東方怪異譚ーLegend of vampireー 作:根無草
紅魔館の地下にある大図書館、そこに現れたのは博麗神社の巫女である博麗霊夢その人だった。
そしてその後ろに続くように鴉天狗の射命丸文と普通の魔法使いこと霧雨魔理沙の姿が。
「門番不在とはいえこんな時間に人の館に不法進入は感心しないわね霊夢、いったい何の用なの?生憎こっちは取り込み中なの、野暮用ならまたにしてくれないかしら?」
突然の予期せぬ訪問者に言葉をかけたのはレミリアだった。
この紅魔館の主にして今回の異変の主役にあたる人物なのだ、こんな時に余計な時間はとられたくないという意思がはっきりと見て取れる。
しかし、レミリアすら予想していなかった返答が霊夢の口から放たれた。
「ふぅ…今回の異変、吸血鬼絡みのようね?詳しく話して貰えるかしら」
どこでどんな情報を得たのかは不明だが、ここに訪れた三人は既に吸血鬼に関する事件の一部を知っている様子だった。
「相変わらず異変に関する情報は早く察知するのね。私達も今その話をしていたところよ」
「なら話が早いわ、その話、私達も混ぜてもらうわよ」
この幻想郷において結界をはじめとした様々な場面で重要人物だと思われる霊夢さんは、今回の吸血鬼騒動に一枚噛むつもりでここに来たようだった。
それは射命丸さんも霧雨さんも同じらしく、瞳に強い意思が感じられる。
だがそこは吸血鬼にして紅魔館の主ーーー
レミリアの出した答えは予想通りのものだった。
「残念だけど霊夢…これは吸血鬼の問題よ。幻想郷の異変を解決してきた貴方達には悪いけどこればかりは私達で解決する。吸血鬼でもなく紅魔館の住人でもない人間の出る幕じゃないわ」
過去の清算…そして吸血鬼としての誇り…
様々な意味はあれど、そこにはあくまでも吸血鬼として果たさなければならない使命がある。
他者に介入される筋合いは無いと言わんばかりーーー
それは威嚇や威圧とも取れる態度だった。
紅い瞳は真っ直ぐに霊夢さんを居抜き、譲る気の無さを物語っている。
でも博麗の巫女はひかない
「それが出る幕になっちゃったのよ、もう既に幻想郷で被害が出ているんだから」
「被害?誰かが襲われでもしたのかしら?」
それを言い出したらついさっきチルノが襲われたばかりだろう…
まあレミリアにとってそれは気にするような事でもないのかもしれないけど。
「その通りですレミリアさん、私の住む妖怪の山が謎の男達に襲われて私の部下が何人か負傷しました」
レミリアの問いに答えたのは射命丸さんだった。
「妖怪の山が?あそこには強力な妖怪が…それこそ天狗達がごろごろいるじゃない、それなのに負傷したの?」
「その通りです…元々は警備のためにいる白狼天狗なので戦闘はそれほど強くありません。ですが腐っても天狗、決して弱い訳でもない…そんな天狗達がまとめて打ち負かされました。中には命を落としそうな者もいます」
「それだけじゃないぜレミリア、さっき私は大妖精に会ったんだ。そしてチルノの事を聞いた…聞けば三人の男に連れ去られたみたいじゃないか、友達って訳じゃないけど知らない仲じゃないからな、ほっとけないだろ!」
どうやら射命丸さんも霧雨さんも頭にきているらしい。
そしてあのバンパイヤハンターの被害はかなり広くにわたっていることが伺えた。
「落ち着きなさい魔理沙、あの氷の妖怪ならお嬢様のご好意で紅魔館で保護してるわ。今は治療も終えて寝ているところよ」
「本当か咲夜!?それは良かったぜ…けどだからって私達が退く理由にはならない!私はそいつ等を許す気はないからな」
幻想郷は妖怪と人間の共存する場所ーーー
人を食べる類の者も少なくは無いにしろ、そこには確かなバランスが存在して繋がりだってある。
種族の違いこそあれど同郷の友を傷付けられたこの人達に後退の意思は見えない。
勿論それはレミリアだって例外ではない。
同じ幻想郷に住まう者として霧雨さん達が主張する事の意味がわかっているようだ。
それ故に反論の言葉に迷っているかのような表情を浮かべている。
「ねぇレミリア、あんたがそこまで頑なに吸血鬼という種族にこだわる理由はなんなの?」
そんな煮え切らないレミリアの態度に霊夢さんは確信に触れる質問を投げかける。
「随分とお節介が好きなようじゃな娘。うぬに儂等吸血鬼の何がわかるというのじゃ?あまり聞き分けがないとこの場で喰うぞ」
痺れを切らしたのは忍だった。
元々がそこまで気の長い性格ではない上に、今回の問題は吸血鬼のもの…
