東方怪異譚ーLegend of vampireー   作:根無草

2 / 60
オリネタ全開です


第2話ー普通の魔法使いー

知っている人は知っている事だと思うけど、ここで前回のタイムスリップにおけるワンシーンを思い出してもらいたい。

 

あの時の僕はそれはそれは後先考えず、なんの比喩でもなく全力でゲートに飛び込んだ。

 

で、その結果は十一年前の北白蛇神社の階段に辿り着き、飛び込んだ勢いのままスタントマンよろしくの階段落ちを披露して気絶したのだった。

 

それが、今回はどうだろうか?

 

ある程度の衝撃を覚悟していた僕の予想を裏切って、身体に伝わる感触はとても柔らかいものだった…

 

まあ柔らかいとは言っても、それは上質なクッションとかベッドとかではなく、あくまでも落ち葉が積み重なった土の上だったんだけど…

 

兎に角、僕達は無事に時空移動とやらに成功したようだ。

 

うーん…自分で言ってて時空移動ってやっぱりタイムスリップと同義だと思うんだけど…

 

そして同時に僕の中にはある疑問が湧き上がる。

 

「なあ忍、質問がある」

 

「奇遇じゃなお前様よ、儂も聞きたいことがある」

 

 

「「ここはどこだ(じゃ)?」」

 

見渡す限り木、木、木…

 

日本の何処かだとは思うけど、理想の主人公どころか普通の人間の気配すらない。

 

「儂は理想の主人公とやらを強く念じろと言わなかったかの⁉︎それともなんじゃい?お前様の理想の主人公とやらはこんな何処ともわからぬ森の中におるのか⁉︎どんな野性味溢れる者に憧れとるんじゃお前様は!ジャングルの王者にでもなりたかったのか⁉︎」

 

 

「僕はターちゃんじゃねえよ!っつーな憧れるかそんなもん!さては忍、お前またもやゲート開通に失敗したな!」

 

「なっ…!何を抜かすかお前様!儂は失敗などした事が無いわ!失敗の仕方を教えてもらいたいくらいじゃわい!あーあ、どうやったら失敗なんてできるのかのう!常に失敗だらけのお前様が羨ましくて仕方ないわ!」

 

「誰が常に失敗だらけだ!少なくとも僕のイメージにこんな樹海みたいな景色は皆無だ!どこだよここ⁉︎自殺の名所か⁉︎日本有数のあの自殺の名所なのか⁉︎」

 

「戦場ヶ原樹海じゃったかの?」

 

「僕の彼女を自殺の名所にしてんじゃねえよ!」

 

正しくは青木ケ原樹海。

 

そしてなんの学習もせず責任をなすりつけ合うツーマンセルの姿がそこにはあった…

 

「まあ忍の失敗は置いとくとして、それにしても本当にここは何処なんだ…これじゃ帰るどころか僕達以外の人間に会えるかも疑わしいぞ」

 

「いい加減しつこいのうお前様…儂は失敗などしとらん!…じゃが気候的にもここが日本である事は間違いないじゃろ。多少瘴気が濃い気もするが…万が一にも帰れんなどという事はないと思うぞ?」

 

「それなら良いんだけどな、これじゃ人間に会うより先に妖怪変化に会う方が簡単そうだぜ」

 

「これまで儂を含めた数々の怪異に会っておるのじゃ、今更何が出たところで驚きはせんじゃろ」

 

言われてみればそれゃそうだ。

 

全くもってごもっともである。

 

しかしだからと言って、現状は何も変わらないのだった、視界に広がるは右も左も前も後ろも立ち並ぶ木々のみ。

 

民家どころか、およそ人工物と言えるものは見当たらない…

 

当初の目的とは逸脱してしまうけど、これでは目的どころか解決策を探す羽目になりそうである。

 

せめてここに僕達の窮地を救う、正義の味方、理想の主人公、頼れるヒーローでも現れてくれたら進展も望めそうなのだけど…

 

ん?これって俗に言うフラグってやつじゃ…

 

 

「おい」

 

突然、背後から声がかかった。

およそ主人公とは思えない、低く、太く、混沌と純悪を思わせる声が…

 

「おいおいマジかよ…」

「かかっ、これは面白い」

 

僕達が同時に振り返った先には物語の進展にして僕の立てたフラグ回収役が立っていた…

 

 

いや、立っていたとは言い難い…だってそいつは…

 

蜘蛛だったのだから。

 

「お前達は外の者か?これは僥倖、この幻想郷において人間を喰らうとなればこんな機会に恵まれない限りあやかれないからな…さあ、その血を吸わせておくれ」

 

 

なんで蜘蛛がこんな饒舌に喋ってやがるんだよ⁉︎

 

「おい忍!これは何だ⁉︎怪異なのか⁉︎」

 

「ふむ…血を吸わせろという所から察するに怪異に分類するならさしづめ『大蜘蛛』かのう?しかし此奴め、吸血鬼にして怪異の王である儂に血を吸わせろとは…かかっ、中々面白い事を言いよる」

 

「いや面白くねえよ!どっからどう見ても大ピンチだろこれ!」

 

余裕ぶってる忍には悪いけど危険度で言えばプッツンしたガハラさんか影縫さん以上だ!

