鴉天狗、天狗という種族の中でも秀でた頭脳を持っている文だからこそ激昂せずに踏み止まれた。

 

「吸血鬼…最近来たあの外来人、阿良々木暦も確か吸血鬼…それに紅魔館で暮らしている、これは調べる必要があるわね」

 

こうして文は事態の収拾と今回起きた異変へと動きだしたのだった。

 

 

 

【同時刻・幻想郷内、魔法の森にて】

 

「ちょっと紫、なんだってこんな森の中で話さなきゃならないのよ」

 

博麗の巫女こと博麗霊夢は朝早くに呼び出されて魔法の森に来ていた。

 

魔法の森とは暦がこの幻想郷にやって来た時にはじめて妖怪と出くわした森だ。

 

そして霊夢を呼び出した張本人、それはこの幻想郷の創立者にして最強の呼び声も高い八雲 紫だった。

 

「ごめんなさいね、けど霊夢の所には今外来人がいるじゃない?その人に聞かせるような話じゃないのよ」

 

空間に裂け目を作り半身だけを覗かせた紫は口元を扇子で隠しながら続ける。

 

「今回の異変…二重結界への干渉を行った主犯の話よ。ねぇ霊夢、貴方は今回の異変どう見てる?」

 

いついかなる時も余裕を見せて何でも知っているような胡散臭く話すのは八雲紫のステータスのようになっていた。

 

回りくどい事を嫌う霊夢としてはやりにくい相手でもあり、時に誰より信頼できる相手だ。

 

「はあ…うちの居候に聞かせたくないって事はそういう意味でしょ?特に気になるのはあの吸血鬼の外来人の方だけどね」

 

「ふふふ、話が早くて助かるわ。そう、今回の異変にはどうやら吸血鬼が関係しているようなのよ」

 

吸血鬼…幻想郷にはそもそも外来人以外にも吸血鬼は存在する。

 

紅魔館に住むスカーレット姉妹。

 

「吸血鬼ねぇ…なんで吸血鬼が関係してると思うのよ?」

 

「そもそも結界に近付けている時点でおかしいのよ、それがさらに干渉までしている…と、なれば相手は並の妖怪じゃない事はわかるわね?」

 

「それはわかるわよ、それどころか妖怪なのかも怪しいわ」

 

八雲紫が張った結界には外界で忘れられた物を引き寄せる力がある。

 

一方、博麗大結界には幻想と現実の境を区別する力がある。

 

それはいわば発見する事すらできないはずで、もし発見できたとしても侵入は不可能である事を意味する。

 

「そう、妖怪じゃないと思うわ。おそらく…人であって人でない者の仕業ね」

 

「まるで犯人はわかっているみたいな口ぶりね、詳しく聞かせなさいよ」

 

「わかってないわ、あくまでも予想よ。でもほぼ間違いないと思うわよ。外界に忘れられていながら幻想に干渉するだけの力を持つ者、それは妖怪では無く亡霊よ」

 

「亡霊?紫はまた幽々子達の起こした異変だって言いたいのかしら?」

 

幻想郷は数多くの異世界に通じる、その中には勿論冥界だってある。

 

幻想郷出身の者が幽霊や亡霊と言われて真っ先に思い浮かべるのはその冥界であり、そこに佇む白玉楼であり、そこに住まう西行寺幽々子だろう。

 

それに以前にも幽々子は幻想郷で異変を起こした事があり、紫に突然の話をふられた霊夢もやはり幽々子を思い浮かべていた。

 

「違うわよ、幽々子は関係ないわ。そもそも幽々子が結界の外から干渉なんてできる訳ないじゃない。そうじゃなくて外界で亡霊になった者が人々に忘れられる程の時間を経て幻想郷へと干渉したと考えるのが自然よ」

 

「なるほどねぇ…でもそれなら犯人は絞れそうな者じゃない?生前から結界に干渉できるような力を持っていて亡霊になってから長い時間を過ごしている者なんてそうはいないでしょ?」

 

「だから最初に言ったでしょ?今回の異変はあの外来人に関係しているって。おかしいじゃない、知り合い同士の外来人が同時期に幻想入りするなんて前例にないわ。ならその周辺から調べてみるのは当たり前でしょ?」

 

「それもそうね…で、いたの?紫の言う条件に当てはまりそうな奴は」

 

「いたにはいたわ…でもその亡霊が今回の犯人とゆう確証はないけどもね。ただ、もしもその亡霊が犯人だったとしたら気を付けて頂戴。最悪の場合、弾幕ごっこなんて言っていられなくなるわ…」

 

この八雲紫とは誰よりも幻想郷を愛していて、妖怪と人間が共存する事に尽力してきた人物だ。

 

自身には有り余る他を圧倒する程の力を持ちながら、それを振りかざさずに幻想郷の平和を守ってきた。

 

そんな八雲紫が弾幕ごっこでは済まないと言う…

 

この言葉の意味する深刻さは博麗の巫女として幻想郷を守ってきた霊夢にはとても重大な事として受け取れた。

 

「わかった…じゃあ紫は引き続きその亡霊の調査をお願いね、私はあの外来人達の動向に注意を払っておくわ」

 

こうして幻想郷における主要人物達の間で、静かに…ただ確実に異変は進行していった。

 

その場を解散した霊夢が妖怪の山で起きた事件を知るのはこれよりもう少し後の事である。




物語は折り返し、二つの世界が交わっていきます!
興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!

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