馴れ合いを良しとしない忍にとってこれほど苛立つお節介はないだろう。
「あんたが暦の言ってた眷属の吸血鬼ね?レミリアといいあんたといい吸血鬼の成長速度ってどうなってるのよ…まぁ良いわ、食い殺すみたいな事を言ったような気がしたけどどういう意味かしら?巫女なんて食べたら食中りになるわよ」
その場の空気が一気に張り詰めるーーー
「理解できない訳ではあるまい?うぬ等人間ごときが吸血鬼の問題に簡単に首を突っ込むなと言うとるんじゃよ。生きて精々数十年の人間が数百を超える時を生きた吸血鬼の何がわかると言うんじゃ?それに数々の神と呼ばれる者を食らってきた儂がうぬごときで食中りとは笑わせる」
わずかなきっかけでも戦いに発展しそうな両者…
ヘラヘラと見守るフラン以外の全員が緊張感で身を固くしていた。
そんな中、二人の間に入ったのはやはり同じ吸血鬼のレミリアだった。
「落ち着いて忍お姉様、それに霊夢も突然押し掛けておいて余りにも無礼が過ぎるわよ。咲夜!皆んなを外に。私と忍お姉様と霊夢の三人で話があるわ。」
主要人物のみで話し合うと言うレミリア。
「ですがお嬢様…妹様と暦さんはよろしいのですか?」
「良いのよ…これは当事者である私達吸血鬼と幻想郷を守ってきた博麗の巫女との話だから」
「…かしこまりました。では皆さんこちらへ」
この三人だけを残していくのは危険かとも思ったが、それは僕なんかでは理解できないような深い話になるだろう…
そしてその話はきっと他の誰かが口を挟んで良いような話ではないのだ。
僕は忍に一声かけて部屋を後にした。
「おい忍、わかってるとは思うけど滅多な事はするなよ?」
「心配性じゃなお前様よ、言うまでもなくわかっておるわ」
閑話休題
「チルノぉぉぉおおお!!!死ぬなぁぁぁ!目を覚ましてくれぇぇぇえええ!!!!」
僕の部屋に入るなりベッドの上で眠るチルノの飛びかかったのは霧雨さんだった。
両肩を鷲掴みにされながらガクンガクンと揺さぶられたチルノはナルトのように目をグルグルと回しながらうなされている。
「ちょっと霧雨さん!?何やってんの!寝てるだけだって言ったでしょうが!!」
馬鹿すぎるというか危なすぎる…
この人本当は心配するふりをしてトドメをさしに来たんじゃないのか!?
「はっ!?ついうっかり!」
我に帰った霧雨さんはチルノを手放す、
乱暴にベッドに降ろされたチルノは、眠ったというより気絶に近い感じで横たわる。
「しかし思った以上にひどいな…妖精とはいえ見た目がこんな小さい女の子にここまでするなんて人間のする事とは思えないぜ」
「霧雨さんも悪魔の諸行だと思いますけどね…でも確かにこれは酷い、あいつらの心は既に人間じゃないのかもしれません」
現在僕の部屋には霧雨さんと射命丸さん、そしてフランと僕とチルノの五人がいる。
咲夜さんはまだやらなきゃいけない仕事が残っているからと言ってキッチンの方に戻っていった。
美鈴さんは警戒するに越したことはないと門番の仕事に戻り、パチュリーさんは図書館が解放されるまでテラスで読書するらしい。
「その口振りから察するに、暦さんは件の首謀者をご存知のようですねぇ。良ければ詳しく話してもらえませんか?」
「それをまた新聞の記事にするつもりですか射命丸さん?生憎レミリアの手前、僕がペラペラと話す訳にはいきませんよ」
「いえ、記事にしたいスクープではあるんですけど今回はそういう訳にもいかなそうです…天狗の仲間に被害が出てますからねぇ。ま、仕方ありません。霊夢さんが戻るまで待つとしますか」
被害という言葉に罪悪感を覚える…
やはり全てを説明しなくともそこだけは謝っておくべきだろうか…
一瞬の沈黙が部屋を包む。
そしてその沈黙はあっけなくーーー
そしてとんでもなく空気が読めない発言でぶち壊されるのであった。
「ねぇ、暦お兄様と魔理沙。待ってる間に私と遊ぼう?」
もしかしたらチルノと並んで寝る羽目になるかもしれない僕と霧雨さんなのだった。
今回は異変解決を紅魔館メンバーだけで行う為の理由作り的な回なので少し短めです。
もしかしたら他のメンバーが誰かと何かで戦う話も出てくるかも…
(参考までに希望がある人はコメとかくれると嬉しいですw)
そしてイメージ画に咲夜と美鈴とパチュリーが仲間入りしました!
{IMG6242}
これ、色までやろうか悩んでます…w
さてさて、それでは興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!