 

つーか血を吸うとか、もはや怪異じゃなくて普通に化物、妖怪変化だ!

 

普通の化物ってのも良くわからないけど…

 

そもそも余裕ぶってはいるけど、今の忍も僕も吸血鬼性はそれほど高い状態じゃない…

 

逃げ切れるかすら危ういぞ⁉︎

 

しかしこの蜘蛛、何か言ってたような…

 

外の者…?幻想郷…?

駄目だ、混乱しすぎて頭が回らない…

 

「ボーっとするな!来るぞお前様!」

 

突如大蜘蛛がこちらに突進してきたーーー

 

「うおっ!速っ!」

 

蜘蛛の突進を中心に左右に飛びのいてそれをかわす僕と忍、間一髪というタイミングだった。

 

 

「なんだよこいつ…おい忍!無事か⁉︎」

 

「儂の心配をしとる場合かお前様よ!どうやら此奴なかなかやりよるぞ!」

 

そりゃこんな見た目だもんな…弱い筈がないだろうよ!

 

是非皆さんにも想像してもらいたい。

 

自分より遥かに大きな喋る蜘蛛をーーー

 

怖いしグロいしで精神的な意味では既に大ダメージだ!

 

「こいつの対処法みたいなもんは知らないのか忍⁉︎」

 

「わからん!じゃがやるしかなかろう!奴はやる気満々じゃぞ!!」

 

見ると突進の勢いをやっと止めて大蜘蛛がこちらを振り返った所だった。

 

「ふふ、いきが良いなあ人間。もっと逃げろ…もっと怖がれ…そして…血を吸わせろおおおおお!!!」

 

いちいち気持ち悪い奴だ…

見た目だけで充分だからせめて喋らないでもらいたい!

 

 

そして再び突進してくる大蜘蛛…その狙いは…

 

「って僕かよ⁉︎」

 

無理だ、これは詰んだ…

 

吸血鬼性が上がっていればわからないけど、今の僕にかわせるスピードじゃないーーーー

 

とんだ最終回だ。

 

やっぱり僕には漫画のような主人公にはなれなかった…

 

こんな事なら惨めでも恰好悪くても自分のままでいつもの暮らしに満足してるべきだったな…

 

一瞬にして後悔にもにた感情が胸を埋め尽くす。

 

最後の最後まで悔やんでばかりとはいかにも僕らしい最後だーーーー

 

 

ーーー恋符・マスタースパークーーー

 

 

この時、僕は本当に死んだと思った。

 

それ程までに眩しくて暖かい閃光が辺りを包んだから…

 

ああ、死への入り口ってこうなってるんだ…みたいな感覚。

 

それくらい凄まじい輝きだった。

 

「おい、大丈夫か?って、ん⁉︎お前らまさか外来人か⁉︎」

 

聞いた事のない女性の声で僕は我に返って目を開けた。

 

「あれ…僕…生きてる?」

 

さっきの閃光が嘘のように同じ木々のみの景色がそこには広がっていた。

 

「無事かお前様!!!」

 

慌てた様子で忍が駆け寄ってくる、どうやらこっちも無事な様子だ。

 

 

「なんだったんだ今の…忍の仕業じゃないよな?どうやらさっきの蜘蛛もいなくなったみたいだし…何がどうなってんだよ?」

 

「儂にもわからん。じゃが誰かの声がしたように思えたんじゃがな…」

 

互いの無事を確認した後、そこに残された疑問に首を傾げる僕達ーーー

 

さっきの閃光は…声の主はいったい…

というか、またもや謎な何かを言ってたぞ?

 

外来人ってなんだ???

もう頭が回らないどころか思考回路は完全に停止していたーーー

 

「おーい、こっちだぜ、こっち」

 

再び声が聞こえた、でも周りには誰も立っていない…

 

いや、同じ否定文句を二度も言うとは思わなかったがあえて言おうーー

 

立っている筈がないのだ。

 

だってその声の主はーーーー

 

僕達の真上に浮かんでいたのだから…

 

「はじめまして外来人!私は霧雨魔理沙ーーー」

 

ーー普通の魔法使いだーーー

 

 

こうして僕達の物語は進みはじめる…

 

まるで夢のようにーーー

 

いや、誰かが描く幻想のようにーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いよいよ化物語のツーマンセルが幻想入りです!
この後、物語は…異変はどう進んで行くのか…
ではでは、興味とお時間のある方は引き続きよろしくお願いします!

※感想やご意見、随時募集してます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。